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第二章 精霊産みといろいろ

59.地雷物件

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 一晩で6人て、なんじゃそりゃ。聞いただけでゲッソリしたので、せめてもの確認をする。

「精霊王が産まれたら精霊産みは終わりなの?」
「そうですね。卵と種は一年間体にあるのでそのあとも精霊産みはできますが、残り期間が少しならしなくてもかまいません。ただ、巫女が苦しくなると思います」
「そうだった」

 そうだったわ。結局、一年きっちりお勤めが必要じゃないですかやだー。

「大変だよなぁ」
「サミーは知ってた?」
「はっきりは聞いてねぇけど、精霊王産みがあるって聞いてたからなんとなくな」

 太い眉をへにゃりと下げて仕方なさそうな顔をしてる。同情されても大変さは減らない。長い夜になりそうでため息が出た。

「精霊王産みに重要なのは二つです。巫女が夫全員を受け入れていること。もう一つは夫同士が互いを尊重していること。誰かを排除したいと考えていたら上手くいきません。すべての属性が和合した存在、それが精霊王ですので」

 へーそうなんだー。失敗しそう。主にヴェルナーで。視線を送ると、気まずそうに目をそらした。自覚はあるらしい。
 それ以外は大丈夫か。グルリ見渡すとヨアヒムが俯いてるのに気付いた。なんだろう、複数プレイが緊張するとかかな。部屋に待機してて終わった人が次の人を呼びにいくスタイルでもいいよね。そしたら1対1だし。

「最初は心乱れるものですから、徐々に慣らしていきましょう」
「いきなり6人相手は大変だろ? 2人か3人ずつで慣らしたらどうだ?」

 ラルフの提案にリーリエが頷いた。

「そうですね、巫女に慣れてもらうために2人から初めて人数を増やしていきましょうか」
「オレとゲルトは慣れてるし、サミーも平気だろ? それぞれ慣れてねぇヤツと組むか?」
「なぜですか?」
「他の男がいると緊張してダメになるヤツもいるから、片方が慣れてたほうが気も楽だろ、サヤカも」
「そうだね」
「あの、一緒ではなく交代で部屋を訪うと考えていたのですが」
「ああ、それでもいいな。でも一番目のヤツは朝までいれないから楽しみ半減じゃねぇか? まあ、組むヤツと相談して決めてくれ」
「そうですね」

 リーリエはそうだよね。体を見られたくないんだもん。

「組み合わせはどうする?」

 顔を向けられたけど、私の発言で揉められても嫌なので首をかしげてお断りした。

「ゲルトはまだ見張りが必要だからヴェルナーだな。神官はサミー、ヨアヒムはオレと。それでいいか?」
「はい、大丈夫です」

 みんなはそれぞれ承諾の返事をした。一番なれてなさそうなヨアヒムの面倒をみてくれるとはさすがラルフ。絶妙な組み合わせですな。

「産まれた精霊の半分以上で属性が混じっていれば成功です。すぐ始めるのも緊張すると思いますので、次回からにしましょう。よろしいですか?」

 頷いて話は終わり、部屋に戻ってリーリエが準備してくれたお風呂に入る。背中を流してくれると言う下心満載のリーリエを誘って一緒に湯船に入り、膝の上に抱かれて話をした。

「なんで異世界の巫女の年に精霊王を産むの?」
「この世界では一人一属性を持っています。この世界の巫女も属性を持つため、6属性のうち一つが二重になってしまい強さに偏りがでてしまいます」
「それじゃあダメなの?」
「文献によりますと強い属性の箇所に歪が出てしまうようです。雨が止まなかったり、大風が続いたり。6属性の均衡が保たれた精霊王を産むためには、属性を持たない異世界の巫女が必要なのです」
「そうなんだ」
「巫女はとてもとても大切なお役目ですよ。巫女はとても大切な存在なのです」

 そう言って後ろから首にキスをいくつもする。爛れた痕の残る右手を握って頬にあてキスを返した。
 大切だけど大切にされてる気はしない。自分たちだけでお役目を果たせないのが面白くない気持ちもあったんだろうか、と図書室での陰口を思い出す。リーリエは神殿の本音と建前が分かってないのかも。
 私の後頭部に頬ずりをしながら足を絡めてリーリエが甘える。好きだと言った日からメチャクチャ懐いてくるようになった。生い立ちを聞いたらかなり悲惨だったし、周りにバレないように生きてくなんて辛いこと続けてたからずっと寂しかったんだろう。そのうちいなくなる私以外にも味方を見つけてほしいと願う。

「あのねぇ、リーリエの秘密のことだけど、偶然部屋にいたサミーに知られたよ」

 ヒュッと息を飲む音が聞こえ、細い体が強張った。リーリエのほうに向きなおって怯えた顔を抱き寄せる。

「でも内緒にしてもらった。誰からも何も言われてないでしょ?」
「……はい」
「リーリエとサミーだから、交代でもいいけど一緒に寝ても大丈夫だと思うって言いたかったの」
「……はい」

 湯船から上がって俯いてるリーリエの手を引っ張る。

「乾かして一緒に眠ろうか」
「でも巫女、今日はお休みの日で」
「うん、眠るだけ」
「だけ、ですか」
「足りない?」
「はい」

 素直なリーリエに笑った。

「じゃあ、一回だけだよ」
「はい、巫女」

 はにかんだリーリエが微笑ましい。
 体中を舐めまわされる長い一回のあと、しがみついて胸に頬を寄せるリーリエを抱きしめて眠った。


 翌日は、ヴェルナーが落ち込んだ様子でやってきた。

「どうしたの?」
「……サヤカは平気?」
「仕方ないからね。ヴェルナーだってラルフの前で平気そうにしてたでしょ」
「違う、邪魔だった。全員が……。すまない、私のせいで失敗する」
「そんなに? 違う部屋、見えない場所でも?」
「ダメなんだ。想像してしまう」
「想像するの? 他の人と寝てる私を想像して一人でするの? 随分といい趣味だね」

 なんだか悲しそうな顔をしてるから、抱きしめてわざと厭味ったらしく言ってみた。

「い、いや、そうじゃなくて、サヤカが」
「冗談だよ。最初っからうまくいかないって。一緒に慣れていこう」
「サヤカ」

 ギュウギュウ抱きしめられてたら、洗面所の片づけをしていたリーリエが出てきた。

「リーリエ、片付けありがとう」
「はい。私はもう出ますね、おやすみなさい巫女」
「おやすみ」

 私にくっついたままのヴェルナーと一緒にドアまでリーリエを見送った。

「私もサヤカの世話をしたい」
「ヴェルナーは警備の仕事があるでしょ。リーリエはこれが仕事なんだから」
「やけに神官の肩を持つ」
「持ってない。なにをそんなに拗ねてるの?」
「2人きりになれないのが嫌だ」
「じゃあ、時間で交代したら?」
「待ち切れないし、待っているのも嫌だ」
「ワガママ!」

 めんどくせーーーー。めんどくせーな、こいつ。その場しのぎで『お前が一番だ』とか言うと、ことあるごとに持ち出して自分が満足するまで『一番』を言わせるタイプとみた。優良物件じゃなくて地雷物件じゃん。

「大事なのは和合でしょ。ちょっとは妥協しないと」
「できない」

 キャーーーーいやぁーーーー。付き合いきれないぃぃぃ! 子供かよ!

「っふ、ふっ、あはは、はははは、ひどすぎる、ふふ、あははは」

 あまりに酷くてお腹を抱えて笑ってたら憮然とした顔が照れ笑いに変わった。

「そんなに笑わなくても」
「っふふ、ふっ、だって、ひどいから、ふふ、あはは」
「そうか?」
「そうだよ。っぶふっ。もっと広ーいココロでさ」
「私のココロは狭いんだ」
「んっぶ、ふぐっふ。ホント、だね。あはははは」

 なんだよー天然かよ。もー可愛いなぁ。笑いながら手を引っ張ってヴェルナーを見上げた。

「ヴェルナーはゲルトの見張り役でもあるんだから、見守っててね」
「まだ獣化するのか? 別のやり方を考えてみたほうがいいかもな」
「そうだねぇ。でも、獣化したヘビ族と絡まってる女はエロいってラルフが言ってたよ」
「……」
「興味持った?」
「……見張りだから」

 手で口元を隠してあさってのほうを見ながら言い訳のようにつぶやいた。
 嫉妬とエロだとエロが勝つのか。なんじゃそりゃ。アホくさくて力がぬけた私に気付いたのか、誤魔化すように抱きしめた。

「しばらく一人占めできないなら、今日は寝かせない」
「誤魔化さなくていいよ。体力ないんだからほどほどにしてください」
「誤魔化してはいない」
「わかったわかった」
「呆れている?」
「少し。っふふ」
「一人占めしたいのは本当なんだ、サヤカ。哀れな私に同情してくれ」

 エロが見たいのも本当、一人占めしたいのも本当、独りよがりなのも本当、執着してるのも本当。いくつもの本当がある、私にも。胡散臭いと思うのも本当、好かれて嬉しいのも本当、気持ちが重いのも本当、傷つけてみたいのも喜ばせたいのも本当。その時にどれを選ぶかの違いだけ。
 アホな誤魔化しにしか思えないヴェルナーの言い分を可愛いとも思う。

 アホ可愛いのでフェラをすることにした。いつも押し倒されて休む間もなく腰を振られるから口でするのは初めてだ。
 これで発散してくれるかと思いきや、喜んだヴェルナーに押し倒されて気を失うまで腰を振られた。翌日は股関節がガクガクして寝込んだ。
 失敗した。やっぱ地雷物件でしたわ。


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