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第一章 巫女ってなんなんですか
18.仲間がいた Side サミー
しおりを挟むSide サミー
儀式の日、立ち上がった巫女はまあまあデカかった。異世界の女だって聞いたからどんなだと思ってたら、人族と似たような体でサッパリした顔をしてた。静かにしてるから大人しいかと思ったらラルフと軽口叩いてて、喋りやすそうな気楽さにホッとする。
巫女なんかやりたくねぇって神官に言ってるから、ちょっと悪ぃなと思った。自分とまったく関係ねぇのに、やりたくねぇことさせられるってんだから気の毒だ。
それなのに、俺は自分が拒否されたみてぇな気分になった。きっとあんときのことが尾を引いてんだろう。俺もたいがい重症だ。
俺の部屋に来て一緒に土を捏ねた。なんていうか、素朴で悪くねぇと思った。女っぽい感じじゃねぇけど、女っぽいのは懲りてるし馴染むような空気が落ち着いた。一年だけの関係なんだから、このくらいのほうが良いような気がする。
ただ、あまりにもそんな雰囲気ねぇから、本当に抱いていいのか心配になった。前の奴らは抱いたみてぇだけど、やりたくねぇって言ってたし、そんな相手じゃあんま気がのんねぇ。
湯浴みのあと眠る時間を見計らって部屋に行った。遠慮がちに笑う顔に罪悪感がわく。随分とデカいベッドに少し離れて寝転んだ。
「なんか悪ぃな」
「サミーのせいじゃないし、大丈夫」
「無理すんなって言いてぇけど、やんねぇと苦しくなんだもんな」
「うん。嫌いじゃないけど、仕事にされちゃうとヤル気がなくなる」
「そうだよな、相手選べねぇし」
「みんな嫌な感じじゃないから私はいいけど。そっちも選べなくて残念だったね」
「いや、俺はデカい女が好きだから丁度いいんだ」
「私はあんまり大きいほうじゃないけど」
「俺よりってこと」
「そっか」
話が途切れて静かになった。
「手でも握ってみる?」
「ああ、うん」
なんか知らねぇけど、緊張する。久しぶりだからか。サヤカの動く気配がして手が腕にふれ、ビクッと体が反射的に逃げた。
「……あ」
「……ごめんね。今日はもう寝よう」
「いやっ、ちがう、わりぃ、違うんだ」
ビビり過ぎだ。何やってんだ俺。気ィつかってくれてんのに、こんなヒデェまねして。ものすごい罪悪感に襲われて冷や汗が噴き出した。
「いや、前にフラれて、ちょっと、いや、貢いだ女にさ、それで、……引き摺って」
何言ってんだ。バカみてぇこと言っちまった。
貢いでフラれる男が自分なんて、みじめでいたたまれなくなった。恥ずかしくて言葉が出てこない。
「あーそれは辛いよね。私も前の彼氏に貢いだあげく浮気されて別れたよ。しかも、私が浮気相手だったし」
「……は?」
「私が貢いだものをさ、横流ししてんの。酷過ぎない?」
「……そりゃヒデェな。俺は売られてたけど」
「自分で使うならまだしも、ただの金づる扱いって、尊厳めちゃくちゃ折られるよね」
「そう、そうなんだよ!」
仲間がいるとわかったら嬉しくて声が大きくなった。
「私もしばらく立ち直れなかったもん」
「だよなっ。酷過ぎんだよ!」
なんかホッとした。みじめなのが自分だけじゃなくて。こんなことで傷付いて情けねぇって落ち込んでたけど、仲間がいて嬉しくなる。そうだよ、自分が踏みにじられたんだから落ち込んで当然なんだ。
相手にされない自分がみっともなくて冗談にもできなかったけど、同じ目にあったサヤカとなら軽口を叩けた。わだかまってた胸の内を口にして、なんだかんだ愚痴を言い合ったら、スッとして気分が軽くなった。
「水飲もうかな。灯りつけてもらっていい?」
「ああ」
魔法が使えないサヤカの代わりに精霊石のランプを付けた。
ぼんやりした黄色い灯りの中でサヤカが二つのコップに水をつぎ、一つを手渡してくれる。
「俺も貢がれちまったな」
「っぐふ、んっふふ。サミーはお返しに何を貢いでくれるのかな」
水をちょっと噴き出してから、悪戯っぽく笑って冗談を返された。ランプの灯りがうつった黒い目にドキッとする。
デカい女が好きだし、俺って惚れっぽいから。同じようなヒデェ目にあった仲間で、愚痴を言って気が晴れたから。色んな理由が頭に浮かんで消えた。
コップをテーブルに戻してサヤカが飲み終わるのを待ち、灯りを消す。暗くしたら体の熱が上がり緊張して心臓がうるさくなった。初めてみてぇな気分だ。まあ、サヤカとは初めてだし、久しぶりだから。
ベッドに入ってから声をかける。
「なあ、さわっていいか?」
「……いいよ」
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