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1.逃げようとしたのに ※
しおりを挟む「じゃあね、これから一人なんだから戸締りはしっかりね」
「わかってる。お母さんお義父さん、手伝いありがと」
引っ越しを手伝ってくれた両親が車に乗り込む。
「俺は友達んとこ行くから。明日帰る」
「送らなくて良いの?」
「この近くだから大丈夫。お疲れ~」
弟は両親にそう告げて手を振った。テールランプの灯りが角を曲がって消えてから、隣に立つ弟を見上げる。
全身毛むくじゃらのオオカミな弟は私を見返して笑った。
「どうしたの? 部屋に戻ろうよ」
「友達は?」
「嘘に決まってるだろ。ほら、早く。それともずっとココに突っ立ってる? ここで抱きしめていいの?」
穏やかに笑うその下に、不穏な響きを感じて鳥肌が立った。
無言のままアパートの部屋へ戻る。ドアノブを掴んだ私の手を、上から握り締めた弟が囲うように後ろへ立つ。ドアの内側へ私を押し込み、後ろ手にカギをかけた。
静かな部屋に響くチェーンの音が体にまとわりつき、逃がさないと言ってるように思えた。
置いたばかりのハンドソープで手を洗い、私は床に座った。弟は布団袋をあけてベッドに布団を敷きシーツをかける。枕をポフポフ叩いて形を整えたあと、服を脱いで全裸になった弟がこちらに向き直り、牙を見せて笑った。
「こいよ、姉ちゃん」
私は何も答えず、動かないことで抵抗をしめす。そんなことはものともせずに、弟は私を後ろから抱きかかえてベッドの上に座らせた。
「……もう止めるんじゃなかったの?」
「俺が止めるわけないだろ」
「だって」
「なんにも言わないで引っ越し決めるから怒っただけ。でも、逆に良い考えだって気づいたんだよね。もう親に遠慮しないで姉ちゃんを抱けるってさ。これから毎日くるね」
「なに勝手なこと言ってんの?」
「合鍵渡すか、姉ちゃんの会社に毎日迎えにいくか選んでいいよ。俺はさ、本当は迎えに行きたいんだ。迎えに行って毎晩一緒に過ごす、すごく仲の良い弟がいるってアピールしたいんだ。残業してもいいよ、ずっと待ってるから」
「……合鍵渡す」
弟はいつもこうやって私に選ばせる。いや、追い詰める。
「迎えに行けないなんて残念だなぁ。あ、でも、駅で待ち合わせて夕飯買って帰れるね。新婚みたいにさ」
楽しそうに畳みかける弟に気圧された。何も問題ないって態度が私を不安にさせる。
「なあ、姉ちゃん、俺が言ったこと忘れた? 愛してるってさ、あんなに言ったのに。なんで逃げようとすんの?」
ぐっと近付けられた黒い鼻先にひるんで後ずさる。
「姉弟でしょっ」
「血は繋がってない。血がつながってたって関係ない。姉ちゃん、逃げようとしてもムダだよ。俺が諦めるわけないんだから。だから、姉ちゃん」
最後は熱い息と一緒に耳元で囁かれた。
弟の手が服を捲り上げて脱がしていく。私にのしかかってブラジャーのホックを外した。押し倒され口を覆われ、ペロペロ舐められる。ブラジャーを押さえる私の手下に、やすやすと力強い手を潜り込ませた。胸を揉みながら指で乳首を押し込まれ、ジンとする甘い痺れが背中を走る。思わず吐息を漏らした口に、オオカミの大きく平べったい舌が入り込んできた。
弟の指が乳首を捏ねまわし、私の下腹は潤っていく。私の手もブラジャーもずり上げ、乳房を口に咥えた。軽く牙を立てられて、ビクリと腰が揺れる。
抵抗なんか建前だ。私はこの先を望んでるのだから。ただそれを知られたくないだけ。
片方の乳首を舌先で弾かれながら、片方を潰される。体は素直に喜びを表して震えた。
「んっ、あぁ、ふっ…………、んぅっ」
我慢しても口から喘ぎが零れてしまう。
姉弟だと言って弟の気持ちを否定しながら、私の体は浅ましく喜んでしまう。こみ上げる疼きを押さえても、執拗な弟の愛撫にあっけなくイってしまった。
弟は私のズボンを下着と一緒に引き下ろし、床に投げ捨てる。膝裏を押し開いて、杭を打ち込むために先っぽを当てた。
「姉ちゃん、好きだ。好きなんだ。愛してる」
弟はそう言って私の中に硬く熱いものを沈めた。
毎回、必ず言う言葉。まるで免罪符のように。許しを求めるように。私にはそう聞こえてしまう。
ねえ、本当は後悔してるんじゃない? 本当は止めたいんじゃない? 自分から始めたからってムリしてるんじゃない?
弟の言葉は喜びと痛みを呼び起こす。許しを乞うような言葉が、この関係を許されないものだと肯定しているようで。私の気持ちが醜悪だと言われているようで。
待ち焦がれたものを与えられた体はその刺激を欲しがり、逃さないためにキュウキュウと収縮した。口からはだらしなく喘ぎが漏れる。
灰色の毛に覆われた弟の体が私の上で腰を振っている光景に、たまらなく興奮した。それだけで気持ちがいっぱいになる。
薄目を開けたら、黄色の目がギラギラと欲望をたたえて私を見据えていた。その欲望に炙られ、ジリジリ胸を焦がされる。私も好きだと言いたくなる口を引き結んだ。
「――――っん、……ぅ」
「っはぁ、姉ちゃん、いい匂い。ねぇ逃がさないよ、姉ちゃん」
グチャグチャと音を立てて擦られる。
「愛してる。姉ちゃん、愛してるんだ」
本当に?
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