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29.エピローグ
しおりを挟むあれから何度も刺繍の手伝い仕事で村へ行った。そのたび送り迎えする3人も村人たちと話すようになり、兵団に買い上げられてしまった薬草の補充や干し肉の取引を依頼されることになった。遠征しての狩りもなかなか順調で、獲物を売って現金にしている。
なんだか3人の雰囲気が明るくなって私も嬉しい。
夏の終わりに私たち全員が村人の婚礼に招かれた。浮かない顔のヴィムが不安を口に出す。
「俺たち借金奴隷なのにいいのかな」
「招待されてんだから、いいじゃねぇか。シュロ一人の招待じゃ、俺たちが許さねぇって思ったのかもな」
「えーなにそれ? だって村に泊って仕事してたでしょ」
「メスだけの仕事だろ。婚礼はオスもきて酒も入るから、シュロ一人で行かせるわけねぇし、送り迎えすんだからどのみち俺たちもいるってわかんだろ」
「そっか。でも、みんなも薬草売ったりして知り合いになってるでしょ。それもあるんじゃない?」
「まぁな」
「絶対そうだって」
悪いほうに考えるのは、自分が奴隷だって思うからだろうな。でも、偏見あったら薬草取引だってしないだろうし、親の借金で奴隷だって知られてるから、そんなに心配しなくてもいいと思うんだけど。
なるべく明るく励ましておく。悲しいのは服。ボロイのは仕方ないので、飾り帯を作って誤魔化した。
結婚する人数が多いから合同でやることになった婚礼は、村を挙げてのお祝になってかなり盛大だ。広場に敷いた敷物に新郎新婦が何組も並び、真ん中には色んなご馳走、その周りをぐるっと囲む村人たち。
私は刺繍するあいだに親しくなった村の女たちと挨拶をした。村長以外の場所ならどこに座ってもいいらしく、手招きされた場所に座ってお喋りをする。ローガーと双子も村の男たちとなんだかんだ話してる。
夜になったら焚火を囲んで、村人みんなで歌って踊った。花嫁さんのベールがヒラヒラしてすごく綺麗だ。私も娘さん達に連れ出されて見よう見まねで踊る。明るくて楽しくて、みんなで笑いながら踊った。
途中でローガーに抱き上げられて、焚火の広場を出る。娘さん達に手を振ってお休みを言い、ヴィリとヴィムも一緒に泊まらせてもらう小屋へ戻った。
お水を飲んで一息つく。
「楽しかったね」
笑いかけたら、みんなが頷いた。
ヴィムが私の隣に座って背中から抱きつき、肩に頭を擦り付ける。
「シュロ、俺たち魔獣討伐のお礼言われた」
「うん、頑張ったもんね」
「これからも薬草売ってくれって」
「うん、毎回きちんと取引してるから信用されたんじゃない?」
「うん」
「みんなの力だよ」
「……俺、奴隷終わったらさ、仕事する」
「どんな仕事?」
「うーん、狩猟ギルドに入って、って考えてる」
「オレも。3人で組めば大物も狙いにいけんじゃねぇ?」
ヴィリがクリクリした目をキラキラさせて話す。
「最初は肩慣らしからだけどな」
ローガーの口調はたしなめるようだけど、なんとなく楽しそう。
「私は縫物の仕事探そうかな」
私たちはその夜初めて、これからのことを話した。なんとなくぼんやり考えてたこと、私たちの将来、小さいことから夢みたいなことまで笑って話した。
私のできることってなんだろうって思ったけど、こういうことなのかもしれない。こうやってお喋りして、素直に喜んで笑って一緒に生活してく。
「ねぇ、結婚ってさ、こうやって喋って一緒にいるってことかな」
「うん? そんなもんだろ?」
「ふふふ」
ローガーがキョトンとして、でも笑って答える。特別じゃないことが当たり前で、その当たり前が嬉しくて私も笑った。
「あぁ、シュロ可愛い。可愛いね。俺のシュロ」
「オレと結婚したくなった?」
「うん。したくなった」
「へへっ」
双子に前後からギュウギュウ挟まれた。
「可愛いね、ヴィリもヴィムも」
「シュロのほうが可愛いよ」
「シュロのカワイイとこ見せろよ。なぁ、シュロ、ココだろ?」
「あっ、ヴィム、ヴィリ、……ん」
ヴィリの指が胸を揉み、ヴィムがうなじを舐めながらお尻の穴を撫でる。私の顎をすくったローガーに、口の中を掻きまわされて息があがった。苦しくて滲んだ涙を、短い毛の太い指で拭われる。
「ククッ、可愛いツラして。お前ぇはホント、いいメスだよなぁ。シュロ」
ローガーの笑顔は相変わらず、たちの悪い悪人顔だ。それなのにやっぱりキュンとしてしまう。でも、ヴィリとヴィムも可愛いし、幸せだからそれでいいやと思った。
おしまい
--------------------------
これにて完結です。
ありがとうございました!
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