【R18】豹獣人の3兄弟～保護してもらうかわりに体を使って頑張ります！

１２．収入源の悩み

　
　駆除見学が終わり、留守番の私は仕方ないので家の中のこと、掃除と洗濯なんかをする。食べさせてもらうんだからこれぐらいはしないと。服はあちこちほつれて穴があいてるけど、裁縫道具のありかがわからないので直すのはまた今度。寝床の敷布も埃を払って天日干しをする。
　流刑地だからか、圧倒的に生活用具が足りない。いや、人間じゃないから？　生水でも生肉でも大丈夫そうな見た目だし。お茶飲んでるけど。
　事前に聞いておいた、畑にしても大丈夫な場所を掘り返すのは重労働すぎてあまり進まなかった。

　そろそろ夕方かな～ってときに、勢い良くドアが開いてヴィリとヴィムが飛び込んできた。すっごく驚いたのに、むこうも驚いた顔してるから意味わかんなくて笑った。
　抱き付いてきた二人の頭をわしわし撫でる。少し離れたとこに突っ立ってるローガーにもお帰りを言った。

　ヴィリが根をつけたまま採ってきてくれた食べられる草を植えて、水をやる。
　あとできることと言えば、木の枝を切ってもらって木を増やすとか？　これは年単位の話だからムリか。あとは、家畜化とか？　そんな大人しい魔獣いるかな。

「ねー、なるべくおとなしい、私がお世話して増やせるような魔獣いない？　食べられる魔獣ね」
「飼うのか？　シュロが世話できる食える魔獣ねぇ」
「『腐肉漁り』は？」
「不味くて食えたもんじゃねぇだろ」
「また草か、酸っぱいのに漬けたら食べられるかもしれないし、試してみたら」
「そうだな、試してみりゃあいいか」

　明日、獲ってきてくれることになった。突進する力は強いけど、高く跳ねたり土を掘ったりできないので、ひざ下ぐらいの穴を広めに掘ってそこで飼えばいいとアドバイスをくれた。ヴィリとヴィムが浅いビニールプールみたいな穴を掘ってくれたので、私は掘られた土を畑にするために運ぶ。1人じゃ畑を作れなかったからありがたい。

　数日後、取り敢えず2匹と言って渡された『腐肉漁り』は、コウモリみたいな顔とカピバラみたいな体で、ウサギぐらいの大きさだった。毛はゴワゴワ硬くて臭い。腐った肉の匂いが染みついてるんじゃなかろうか。ヴィリに手伝ってもらって洗ったら、少しはましになった。ご飯には魔獣の肉を上げて、水を入れた皿を置いた。
『腐肉漁り』という名前じゃ呼びにくいので、『フニ』と名付ける。

　エサの量とか、腐肉以外で何を食べるかとかがわからない。試しに草と木の実を上げたら食べた。雑食らしい。
　イベリコ豚ってドングリをエサにしてるから美味しいんだよね、たしか。そういえば、肉食獣の肉は不味いって聞いたことあるし、エサを変えればいいのかも。試してみるべし。

　ヴィリとヴィムに木の実の採取を頼んだ。フニの寝床の掃除、畑の世話、服の繕いとか、やることが増えてなかなか充実している。
　今後のため、街に行ったときにどんな仕事があるか聞いたら、いい縫物のほとんどは人間種が賄ってるそうで、私も就職できるかなと期待が持てた。

　2か月経って、イベリコ計画が上手くいってるか確かめるのにフニの一匹をさばいてもらう。そのままと、香草漬けと果物漬けの3種類にして焼いたら、全部美味しくなってみんなびっくりした。臭みはあるけど、野性的な感じで悪くない。果物付けは臭みがないぶん風味が残り、ちょっと不評。
　イベリコ豚理論は正しかったらしいので、これからも実験を続けることにした。ローガーが追加で5匹獲ってきてくれ、穴を広げないとと思ってたら、いきなり6匹も子供を産んだ個体がでて驚く。慌てて、メスとオスをわけるためにもう一つ穴を掘ってもらった。玉がついてたので見分けやすいのは助かった。

　子供は小さくて毛皮がフワフワで可愛い。

「あの毛皮なら売れそうだな」
「硬くなる前に潰すか？」
「……毛皮がどれくらいの時期まで大丈夫か確かめてからにしない？」
「そうだな」

　子供を潰すと言われて、ちょっと動揺した。家畜として飼い始めたんだし、貴重な収入源だから仕方ない。仕方ないけどやるせない。でも収入ないと私が詰む。頑張らないと。
　心をなんとか落ち着かせる。
　大きいの個体は1カ月の木の実生活でだいぶ臭みがなくなるとわかった。ただ、2カ月待ったほうがほどよく脂がついて美味しくなる。たぶん、狭い場所で飼ってるから運動不足なんだろう。子供から飼育した場合は、肉質がどうなるのかも確かめなきゃ。
　ヴィムのすすめで冬になったら干し肉を作ることにした。

　飼う数を増やすか聞かれて悩む。豚がドングリ食べるのもハゲ山の原因じゃなかった？　だって、木の種だもんねぇ。他のエサ……キノコとか？　毒キノコで死ぬかもしれないし。キノコは嗜好品だって話だし。じゃあ、草？　でも雑食性だから草だけだと栄養バランスが取れなさそう。
　まあ、今年だけで森がどうこうなるほどの数を飼うわけじゃないし木の実でいいかな。

　子供は3週間したら乳離れしてエサを食べ始めた。それから2週間後、他の個体も出産した。一匹は獲ってきたときから妊娠してて、もう一匹は雄雌一緒くたにしてたときに妊娠したんだと思う。
　子供は2カ月で親の3分の2くらいに成長した。1匹残して潰し、残ったのを見守ったら3カ月目で親と同じ大きさになり、ゴワゴワ毛に生え変わった。

　作った干し肉を春に街で売るためには、いつ妊娠させるのがいいか逆算する。干し肉の干し期間もあるし、妊娠期間も成長期間あるし面倒だ。余裕をもって準備するならもう妊娠してもらわなきゃ困ると気づき、出産した2匹を除く残りの2匹をオスの囲いに移した。
　商売には長期計画が必要だと実地で体験してしまった。干し肉作りに使う塩は、貯蔵できるから多めに買ってあるらしい。助かった。あとは無事に売れて赤字にならないことを祈るのみ。

　そんなこんなで暇じゃない程度に忙しくすごす。今日もフニの囲いを掃除して寝床のワラを替えたり忙しくしていたら、魔物除けのむこうから誰かがやってくるのが見えた。
　ローガーたち以外の人を初めて見る。トラとオオカミが2匹。色んな動物がいるんだと思いつつ、警戒心が高まる。

　流刑地にお客さんなんてくる？　……強盗とか？