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96.後悔と焦燥 Side アル
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___________
Side アル
ユウと会えた。
ユウと会って、抱き合った。
ユウが俺の名を呼んだ。また、ユウの名を呼べた。
柔らかさが減ったユウの体を抱きしめると胸が痛み、同時にほの暗い満足もあった。俺がユウに力を及ぼせたことに。
ユウが何も言わなかったわけが分かった。ユウが俺達に嫌われたと思ってたなんて知らなかった。ユウが俺達の家にいたいと思ってたことも。
嫌うなんてあるわけない。胸が痛くて苦しかった。俺の気持ちが伝わってなかったことも伝えてなかったことも、ユウの気持ちが分からなかったことも。
ユウに抱き付いて泣いた。ユウもベルも泣いてた。
ベルがそんなに寂しいのにも気付かなかった。
俺達を独占したいと言った。俺がユウを独占したいように、ユウもそう思ってくれている。聞いたときはすごく嬉しくて、体が熱くなった。
俺とベルはユウを愛していて、ユウも俺達を愛している。
朝、俺を見たユウは笑ってて、俺を好きだと言ってるような笑顔だった。今まで何度も見たことがある、俺に優しさをくれる笑顔だった。忘れていた。俺にもこうやって笑い掛けてくれてた。なんで、同情だと思ったりしたんだろう。
これからも、ユウが家にきて俺達と過ごしてくれる。嬉しいのに、俺はまだ許せないでいる。
関係が戻った今の幸せが覆い隠したその下に、あの時の怒りと悲しみの跡が残ったまま。それが棘のように俺を刺した。
ユウは謝ったし、ベルは許した。俺はもうユウを失いたくない。あのことはもう忘れなければと思うのに、傷はまだ痛み熱を持つ。
ユウとベルは屈託なく笑い、俺だけが影に囚われてるように感じる。
ユウは償いをすると言った。俺の望む償いを。俺が傷ついた分だけ。償いを望んで、取り戻した幸せは壊れないでいられるだろうか?
このまま、この気持ちを閉じ込めておいたらいつか忘れられるだろうか。
夫会議で筆頭に言われた。排除されても仕方がないと。俺もそう思った。
ユウに何も教えなかった。俺達に縛りつけたいから。ユウを閉じ込めておきたかったから。それなのに追い出した。何も言わずに。
自分のことしか考えてなかった。愛してると答えてくれることだけ望んでた。ユウの気持ちは何一つ知らなかった。
頼りたかったのは俺だと言っていた。最初にユウを見つけたから。俺達に頼れないからユウは倒れたんだろうか?
俺は何をした?俺はユウに自分だけを頼らせておいて、拒絶した。
・・・酷過ぎる。
ユウは今、何を思ってる?ユウは俺達の仕打ちをどう思った?ユウは謝ったのに、俺は許せなかった。自分のしたことなんて考えてなかった。それなのに、会いにきてくれたユウに愛を縋った。ユウに縋り付いてユウを欲しがった。
ユウはなぜ今も愛してくれるんだろう。俺は何ができるんだろう。
ユウは悲しみも押し殺してた。今も。少しだけ泣いてすぐ笑う。仕方がないって顔して。俺を見て辛そうな顔をする。こんな時でも俺のことを考えてくれる。そんなユウが悲しかった。自分の悲しみを感じないようにしているユウが。
競争と言って急に走り出したユウを、あっけに取られて見送ったら、ベルも走り出した。俺も遅れて走る。ユウが息を切らして、必死に走ってるのにそれでも遅くて、それがなんだか可笑しくて、笑った。ユウもベルも笑う。
こうして心を軽くして、やり直しできるって教えてくれる。
ユウが俺達を一緒に抱くために腕が足りないと言った。いつもそう、俺達を一緒に大事にしてくれる。
俺達は話をした。ユウと俺達、両方の。
ユウも俺達と似ていた。でも、ユウは一人で俺達は二人。それなのに俺達を慰めてくれる。ユウは一人だったから悲しまないようにしてきたのかもしれない。
ミカはユウが『怖がり』だと言っていた。悲しむことを怖がっているのかもしれない。
ユウに貰ってばかりだ。それなのに、俺は際限なく欲しがる。ずっと一緒にいたいのに、破綻したくないのに、足りなくて胸が苦しい。ユウを手に入れたい。どうしたらいいんだろう。愛されてると分かっているのに、なぜ?
空っぽの家を思い出す。ドアを開けるたびに味わった失望と怒りを。
俺は手放したまま何もしなかったのに、またユウをこの腕に抱けた。どうして捕まえておける?何もせず手に入ったのにどうやって留めておけるんだ?
狂おしく求めた愛情が、手から零れ落ちそうな焦燥に駆られ、胸を掻き毟った怒りの記憶が、まだ足りないと、狩りとれと叫ぶ。
ユウの愛情がいつのまにか手に入ったように、いつのまにか消えてしまいそうで怖い。
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Side アル
ユウと会えた。
ユウと会って、抱き合った。
ユウが俺の名を呼んだ。また、ユウの名を呼べた。
柔らかさが減ったユウの体を抱きしめると胸が痛み、同時にほの暗い満足もあった。俺がユウに力を及ぼせたことに。
ユウが何も言わなかったわけが分かった。ユウが俺達に嫌われたと思ってたなんて知らなかった。ユウが俺達の家にいたいと思ってたことも。
嫌うなんてあるわけない。胸が痛くて苦しかった。俺の気持ちが伝わってなかったことも伝えてなかったことも、ユウの気持ちが分からなかったことも。
ユウに抱き付いて泣いた。ユウもベルも泣いてた。
ベルがそんなに寂しいのにも気付かなかった。
俺達を独占したいと言った。俺がユウを独占したいように、ユウもそう思ってくれている。聞いたときはすごく嬉しくて、体が熱くなった。
俺とベルはユウを愛していて、ユウも俺達を愛している。
朝、俺を見たユウは笑ってて、俺を好きだと言ってるような笑顔だった。今まで何度も見たことがある、俺に優しさをくれる笑顔だった。忘れていた。俺にもこうやって笑い掛けてくれてた。なんで、同情だと思ったりしたんだろう。
これからも、ユウが家にきて俺達と過ごしてくれる。嬉しいのに、俺はまだ許せないでいる。
関係が戻った今の幸せが覆い隠したその下に、あの時の怒りと悲しみの跡が残ったまま。それが棘のように俺を刺した。
ユウは謝ったし、ベルは許した。俺はもうユウを失いたくない。あのことはもう忘れなければと思うのに、傷はまだ痛み熱を持つ。
ユウとベルは屈託なく笑い、俺だけが影に囚われてるように感じる。
ユウは償いをすると言った。俺の望む償いを。俺が傷ついた分だけ。償いを望んで、取り戻した幸せは壊れないでいられるだろうか?
このまま、この気持ちを閉じ込めておいたらいつか忘れられるだろうか。
夫会議で筆頭に言われた。排除されても仕方がないと。俺もそう思った。
ユウに何も教えなかった。俺達に縛りつけたいから。ユウを閉じ込めておきたかったから。それなのに追い出した。何も言わずに。
自分のことしか考えてなかった。愛してると答えてくれることだけ望んでた。ユウの気持ちは何一つ知らなかった。
頼りたかったのは俺だと言っていた。最初にユウを見つけたから。俺達に頼れないからユウは倒れたんだろうか?
俺は何をした?俺はユウに自分だけを頼らせておいて、拒絶した。
・・・酷過ぎる。
ユウは今、何を思ってる?ユウは俺達の仕打ちをどう思った?ユウは謝ったのに、俺は許せなかった。自分のしたことなんて考えてなかった。それなのに、会いにきてくれたユウに愛を縋った。ユウに縋り付いてユウを欲しがった。
ユウはなぜ今も愛してくれるんだろう。俺は何ができるんだろう。
ユウは悲しみも押し殺してた。今も。少しだけ泣いてすぐ笑う。仕方がないって顔して。俺を見て辛そうな顔をする。こんな時でも俺のことを考えてくれる。そんなユウが悲しかった。自分の悲しみを感じないようにしているユウが。
競争と言って急に走り出したユウを、あっけに取られて見送ったら、ベルも走り出した。俺も遅れて走る。ユウが息を切らして、必死に走ってるのにそれでも遅くて、それがなんだか可笑しくて、笑った。ユウもベルも笑う。
こうして心を軽くして、やり直しできるって教えてくれる。
ユウが俺達を一緒に抱くために腕が足りないと言った。いつもそう、俺達を一緒に大事にしてくれる。
俺達は話をした。ユウと俺達、両方の。
ユウも俺達と似ていた。でも、ユウは一人で俺達は二人。それなのに俺達を慰めてくれる。ユウは一人だったから悲しまないようにしてきたのかもしれない。
ミカはユウが『怖がり』だと言っていた。悲しむことを怖がっているのかもしれない。
ユウに貰ってばかりだ。それなのに、俺は際限なく欲しがる。ずっと一緒にいたいのに、破綻したくないのに、足りなくて胸が苦しい。ユウを手に入れたい。どうしたらいいんだろう。愛されてると分かっているのに、なぜ?
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