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93.愛されているようだ Side エーミール
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Side エーミール
ユウナギが回復して、様子がおかしいながらも元気になった。
炭焼きに保護され、落ち着いたのかまた幸せそうに笑った。
炭焼きの家の子どもになったから戻らない、と言った。
他の夫達が全員ユウナギを愛していても関係ない?炭焼きのためにこの国に残るのか?先に私が保護したら残ると言ってくれたか?
神殿はユウナギに合わないようだ。私達が理由ではないけれど、それでも無力感は拭いきれない。
まだ夫でいたいか聞かれ、胸に痛みが走った。泣くと言われても、幸せを願われても、私の望みはそうではない。夫でいてくれと縋ってほしかった。
私を傷つけたと謝ったが、違う。傷ついたのは自分の無力さ故だ。
私と話すのが楽しいと言われ、私との時間に楽しみを見出していると思うと、胸が弾んだ。
また、双子だ。酷い仕打ちをされたのに気にかける。
グラウで花を咲かせ、双子で萎れ、炭焼きで安定した。私は?
私を好きだと言って穏やかに、自然に楽しそうに笑った。花が咲いたような笑顔に似て、炭焼きのせいだとしても、私のことでそんな笑顔を見せたことに、胸が突かれて抱きしめた。好きだと言うときはいつも楽しそうに笑う。私を好きでいることは楽しいことなのだろうか?胸が苦しい。
グラウと仲良く昼食をとった話をグラウの部署の奴から聞いた。昼食を食べる時間がないほど睦まじく過ごしたのだと思い、嫌味を言うと呆れた顔をされ、何でもないように流された。
呆れて流される、気楽な対応が嬉しい。私が嫌味を言っても、甘えを見透かして笑ったり呆れたりして、子供のように扱われるのが心地よい。
特別なことをする約束も覚えていた。
私の日に手を出されないようにグラウに釘をさしておく。ユウナギは困ったような顔をしていた。我儘を聞き過ぎだ。
ユウナギは食事に喜び、私にグラウの相談をした。
グラウはいったい何をやっているんだ。妻に負担を強いて。いや、ユウナギの気遣いを独占されているようで気分が悪い。
が、ユウナギが私に相談とは、私を頼っているということだ。相談内容は面白くないが話はきちんと聞く。
ユウナギが私に贈り物をくれた。
ユウナギが考えて、手を掛けて、私のために作ってくれた。絹を使ったのは私の立場を考えてのことだろう。買っただけじゃない、私のために手を動かしてくれた。
私の心配も気遣いも全部分かって受け止めてくれていた。
相手の挙動を窺う用心深さからきていると分かっている。しかし、気付いてもらえるのは、なんと嬉しいことだろう。気遣いは当たり前のものとして振り向きもされなかったから。
縋ってほしいという願いは叶った?本当に?
ユウナギが私を必要として、求めている。私を?
私と同じ熱さでなくてもいい。私は望まれたかった。私は愛されたかった。
私を愛していいかと聞く。ユウナギ、愛されるのは怖い。願っているのに、叶った途端に壊れそうで。愛し愛されてから捨てられるのは怖い。私が欲しいのは幻ではない。もう幻は嫌だ。
ユウナギが私を大事な物のように扱い、優しく抱く。私の甘えを受け止めて叶えてくれる。
私のことを考え私のために試してくれる。
嬉しくて、ゾクゾクした。年下の妻に鳴かされて、悶えて、受け止めてもらうのは。年下の妻の手のひらの上で官能を味わわされるのは、羞恥にまみれ興奮を煽った。
達したあとは羞恥だけが残り、何も言えなかったのに子供のように優しく世話をしてくれた。恥ずかしく嬉しく心地よかった。
愛の言葉など口だけならいくらでも言えるのに、ユウナギの顔を見ると喉に詰まったように言えなくなる。からかうように笑うことを、愛し気に細める目も、優しい指も、私を引き付けるのに。
想うたび言えなくなる。こんな年上で、愛を乞うなど。
それなのに、優しく微笑む。微笑んで私を抱きしめる。分かっていないのに、分かられているような錯覚に陥る。
ユウナギはただ、私のことを考えて、私のためだけにしてくれた。
誰がしてくれた?ただ、貪られていただけなのに。私だって同じ。駆け引きで優位に立つために考えただけ。
倒れたときの話を聞いた。
ユウナギは危うい。恵まれた育ちと、森に住む差異が分かっていない。次があった時は私がことを運ぶ。
私のことも大事?本当に?気遣いだけではなく?
贈り物も、優しく抱くことも、私の満足を気遣うことも、約束を覚えていることも、すべて私のためだ。
グラウの腕の中から私を見る。グラウに謝罪して私は後回しだ。
面白くないので口付ける。逃がさず、強引にしたら諦めたのか、応え始めた。奪ったみたいでゾクリとし、そのまま押し倒したい衝動にかられた。
私の欲望も軽やかにかわされ、それは心地よく、少しの寂しさが残る。
また明日の朝会えるのに、ユウナギに抱かれていたい。腕の中に私を抱いていてほしい。
夜、優しく抱かれた。睦言を囁かれ、ユウナギの初めてをもらった。
朝、二人で抱き合った。ユウナギが連れて行ってと言った。
これではまるで愛されているようだ。
私は、愛している?愛している。もう引き返せない。
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Side エーミール
ユウナギが回復して、様子がおかしいながらも元気になった。
炭焼きに保護され、落ち着いたのかまた幸せそうに笑った。
炭焼きの家の子どもになったから戻らない、と言った。
他の夫達が全員ユウナギを愛していても関係ない?炭焼きのためにこの国に残るのか?先に私が保護したら残ると言ってくれたか?
神殿はユウナギに合わないようだ。私達が理由ではないけれど、それでも無力感は拭いきれない。
まだ夫でいたいか聞かれ、胸に痛みが走った。泣くと言われても、幸せを願われても、私の望みはそうではない。夫でいてくれと縋ってほしかった。
私を傷つけたと謝ったが、違う。傷ついたのは自分の無力さ故だ。
私と話すのが楽しいと言われ、私との時間に楽しみを見出していると思うと、胸が弾んだ。
また、双子だ。酷い仕打ちをされたのに気にかける。
グラウで花を咲かせ、双子で萎れ、炭焼きで安定した。私は?
私を好きだと言って穏やかに、自然に楽しそうに笑った。花が咲いたような笑顔に似て、炭焼きのせいだとしても、私のことでそんな笑顔を見せたことに、胸が突かれて抱きしめた。好きだと言うときはいつも楽しそうに笑う。私を好きでいることは楽しいことなのだろうか?胸が苦しい。
グラウと仲良く昼食をとった話をグラウの部署の奴から聞いた。昼食を食べる時間がないほど睦まじく過ごしたのだと思い、嫌味を言うと呆れた顔をされ、何でもないように流された。
呆れて流される、気楽な対応が嬉しい。私が嫌味を言っても、甘えを見透かして笑ったり呆れたりして、子供のように扱われるのが心地よい。
特別なことをする約束も覚えていた。
私の日に手を出されないようにグラウに釘をさしておく。ユウナギは困ったような顔をしていた。我儘を聞き過ぎだ。
ユウナギは食事に喜び、私にグラウの相談をした。
グラウはいったい何をやっているんだ。妻に負担を強いて。いや、ユウナギの気遣いを独占されているようで気分が悪い。
が、ユウナギが私に相談とは、私を頼っているということだ。相談内容は面白くないが話はきちんと聞く。
ユウナギが私に贈り物をくれた。
ユウナギが考えて、手を掛けて、私のために作ってくれた。絹を使ったのは私の立場を考えてのことだろう。買っただけじゃない、私のために手を動かしてくれた。
私の心配も気遣いも全部分かって受け止めてくれていた。
相手の挙動を窺う用心深さからきていると分かっている。しかし、気付いてもらえるのは、なんと嬉しいことだろう。気遣いは当たり前のものとして振り向きもされなかったから。
縋ってほしいという願いは叶った?本当に?
ユウナギが私を必要として、求めている。私を?
私と同じ熱さでなくてもいい。私は望まれたかった。私は愛されたかった。
私を愛していいかと聞く。ユウナギ、愛されるのは怖い。願っているのに、叶った途端に壊れそうで。愛し愛されてから捨てられるのは怖い。私が欲しいのは幻ではない。もう幻は嫌だ。
ユウナギが私を大事な物のように扱い、優しく抱く。私の甘えを受け止めて叶えてくれる。
私のことを考え私のために試してくれる。
嬉しくて、ゾクゾクした。年下の妻に鳴かされて、悶えて、受け止めてもらうのは。年下の妻の手のひらの上で官能を味わわされるのは、羞恥にまみれ興奮を煽った。
達したあとは羞恥だけが残り、何も言えなかったのに子供のように優しく世話をしてくれた。恥ずかしく嬉しく心地よかった。
愛の言葉など口だけならいくらでも言えるのに、ユウナギの顔を見ると喉に詰まったように言えなくなる。からかうように笑うことを、愛し気に細める目も、優しい指も、私を引き付けるのに。
想うたび言えなくなる。こんな年上で、愛を乞うなど。
それなのに、優しく微笑む。微笑んで私を抱きしめる。分かっていないのに、分かられているような錯覚に陥る。
ユウナギはただ、私のことを考えて、私のためだけにしてくれた。
誰がしてくれた?ただ、貪られていただけなのに。私だって同じ。駆け引きで優位に立つために考えただけ。
倒れたときの話を聞いた。
ユウナギは危うい。恵まれた育ちと、森に住む差異が分かっていない。次があった時は私がことを運ぶ。
私のことも大事?本当に?気遣いだけではなく?
贈り物も、優しく抱くことも、私の満足を気遣うことも、約束を覚えていることも、すべて私のためだ。
グラウの腕の中から私を見る。グラウに謝罪して私は後回しだ。
面白くないので口付ける。逃がさず、強引にしたら諦めたのか、応え始めた。奪ったみたいでゾクリとし、そのまま押し倒したい衝動にかられた。
私の欲望も軽やかにかわされ、それは心地よく、少しの寂しさが残る。
また明日の朝会えるのに、ユウナギに抱かれていたい。腕の中に私を抱いていてほしい。
夜、優しく抱かれた。睦言を囁かれ、ユウナギの初めてをもらった。
朝、二人で抱き合った。ユウナギが連れて行ってと言った。
これではまるで愛されているようだ。
私は、愛している?愛している。もう引き返せない。
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