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31.無関心 Side エーミール
しおりを挟むSide エーミール
他の奴らに手を出されないようにする為の結婚だった。
まあ、ちょっと変わっているが、小さな子どもにはあんな風にはみ出るものもいる。それだけだ。
私を見ると大抵は欲望を目に浮かべる。もしくは、抗った末の嫌悪か逃げ。無関心なのはグラウくらいだ。
ユウナギは私など眼中になく、グラウを見て驚いたが、それ以外は夫達だけを見ていた。意識もしていなかった。それも面白かった。
ユウナギの体質は面白い、色々試せるだろう。ユウナギの国の話も聞きたい。持ち物ももっとよく見たい。ユウナギから情報を貰えればそれで終いだ。
森番と炭焼きを相手にするとは随分物好きだ。裕福な親に育てられた娘が反抗したのだろうか。その内、後悔することになる。バカなことだ。
口達者に言い返すのは子猫の威嚇のようで可愛らしい。少しは警戒しているのだろう。もう私の手の中なのだから無駄な抵抗だというのに。
実験するのに、どう言い包めようと考えていたら本人から持ち出された。献身で自分を差し出す奴はたまにいる。それで自分を特別だと思い込む。まったく諦めきった奴もいる。家族の為に自分を差し出す奴も。
もっと考えてもっと抗えばいいのにただ受け入れる。頭を使わず、つまらない自己犠牲に酔った奴ら。
ユウナギは諦めていて、私に従っているように見えた。まあ、久しぶりだし、体だけでも楽しめるだろう。
虫が好きな女は見たことがなかった。私に合わせた所で嫌悪は隠しようもない。ユウナギは興味深そうに見て、触った。私よりも虫が気になるようだ。
女にここまで興味を持たれないのも初めてだ。
最初の女は、神殿長の妻だった。30も年上だったが夫に口利きしてやると擦り寄ってきた。次の女は筆頭魔法使いの妻だった。こいつは15くらい年上で、権力を笠に着て従わせようとした。年の近い女は年上の権力者ばかり夫にしていて、年上に飽きたのか、抱かないと夫に泣きつくと脅してきた。
女の魔法使いは成人する前から上の奴らの妻で、今は、夫達を蹴落とした私と婚姻したいと媚びてくる。お前の夫は私と寝た時に、奉仕されることに慣れ切った妻を嘆いていたぞと笑ってやりたかった。今更、夫の一人になった所で益することなど何もない。婚姻についてくる他の夫も面倒だ。
魔法使いの夫達と柵を持って、これ以上の面倒は御免だ
ユウナギは都合がいい。夫達は魔法使いじゃない、私と何も関係ない。権力も何もない孤児など、意識する必要もない。
男達は居丈高に私を組み敷いたり、あるいは組み敷いて欲しいと縋り、女達は自分に触らせてあげると媚び、あるいは従わせることに興奮していた。
面倒だ。地位を得る為になら相手もしたが、維持するのに必要ない。欲望も嫌悪も、もう面倒だった。
ユウナギは無関心だ。森の夫達だけを気に掛ける。
そして、私に奉仕した。無感動な声で弄ぶように。許すと言ったそれは、ただの義務だった。
私はまったく無力で、幼子のように慈しまれ、何も求められず、私は私だった。
ユウナギは眠る。私を放り出して。
朝、目覚めた時、私を見て欲しいと、そう思った。
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