上 下
13 / 139

12.懐かれたらしい

しおりを挟む
今日はなんと、草刈り。寝藁に使う葉っぱを刈ります。葉っぱのお水の葉っぱと同じらしい。寝藁にするには干さなきゃいけないし、量も必要なのだ。家から少し離れた場所に大量に生えている。繁殖力旺盛らしい。ザクザク刈って、でっかい籠で運んで家の近くの干場に広げていく。結構な労力だ。アルプスの寝床は結構な労力に支えられてんですよ。

お昼休憩を挟んで作業を続ける。歌いながら草を運んでいたら、ミカちゃんがやってきた。子供みたいだからね。ミカちゃん呼ばわりしてやる。何用じゃ。怖いもの見たさか。

「こんにちはー」
「こ、こんにちは」

めっちゃ汗だくやん。どうしたミカちゃん。めっちゃモジモジしとるし。話はまだ始まらないのか?もじもじミカちゃんなのか?

「・・・アルとベルに用事?」
「あ、あ、あの、これ、見つけたから、食べて」
「グミ?お裾分けありがとう」
「・・・あ、あの、き、聞きたいことが、あって」
「私?」

ぶんぶん頷くミカちゃん。汗が飛ぶやろー。

「いいよ、凄い汗だし、まずは顔を洗うのはどうでしょう?・・・はい、手を出してください」

葉っぱのお水を手桶に準備して、ミカちゃんの手を待つ。おずおず差し出した手に水を入れてあげたら、遠慮がちに顔を洗った。腰紐に引っ掛けてた手ぬぐいを渡す。

「はい、これで拭いて。使ってないからきれいだよ」

小さな籠に入ったグミをお水で洗う。話しながら食べよう。休憩だ。労働には休憩が必要。しゃがんで家の壁にもたれ、グミを口にする。甘酸っぱさが薄くていいな。働いた後だと美味しいわ。
グミをミカちゃんに差し出すと、一つ取ってしゃがんだ。

「美味しいね。ありがとう」
「・・・・・うん。良かった。・・・あの、なんで、森番と結婚を?」

わータイムリー。嫌われ者の双子で森番だからか?君は井戸端会議のおばちゃんか。

「んー、流れで?私、この国じゃない遠いトコから飛ばされたらしいの。いきなり森の中にいて、びっくりしてたら森番が保護してくれて、結婚しようって言われたから、まあ、いいかなーと思って。二人とも親切だしね」
「・・・親切。・・・・・えと、気にしないの?」
「私の国は双子も普通だし、森番だって、誰かがやんなきゃいけないんだから、仕事でしょ」
「・・・森に住むのは、平気?」
「まあ、なんとかなるかなーと思って。でも、大変だよね。水汲みとか」
「・・・うん。・・・・気にしないんだね。良かった」
「心配だったの?」
「うん。・・・たまにお肉くれたり・・優しくしてくれるから」
「そっか。心配してくれてありがとう」
「うん。・・・もう、帰る」
「はーい、気を付けてね。グミありがとう」
「うん」

そう言ってミカちゃんは帰っていった。私は草刈りをやり切り、汗を拭こうとして手ぬぐいがないことに気付いた。ガクっ。

夕方になって二人が帰ってきた。お出迎えしてグミを貰ったことを伝える。

「ミカちゃんにグミ貰ったよ」
「ミカちゃん・・・。ミカは何の用か言ってた?」
「なんか、私に聞きたかったんだって。二人のこと心配してたよ。優しいお兄さんがいきなり怪しい女連れ込んだから、騙されてないか心配したんじゃない?」
「・・・優しいお兄さんて、何さ。ミカは俺達と同じくらいだよ。騙されてんのユウの方でしょ」
「あ、そうなの。大きいけど幼い感じだからさ。家族から可愛がられてそうだよね」
「・・ユウ、森に住んでるのは大体、捨て子だからね。ミカも。ミカは一人で住んでるし」

おっとぉ、めっちゃ地雷。捨て子多すぎ問題。現実厳し過ぎ問題。森の住人に家族の話はタブーね、了解した。

次の日、洗濯中にミカちゃんがやってきた。

「あの、布、返すの忘れたから」
「ねー、忘れてたよね」
「・・・これ、お礼」
「お、ありがとう。これは?」
「わからないけど、俺はタネニガって呼んでる。種が苦いから」
「へーありがとう。一緒に食べようか」
「・・・うん」

すっかり慣れたな。木の実の差し入れって、君はゴンか。ゴン、お前だったのか。ゴンは栗だっけ。
壁にもたれて並んで座った。

「いただきます。・・・苦っ」
「えっ、種食べちゃダメだよ。苦いから」
「どれくらい苦いかなーと思って。口の中苦い。食べなきゃよかった」
「苦いのに。食べるから。ふふっ」
「ねー」
「・・・また洗濯してるんだね」
「えー洗濯するでしょ。溜めたら洗うの大変だし。昨日だって汗かいたし」
「汗乾くのに」
「汗は乾くけど、臭くなるんだから洗濯するよ」
「えっ、臭い?・・・俺は?」
「うん、臭い。アルとベルと初めて会った時も臭かったよ。今は綺麗にして臭くないけど」
「臭いの?俺。・・・・・ごめん」

やっちまった。ショックを受けて離れたミカちゃんを慌ててフォローする。

「あー大丈夫、大丈夫。私の国の人はさ、臭いする人が少ないから、慣れてないの。こっちは普通なんでしょ」
「・・・・・でも、臭い」
「あー、なんというか、ごめん。えーと、洗うとさっぱりしていいよって、言うか。あ、塩で洗うと良いよ」
「塩?」
「そう。頭は塩を溶かしたお湯で洗って、体とか顔は塩の粒のままで、擦ったら痛いから、撫でる感じで洗うの。あ、塩高いかな?少しだけでいいんだけど」
「・・・やってみる。帰るね」
「うん、試してみて」

やべえ、幼気な青少年の心を抉ってしまった。スメハラ案件じゃん。親が教えてくれないとなかなか気づけないよね。ごめん。

それから、たまにミカちゃんが来るようになった。懐かれたらしい。小さな籠に木の実を持ってやって来る。臭くなくなったフォローもちゃんとしておいた。


しおりを挟む
感想 83

あなたにおすすめの小説

イケメン彼氏は警察官!甘い夜に私の体は溶けていく。

すずなり。
恋愛
人数合わせで参加した合コン。 そこで私は一人の男の人と出会う。 「俺には分かる。キミはきっと俺を好きになる。」 そんな言葉をかけてきた彼。 でも私には秘密があった。 「キミ・・・目が・・?」 「気持ち悪いでしょ?ごめんなさい・・・。」 ちゃんと私のことを伝えたのに、彼は食い下がる。 「お願いだから俺を好きになって・・・。」 その言葉を聞いてお付き合いが始まる。 「やぁぁっ・・!」 「どこが『や』なんだよ・・・こんなに蜜を溢れさせて・・・。」 激しくなっていく夜の生活。 私の身はもつの!? ※お話の内容は全て想像のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※表現不足は重々承知しております。まだまだ勉強してまいりますので温かい目で見ていただけたら幸いです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 では、お楽しみください。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

一年で死ぬなら

朝山みどり
恋愛
一族のお食事会の主な話題はクレアをばかにする事と同じ年のいとこを褒めることだった。 理不尽と思いながらもクレアはじっと下を向いていた。 そんなある日、体の不調が続いたクレアは医者に行った。 そこでクレアは心臓が弱っていて、余命一年とわかった。 一年、我慢しても一年。好きにしても一年。吹っ切れたクレアは・・・・・

冷淡だった義兄に溺愛されて結婚するまでのお話

水瀬 立乃
恋愛
陽和(ひより)が16歳の時、シングルマザーの母親が玉の輿結婚をした。 相手の男性には陽和よりも6歳年上の兄・慶一(けいいち)と、3歳年下の妹・礼奈(れいな)がいた。 義理の兄妹との関係は良好だったが、事故で母親が他界すると2人に冷たく当たられるようになってしまう。 陽和は秘かに恋心を抱いていた慶一と関係を持つことになるが、彼は陽和に愛情がない様子で、彼女は叶わない初恋だと諦めていた。 しかしある日を境に素っ気なかった慶一の態度に変化が現れ始める。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...