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3.事情聴取 Side ベル
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Side ベル
「・・・可哀そうだな。飛ばされて。一人だ」
アルがポツリとこぼした。
アルは優しい。アルは自分がどんなに虐げられたって、人に優しさを見せる。そして、また自分が傷つく。あの女がどんな人間だって俺達には関係ないのに、アルは同情してしまう。
「良い結婚相手を紹介しようよ。アル、大丈夫、女性は強かに生き抜くよ」
「・・・俺達を、何にも・・・・・俺達に同情しなかった」
「・・違う世界、遠い国って言ってたし、こっちとは違うんだよ」
「俺は・・・嬉しかったんだ」
双子の女神信仰が蔓延する国で、男の双子は女神を排除した象徴として忌み嫌われる。どうしようもない、この事実をアルは悲しんでいた。
親は俺達をののしり目を背け、兄弟からは虐げられた。親の意を汲んだ使用人にはいないものとして扱われ、奇特な使用人は同情を寄せた。嫌悪と憐憫の眼差しに、アルはいつだって敏感だった。
アルは自分が傷つくのも構わず、俺を守った。兄弟の暴力から、使用人の陰険な嫌がらせから。食事に含まれた毒に嘔吐きながら、俺の無事を喜んだ。
俺にはアルがすべてで、アルが喜ぶなら泥を啜るし、二人ならどこでも生きていけると思っていた。他人はいつだって俺の敵だった。
アル、アル、アルは、女を望むの?俺は、アルが、望むなら、なんだって、そう、異物が紛れ込んだって、アルが望むなら。
「・・・・・アルは、彼女が、欲しいの?結婚したい?」
「・・・森番と結婚する女はいない」
「結婚するって言ったら?」
「・・・・・・俺は、・・・家族が欲しいんだ」
初めて聞くアルの胸の内に頭を殴られた気がした。双子の俺達はいつだって二人一緒で、それだけで完成していると思ってた。
「アルは、俺と、・・・離れたいの?」
「違う!俺達は双子だ、一緒だろう?そうじゃなくて・・・・・その、結婚して、子供がいたら、楽しそうだと考えていた。俺達二人の妻がいたら、ベルも俺も、愛されたら、いいと」
「そうか、・・そう、だったんだね。・・・彼女だと子供できないかもよ?それでもいいの?」
「子供は必ず出来るものでもないから、いい。・・・・・いや、彼女の望みに合った結婚相手を探そう。俺達は森番だからな。ちょっと思っただけだ」
アルはため息を吐いて、考えを振り払うように頭を振った。
アルが希望を言うなんて、そんなことはなかった。親からの愛情を諦めてから、ずっと、全部を諦めてた。手に入った嬉しいものは兄弟に取り上げられたし、自分の欲しいものより俺の欲しいものを優先した。
そうか、アルは、寂しいのか。結婚したって愛されるものでもない、子供だって愛されないことがあるのに。それでも、もしかしたらと、望むんだね。
彼女はどうかな、アルを大事にするだろうか?振る舞いは俺達に近くて、それを当然とするなら、平民を嫌がるかな。そうなら、俺達を望むかも。状況が厳しければ森番でも受け入れるかもしれない。
丸まって眠る彼女をベッドから眺めながら、アルは何度もため息を吐く。しばらくして、逃げるようにふとんに潜って眠った。
「・・・可哀そうだな。飛ばされて。一人だ」
アルがポツリとこぼした。
アルは優しい。アルは自分がどんなに虐げられたって、人に優しさを見せる。そして、また自分が傷つく。あの女がどんな人間だって俺達には関係ないのに、アルは同情してしまう。
「良い結婚相手を紹介しようよ。アル、大丈夫、女性は強かに生き抜くよ」
「・・・俺達を、何にも・・・・・俺達に同情しなかった」
「・・違う世界、遠い国って言ってたし、こっちとは違うんだよ」
「俺は・・・嬉しかったんだ」
双子の女神信仰が蔓延する国で、男の双子は女神を排除した象徴として忌み嫌われる。どうしようもない、この事実をアルは悲しんでいた。
親は俺達をののしり目を背け、兄弟からは虐げられた。親の意を汲んだ使用人にはいないものとして扱われ、奇特な使用人は同情を寄せた。嫌悪と憐憫の眼差しに、アルはいつだって敏感だった。
アルは自分が傷つくのも構わず、俺を守った。兄弟の暴力から、使用人の陰険な嫌がらせから。食事に含まれた毒に嘔吐きながら、俺の無事を喜んだ。
俺にはアルがすべてで、アルが喜ぶなら泥を啜るし、二人ならどこでも生きていけると思っていた。他人はいつだって俺の敵だった。
アル、アル、アルは、女を望むの?俺は、アルが、望むなら、なんだって、そう、異物が紛れ込んだって、アルが望むなら。
「・・・・・アルは、彼女が、欲しいの?結婚したい?」
「・・・森番と結婚する女はいない」
「結婚するって言ったら?」
「・・・・・・俺は、・・・家族が欲しいんだ」
初めて聞くアルの胸の内に頭を殴られた気がした。双子の俺達はいつだって二人一緒で、それだけで完成していると思ってた。
「アルは、俺と、・・・離れたいの?」
「違う!俺達は双子だ、一緒だろう?そうじゃなくて・・・・・その、結婚して、子供がいたら、楽しそうだと考えていた。俺達二人の妻がいたら、ベルも俺も、愛されたら、いいと」
「そうか、・・そう、だったんだね。・・・彼女だと子供できないかもよ?それでもいいの?」
「子供は必ず出来るものでもないから、いい。・・・・・いや、彼女の望みに合った結婚相手を探そう。俺達は森番だからな。ちょっと思っただけだ」
アルはため息を吐いて、考えを振り払うように頭を振った。
アルが希望を言うなんて、そんなことはなかった。親からの愛情を諦めてから、ずっと、全部を諦めてた。手に入った嬉しいものは兄弟に取り上げられたし、自分の欲しいものより俺の欲しいものを優先した。
そうか、アルは、寂しいのか。結婚したって愛されるものでもない、子供だって愛されないことがあるのに。それでも、もしかしたらと、望むんだね。
彼女はどうかな、アルを大事にするだろうか?振る舞いは俺達に近くて、それを当然とするなら、平民を嫌がるかな。そうなら、俺達を望むかも。状況が厳しければ森番でも受け入れるかもしれない。
丸まって眠る彼女をベッドから眺めながら、アルは何度もため息を吐く。しばらくして、逃げるようにふとんに潜って眠った。
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