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美人占い師との出会い
しおりを挟む結局、イケメン君は外に出てくる事はなかった。
そういえば、食堂の看板娘が言ってたな。見目の良い者が行方不明になると。彼は選ばれ、俺は選ばれなかったという事か…?良かったんだけど…良かったんだけど…ちょっとショック。
しかし…なんなんだ?この団体は。たくさんの賽銭箱、誘拐される美人さん達。目的がわからない。いや、まてよ、人身売買で金儲けしようと思ってるのかも。でも、こんなにわかりやすく行方不明者が出たら怪しまれるよな。普通はもっと隠れてするはず………。
うん。わからん。
希星はモヤモヤした気持ちで建物を後にした。
別にこの建物の調査を諦めたわけではない。
イケメン君がいなくなった事で、ここにテレパシーでメッセージを送ってきた美人占い師がいる可能性が高くなった。
夜、出直す事にしたのだ。
一通り普通に見て回れるところを歩いて回り、進入路を決め、頃合いをみて忍び込むことにした。入れるルートを確立できれば後がやりやすくなる。
白ローブをカバンに入れ、目立たない黒い服を身に纏い、人の気が抜ける時間帯に、昼のうちに目をつけていた人気のない場所から塀を飛び越え内部に侵入した。庭の木陰を選んで渡り、人の目のつかないルートを選びながら入り込む。
ここまでは順調だった。希星も自身の能力に驚き調子に乗り始めた頃だった。間取りを探りながら移動しているうちに、だいぶ奥まで侵入したのだろう、人の話し声が聞こえてきて慌てて身を屈め息を殺す。
抜身の槍のような物を肩に背負いながら巡回する白ローブが小声で雑談しながら通り過ぎて行った。見つからずに済んでホッと胸を撫で下ろす。
……って、まだピンチを脱したワケじゃないか。気を引き締めないと……
松明の炎で照らされる廊下は薄暗くて身を潜めやすい。ヘマをしなければ見つかる可能性は少ないけれど、それも時間の問題だ。
壁に背中を貼り付けながら慎重に、でも素早く廊下を進んでいく。
いったいどこまで続いているんだろう??
そっと目の前の扉を開け、中を覗いてみる。すると、その部屋から出ようとしていたらしき白ローブと目があった。
絶体絶命!
「あはは…お邪魔しました~」
希星は笑って誤魔化してそっと逃げようとしたが、
ガシッ
「なんだ?!お前は!」
襟首を掴まれ、逃げ出せなかった。
希星は つかまってしまった
「お前は処分が決まるまで、ここに入ってろ」
「ぐえっ」
希星は地下の薄暗い座敷牢に入れられてしまった。
「くっそ~。上手くいってたと思ったのに…」
投げ入れられた時に左肩を強く打ってしまった。痛む肩を摩りながら薄暗い地下牢のなかを見渡すと、部屋の奥でソファに座り頬杖をつき薄ら笑いで希星を見つめる美女がいた。
「……もしかして、行方不明になった美人占い師さん?」
希星の言葉に目を細め口角を上げながら希星を見つめる姿は色気に溢れ、思わず希星は赤面してしまった。
(すっげぇ美人!すっげぇ美人!マジ好みのタイプ!)
テンションマックス。囚われの身という事も忘れ希星は浮かれた。物凄く浮かれた。しかし、その気分を一気に下げる声が聞こえてきた。
「なんだ。せっかくテレパシーを送ったのに捕まったのか」
……低い。声が低いぞ。
あれ?おかしいな。
この座敷牢には俺と美女しかいないはず。希星は「信じたくない…認めたくない…」そう思いながら美女を静かに伺った。
「はぁ…。いい加減飽きたんだよな。この部屋」
やはり低い。声が低い。あれ?薄暗くてよくわからなかったが、ガタイがいいぞ…?美人には違いないが…あれ??
足を大きく広げ、どこからか出してきたタバコに火をつけ、
「あぁ…ったく。いつまでこんな生活させる気だよ。ウゼェ連中だな。くそっ」
すぱぁ…とタバコをふかすその姿はまさに男そのもの。全ての物に八つ当たりするような態度には、希星好みの清楚さはカケラもない。態度が悪すぎる。
あれ?おかしいな。
清楚系美女だと思ってたが…。確かに井戸端会議軍団は『女』とは言ってなかった。興奮したように『美人』と言っていた。
そうだ。顔を赤らめながら『美人』と言っていた。
女が身近にいる同性の美人をあんな風に褒めないな。そうか…そうだよな。
「なんだ?どうした?」
黙り込み、今にも泣きそうな希星を見て、不思議な物を見る顔で聞いてきた。
「…………背は高いし…目つき悪いし…ガタイはいいし…もうサイテー…」
思わず心の声が口に出てしまった。俺のヒロインが…美人系清純派ヒロインが…
「なんだ?女と思ってたのか?」
希星を鼻で笑いながらタバコをふかす。堂に入ったその姿は間違いなく男だ。
「俺の理想をぶっ壊すんじゃねーよ!!」
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