マリーゴールド 〜一瞬が永遠の異世界生活。生き延びて見せる、この世界で!〜

流風

文字の大きさ
上 下
22 / 51
第2章 葛藤

それは調教という名の慣れ?

しおりを挟む



 今まで、胃に優しい物が多かった食事。「そろそろ大丈夫だろ?」と、夕食はとても豪華だった。一口サイズに盛り付けられた前菜が5種類。魚のムニエルに茸ソースのステーキ。色鮮やかなサラダや、ほかほかのスープ、綺麗なデザートなど。腕の良い料理人が調理したのだろう、本当に美味しかった。

 それに最初から全てテーブルに並べられていたので、途中で誰かが入ってくることを気にする必要がなく、細かいマナーも気にせずに済んでありがたかった。
 ロワクレスがそのように頼んでくれたからだろうな。私がこの国の常識にもマナーにも疎いからと気遣ってくれたのか、それとも隣に座って「あーん」してる姿を見られたくなかっただけかは、わからないけど。口許に料理を運ばれれば食べるしかないし。美味しいけど。
 照れる私を見て満足そうにするのは止めてほしい。切実に。

 お腹いっぱいになったあとは、少し休憩してからお風呂に入る流れに。
 料理を運んできた時にはお風呂も用意されていたらしく、覗いてみたら湯船にはすでに湯が張られていた。広くて綺麗なのは良いけど、薔薇の花びらまで浮いているのは、何故なのか。……考えてはいけないな。

「私は後でいいから入っておいで」

 湯船を見て感動していたからか、一番風呂を譲ってくれた。
 脱衣所で服を脱ぎ、お風呂場のドアを開けた。久しぶりのお風呂。嬉しすぎる。とりあえず頭と体を洗い、湯船へと向かう。片足を入れ、ちょっと熱い気がしたからゆっくりしゃがむ。肩までつかったら、ふぅと息をはいた。

 精霊に洗浄魔法で綺麗してもらってたけど、やはり湯船につかるのは気持ちいい。久しぶりに入ったからだろうか、血液循環が良くなったのがわかる。体の隅々に酸素と栄養が行き渡って老廃物や疲労物質が除去されてるな~って感じがする。歩き疲れた足も疲労回復中って感じだ。

 しばらく湯船に浸かってのんびりしてから風呂から上がった。脱衣所には私の服がなくなり、白いシンプルなワンピースが置かれていた。これを着ろというのか?スカートなんてこっちの世界に来て初めて着るな。っていうか、私の服は?下着は?!

 脱衣所を出ると食器類は片付けられ、ロワクレスと侍女らしき女性がいた。

「お風呂、ありがとうございました。あの、私の服は…」

「服はここに片付けた。風呂はゆっくりできたか?では、私も入って来よう。サマンサ、後は任せた」

 女性はサマンサさんと言うのか。ロワクレスに恭しくお辞儀をし、私の手を引きソファへと誘導する。私の下着はこのサマンサさんが片付けてくれたんだ……よね?
 40歳くらいだろうか、なんだか逆らってはいけない雰囲気の人だ。

「こちらにおかけください」

 椅子に座らされ、髪を香油で整えてくれる。甘めの花の香り。何の花だろうか、良い匂いだと思いながらも髪を解かれ、マッサージをされると、昨夜と同じように眠気を誘う。
 私がうつらうつらしているのに気づいたのか、ふふっと笑いながら「気持ちいいですか?」と聞かれ、「…はい」と答えるのに必死だった。ソファのクッションへともたれかからせて、次は手足を揉まれさすられる。気持ちいいなぁと思いながらも、そうしているうちに眠くなってきたので、抗わずに目を閉じた。






 頭を撫でられている。それに気付いて目を開けようとしたが、なかなか瞼が持ち上がらない。
 ふわり、ふわり。優しい手付きに微睡んでいると、額に何かが触れてきた。瞼や頬にも軽く何かが触れてくる。

「ん……、お兄ちゃん……」

 もぞもぞ動こうとしたけれど、ほとんど身動き出来無かった。毛布の感触と、すぐそこに温もりがあったので思わず擦り寄る。あたたかい。小さい頃、よく兄と昼寝をしたのを思い出した。隣から聞こえる心音に安心してくっついて寝てたら「暑い!」って怒られたっけ。
 大きくなってからはそんな事してなかったけど、両親が留守がちだったから、小さい私の面倒を見てくれたのは兄だったな。

 次第に、雨の音が耳に入ってきた。雨なんて久しぶりだな。でも雨具は持ってないから今日は動けそうにない。

 そんな事を考えながらも、「ふっ」という声にようやく瞼が開く。するとロワクレスと目が合ったが…いつもの無表情に困惑の色を浮かべている。

「おはようマリー。よく眠れたようだな」

「ん、……おはよう」

 返事をすると、顔にかかった髪を整えてくれる手の感触。ん?ん~…。ここで覚醒し、パッと目を開け少し上にあるロワクレスの顔を見つめた。

「やっと目が覚めたか?」

「は?」

 気づけばとてつもなく大きなベッドの上、ロワクレスを抱き枕に眠っていた。

「は?」

 ガバッと起き上がり周りを見る。自分がいる場所は何人で眠るのを推定して作られたのだろう大きなベッドの上。しかも天蓋付きである。上流階級の人間達は、こういうベッドで眠るのか?

「先に言っておくが、少し離れて眠っていたのに、擦り寄ってきたのはマリーからだからな」

 振り返ると、確かに自分の背後のスペースの広さに言っていることが真実だとわかる。

「ぐっ……ごめんなさい…?」

 いや、これは私が謝るところ?そもそもなぜ、私はこの人とここで寝てる?くっそー、相変わらずインナーからもわかる筋肉がセクシーだな。細身なのに筋肉質って最強だな。直視できない。

 視線を逸らしながらも、思った事を素直に伝える。

「もしかしてロワは、普段からこんなベッドを使ってる?」

「何を想像されたかは察したけど、もっと小さいし、誰かを連れ込んだことも無いぞ。どこの誰を連れ込んだのかいちいち把握されるし、それが貴族令嬢であろうものなら、確実に面倒な事態になる」

「ああ。王子というのは大変なのね」

 ならば、私は大丈夫なのか?いや、アウトだろ。それにしても私はこんな所で何をしているんだ……?



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

強奪系触手おじさん

兎屋亀吉
ファンタジー
【肉棒術】という卑猥なスキルを授かってしまったゆえに皆の笑い者として40年間生きてきたおじさんは、ある日ダンジョンで気持ち悪い触手を拾う。後に【神の触腕】という寄生型の神器だと判明するそれは、その気持ち悪い見た目に反してとんでもない力を秘めていた。

日本帝国陸海軍 混成異世界根拠地隊

北鴨梨
ファンタジー
太平洋戦争も終盤に近付いた1944(昭和19)年末、日本海軍が特攻作戦のため終結させた南方の小規模な空母機動部隊、北方の輸送兼対潜掃討部隊、小笠原増援輸送部隊が突如として消失し、異世界へ転移した。米軍相手には苦戦続きの彼らが、航空戦力と火力、機動力を生かして他を圧倒し、図らずも異世界最強の軍隊となってしまい、その情勢に大きく関わって引っ掻き回すことになる。

天日ノ艦隊 〜こちら大和型戦艦、異世界にて出陣ス!〜 

八風ゆず
ファンタジー
時は1950年。 第一次世界大戦にあった「もう一つの可能性」が実現した世界線。1950年4月7日、合同演習をする為航行中、大和型戦艦三隻が同時に左舷に転覆した。 大和型三隻は沈没した……、と思われた。 だが、目覚めた先には我々が居た世界とは違った。 大海原が広がり、見たことのない数多の国が支配者する世界だった。 祖国へ帰るため、大海原が広がる異世界を旅する大和型三隻と別世界の艦船達との異世界戦記。 ※異世界転移が何番煎じか分からないですが、書きたいのでかいています! 面白いと思ったらブックマーク、感想、評価お願いします!!※ ※戦艦など知らない人も楽しめるため、解説などを出し努力しております。是非是非「知識がなく、楽しんで読めるかな……」っと思ってる方も読んでみてください!※

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

修復スキルで無限魔法!?

lion
ファンタジー
死んで転生、よくある話。でももらったスキルがいまいち微妙……。それなら工夫してなんとかするしかないじゃない!

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

Another World〜自衛隊 まだ見ぬ世界へ〜

華厳 秋
ファンタジー
───2025年1月1日  この日、日本国は大きな歴史の転換点を迎えた。  札幌、渋谷、博多の3箇所に突如として『異界への門』──アナザーゲート──が出現した。  渋谷に現れた『門』から、異界の軍勢が押し寄せ、無抵抗の民間人を虐殺。緊急出動した自衛隊が到着した頃には、敵軍の姿はもうなく、スクランブル交差点は無惨に殺された民間人の亡骸と血で赤く染まっていた。  この緊急事態に、日本政府は『門』内部を調査するべく自衛隊を『異界』──アナザーワールド──へと派遣する事となった。  一方地球では、日本の急激な軍備拡大や『異界』内部の資源を巡って、極東での緊張感は日に日に増して行く。  そして、自衛隊は国や国民の安全のため『門』内外問わず奮闘するのであった。 この作品は、小説家になろう様カクヨム様にも投稿しています。 この作品はフィクションです。 実在する国、団体、人物とは関係ありません。ご注意ください。

処理中です...