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パーティ会場にて。王子様の思い。
しおりを挟む王城のガーデンパーティ会場。
現在、第三王子はパーティ会場である庭園を一望できる休憩所に居ます。その休憩所は、庭園でのパーティの際、王族、もしくは王族が良しとした者しか入れない場所となっており、階段を上がった高い場所に作られています。だからこそ、そこから客達の動きが丸分かりです。
「彼女が来てくれると良いのだが……」
第三王子は初恋を拗らせていました。10歳の頃に商人と一緒にいた可愛い女の子。礼儀作法をしっかりと躾けられていたであろうその動作は整った容姿と相まって美しかった。しかし、少女に注目していて商人の名前を忘れてしまったのです。
その日は王城勤務の者達への解放日として、商人を沢山招いており、王城敷地内で買い物ができるようになっていました。
その後、家族に聞くも少女を連れた商人に覚えがないと言われ、第三王子の初恋の君は不明となってしまったのです。
王子はその初恋相手を探すため、このパーティを開いたのですが……。
家族には反対されました。王族は伯爵以上の身分の者との婚姻しか認められていないのです。それを無視して恋に暴走する第三王子を家族は諫めていたのですが、本人がまったく納得しなかったのです。諦めの境地から、国王である父親は『一般市民にも門戸の広い王族』とアピールする機会にしようと頭を切り替え、このパーティを許可したのです。
ーーー当然、貴族でない者と結婚するならば臣籍を外れてもらうと約束を交わして。
現在、第三王子ジョシュアはパーティを開く庭園を一望できる休憩所に居ます。家族である他の王族は、今回のパーティには参加せず、もう一つある隣の休憩所で様子を伺っています。
休憩所は、高い場所に作られており、そこから客達の動きが丸分かりなのですが。
(やはり、いないか)
上から庭園を一望しているのだから、招待客の大半が集まってきている事も把握済み。その中に、あの時の金に近いミルクティー色の髪を持つ美しい少女は見つけられませんでした。
「ジョシュア様、そろそろお時間です」
「わかった」
従者がパーティの開始時刻を伝えてきます。やはり、ダメだったか。諦めの溜息を吐きながら休憩所を後にしようとした時、最後の参加者であろう少女が一人の老婆とともに入室しました。
階上からもわかる美しいミルクティー色の髪を片側サイドでアップにしており、明るい赤色のドレスは生地が何重にも重ねられ華やかな印象です。腰には花とリボンが飾られ、若さ溢れるその姿は、会場に咲く一輪の薔薇と言えます。
(やっと見つけた!)
思わず手に力が入る。第三王子ジョシュアは歓喜の雄叫びをあげそうになる自らの口を無意識のうちに震える手で覆っていました。
今回のパーティは大人数であること、また、未成年者が参加が多いため、昼の庭園でのパーティとなりました。人数の関係上、保護者は参加できません。入り口に来るのも通常できないのですが……。見ていると老婆と少女は入り口付近で別々にわかれ、目的の少女は会場の奥へと足を向けるのが確認できました。
「ジョシュア殿下、お時間です」
再び従者が声をかけてきます。
「……わかった」
やっと見つけた!期待に胸を膨らませ、ジョシュアはパーティ会場である庭園へと向かいました。
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