小さくて大きい君へ

華山 千華

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小さくて大きい

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 僕達はいつも守られてる。
 僕達はいつも助けられてる。
 僕もあの子もみ~んなが君を大好き。
 だから、いつもお別れは悲しいんだ。
 君は沢山落として、プレゼントして僕達を幸せにするんだ。


 「僕、君が好き!だーいすきなんだ!」
 「私も、私もだいすき!」
 『また、僕と一緒に遠くに行ってくれる?約束だよ』
 
このお話はある家族の物語

 世界には大きいものが沢山ある。誰かにとって小さなものは、他の誰かにとっては大きいものになってしまう。不思議、越えられないはずの大きなものなのにいつの間にか超えてしまうことだってあるんだから。
 君たちも思うだろ?庭にあった小さな木の芽が時間をかけてゆっくりと大きくなると君の方が大きかったのにいつの間にか木が君よりも大きくなってるんだ。不思議だろ?僕は不思議。
 
 少し僕の昔話を聞いてくれないかな?
 僕には今でも仲良しな大きな友達がいるんだ。大好きな友達、僕は彼と遠くに旅に出るのが夢だったんだ。僕よりも何百倍も大きい彼は僕よりも何年も前に生まれていた。
 初めて出会った時は僕がまだ母さんにミルクを飲ませてもらってた頃だった。
 母さんに抱かれて見たそれはやけに黒くてテカテカしてたんだ。僕はその大きさと黒さに驚いて泣いたんだってさ。まぁ、少なくとも大きさには驚いただろうな。クリックりの目から大量の涙を流してそれを見てたんだ。まさか、自分が好きになってしまったとは思いもしなかったさ。
  それから毎日、母さんがそれに会いに行くからって僕を連れて回ってたらしいんだ。その度に大泣きしてはゆっくりゆっくり動き出した大きなそれに釘付けになってたそうだ。その写真も残ってるんだ。もしかしたら、その頃から好きになってたのかもな。
 毎年、記念日に大きな黒いれの隣で母さん、父さん、兄ちゃん、じいちゃん、それの友達とたくさんの人で写真を撮った。
 それから、僕が物心ついた頃。そうだな5歳くらいだったかな僕は家の中を荒らすのが趣味だった。母さんに叱られてはじいちゃんの部屋に隠れて母さんがどっか行くまで息を潜めて隠れてた。「し~っ」って1人でいいながら。
「母さんいなくなったかな……」
 そ~っと机の下から出て様子を伺おうとした。その時だったんだ、何かおかしいって思ったのは。いつもじいちゃんの部屋に逃げ込んでも絶対に散らかってないじいちゃんの押し入れが開け放たれて大きな本が散らばってたんだ。
「なんだ?」
 僕は無意識に大きな本に手が伸びて拾い上げてみた。どうやらそれはアルバムだったみたいで写真が詰まっていた。
「すげー!いっぱいだー。じいちゃんいるかな」
 じいちゃんが好きな僕はたくさんの写真の中、たくさんの人の中からじいちゃんを探していた。
「あれ~、じいちゃんいないな」
 どれだけ探してもじいちゃんが見つからなくて何枚も何枚も写真を変えて探していた。
 その時、バン!
 あっ。
「幾志!あんた何してるの!おじいちゃんの部屋で」
「母さん……」
「あんた、今度は3部屋では飽き足らずおじいちゃんの部屋まで荒らしたの!?」
「ち、違うよ!元からこうなってたんだ。僕じゃない」
「そんな言い訳通用しないよ!覚悟しなさい」
 今にも手に持ったほうきで僕をしとめんとばかりに詰め寄ってきた母さんにアルバムを突きつけた。
「じいちゃんが居ないんだ!」
 母さんは一瞬止まってすぐにまた動き出す。
「当たり前でしょう。おじいちゃんは機関士なんだから、誤魔化さないで堪忍しなさい!」
「でも、でも写ってないんだよ」
「もう、写真にSLが写ってるでしょ?ほら、ここの窓見てご覧なさい」
 母さんの言う通り大きい黒いそれの窓を見た。
「あ、」
 本当だ。帽子を被って右手で敬礼をしているじいちゃんだった。
「かっこいい……」
「えっ?」
「母ちゃん!じいちゃんかっこいい!」
「当たり前でしょう。おじいちゃんだもの。こんな素敵な人はなかなかいないよ。」
「僕じいちゃんになる!」 
「じいちゃんには年取ればなれるよ。でもね、じいちゃんみたいな機関士にはじいちゃんに教わらなきゃなれないかもしれないね。」
「母さん僕、機関士になる!」
「そう。頑張りなさいね」
「うん!」
 こうして僕の夢は出来上がった。
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