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【世界政府の日本支部】
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・【世界政府の日本支部】
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俺は全放映状態を手に入れたという情報が入った。
その通知が俺に届いたのは”あの人は、今”の日から一週間後。
その間、変わった人にも怪奇にも巻き込まれることは無かった。
通知を受け取った俺は改めて全放映状態の承諾をし、また新たな人生が始まった。
そこからはまた変わった人に話し掛けられることもあるんだけども、危険な目というモノには遭わないし、怪奇もゼロだ。
まあ全放映状態になるとまた怪奇が少なくなるという話なんだけども。
何故なら怪奇が放映されるとネタバレするから。
放映状態になっていない、イジメても良さそうなヤツに行くという話だ。怪奇は。だから怪奇キモっ。
でもキモイでお馴染みの俺はどうなったかというと、今はよく俺と菜乃とシューカ、そしてロッコと一緒に放課後は遊んでいる。
変わった人があんまり関わってこないのは、噂によると、というかロッコの話によると、
「今は恋愛模様を見守るターンらしい、それはそれでキモイけどね」
まあ確かにそうだけども、そのおかげで平和な毎日を送れるって何か変だな。恋愛模様を見守るって、危険でいっぱいのはずなのに。
そんなある日、世界政府の日本支部に招かれることになった。
差出人は、あのクイーン・ザ・オババ。
俺が妙に気になっているヤツだ。
そして向こうも俺を気にしているらしい。
菜乃からもシューカからもロッコからも、
「罠なの!」
「罠や!」
「罠だし!」
とハッキリ言われたが、これを断ると全放映状態も無くなりそうだから、俺は行くことにした。
普通に電車で。
乗り継ぎに次ぐ乗り継ぎだった。
着いた外観は普通のビル。
中に入っても普通の商業ビルで、普通にエレベーターは上に進んだ。
地下だと思っていた。総じてクソの住処だと思っていた。
エレベーターのドアが開くとそこは、小物から何か何まで真っ赤な部屋だったので、クソの住処だな、って思った。
否
「真っ赤って何かクソの住処みたいだな!」
ちゃんと声に出すと、
「それは言うな」
と言われた。
クイーン・ザ・オババだ。
というかそうだ、ババアってみんな同じ声だから分かりづらかったけども、そうだそうだ、クイーン・ザ・オババって、俺の祖母と同じ声だわ。
まあ和装という俺の祖母のイメージとはかけ離れた、悪のアホ組織ばりに肌を露出したビキニ悪魔だけども。
というかババアのビキニって最悪だな。若いコスプレイヤーが着る服だろ、それ。
「何だよ、祖母だったのかよ。というかあれか? 誠実に対応しなさいって、種撒いていたのか?」
「察しの早い孫を持って嬉しいねぇ、物心ついた孫のオマエを見た時にすぐ思ったよ、コイツは大物になるってね!」
「いや最初早い段階で打ち切られているだろ、俺」
「私が打ち切ったからねぇ、本当は人気がそれなりにはあったんだけども」
なるほど、何だか分からないが、ちょっと自尊心が回復している自分が嫌になる。
まあいいや
「で、何の用だよ」
「まあこの模様までも全放映しているんだが、一つやってほしいことがあってね」
「何だよ、簡単なヤツで頼むよ」
「週に三回くらい、外に出ている時の朝に怪奇のヤツを送り込んでいいかい? オマエの怪奇のリアクションはそこそこ好評なんだよ。今日だという日には朝の目覚まし時計の音を変えて知らせるから」
何だよ、マジで何なんだよ。
というか
「予告のホラーってもはやギャグじゃん、いつもホラーなのかギャグなのかハッキリしてほしいと思ったけども、予告しちゃったらもうギャグじゃん」
「まあ喜劇と悲劇は紙一重と言うし、ホラーだろうがギャグだろうがオマエは数字を持っているんだよねぇ」
「別にいいよ、それくらい。その代わり、楽しむのは俺のほうだからな」
「頼もしいねぇ」
俺の日々は異形だ。
未だに高校では浮いているところもある。
きっと俺は好奇な目で見られ続けるだろう。
でもそれはもう、別にいいんだ。
それなりに幸せだし。
何よりも。
「じゃあそれらも全て合わせたオマエの月収を計算しておいたぞぃ」
「今さら”ぞぃ”口調って何なんだよ」
と言いつつ、クイーン・ザ・オババから受け取った紙を見ると、
「……まあ、いいだろう……」
うん、結局はお金が解決してくれることってあるよね。
いやいやいや!
「おい! クイーン・ザ・オババ! 俺はこうなったことによって出会えた人間との日々を楽しんでいるだけだからな!」
「いや別にこっちは何も言っていないねぇ」
「確かにそうだけども! でも言うな! 何も言うな!」
「だから言っていないねぇ」
俺はまた電車を乗り継ぎに次ぐ乗り継ぎで帰って行った。
いやタクシーでも帰れたな、別に。
というか自家用ジェットもありかもな。
……あんまり調子に乗ると怪奇がいっぱい来そうだから止めよう。
とりま、今はこのお金をみんなで楽しく遊ぶお金に使うことにしよう、俺なりの恩返しってヤツかな。
大金が恩返しってちょっとダサいけども。
(了)
・【世界政府の日本支部】
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俺は全放映状態を手に入れたという情報が入った。
その通知が俺に届いたのは”あの人は、今”の日から一週間後。
その間、変わった人にも怪奇にも巻き込まれることは無かった。
通知を受け取った俺は改めて全放映状態の承諾をし、また新たな人生が始まった。
そこからはまた変わった人に話し掛けられることもあるんだけども、危険な目というモノには遭わないし、怪奇もゼロだ。
まあ全放映状態になるとまた怪奇が少なくなるという話なんだけども。
何故なら怪奇が放映されるとネタバレするから。
放映状態になっていない、イジメても良さそうなヤツに行くという話だ。怪奇は。だから怪奇キモっ。
でもキモイでお馴染みの俺はどうなったかというと、今はよく俺と菜乃とシューカ、そしてロッコと一緒に放課後は遊んでいる。
変わった人があんまり関わってこないのは、噂によると、というかロッコの話によると、
「今は恋愛模様を見守るターンらしい、それはそれでキモイけどね」
まあ確かにそうだけども、そのおかげで平和な毎日を送れるって何か変だな。恋愛模様を見守るって、危険でいっぱいのはずなのに。
そんなある日、世界政府の日本支部に招かれることになった。
差出人は、あのクイーン・ザ・オババ。
俺が妙に気になっているヤツだ。
そして向こうも俺を気にしているらしい。
菜乃からもシューカからもロッコからも、
「罠なの!」
「罠や!」
「罠だし!」
とハッキリ言われたが、これを断ると全放映状態も無くなりそうだから、俺は行くことにした。
普通に電車で。
乗り継ぎに次ぐ乗り継ぎだった。
着いた外観は普通のビル。
中に入っても普通の商業ビルで、普通にエレベーターは上に進んだ。
地下だと思っていた。総じてクソの住処だと思っていた。
エレベーターのドアが開くとそこは、小物から何か何まで真っ赤な部屋だったので、クソの住処だな、って思った。
否
「真っ赤って何かクソの住処みたいだな!」
ちゃんと声に出すと、
「それは言うな」
と言われた。
クイーン・ザ・オババだ。
というかそうだ、ババアってみんな同じ声だから分かりづらかったけども、そうだそうだ、クイーン・ザ・オババって、俺の祖母と同じ声だわ。
まあ和装という俺の祖母のイメージとはかけ離れた、悪のアホ組織ばりに肌を露出したビキニ悪魔だけども。
というかババアのビキニって最悪だな。若いコスプレイヤーが着る服だろ、それ。
「何だよ、祖母だったのかよ。というかあれか? 誠実に対応しなさいって、種撒いていたのか?」
「察しの早い孫を持って嬉しいねぇ、物心ついた孫のオマエを見た時にすぐ思ったよ、コイツは大物になるってね!」
「いや最初早い段階で打ち切られているだろ、俺」
「私が打ち切ったからねぇ、本当は人気がそれなりにはあったんだけども」
なるほど、何だか分からないが、ちょっと自尊心が回復している自分が嫌になる。
まあいいや
「で、何の用だよ」
「まあこの模様までも全放映しているんだが、一つやってほしいことがあってね」
「何だよ、簡単なヤツで頼むよ」
「週に三回くらい、外に出ている時の朝に怪奇のヤツを送り込んでいいかい? オマエの怪奇のリアクションはそこそこ好評なんだよ。今日だという日には朝の目覚まし時計の音を変えて知らせるから」
何だよ、マジで何なんだよ。
というか
「予告のホラーってもはやギャグじゃん、いつもホラーなのかギャグなのかハッキリしてほしいと思ったけども、予告しちゃったらもうギャグじゃん」
「まあ喜劇と悲劇は紙一重と言うし、ホラーだろうがギャグだろうがオマエは数字を持っているんだよねぇ」
「別にいいよ、それくらい。その代わり、楽しむのは俺のほうだからな」
「頼もしいねぇ」
俺の日々は異形だ。
未だに高校では浮いているところもある。
きっと俺は好奇な目で見られ続けるだろう。
でもそれはもう、別にいいんだ。
それなりに幸せだし。
何よりも。
「じゃあそれらも全て合わせたオマエの月収を計算しておいたぞぃ」
「今さら”ぞぃ”口調って何なんだよ」
と言いつつ、クイーン・ザ・オババから受け取った紙を見ると、
「……まあ、いいだろう……」
うん、結局はお金が解決してくれることってあるよね。
いやいやいや!
「おい! クイーン・ザ・オババ! 俺はこうなったことによって出会えた人間との日々を楽しんでいるだけだからな!」
「いや別にこっちは何も言っていないねぇ」
「確かにそうだけども! でも言うな! 何も言うな!」
「だから言っていないねぇ」
俺はまた電車を乗り継ぎに次ぐ乗り継ぎで帰って行った。
いやタクシーでも帰れたな、別に。
というか自家用ジェットもありかもな。
……あんまり調子に乗ると怪奇がいっぱい来そうだから止めよう。
とりま、今はこのお金をみんなで楽しく遊ぶお金に使うことにしよう、俺なりの恩返しってヤツかな。
大金が恩返しってちょっとダサいけども。
(了)
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