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【家】
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・【家】
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自宅の玄関のドアを鍵を開けて入った。
しかしそこで違和感が。
赤い靴が十足あったのだ。
明らかに誰か入っている。
でも
「律儀に靴は脱いでんな!」
と叫ぶと、部屋の奥から、
《そんなに全放映状態を手にしたいんだぁ、頑張ってるねぇ》
という声が聞こえてきた。
この声は完全に聞き覚えがある。
だけども、だけども、何でエコーが掛かってるんだ!
「遼子!」
俺は部屋のドアを開けながらそう叫ぶと、案の定そこには遼子が立っていた。
ただし足は十本ある。
異形の遼子だった。
《早く悟志に会いたくてぇ、足をいっぱい生やしちゃったよぉ》
「どうしたんだよ遼子! 怪奇な感じになっちゃってるけど、どうしたんだって!」
《悟志のこと考えていたらぁ、どんどんこんな感じになっちゃってぇ》
「何で俺のことを考えることがあるんだよ、俺のことなんてキモイ元幼馴染だろ? 考える必要性がまず無いだろ」
俺が焦りながらもそう言うと、遼子は口からポタポタとヨダレを垂らしながら、こう言った。
《何も分かってないぃ、何も分かってなぁぁぁああああい!》
遼子がそう叫ぶと、遼子の周りで風が起きて、まだ開けていないカーテンやベッドの掛布団などが、まるでポルターガイストのように浮き始めた。
さらに貼っていたポスターはめくれず、顔から血の涙を流し始めた。
《人間の顔が貼られたモノは全て血の涙を流すのぉ、もう悟志は見ることができないのぉ》
俺の部屋にあった不二子のポスターは血の涙を伝わせる。
いやまあもう不二子のポスターは見たくないからちょうどいいけども。
と思っていると、俺のお尻がじんわり生温かくなったように感じた。
何だろうと思って触ってみると、なんと俺のスマホから血が流れていたのだ。
「何でスマホからも!」
《スマホにも人間の顔があったんだぁ、えっちだねぇ、悟志はぁ、何ぃ? 菜乃という女の写真もあったのぉ?》
「いやあったけども! 普通の家族の写真もあったんだよ! あぁ! もう! スマホが水没状態だよ!」
よく見るとテレビからも血が溢れだしている。
もう家にある全ての人間の顔が映るモノから血が出ているのかよ……。
《ねぇ、悲しいぃ? 自分がオナニーするためのモノが無くなって悲しいぃ?》
「んな別にオナニーに命を懸けているわけじゃないから、そんなもんはどうでもいいよ! それよりもさ!」
《それよりもぉ?》
「一緒に遼子の家族と撮った家族旅行のアルバムとかからも血が出てるってことじゃん! もう! 何にも無いじゃん!」
俺は声を震わせながら叫んだ。
思い出が消えていく。
何もかも消えていく。
これで完全に遼子との思い出は記憶の中だけになってしまった。
膝から崩れ落ちた俺。
床には血が水たまりになっていたが、そんなことよりも、そんなことよりも、俺は。
もう終わりだ、何もかも終わりだ、と思っていると、遼子が急に優しい声でこう言った。
《家族旅行とか、覚えているの?》
俺は下を向きながら、答えた。
「覚えているよ、楽しかった、俺の大切な思い出さ、昔みたいに遼子と楽しく話したいけども、それももう無理なんだな、全部思い出の中なんだな」
《じゃあ何で年表の時、それを言わなかったの?》
「多分、放映されているから、変に遼子のこと喋ったら、また怒られると思って、もう遼子の重荷にはなりたくないから」
《言ってよ!》
急な言葉に俺はビックリしながら、遼子のほうを見ると、遼子は涙ぐんでいた。
《言ってよ! 私との思い出があるなら言ってよ! 過去を懐かしんでよ! 私との日々を思い出してよ!》
「いやでも、キモイ男の口から自分の名前、出されたくないだろ」
《分かんない》
「何がだよ、俺のほうこそ分かんないよ、どうすれば良かったんだよ」
俺がそう言うと遼子は”ダン!”というか、血があるから”ベチャッ!”と地団駄を踏んでからこう言った。
《友達だと思っていたのに! ずっとずっと友達だと思っていたのに! 私にそんな感情抱いていたなんて分かんなかった! でもすぐに別の女に惹かれるなんて全然分かんないよ! ねぇ! 私ってどうすれば良かったの? ねぇ! ねぇ!》
あっ……何か、俺、どこかで手順を間違えたのか……どうしよう、どうすればいいんだ……。
《少しだけ気持ち悪いと思う私に「すごく気持ち悪いね」と言ってくる友達がいて、もう友達の悟志は失ったようなもんだから他の友達を失わないようにするためには嫌うしかないじゃん! でも! でもさぁっ! 私には! 私にはずっと友達だった悟志が心の中にいるんだよぉぉおおおおおお!》
「遼子」
《うるさぁぁぁあああああああああい! 名前なんて呼ばないでよ! 気持ち悪い!》
「ロッコ」
俺の口からは懐かしい言葉が零れた。
ロッコ。
遼子と発音できなかった子供の頃の俺が言っていた、遼子のあだ名だ。
《ロッコ……名前……なんて……うわぁぁああああああああああああんっ!》
わんわんと泣き始めた遼子。
あぁ、そうかそうか、じゃあこういう時はそうだな、思ったことを口にするに限るな。
「ロッコ、写真が血みどろになっちゃったから過去は取り戻せないけども、これからまた一緒に新しい写真を作っていこうよ。日帰りでいいからさ、たまにいろんな友達誘って一緒に旅行へ行こうよ、一緒に遊ぼうよ、勿論、ロッコが良かったら、だけども」
《良くない》
「やっぱりそうか」
《良くない!》
そうだなぁ、俺だもんなぁ。
《二人きりじゃないと良くない!》
「……えっ?」
《悟志は私のモノなの! 私と悟志で家族なの!》
「いやでも今、菜乃という彼女がいるから」
ロッコ、というか遼子は急に泣き止んで、俺のほうをキッと睨んでこう言った。
《今すぐ別れて! 今すぐ別れたらいろいろ考えてやる!》
「それはちょっと本人もいないから」
と俺が言ったところで、玄関のドアが開く音がして、何だか廊下がビチャビチャうるさい。
そして部屋のドアが開くと、そこにはなんと菜乃! ……とシューカ! と……えっ? オヤッサンがいたぁっ!
「なのっ! 悟志くんに何かあった時の用心に菜乃たちは集まって近くで待機してたの! 待機が完成していたのっ!」
「いやそこで待機の完成放り込むなや! まあシューカちゃんが来たからには、バンバンツッコんだるでぇ!」
「てやんでぇ! べらんめぇ! でらべっぴん! 回収騒動!」
「いや回収騒動は全然無いわ! 昔のエロ本やから全然モザイクも濃いから大丈夫や!」
何だこのコミカルは……ここにきて、こんなコミカルが起こることってありますか?
いやいや、声に出さないと。
「急にコミカルだな! というか今の流れ的にシューカとオヤッサンはいらない! 待機してろよ!」
「それは無理やねん! 出たがりやねん!」
「でももう黙る! 黙り寿司!」
……まあなんとか黙ってくれそうだ、助かった、でも本当に助かった、何だか心強い。
意味こそ分からないけども何だか心強いんだ。
と、どこか胸をなで下ろしたような表情をしたのだろう、遼子がまた少しイラっとしながらこう言った。
《何で! 何で悟志にはそんなにいっぱい友達ができるの! 私だけ一人の気持ちになって! 孤軍奮闘は悟志のはずでしょ!》
「そうだな、その通りだと思う。俺は単純に恵まれているだけだ」
《恵まれていない! 悟志は両親に売られて何も恵まれていない!》
「やっぱり売られたんだな、でもまあ、今こうやって生きているし、俺は俺なりに大丈夫だから」
そう俺が言うと、遼子は首を横に激しく振ってからこう言った。
《それよりも! それよりも! 悟志! 今すぐ菜乃と別れなさい!》
と言った刹那、菜乃がこう言った。
「別れるの、じゃあ別れるのっ!」
「えっ?」
俺は渾身の生返事を繰り出した。
いやでも、いやでも、えっ?
「菜乃は正直火事場泥棒みたいなもんなの、弱まった男子に近付いた汚いハイエナなの、だから、次は、ちゃんとした状態で悟志に選んでもらうのっ!」
そう言って俺のほうを見て微笑んだ菜乃。
いや俺は、と言おうとしたその時、シューカが喋りだした。
「じゃあシューカちゃんもサトシンのこと狙えるわけやなぁ、ナノン?」
「そうなの、みんなで悟志くんのことを狙う関係になるの! そしてちゃんとみんなに認められて結婚式を開くの!」
「オヤッサンが、最高のウェディング寿司を作るでぇい……」
頭が真っ白になった。
でも真っ黒じゃない。
真っ白だ。
どこか希望に満ちた色だ。
あんなに真っ黒になりそうになっていた俺は菜乃に救われて、またしても菜乃に救われてしまうのか、今度は真っ白に。
「本当に? みんなで悟志のこと狙えるの? また一からやり直せるの?」
ちょっと”の口調”気味だけども、声が違う。
本当に声が違うんだ。
エコーが無いんだ。
この中で俺のこと”悟志”と呼ぶのは遼子だけだから。
「悟志、また一から友達になってくれる?」
「なるよ、当たり前じゃん、遼子、いやロッコ」
「一からスタートして、もし私と付き合いたくなったら告白してくれる?」
「……まあ、そうなったらそうなるのかな?」
気付いた時には血だまりは無くなっていて、遼子、いやロッコの足も二本に戻っていて。
これは俺の物語だから、最後は俺が決めないとダメだな、よしっ。
「みんなで遊ぼうぜ、なんせ楽しくなければ人生じゃないからなっ」
「愛情酢飯!」
「いやオヤッサンは出しゃばるなよ!」
血はすっかり全て消え去って、その場にいた全員から爽やかな笑顔がもれていた。
・【家】
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自宅の玄関のドアを鍵を開けて入った。
しかしそこで違和感が。
赤い靴が十足あったのだ。
明らかに誰か入っている。
でも
「律儀に靴は脱いでんな!」
と叫ぶと、部屋の奥から、
《そんなに全放映状態を手にしたいんだぁ、頑張ってるねぇ》
という声が聞こえてきた。
この声は完全に聞き覚えがある。
だけども、だけども、何でエコーが掛かってるんだ!
「遼子!」
俺は部屋のドアを開けながらそう叫ぶと、案の定そこには遼子が立っていた。
ただし足は十本ある。
異形の遼子だった。
《早く悟志に会いたくてぇ、足をいっぱい生やしちゃったよぉ》
「どうしたんだよ遼子! 怪奇な感じになっちゃってるけど、どうしたんだって!」
《悟志のこと考えていたらぁ、どんどんこんな感じになっちゃってぇ》
「何で俺のことを考えることがあるんだよ、俺のことなんてキモイ元幼馴染だろ? 考える必要性がまず無いだろ」
俺が焦りながらもそう言うと、遼子は口からポタポタとヨダレを垂らしながら、こう言った。
《何も分かってないぃ、何も分かってなぁぁぁああああい!》
遼子がそう叫ぶと、遼子の周りで風が起きて、まだ開けていないカーテンやベッドの掛布団などが、まるでポルターガイストのように浮き始めた。
さらに貼っていたポスターはめくれず、顔から血の涙を流し始めた。
《人間の顔が貼られたモノは全て血の涙を流すのぉ、もう悟志は見ることができないのぉ》
俺の部屋にあった不二子のポスターは血の涙を伝わせる。
いやまあもう不二子のポスターは見たくないからちょうどいいけども。
と思っていると、俺のお尻がじんわり生温かくなったように感じた。
何だろうと思って触ってみると、なんと俺のスマホから血が流れていたのだ。
「何でスマホからも!」
《スマホにも人間の顔があったんだぁ、えっちだねぇ、悟志はぁ、何ぃ? 菜乃という女の写真もあったのぉ?》
「いやあったけども! 普通の家族の写真もあったんだよ! あぁ! もう! スマホが水没状態だよ!」
よく見るとテレビからも血が溢れだしている。
もう家にある全ての人間の顔が映るモノから血が出ているのかよ……。
《ねぇ、悲しいぃ? 自分がオナニーするためのモノが無くなって悲しいぃ?》
「んな別にオナニーに命を懸けているわけじゃないから、そんなもんはどうでもいいよ! それよりもさ!」
《それよりもぉ?》
「一緒に遼子の家族と撮った家族旅行のアルバムとかからも血が出てるってことじゃん! もう! 何にも無いじゃん!」
俺は声を震わせながら叫んだ。
思い出が消えていく。
何もかも消えていく。
これで完全に遼子との思い出は記憶の中だけになってしまった。
膝から崩れ落ちた俺。
床には血が水たまりになっていたが、そんなことよりも、そんなことよりも、俺は。
もう終わりだ、何もかも終わりだ、と思っていると、遼子が急に優しい声でこう言った。
《家族旅行とか、覚えているの?》
俺は下を向きながら、答えた。
「覚えているよ、楽しかった、俺の大切な思い出さ、昔みたいに遼子と楽しく話したいけども、それももう無理なんだな、全部思い出の中なんだな」
《じゃあ何で年表の時、それを言わなかったの?》
「多分、放映されているから、変に遼子のこと喋ったら、また怒られると思って、もう遼子の重荷にはなりたくないから」
《言ってよ!》
急な言葉に俺はビックリしながら、遼子のほうを見ると、遼子は涙ぐんでいた。
《言ってよ! 私との思い出があるなら言ってよ! 過去を懐かしんでよ! 私との日々を思い出してよ!》
「いやでも、キモイ男の口から自分の名前、出されたくないだろ」
《分かんない》
「何がだよ、俺のほうこそ分かんないよ、どうすれば良かったんだよ」
俺がそう言うと遼子は”ダン!”というか、血があるから”ベチャッ!”と地団駄を踏んでからこう言った。
《友達だと思っていたのに! ずっとずっと友達だと思っていたのに! 私にそんな感情抱いていたなんて分かんなかった! でもすぐに別の女に惹かれるなんて全然分かんないよ! ねぇ! 私ってどうすれば良かったの? ねぇ! ねぇ!》
あっ……何か、俺、どこかで手順を間違えたのか……どうしよう、どうすればいいんだ……。
《少しだけ気持ち悪いと思う私に「すごく気持ち悪いね」と言ってくる友達がいて、もう友達の悟志は失ったようなもんだから他の友達を失わないようにするためには嫌うしかないじゃん! でも! でもさぁっ! 私には! 私にはずっと友達だった悟志が心の中にいるんだよぉぉおおおおおお!》
「遼子」
《うるさぁぁぁあああああああああい! 名前なんて呼ばないでよ! 気持ち悪い!》
「ロッコ」
俺の口からは懐かしい言葉が零れた。
ロッコ。
遼子と発音できなかった子供の頃の俺が言っていた、遼子のあだ名だ。
《ロッコ……名前……なんて……うわぁぁああああああああああああんっ!》
わんわんと泣き始めた遼子。
あぁ、そうかそうか、じゃあこういう時はそうだな、思ったことを口にするに限るな。
「ロッコ、写真が血みどろになっちゃったから過去は取り戻せないけども、これからまた一緒に新しい写真を作っていこうよ。日帰りでいいからさ、たまにいろんな友達誘って一緒に旅行へ行こうよ、一緒に遊ぼうよ、勿論、ロッコが良かったら、だけども」
《良くない》
「やっぱりそうか」
《良くない!》
そうだなぁ、俺だもんなぁ。
《二人きりじゃないと良くない!》
「……えっ?」
《悟志は私のモノなの! 私と悟志で家族なの!》
「いやでも今、菜乃という彼女がいるから」
ロッコ、というか遼子は急に泣き止んで、俺のほうをキッと睨んでこう言った。
《今すぐ別れて! 今すぐ別れたらいろいろ考えてやる!》
「それはちょっと本人もいないから」
と俺が言ったところで、玄関のドアが開く音がして、何だか廊下がビチャビチャうるさい。
そして部屋のドアが開くと、そこにはなんと菜乃! ……とシューカ! と……えっ? オヤッサンがいたぁっ!
「なのっ! 悟志くんに何かあった時の用心に菜乃たちは集まって近くで待機してたの! 待機が完成していたのっ!」
「いやそこで待機の完成放り込むなや! まあシューカちゃんが来たからには、バンバンツッコんだるでぇ!」
「てやんでぇ! べらんめぇ! でらべっぴん! 回収騒動!」
「いや回収騒動は全然無いわ! 昔のエロ本やから全然モザイクも濃いから大丈夫や!」
何だこのコミカルは……ここにきて、こんなコミカルが起こることってありますか?
いやいや、声に出さないと。
「急にコミカルだな! というか今の流れ的にシューカとオヤッサンはいらない! 待機してろよ!」
「それは無理やねん! 出たがりやねん!」
「でももう黙る! 黙り寿司!」
……まあなんとか黙ってくれそうだ、助かった、でも本当に助かった、何だか心強い。
意味こそ分からないけども何だか心強いんだ。
と、どこか胸をなで下ろしたような表情をしたのだろう、遼子がまた少しイラっとしながらこう言った。
《何で! 何で悟志にはそんなにいっぱい友達ができるの! 私だけ一人の気持ちになって! 孤軍奮闘は悟志のはずでしょ!》
「そうだな、その通りだと思う。俺は単純に恵まれているだけだ」
《恵まれていない! 悟志は両親に売られて何も恵まれていない!》
「やっぱり売られたんだな、でもまあ、今こうやって生きているし、俺は俺なりに大丈夫だから」
そう俺が言うと、遼子は首を横に激しく振ってからこう言った。
《それよりも! それよりも! 悟志! 今すぐ菜乃と別れなさい!》
と言った刹那、菜乃がこう言った。
「別れるの、じゃあ別れるのっ!」
「えっ?」
俺は渾身の生返事を繰り出した。
いやでも、いやでも、えっ?
「菜乃は正直火事場泥棒みたいなもんなの、弱まった男子に近付いた汚いハイエナなの、だから、次は、ちゃんとした状態で悟志に選んでもらうのっ!」
そう言って俺のほうを見て微笑んだ菜乃。
いや俺は、と言おうとしたその時、シューカが喋りだした。
「じゃあシューカちゃんもサトシンのこと狙えるわけやなぁ、ナノン?」
「そうなの、みんなで悟志くんのことを狙う関係になるの! そしてちゃんとみんなに認められて結婚式を開くの!」
「オヤッサンが、最高のウェディング寿司を作るでぇい……」
頭が真っ白になった。
でも真っ黒じゃない。
真っ白だ。
どこか希望に満ちた色だ。
あんなに真っ黒になりそうになっていた俺は菜乃に救われて、またしても菜乃に救われてしまうのか、今度は真っ白に。
「本当に? みんなで悟志のこと狙えるの? また一からやり直せるの?」
ちょっと”の口調”気味だけども、声が違う。
本当に声が違うんだ。
エコーが無いんだ。
この中で俺のこと”悟志”と呼ぶのは遼子だけだから。
「悟志、また一から友達になってくれる?」
「なるよ、当たり前じゃん、遼子、いやロッコ」
「一からスタートして、もし私と付き合いたくなったら告白してくれる?」
「……まあ、そうなったらそうなるのかな?」
気付いた時には血だまりは無くなっていて、遼子、いやロッコの足も二本に戻っていて。
これは俺の物語だから、最後は俺が決めないとダメだな、よしっ。
「みんなで遊ぼうぜ、なんせ楽しくなければ人生じゃないからなっ」
「愛情酢飯!」
「いやオヤッサンは出しゃばるなよ!」
血はすっかり全て消え去って、その場にいた全員から爽やかな笑顔がもれていた。
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