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【無限ツッコミ】

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・【無限ツッコミ】


「シューカちゃんがサトシンのことツッコむから、サトシンはさらにシューカちゃんにツッコむんや。無限にツッコミしていって、ツッコめなくなったほうが負けや」
 まあ言わんとしていることはなんとなく分かった、と思っていると、菜乃がこう言った。
「これはトーナメントにして、菜乃とオヤッサンも参加するの」
「いや暇なのかよ」
 俺がそうツッコむと、菜乃が真っすぐ俺の瞳を見ながら、
「暇なの」
「じゃあトーナメント形式でやるか、そっちのほうが楽しいだろうし」
 と俺が返事すると、オヤッサンが、
「楽しくなければ人生じゃないからでぇい」
 と言って頷いた。
 シューカは柏手一発叩いてから、
「ほな! 変則トーナメントにしたらええで! サトシンが一回戦から闘って、菜乃、オヤッサン、シューカちゃんの順番で対戦や!」
 菜乃は同意しながら、
「確かに! 悟志くんの特訓だからそれがいいのー!」
 俺はまあいいかと思いつつ、
「何か各階に門番が待ち構える塔みたいだな」
 と言うと、オヤッサンが、
「オヤッサンは小腸で待ってるでぇい」
「いや塔で例えろよ、何だよ小腸って、俺、誰かの肛門の中に入っていってるのか?」
 シューカは大きな声で、
「塔や! 半分以上JKで肛門とかアカンねん!」
「いやまあJKも塔にはいないけども」
 そんな会話はそこそこに、まず一回戦、菜乃と俺のツッコミ無限対決になった。
 菜乃はグッと拳を握ってから、
「じゃあまず菜乃からいくのー! 塔にいるJKだってきっといるの!」
「そりゃまあいるだろうけども、大半は109だから。ビルだから」
「なのー! JKはオシャレだと思い過ぎているのー!」
「でも思うに越したことないだろ、決して失礼な話じゃないんだから」
 と俺が返したところで、菜乃が、
「褒められてムズムズするのー! もう負けでいいのー! てへへなのっ」
 そう言って舌を出してから笑った菜乃。
 いや
「守備力低すぎるだろ、よくそれでトーナメントの案を持ち出したな」
「菜乃は自分を過信していたの」
「まあ悪いことじゃないけどな、自分を信じるということは」
 と言ったところでオヤッサンが割って入ってきた。
「オヤッサンは自信満々HEYでぇい!」
 いや!
「まずスタートがツッコミじゃない! こっちに対して何かを言うんだよ!」
「悟志少年はあれだな、JKの友達が多くていいんだなぁ」
「いや満面の笑みで”いいんだなぁ”じゃないんだよ! ただ羨ましがるオジさんじゃないんだよ!」
 そうツッコんだところでシューカがズイッと一歩前に出てから、
「オヤッサン、ちゃんとツッコミせんとTKO負けやで?」
「わっ! 分かってるでぇい! 酢飯でぇい!」
 本当に分かっていたら酢飯なんて言わないだろ、と思いつつ、試合は再開になった。
 オヤッサンは叫んだ。
「悟志少年はもっと酢飯を学ぶべきだろ!」
「そんなことない上に、学べるなら寿司を学びたいわ」
「そんな簡単に寿司なんて学べるわけないでぇい! 寿司の歴史を舐めるなでぇい!」
 何だこれ、本当にツッコミ合戦になってるのか? と思いつつも、俺は、
「歴史というモノは学ぼうと思ったら学ぶべきだろ! そして先輩は素直に教えることがその文化の繁栄に繋がるんだろ!」
「正論! セイロンティーでぇい!」
「オヤッサンそれ好きだな! でももっと寿司を好きであれ! セイロンティーより寿司で言えよ!」
「さよりぃぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!」
「ただただ勢いじゃん! オヤッサンの寿司屋、ネタがさよりしかないのかよ!」
 とツッコんだところでシューカが割って入ってきて、
「普通にオヤッサンはボケやねんて」
 そう言われたオヤッサンは膝から崩れ落ちたので、
「いや口砂近付いてきたな!」
 とツッコんだら、すぐさまオヤッサンが立ち上がったので、
「口砂案件、めちゃくちゃビビってるじゃん!」
「オヤッサンはもう口砂嫌でぇい」
「そりゃみんな嫌だけども」
 まあそんなやり取りは置いといて、シューカは喋りだした。
「結局シューカちゃんとサトシンのバトルやな、早速いくで! 口砂って何やねん! そんな言葉無いねん!」
「でも状況が状況だけに伝わっているだろ! 伝わっていればそれでいいだろ!」
「受け手に委ね過ぎやねん! もっと分かりやすく説明せぇや!」
「いいんだよ別に! 英語だって単語だけでも十分いけるだろ! 日本語も単語だけでいけるだろ!」
 シューカは一瞬止まって考えてから、こう言った。
「そうやって受け手に依存すんなや! 依存症やぞ! 口砂恐怖症よりアカンわ!」
「いやまず口砂恐怖症なんてないんだよ! というかシューカが使うなよ! その言葉を!」
「ええねん! 言葉は自由やねん! 好きに使わせろや!」
「じゃあ口砂に文句言うなよ! 口砂の権利を最初から認めろよ!」
 シューカは矢継ぎ早に言う。
「一旦否定するのもええやん! 否定したい年頃やん!」
「反抗期を他人に発表するなよ! 身内でやるんだよ! 反抗期って!」
「もはや身内やん! それくらいの気持ちでいんねん! こっちは!」
「何だよ! ちょっとありがたいじゃねぇか! 親身になってくれて嬉しいわ!」
 ここでシューカがピタっと止まってから、静かにこう語り出した。
「いや何か褒め合いになりそうでハズいわ、というかサトシンはあれやな、こういう人間タラシみたいなとこあるわ」
「人間タラシって人間に優しくされている妖怪みたいに言うなよ」
「いやここはツッコまんでええねん、やっぱあれや、サトシンはちょっと魅力あんねんて。みんなつい気にしてまうんて」
「そんなことないだろ、最初こういう状態になった時、すごい無視されたわ」
 と言ったところで、菜乃がこう言った。
「ううん、やっぱり悟志くんは魅力があるの。だから好きなのっ」
 ちょっと、急にそういうこと言うのは反則だろと思った刹那、
「てやんでぇい! べらんめぇい! オヤッサンも股間押しつけたくらい大好きでぇい!」
 と叫んできたので、それに対してはもう本当に堂々と、
「台無しじゃねぇか!」
 とツッコミを荒らげた。
 それを見ていたシューカは、
「まあ無限対決はサトシンの勝利やな、ええツッコミやったで」
 何故かちょっと嬉しかった。
 シューカに認められたみたいで。
 いや認められたところで何なの? というところもあるんだけども。
 シューカは感慨深そうに頷いてから、こう言った。
「最後はつらい昔話に対して明るくツッコんで、その話自体明るくしようやな」
 いや
「何だよそのちょっと重そうなテーマ」
「シューカちゃんもちゃんとそう思ってるで」
「じゃあ何でやるんだよ」
 と言ったところで、菜乃が前に出てきた。
 一体何だろうと思っていると、シューカが、
「こっからは菜乃ちゃんの時間やで」
 そう言って一歩下がった。
 えっ、菜乃のつらい昔話ということ?
 むしろ今じゃないの?
 俺みたいなもんと一緒にいる今、つらいことを人から言われたりするとかじゃないの?
 いやでもまあ菜乃は”学校で浮いていた”みたいな話を前に屋上でしたし、いろいろあるんだろうな、過去も。
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