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【声を出すこと】
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・【声を出すこと】
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「悟志少年! てやんでぇ! べらんめぇ! でらべっぴん! 復刻させたい!」
「オヤッサンだぁ!」
俺はビックリしすぎて尻もちつきそうになった。
でもギリギリ踏ん張った。偉い。
「驚くことはないんでぇ! インディアン嘘つかない! 寿司職人になれる! ハッ!」
「いやもう脈略が無さすぎですよ、一体何なんですか、また閉じ込める気なんですか?」
「うん、ちゃんと声が出ていていいねぇ! いいね寿司!」
と言いながらまるで『いいね』しているように生育している茹でたラディッシュを乗せた寿司を、オヤッサンがしていたウエストポーチから取り出した。
いや割烹着にウエストポーチて。
そのウエストポーチも妙に黄色い蛍光カラーで、中学生がしているヤツみたいな。
「いいね寿司、食べていいね」
「いや食べませんよ」
俺が手でNoのポーズをとると、しょげながら自分で食べたオヤッサン。
いやだって手渡しで寿司食べたくないし、オヤッサンの握った寿司は若干不信感があるし。
”ごっくん!”
……オヤッサンの飲みこむ音、めちゃくちゃデカいな……商店街中に響いたぞ、今。
オヤッサンのほうをなんとなく見ていると、口の周りは酢飯だらけで、何故か眉間のあたりまで酢飯が付いていた。
いや一口で『いいね』寿司を頬張ったのに何で顔全体に付いているんだ、この人の声にエコーが掛かるのも時間の問題なのでは?
とか思っているとオヤッサンは嬉しそうにこう言った。
「悟志少年のおかげで人気出たよ、閉じ込めて酢飯」
「あれ! 人気出たのかよ!」
「地下格闘技みたいな気分で食べれて気持ちが良いと、良い宣伝になったよ」
「この世界、変人ばっかりだな!」
と俺がデカい声でツッコむと、やたら満足げに頷きながら、
「声で出ていていいね、それが基本的な対処法だからね、ヤバイ連中の」
「じゃあデカい声出すとオヤッサンも消え失せるわけですか」
「そうそう、大きな声で酢飯が消滅して、ワキガも治っちゃったよー、脇で寿司握り……ってバカ! オヤッサンはヤバイ連中じゃないもん!」
そう言って頬を膨らませ、プンスカ可愛い感じに怒っているけども、全然怖いけどもな、寿司職人のプンスカ。
いやでも
「ヤバイ連中ってデカい声に弱いんですか?」
「というか正論ね、セイロンティーね」
「紅茶の名前言ってないで話進めて下さい」
「ヤバイ連中は自分のヤバさばっかり磨いてて、基本的に打たれ弱いナルシストみたいなもんだから。自分が攻撃されることに慣れていないというか」
なるほど、何かちょっと分かるな。
いやでも分からないこともある。
それは、
「でも何で俺がヤバイ連中に遭遇したことが分かるんですか? 完全に分かって言ってますよね、オヤッサンは」
「あらヤダ! なぁ~んてね!」
そう言ってニッコリ微笑んだオヤッサン。
いちいちウザいな、この人。
まあいいや、オヤッサンの次の言葉を待っていると、
「実は非公式ながらこういう状態になった人には捕捉SNSが発足して、逐一文章で何をしていたか速報を流す連中がいるんだ」
「じゃあ結局映像が無いだけで俺の行動って筒抜けなわけですね」
「そういうこと、だから悟志少年と関わってまた宣伝酢飯!」
「あの『いいね』寿司ってヤツ、絶対宣伝にならないですからね。ラディッシュ茹でただけって創作性まるで無いですから」
俺がそう言うとシュンとしたオヤッサン。
喜怒哀楽の激しい人だな。
ということは何だ、あれか、
「じゃあ結局全放映状態を狙ったほうが逆にプライベートが守られるみたいなことですかね」
「そうね、世界政府公式でやるとなると、そういう捕捉SNSも駆逐されるですし、寿司」
「寿司言いたさすぎて急に”ですし”口調しないで下さい」
「寿司」
……まあこの電波寿司職人そのもののことは置いといて、ある程度有益な情報は得られた。
あとは、
「じゃあオヤッサンは宣伝をしたいだけで俺の味方ではあるんですね、俺を利用したいわけですから」
「その通り! 酢飯! 酢飯刑事! 純米派! いや純情派! まだ結婚していないから!」
「自分で完結させようとしないで下さい。ツッコミを信用して下さい」
「年代が違うボケしちゃったから分からないと思っちゃった! 酢飯!」
まあオヤッサンの思惑が分かれば、この人自体はそこまで怖くない。
同じ地域の商店街に店を構えているだけの普通の人だ。
いや全然普通の人じゃないけども。
「じゃあ今日はこの辺で失礼します」
「いつでも寿司驕るよ! 酢飯!」
俺とオヤッサンはやけに爽やかに別れた。
でもまあ収穫はあった。
ヤバイ連中には思い切りツッコめばいいということか。
そして結局俺にプライベートは無いということ。
……こりゃシューカに弟子入りしないといけないのかもな。
・【声を出すこと】
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「悟志少年! てやんでぇ! べらんめぇ! でらべっぴん! 復刻させたい!」
「オヤッサンだぁ!」
俺はビックリしすぎて尻もちつきそうになった。
でもギリギリ踏ん張った。偉い。
「驚くことはないんでぇ! インディアン嘘つかない! 寿司職人になれる! ハッ!」
「いやもう脈略が無さすぎですよ、一体何なんですか、また閉じ込める気なんですか?」
「うん、ちゃんと声が出ていていいねぇ! いいね寿司!」
と言いながらまるで『いいね』しているように生育している茹でたラディッシュを乗せた寿司を、オヤッサンがしていたウエストポーチから取り出した。
いや割烹着にウエストポーチて。
そのウエストポーチも妙に黄色い蛍光カラーで、中学生がしているヤツみたいな。
「いいね寿司、食べていいね」
「いや食べませんよ」
俺が手でNoのポーズをとると、しょげながら自分で食べたオヤッサン。
いやだって手渡しで寿司食べたくないし、オヤッサンの握った寿司は若干不信感があるし。
”ごっくん!”
……オヤッサンの飲みこむ音、めちゃくちゃデカいな……商店街中に響いたぞ、今。
オヤッサンのほうをなんとなく見ていると、口の周りは酢飯だらけで、何故か眉間のあたりまで酢飯が付いていた。
いや一口で『いいね』寿司を頬張ったのに何で顔全体に付いているんだ、この人の声にエコーが掛かるのも時間の問題なのでは?
とか思っているとオヤッサンは嬉しそうにこう言った。
「悟志少年のおかげで人気出たよ、閉じ込めて酢飯」
「あれ! 人気出たのかよ!」
「地下格闘技みたいな気分で食べれて気持ちが良いと、良い宣伝になったよ」
「この世界、変人ばっかりだな!」
と俺がデカい声でツッコむと、やたら満足げに頷きながら、
「声で出ていていいね、それが基本的な対処法だからね、ヤバイ連中の」
「じゃあデカい声出すとオヤッサンも消え失せるわけですか」
「そうそう、大きな声で酢飯が消滅して、ワキガも治っちゃったよー、脇で寿司握り……ってバカ! オヤッサンはヤバイ連中じゃないもん!」
そう言って頬を膨らませ、プンスカ可愛い感じに怒っているけども、全然怖いけどもな、寿司職人のプンスカ。
いやでも
「ヤバイ連中ってデカい声に弱いんですか?」
「というか正論ね、セイロンティーね」
「紅茶の名前言ってないで話進めて下さい」
「ヤバイ連中は自分のヤバさばっかり磨いてて、基本的に打たれ弱いナルシストみたいなもんだから。自分が攻撃されることに慣れていないというか」
なるほど、何かちょっと分かるな。
いやでも分からないこともある。
それは、
「でも何で俺がヤバイ連中に遭遇したことが分かるんですか? 完全に分かって言ってますよね、オヤッサンは」
「あらヤダ! なぁ~んてね!」
そう言ってニッコリ微笑んだオヤッサン。
いちいちウザいな、この人。
まあいいや、オヤッサンの次の言葉を待っていると、
「実は非公式ながらこういう状態になった人には捕捉SNSが発足して、逐一文章で何をしていたか速報を流す連中がいるんだ」
「じゃあ結局映像が無いだけで俺の行動って筒抜けなわけですね」
「そういうこと、だから悟志少年と関わってまた宣伝酢飯!」
「あの『いいね』寿司ってヤツ、絶対宣伝にならないですからね。ラディッシュ茹でただけって創作性まるで無いですから」
俺がそう言うとシュンとしたオヤッサン。
喜怒哀楽の激しい人だな。
ということは何だ、あれか、
「じゃあ結局全放映状態を狙ったほうが逆にプライベートが守られるみたいなことですかね」
「そうね、世界政府公式でやるとなると、そういう捕捉SNSも駆逐されるですし、寿司」
「寿司言いたさすぎて急に”ですし”口調しないで下さい」
「寿司」
……まあこの電波寿司職人そのもののことは置いといて、ある程度有益な情報は得られた。
あとは、
「じゃあオヤッサンは宣伝をしたいだけで俺の味方ではあるんですね、俺を利用したいわけですから」
「その通り! 酢飯! 酢飯刑事! 純米派! いや純情派! まだ結婚していないから!」
「自分で完結させようとしないで下さい。ツッコミを信用して下さい」
「年代が違うボケしちゃったから分からないと思っちゃった! 酢飯!」
まあオヤッサンの思惑が分かれば、この人自体はそこまで怖くない。
同じ地域の商店街に店を構えているだけの普通の人だ。
いや全然普通の人じゃないけども。
「じゃあ今日はこの辺で失礼します」
「いつでも寿司驕るよ! 酢飯!」
俺とオヤッサンはやけに爽やかに別れた。
でもまあ収穫はあった。
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