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【メガホン】
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・【メガホン】
・
昼休み、教室にいるとまたシューカに何か言われると思ったので、俺は中庭にいた。
相変わらず、何だか俺のことを皆、遠巻きに見てくる嫌な感じ。
いやでも全員が全員遠巻きな感じではない。
俺は今、中庭のベンチに座っているわけだが、普通に隣へ座って来た生徒もいるし、近くをうろつく生徒もいる。
よく分かんないけども、あんま見たこともないし、威圧感も無いから多分俺の近くにいるのは下級生かな、何かそんな感じがする。
まあ同学年からは無視気味になっているだけで、下級生は別に関係無いってわけか。
と思っていたその時だった。
「ハイハイハーイ、ちょっと下級生ちゃんたちはそこどいてねぇー」
手に持った小さなメガホンを軽く振り回して、下級生たちをどかしている、多分上級生だ。
俺もどかないといけないかな、と思って立ち上がると、その瞬間、俺はその上級生からスパンとメガホンで叩かれた。
「いやオマエはここにいるんだよ」
叩かれた勢いでそのままベンチにまた座った俺。
いや、いやいやいや、ついに学校でも、学校でも変なヤツに絡まれ出した……!
「おい、オマエ、いやオマエだよ」
そう言ってまた俺の頭をメガホンで叩いた上級生。
一体何なんだ……。
「オマエと言ったらすぐ返事するんだよ」
と言ってさらに同じようにメガホンで叩いてきたので、さすがに俺は
「いや一体何なんですか」
と上級生のほうを睨むと、
「先輩だぞ」
そう言ってまたメガホンが俺の頭へ向かって落ちてきたので、それをかわして立ち上がった。
すると上級生はちょっとたじろいだので、その隙を突いて、メガホンを取り上げた。
「うわっ! 先輩だぞ!」
「それしか言えないんですか、というか先輩だから何なんですか、いやむしろ師弟関係でもない人に先輩と言われたくない」
「何だよ! 俺は先輩なんだからな!」
そう焦っている上級生に俺は思った言葉がそのまま出た。
「語彙少なっ! 外国人に混じって日本語検定やれよ!」
何だか完全に俺にビビっているような上級生、何だコイツ、まるで俺をいじりやすいヤツだと認識して近付いてきたみたいだけども、俺は全然そういうヤツじゃないからな。
もっと言ってやるか。
「そもそもメガホンで叩くって古いコントか! ダサい笑いを見せつけるんじゃねぇよ!」
俺がそう叫ぶと、上級生は無言でその場を去った。
何で俺をいじりやすいヤツだと認識したんだよ、マジで。
俺の手にはメガホンが残った。すぐ捨てた。中庭の生け垣の根元に捨てた。俺、こんな古いヤツじゃないから。
全く何なんだ、本当に……と思っていると、アイツの声がした。
「ええ情熱のツッコミもしてたけども、余計な一言もあったわぁ。そういうのはもっと後でええねん」
そう言いながらシューカが俺の前に現れた。
「何だよ、聞いていたのかよ」
まださっきのイライラが残っているので、少しぶっきらぼうにそう言ってしまった俺。
それに対してシューカは、
「そのカリカリ感ええで!」
と言って細かく早く拍手をした。
「いや良くは無いだろ、初対面の人に対しては」
「いやいや! ガツガツ思い切りツッコんだほうが見てるほうは気持ちええねん!」
「まず勝手に見るな」
「あぁー……まあそれはええやん、見る時は見ちゃうモンやしぃ」
何か一瞬困った顔をしたシューカ。
コイツ、そんなに人のツッコミを見たいんだな。
何だよコイツの人のツッコミ見たい欲、どうでもいいだろ。
まあとにかく
「俺は俺のツッコミ、というか、俺の会話があるからシューカを師匠にする気は無いぞ」
「なんでやねん! ここで”本当のツッコミ教えてくれ”の流れやん!」
「いや絶対そうならないよ! 師に仰ごうとしないだろ! この流れで!」
シューカは口を尖らせて不満げだ。
いやいや
「そもそも俺が関西弁使い始めたら嫌だろ」
「いや師弟関係なんだなと思われて、ホッコリするやろ」
「嫌な視線ばかりになるよ、じっとりするよ」
「しっとり教えたるわ」
何だよ、しっとり教えるって。
ライト文芸の序盤か、設定説明のパートか。
ラノベはバシバシ教えるけども、ライト文芸は大人向けだからしっとりか。
と、心の中で考えていると、シューカはそれを見透かしたようにこう言った。
「思ったことは全部すぐに口にする! それがツッコミの基本や! サトシンは余白が多いねん!」
「いやまあ確かに口に出さずに考える癖はあるけども、それは失礼なことを言わないようにとかしてんだよ」
「ええねん! ツッコミは失礼なこともハッキリ言ってやればええねん! 言う! 勢い! 発想の順や!」
「まず最初の”言う”がダメだろ、普通に。シンプルに失礼はまた新たな火種を産むだろ」
シューカは溜息を一息ついて、やれやれといったような表情でこう言った。
「もう火種とかそういう考えはええやん?」
「いや火種とか考えるだろ! そういう考えが人生で一番大切だろ!」
「もっと今の会話を楽しもうとかないん?」
「まず楽しめるような会話が最近無いんだよ! シューカは知らないだろうけども、俺最近、マジで変なヤツらに絡まれるんだよ! まあシューカも含めてな!」
そんな俺の発言にうんうん頷いているシューカ。
何か分かっている風を醸し出しているが、いや何も分かっていないだろ。
シューカは急に俺の目を見ながら、真剣そうにこう言った。
「でも思い切りやったったほうがええで。言うと勢いはマジで大切やで」
いや!
「ずっとさっきから言ってる言葉一緒! シューカも語彙少なっ!」
「いやシューカちゃんは語彙豊富や、さっきのメガホンと一緒にすんな、ドアホ」
「さっきのメガホンってずっと近くで聞いていたのかよ!」
「えっと、まあそんなとこや。とにかくシューカちゃんはメガホンちゃう!」
と、デカい声を叫んだシューカ。
いや!
「そのデカい声がむしろ本当の意味でのメガホンだよ! 響き渡ってんだよ!」
「上手いこと言うやっちゃな」
そう言って感心しているような顔をしたシューカ。
結局こんなヤツとの会話で今日の昼休みは終了した。
まあそこまでヤバイことを言っているわけじゃないから、シューカとの会話なら別に嫌ではないんだけどもな。
でも自分の時間が無いのは嫌と言えば嫌。
・【メガホン】
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昼休み、教室にいるとまたシューカに何か言われると思ったので、俺は中庭にいた。
相変わらず、何だか俺のことを皆、遠巻きに見てくる嫌な感じ。
いやでも全員が全員遠巻きな感じではない。
俺は今、中庭のベンチに座っているわけだが、普通に隣へ座って来た生徒もいるし、近くをうろつく生徒もいる。
よく分かんないけども、あんま見たこともないし、威圧感も無いから多分俺の近くにいるのは下級生かな、何かそんな感じがする。
まあ同学年からは無視気味になっているだけで、下級生は別に関係無いってわけか。
と思っていたその時だった。
「ハイハイハーイ、ちょっと下級生ちゃんたちはそこどいてねぇー」
手に持った小さなメガホンを軽く振り回して、下級生たちをどかしている、多分上級生だ。
俺もどかないといけないかな、と思って立ち上がると、その瞬間、俺はその上級生からスパンとメガホンで叩かれた。
「いやオマエはここにいるんだよ」
叩かれた勢いでそのままベンチにまた座った俺。
いや、いやいやいや、ついに学校でも、学校でも変なヤツに絡まれ出した……!
「おい、オマエ、いやオマエだよ」
そう言ってまた俺の頭をメガホンで叩いた上級生。
一体何なんだ……。
「オマエと言ったらすぐ返事するんだよ」
と言ってさらに同じようにメガホンで叩いてきたので、さすがに俺は
「いや一体何なんですか」
と上級生のほうを睨むと、
「先輩だぞ」
そう言ってまたメガホンが俺の頭へ向かって落ちてきたので、それをかわして立ち上がった。
すると上級生はちょっとたじろいだので、その隙を突いて、メガホンを取り上げた。
「うわっ! 先輩だぞ!」
「それしか言えないんですか、というか先輩だから何なんですか、いやむしろ師弟関係でもない人に先輩と言われたくない」
「何だよ! 俺は先輩なんだからな!」
そう焦っている上級生に俺は思った言葉がそのまま出た。
「語彙少なっ! 外国人に混じって日本語検定やれよ!」
何だか完全に俺にビビっているような上級生、何だコイツ、まるで俺をいじりやすいヤツだと認識して近付いてきたみたいだけども、俺は全然そういうヤツじゃないからな。
もっと言ってやるか。
「そもそもメガホンで叩くって古いコントか! ダサい笑いを見せつけるんじゃねぇよ!」
俺がそう叫ぶと、上級生は無言でその場を去った。
何で俺をいじりやすいヤツだと認識したんだよ、マジで。
俺の手にはメガホンが残った。すぐ捨てた。中庭の生け垣の根元に捨てた。俺、こんな古いヤツじゃないから。
全く何なんだ、本当に……と思っていると、アイツの声がした。
「ええ情熱のツッコミもしてたけども、余計な一言もあったわぁ。そういうのはもっと後でええねん」
そう言いながらシューカが俺の前に現れた。
「何だよ、聞いていたのかよ」
まださっきのイライラが残っているので、少しぶっきらぼうにそう言ってしまった俺。
それに対してシューカは、
「そのカリカリ感ええで!」
と言って細かく早く拍手をした。
「いや良くは無いだろ、初対面の人に対しては」
「いやいや! ガツガツ思い切りツッコんだほうが見てるほうは気持ちええねん!」
「まず勝手に見るな」
「あぁー……まあそれはええやん、見る時は見ちゃうモンやしぃ」
何か一瞬困った顔をしたシューカ。
コイツ、そんなに人のツッコミを見たいんだな。
何だよコイツの人のツッコミ見たい欲、どうでもいいだろ。
まあとにかく
「俺は俺のツッコミ、というか、俺の会話があるからシューカを師匠にする気は無いぞ」
「なんでやねん! ここで”本当のツッコミ教えてくれ”の流れやん!」
「いや絶対そうならないよ! 師に仰ごうとしないだろ! この流れで!」
シューカは口を尖らせて不満げだ。
いやいや
「そもそも俺が関西弁使い始めたら嫌だろ」
「いや師弟関係なんだなと思われて、ホッコリするやろ」
「嫌な視線ばかりになるよ、じっとりするよ」
「しっとり教えたるわ」
何だよ、しっとり教えるって。
ライト文芸の序盤か、設定説明のパートか。
ラノベはバシバシ教えるけども、ライト文芸は大人向けだからしっとりか。
と、心の中で考えていると、シューカはそれを見透かしたようにこう言った。
「思ったことは全部すぐに口にする! それがツッコミの基本や! サトシンは余白が多いねん!」
「いやまあ確かに口に出さずに考える癖はあるけども、それは失礼なことを言わないようにとかしてんだよ」
「ええねん! ツッコミは失礼なこともハッキリ言ってやればええねん! 言う! 勢い! 発想の順や!」
「まず最初の”言う”がダメだろ、普通に。シンプルに失礼はまた新たな火種を産むだろ」
シューカは溜息を一息ついて、やれやれといったような表情でこう言った。
「もう火種とかそういう考えはええやん?」
「いや火種とか考えるだろ! そういう考えが人生で一番大切だろ!」
「もっと今の会話を楽しもうとかないん?」
「まず楽しめるような会話が最近無いんだよ! シューカは知らないだろうけども、俺最近、マジで変なヤツらに絡まれるんだよ! まあシューカも含めてな!」
そんな俺の発言にうんうん頷いているシューカ。
何か分かっている風を醸し出しているが、いや何も分かっていないだろ。
シューカは急に俺の目を見ながら、真剣そうにこう言った。
「でも思い切りやったったほうがええで。言うと勢いはマジで大切やで」
いや!
「ずっとさっきから言ってる言葉一緒! シューカも語彙少なっ!」
「いやシューカちゃんは語彙豊富や、さっきのメガホンと一緒にすんな、ドアホ」
「さっきのメガホンってずっと近くで聞いていたのかよ!」
「えっと、まあそんなとこや。とにかくシューカちゃんはメガホンちゃう!」
と、デカい声を叫んだシューカ。
いや!
「そのデカい声がむしろ本当の意味でのメガホンだよ! 響き渡ってんだよ!」
「上手いこと言うやっちゃな」
そう言って感心しているような顔をしたシューカ。
結局こんなヤツとの会話で今日の昼休みは終了した。
まあそこまでヤバイことを言っているわけじゃないから、シューカとの会話なら別に嫌ではないんだけどもな。
でも自分の時間が無いのは嫌と言えば嫌。
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