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【ナンパの二連続】【訪問客】
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・
・【ナンパの二連続】
・
早く家に帰ろうと思ったその時だった。
また誰かに後ろから肩を叩かれた。
無視すると何が起きるか分からないので、振り返ると、そこにはなんと、最近俺が買っている漫画雑誌にもグラビアが載っているグラビアアイドルの、不二子さんが立っていた。
「やぁ、少年、カッコイイね」
あっ、ちゃんと俺を男子として認識している。でも何だろう。
不二子さんは続ける。
「単刀直入に言うと、私の彼氏にならないか?」
……えぇぇぇええええっ? どういうことっ? 急にナンパっ? 俺にっ?
というか何気にモテ期か、俺! あの菜乃というヤツも近付いてきたし! モテ期到来だ!
……って、いやいや、
「何か、素人ドッキリみたいなもんですよね、どこかにカメラでもあるんですか?」
と冷静なトーンで俺は返すと、不二子さんは強く強くドキィッと明らかに動揺した表情を浮かべたので、あぁ、間違いない、そういうことだと分かった。
何でたまたま変なことが起きやすい俺にそんな素人ドッキリが来るんだ。
いやまあ変なことが起きているから、それに合わせて変なことが起きているんだろうけども。
俺はとにかく変なところを撮られても嫌なので、早めに拒絶して、他の人のほうへ行ってもらうことにした。
これに関して言えば、そんな誠実に対応しなくて大丈夫だろ。
素人ドッキリなんて性格の悪いモンに付き合う筋合いは無い。
「あのですね、そういう素人ドッキリみたいなものは、もっとチャラそうな人にして下さい」
「いやいやいやいやいや! 素人ドッキリではないぞ! マジだぞ!」
そう言って俺の腕を掴み、俺の手を自分の胸に当てた不二子さん……ってっ! えぇぇぇええええ!
何これ! 柔らかっ! でも弾力もあって何これぇぇえええええ!
素人ドッキリでここまでするもんなのぉぉおおおおっ? じゃあラッキーだわっ!
いやラッキーだわ、じゃなくて、まあ、ま、まあ、もうちょっと話してあげてもいいかな、どうせ素人ドッキリだと分かっているわけだしさ。
「ちょ、ちょっ、ちょっと、急に、おっぱいって、あの……」
うん、頭の中ではちゃんと言葉が出ていたけども、いざ口に出すと全然うまくいかない。
そんなモゴモゴしている俺を見て、どこか自信満々になった不二子さんはグイっと俺を引っ張って、
「じゃあこれからホテルに行きましょう!」
「いやっ! そういうのは! ちょっとっ!」
絶対怖い人がいて、ちょっと痛い目に遭う素人ドッキリじゃん。
痛い目には遭いたくないし、テレビの笑い者にはなりたくないので、この辺で逃げよう。
俺は手を払って、踵を返し、走りだそうとしたその時だった。
「ちょっと、待ってぇ」
そう俺の耳に息を吹きかけてきた不二子さん。
そう、俺の耳に息を吹きかけられる距離。
俺を後ろから優しく抱き締めてきた不二子さん。
いやマジかよ、おっぱいが背中に当たって、良い香りがするし、マジで、ちょっと、アソコが、男子の部分が、ヤバイ……。
「何でちょっと前屈みになったの? 痛くなったところ見てあげようか?」
そう言って俺の太ももあたりをさすってきた不二子さん。
というかちょっと、手が俺のアソコに当たりそう……いや、いいの? 最近のテレビって規制が厳しいんじゃないの?
しかし笑い者にだけはなりたくない。
なんとか俺はバッと不二子さんから離れた。
だがつい不二子さんのほうを向き、目を見てしまう。
妙に潤んだ瞳が艶っぽくて、どんどん引き込まれていく。
いやヤバイ! これは完全にお茶の間の笑い者になってしまう!
俺は一気に家へ向かって走り出した。
「待って!」
不二子さんの声は聞こえたけども、俺はそれを振り切って走った。
・
・【訪問客】
・
なんとか家の中に逃げ込んで、すぐさまベッドの中に入ってドキドキしていた。
しかしベッドの中はすぐさまアツアツになって、俺は体を外に出した。
「何なんだよ、一体……良いことも悪いことも起きるのかよ……」
独り言も口から出てくる。
というか、なんというか、あれが出そう。
そうだ、そうだ、家ではずっと一人なんだから、またちょっとシェイクハンドの自主練でもするか。
今日すごいことがあったし、オカズもちゃんとあるし、漫画雑誌に載っている不二子さんのグラビアもあるし、これ見て……。
そして俺は玄関の鍵を締め、すぐさまベッドの上にいき、一時間くらいだろうか、一心不乱に利き手を上下させ、果てた。
「でもすごい体験だったな……」
ティッシュで処理をして、ベッドの上で少しゴロゴロして、じゃあそろそろご飯でも食うか、と思って冷蔵庫に行って冷食でもレンチンしようとしたその時だった。
”ピンポーン”
玄関のチャイムの音だ。
一体誰だろう。
窓の外を見ると夕暮れ時。
訪問販売もそろそろ来なくなる時間だけども、もしかするとまた変なヤツかも、と思う反面、どこか不二子さんであってほしい自分がいて。
もしまた不二子さんが来たら何かしちゃうかもしれないな。
いや家を知っているはずないけども、何だか少し期待してしまう自分がいて。
どこまでいけるか分かんないけども、いっそのことテレビの向こう側に行っちゃうかもしれないな、とか思った。
いや俺には遼子という心に決めた人がいるけども、でも、でも、今もし不二子さんがいたら、その誘惑に負けてしまうだろうな、って。
テレビのスタッフに止められるまで何でもしちゃいそうだな、とか思いながら、玄関の鍵を開け、ドアを開けるとそこにはピザの配達員のような恰好の人が立っていた。
あっ、ピザもいいな、と思ったけども、いやいや俺は注文していない。人違いだ。
だから
「あの、俺、ピザ頼んでいないですけども」
「あっ! これピザじゃないです!」
そう言って爽やかに笑った配達員。
いやどう見てもピザが入っていそうな平たい四角の箱を持っているけども。
まあどっちでもいいや。
「とにかく俺、何にも頼んでいないんで家が違いますよ」
「いや合ってます!」
自信満々に頷いた配達員。
何が合っているのだろうか、あぁ、じゃあ。
「訪問販売ですね、あの、俺、今なんでも大丈夫なんで」
「いえいえ! 今ここで頂いて下さるだけで大丈夫なんで!」
「あぁ、試食品を配っている配達員ですね、じゃあそれ下さい。ちゃんと受け取りますんで」
試食品やら試供品を配っている配達員の時は、ちゃんと受け取る、それが一番誠実な対応だ。
こういう人はノルマがあるから、受け取るだけでこの配達員の為になるのだ。
だから俺はティッシュ配りの人がいたら必ず受け取るようにしている。ノルマ達成の手助けをしない理由が無いから。
俺が手を差し出すと、その配達員は四角の箱を俺の顔に近付けて、
「じゃあ嗅いで下さい、この濃縮オナラ」
「えっ? えぇぇぇええええええええええええ! いっ! 嫌です!」
俺はバッと顔を四角の箱からそむけた。
えっ? えっ?
今
「濃縮オナラって、言いましたか?」
「ハイ! 濃縮オナラです! 嗅いでくれるんですよね!」
ハキハキと元気にそう受け答えをする配達員。
いやでも!
「濃縮オナラって何ですか! そんな濃縮ウランみたいに言われても!」
「あっ! 全然ウランみたいな危ないモノじゃないです! 普通のオナラです! 濃縮したオナラです!」
「いやもう濃縮したオナラって危なそうなんですけども、失神しそうな匂いなんですけどもっ」
俺がそう言うと、配達員は菩薩のように微笑み、こう言った。
「人に、よりけり、ですっ」
「いやじゃあダメじゃん! 人によって失神しちゃダメじゃん!」
「まあとにかく嗅いで下さいよ! ここが最後なんです!」
「どんなノルマだ! いやじゃあ嗅いであげるから顔の近くを辞めてほしい!」
俺としては当然の意見だ。
濃縮オナラを開放することがノルマなら、別に顔の近くで開放する必要は無い。
しかし、配達員は少し困った顔をしながら、
「顔の近くで嗅いでもらって、そのリアクションを記録する仕事なんですよぉ」
「どんな仕事ですか! その場合、俺にギャランティが発生しないとおかしいでしょ!」
「あぁ! そうそう! そのお話をすること忘れていました!」
……どうやら何かもらえるらしい、まあしょうもないストラップとかだろうけども。
「ピザあげます!」
「いやピザかい!」
「あっ! この四角い箱の中に濃縮オナラと同居しているわけじゃないですよ! ちゃんと別の箱です!」
ピザか……いやちょうど飯時だから食べたくないわけじゃないけども、う~ん、でもまあそのピザも少し怪しいしな。
でもノルマの達成に協力することが一番の誠実な対応だからな、変に逆上されても怖いし、仕方ない。
「じゃあその濃縮オナラ、嗅いであげていいですよ」
「本当ですか! 有難うございます!」
満面の笑みを浮かべた配達員。
なんて良い笑顔なんだ。
まあそれならいいか、と思いつつも、濃縮オナラに構えた俺。
「じゃあ箱、開けますね!」
そう言って箱を俺の顔に近付け、開けた配達員。
ん! ……んんん? ……いや!
「ピザ!」
「いけない! こっちはピザの箱でした!」
そう言ってピザの箱を俺に手渡した配達員。
俺はそのままピザを玄関にある棚の上に置いた。
まあ美味しそうなピザだったからもらうけども。
「いけない! いけない! こっちでした!」
そう言いながら、道に止まっているバイクのほうへ走っていき、そしてそのままそのバイクに乗って走り去ってしまった配達員。
「いや濃縮オナラはっ!」
渾身のツッコミを飛ばした俺。
結局、何分待っても、何時間待っても、その配達員が俺の家に来ることは無かった。
一体何なんだ。
ちなみにピザは三十分待ったのちに食べ始めた。
全然普通に美味しかったし、体に不調がきたすことも無かった。
次の日の朝は、いつもより目覚めが良かったくらいだ。
・【ナンパの二連続】
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早く家に帰ろうと思ったその時だった。
また誰かに後ろから肩を叩かれた。
無視すると何が起きるか分からないので、振り返ると、そこにはなんと、最近俺が買っている漫画雑誌にもグラビアが載っているグラビアアイドルの、不二子さんが立っていた。
「やぁ、少年、カッコイイね」
あっ、ちゃんと俺を男子として認識している。でも何だろう。
不二子さんは続ける。
「単刀直入に言うと、私の彼氏にならないか?」
……えぇぇぇええええっ? どういうことっ? 急にナンパっ? 俺にっ?
というか何気にモテ期か、俺! あの菜乃というヤツも近付いてきたし! モテ期到来だ!
……って、いやいや、
「何か、素人ドッキリみたいなもんですよね、どこかにカメラでもあるんですか?」
と冷静なトーンで俺は返すと、不二子さんは強く強くドキィッと明らかに動揺した表情を浮かべたので、あぁ、間違いない、そういうことだと分かった。
何でたまたま変なことが起きやすい俺にそんな素人ドッキリが来るんだ。
いやまあ変なことが起きているから、それに合わせて変なことが起きているんだろうけども。
俺はとにかく変なところを撮られても嫌なので、早めに拒絶して、他の人のほうへ行ってもらうことにした。
これに関して言えば、そんな誠実に対応しなくて大丈夫だろ。
素人ドッキリなんて性格の悪いモンに付き合う筋合いは無い。
「あのですね、そういう素人ドッキリみたいなものは、もっとチャラそうな人にして下さい」
「いやいやいやいやいや! 素人ドッキリではないぞ! マジだぞ!」
そう言って俺の腕を掴み、俺の手を自分の胸に当てた不二子さん……ってっ! えぇぇぇええええ!
何これ! 柔らかっ! でも弾力もあって何これぇぇえええええ!
素人ドッキリでここまでするもんなのぉぉおおおおっ? じゃあラッキーだわっ!
いやラッキーだわ、じゃなくて、まあ、ま、まあ、もうちょっと話してあげてもいいかな、どうせ素人ドッキリだと分かっているわけだしさ。
「ちょ、ちょっ、ちょっと、急に、おっぱいって、あの……」
うん、頭の中ではちゃんと言葉が出ていたけども、いざ口に出すと全然うまくいかない。
そんなモゴモゴしている俺を見て、どこか自信満々になった不二子さんはグイっと俺を引っ張って、
「じゃあこれからホテルに行きましょう!」
「いやっ! そういうのは! ちょっとっ!」
絶対怖い人がいて、ちょっと痛い目に遭う素人ドッキリじゃん。
痛い目には遭いたくないし、テレビの笑い者にはなりたくないので、この辺で逃げよう。
俺は手を払って、踵を返し、走りだそうとしたその時だった。
「ちょっと、待ってぇ」
そう俺の耳に息を吹きかけてきた不二子さん。
そう、俺の耳に息を吹きかけられる距離。
俺を後ろから優しく抱き締めてきた不二子さん。
いやマジかよ、おっぱいが背中に当たって、良い香りがするし、マジで、ちょっと、アソコが、男子の部分が、ヤバイ……。
「何でちょっと前屈みになったの? 痛くなったところ見てあげようか?」
そう言って俺の太ももあたりをさすってきた不二子さん。
というかちょっと、手が俺のアソコに当たりそう……いや、いいの? 最近のテレビって規制が厳しいんじゃないの?
しかし笑い者にだけはなりたくない。
なんとか俺はバッと不二子さんから離れた。
だがつい不二子さんのほうを向き、目を見てしまう。
妙に潤んだ瞳が艶っぽくて、どんどん引き込まれていく。
いやヤバイ! これは完全にお茶の間の笑い者になってしまう!
俺は一気に家へ向かって走り出した。
「待って!」
不二子さんの声は聞こえたけども、俺はそれを振り切って走った。
・
・【訪問客】
・
なんとか家の中に逃げ込んで、すぐさまベッドの中に入ってドキドキしていた。
しかしベッドの中はすぐさまアツアツになって、俺は体を外に出した。
「何なんだよ、一体……良いことも悪いことも起きるのかよ……」
独り言も口から出てくる。
というか、なんというか、あれが出そう。
そうだ、そうだ、家ではずっと一人なんだから、またちょっとシェイクハンドの自主練でもするか。
今日すごいことがあったし、オカズもちゃんとあるし、漫画雑誌に載っている不二子さんのグラビアもあるし、これ見て……。
そして俺は玄関の鍵を締め、すぐさまベッドの上にいき、一時間くらいだろうか、一心不乱に利き手を上下させ、果てた。
「でもすごい体験だったな……」
ティッシュで処理をして、ベッドの上で少しゴロゴロして、じゃあそろそろご飯でも食うか、と思って冷蔵庫に行って冷食でもレンチンしようとしたその時だった。
”ピンポーン”
玄関のチャイムの音だ。
一体誰だろう。
窓の外を見ると夕暮れ時。
訪問販売もそろそろ来なくなる時間だけども、もしかするとまた変なヤツかも、と思う反面、どこか不二子さんであってほしい自分がいて。
もしまた不二子さんが来たら何かしちゃうかもしれないな。
いや家を知っているはずないけども、何だか少し期待してしまう自分がいて。
どこまでいけるか分かんないけども、いっそのことテレビの向こう側に行っちゃうかもしれないな、とか思った。
いや俺には遼子という心に決めた人がいるけども、でも、でも、今もし不二子さんがいたら、その誘惑に負けてしまうだろうな、って。
テレビのスタッフに止められるまで何でもしちゃいそうだな、とか思いながら、玄関の鍵を開け、ドアを開けるとそこにはピザの配達員のような恰好の人が立っていた。
あっ、ピザもいいな、と思ったけども、いやいや俺は注文していない。人違いだ。
だから
「あの、俺、ピザ頼んでいないですけども」
「あっ! これピザじゃないです!」
そう言って爽やかに笑った配達員。
いやどう見てもピザが入っていそうな平たい四角の箱を持っているけども。
まあどっちでもいいや。
「とにかく俺、何にも頼んでいないんで家が違いますよ」
「いや合ってます!」
自信満々に頷いた配達員。
何が合っているのだろうか、あぁ、じゃあ。
「訪問販売ですね、あの、俺、今なんでも大丈夫なんで」
「いえいえ! 今ここで頂いて下さるだけで大丈夫なんで!」
「あぁ、試食品を配っている配達員ですね、じゃあそれ下さい。ちゃんと受け取りますんで」
試食品やら試供品を配っている配達員の時は、ちゃんと受け取る、それが一番誠実な対応だ。
こういう人はノルマがあるから、受け取るだけでこの配達員の為になるのだ。
だから俺はティッシュ配りの人がいたら必ず受け取るようにしている。ノルマ達成の手助けをしない理由が無いから。
俺が手を差し出すと、その配達員は四角の箱を俺の顔に近付けて、
「じゃあ嗅いで下さい、この濃縮オナラ」
「えっ? えぇぇぇええええええええええええ! いっ! 嫌です!」
俺はバッと顔を四角の箱からそむけた。
えっ? えっ?
今
「濃縮オナラって、言いましたか?」
「ハイ! 濃縮オナラです! 嗅いでくれるんですよね!」
ハキハキと元気にそう受け答えをする配達員。
いやでも!
「濃縮オナラって何ですか! そんな濃縮ウランみたいに言われても!」
「あっ! 全然ウランみたいな危ないモノじゃないです! 普通のオナラです! 濃縮したオナラです!」
「いやもう濃縮したオナラって危なそうなんですけども、失神しそうな匂いなんですけどもっ」
俺がそう言うと、配達員は菩薩のように微笑み、こう言った。
「人に、よりけり、ですっ」
「いやじゃあダメじゃん! 人によって失神しちゃダメじゃん!」
「まあとにかく嗅いで下さいよ! ここが最後なんです!」
「どんなノルマだ! いやじゃあ嗅いであげるから顔の近くを辞めてほしい!」
俺としては当然の意見だ。
濃縮オナラを開放することがノルマなら、別に顔の近くで開放する必要は無い。
しかし、配達員は少し困った顔をしながら、
「顔の近くで嗅いでもらって、そのリアクションを記録する仕事なんですよぉ」
「どんな仕事ですか! その場合、俺にギャランティが発生しないとおかしいでしょ!」
「あぁ! そうそう! そのお話をすること忘れていました!」
……どうやら何かもらえるらしい、まあしょうもないストラップとかだろうけども。
「ピザあげます!」
「いやピザかい!」
「あっ! この四角い箱の中に濃縮オナラと同居しているわけじゃないですよ! ちゃんと別の箱です!」
ピザか……いやちょうど飯時だから食べたくないわけじゃないけども、う~ん、でもまあそのピザも少し怪しいしな。
でもノルマの達成に協力することが一番の誠実な対応だからな、変に逆上されても怖いし、仕方ない。
「じゃあその濃縮オナラ、嗅いであげていいですよ」
「本当ですか! 有難うございます!」
満面の笑みを浮かべた配達員。
なんて良い笑顔なんだ。
まあそれならいいか、と思いつつも、濃縮オナラに構えた俺。
「じゃあ箱、開けますね!」
そう言って箱を俺の顔に近付け、開けた配達員。
ん! ……んんん? ……いや!
「ピザ!」
「いけない! こっちはピザの箱でした!」
そう言ってピザの箱を俺に手渡した配達員。
俺はそのままピザを玄関にある棚の上に置いた。
まあ美味しそうなピザだったからもらうけども。
「いけない! いけない! こっちでした!」
そう言いながら、道に止まっているバイクのほうへ走っていき、そしてそのままそのバイクに乗って走り去ってしまった配達員。
「いや濃縮オナラはっ!」
渾身のツッコミを飛ばした俺。
結局、何分待っても、何時間待っても、その配達員が俺の家に来ることは無かった。
一体何なんだ。
ちなみにピザは三十分待ったのちに食べ始めた。
全然普通に美味しかったし、体に不調がきたすことも無かった。
次の日の朝は、いつもより目覚めが良かったくらいだ。
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