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【校門前】【高速餅つき】
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・
・【校門前】
・
「悟志! 何かいいことあったっ?」
校門から出る直前に、遼子から話し掛けられた。
遼子ともクラスが違うので、こうやって遼子と会話できるのはやっぱり嬉しいもので。
「別に、いいことなんて無いよ」
「いやでも何かファンができたらしいじゃん! やるじゃん!」
……何でそんなこと知っているんだ、昨日の今日というかまさに今日のことだぞ。
クラスの連中、全然俺のこと見ていない感じだったけども、ちゃんと掌握みたいなことはしてんのかな?
「まあファンというかなんというか、変なヤツだけどね」
「もしかすると悟志に彼女できたりするのかな! そうだったらもっと面白くなりそうじゃん!」
そう手を叩いて笑った遼子。
いや
「面白くなりそうってなんだよ、まあ確かに面白い感じのヤツだけどもな、俺に話し掛けてきた菜乃というヤツは」
「どんどん面白くなってくれよ! 応援してるから!」
そう言ってグッドマークを出した遼子。
いや別に面白さはどうでもいいんだけどな。
遼子は続ける。
「楽しくなければ人生じゃないからな! どんどん楽しくやっていこうぜ!」
「まあ楽しくな、楽しいだけで生きていければそれ以上の幸せは無いけど、なぁ……」
「何その含みを持たせた溜息」
「いやだって最近変な人たちに絡まれまくりで。絶対放課後もあるからなぁ」
でも遼子と一緒に帰れば無いかもしれない、と一瞬思った。
ただそれと同時に、もしかしたら遼子も変なモノに巻き込まれてしまうかもしれないとも思った。
だから
「まあ俺と関わっていると変なことに巻き込まれるかもしれないから、遼子もほどほどにな」
俺のやるせない表情と言葉に対して、遼子は満面の笑みで、
「確かに!」
と言って走り出した。
いや!
「ちょっとは慰めてくれよ!」
俺が大きな声を遼子に飛ばすと、
「何かあったらLIMEでその時の心境聞かせてよ!」
「いや何かあること前提で話を進めるな!」
俺のツッコミには手を振ってバイバイするだけだった。
全く、マジであることを前提にするな。
でも遼子のあの距離感に救われている部分もあって。
明るい日常が俺にはあるということが分かるだけで、少し安心する。
さてと、校門の外に出たら変なヤツらがうじゃうじゃいるだろう。
でもまあなんとか頑張って生きていくことにするかっ!
・
・【高速餅つき】
・
……と思ったら、校門の外にすぐ変なヤツらがいた。
校門の前で高速餅つきをしている二人組がいた。
いや正月以外で見なくていいよ、高速餅つきなんて。
でも高速餅つきをしているだけで、俺に絡んでくる様子は無いので、無視して歩き出した。
勿論振り返らない。
振り返ったら、すぐ真後ろで高速餅つきしていたら怖いから。
とにかくいつも通り、ここで角を曲がって、と行ったところで、さっきと同じ高速餅つきの二人組が高速餅つきしていた。
いや! さっき校門にいたのに! 先回りしてる! いやどうやって!
双子? 双子の2セット?
というかどういう絡みっ?
めちゃくちゃ怖い! 今までの変な人と比べて原理が分からないから怖すぎる!
俺は試しに、いつもの帰路じゃないほうへ歩いてみると、曲がった角でまたあの高速餅つきが先回りしていたのだ!
いや! 明らかに即興でホーミングしてる! 事前に調べて双子・三つ子を揃えているわけじゃない!
同じ二人組が俺をずっと先回りしている! 即興で!
いやもう今までの変わっている人たちと人種が違う! モノが違う!
何なんだよ、その「ハッ! ヤッ!」の掛け声。
俺に目視されてから大声を出すようになりやがって。
角で構えている時は声を出さないようにして、バレないようにしてやがる。
明らかに俺をホーミングしているし、何なんだよ、俺に何の恨みがあるんだよ。
あと今は高速餅つきをしているからいいけども、急に俺に杵を振り下ろして来たらヤバイな。
いや今は高速餅つきをしているからいいことも無いわ、高速餅つきは正月以外ダメだろ。
というかそもそも高速餅つき自体危ないわ、高速餅つきに良いことなんて一個も無いわ。
とにかく、俺は無視するしかなかった。
しかし、一つ試したいこともあるわけで。
それは曲がり角を曲がるフリして、すぐさまさっきいたほうを見るフェイントだ。
なんとかこの高速餅つきの呪いを引きはがしたくなってきた。
餅だからって、いつまでもベタベタくっついてこれると思うなよ!
俺は普通に歩き、曲がり角を曲がりそうになったタイミングで、すぐさまさっきいたほうを見ると、ちゃんとそのさっきいた後方で高速餅つきをしていた。
フェイントに引っかからずか……いやでも今走って曲がり角に行ったら、いないんじゃないか、と思い、急いで前を向いて走り出そうとしたその時だった。
「いけませんね」
目の前に俺に対して杵を振りかぶった男が立っていた。
高速餅つきをしていた男だ。
その男が、俺に向かって、杵を振りかぶっていた。
あっ、殺される、と思ったその時、腰が抜けて、その場に座り込みそうになった刹那、
『ペッタン』
……何かに座った……アスファルトに尻もちつくはずなのに……俺はおそるおそる後ろを振り返ると、そこには臼の中の餅を叩いていた、高速餅つきをやっていたもう一人の男がいてニヤリと笑っていた。
あっ、俺、臼の中の餅に座っている。
餅の上にいるということは、結局、そのまま、杵に叩かれる、あっ、マジで終わりだ。
杵を振り下ろしてきた男、頭をかち割られる、そう思っていたら、
「まあこのへんで許してやりましょうか」
杵を俺の頭上で寸止めさせた男はそう言うと、徐々に透明になっていき、そして杵ごと消えていった。
そして
「イテッ」
変なタイミングで急に尻もちをついた俺。
後ろを振り返ると、臼も餅を叩いていた男もいなくなっていた。
俺は何だったんだと思いつつ、お尻に手をやると、ほのかに餅っぽい粘着質な感じが残っていた。
夢ではない。
餅に座った感じが少し残っているから。
いやでも、何だこの現象。
俺は今まで、変な人にただ絡まれやすくなったと、不運くらいに思っていたけども、もしかするともっと巨大な何かに巻き込まれているのかと思えてきた。
こういう人にあったら逃げるべきなのか、と思うと同時に、ホーミングしてきて逃げられないのでは、とも思った。
迷ったら初心に戻ることが一番だ。
それはおばあちゃんの教えに従うこと。
どんな人にも誠実に対応するしかない、と。
というか今回の高速餅つきには誠実に対応していなかったから、こうなってしまったのかもしれない。
フェイントを入れて、出し抜こうとしたから、ダメだったのかもしれない、と。
今後はどんな人にも誠実に、変な行動をとらずに、実直に対応していこうと心に誓った。
・【校門前】
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「悟志! 何かいいことあったっ?」
校門から出る直前に、遼子から話し掛けられた。
遼子ともクラスが違うので、こうやって遼子と会話できるのはやっぱり嬉しいもので。
「別に、いいことなんて無いよ」
「いやでも何かファンができたらしいじゃん! やるじゃん!」
……何でそんなこと知っているんだ、昨日の今日というかまさに今日のことだぞ。
クラスの連中、全然俺のこと見ていない感じだったけども、ちゃんと掌握みたいなことはしてんのかな?
「まあファンというかなんというか、変なヤツだけどね」
「もしかすると悟志に彼女できたりするのかな! そうだったらもっと面白くなりそうじゃん!」
そう手を叩いて笑った遼子。
いや
「面白くなりそうってなんだよ、まあ確かに面白い感じのヤツだけどもな、俺に話し掛けてきた菜乃というヤツは」
「どんどん面白くなってくれよ! 応援してるから!」
そう言ってグッドマークを出した遼子。
いや別に面白さはどうでもいいんだけどな。
遼子は続ける。
「楽しくなければ人生じゃないからな! どんどん楽しくやっていこうぜ!」
「まあ楽しくな、楽しいだけで生きていければそれ以上の幸せは無いけど、なぁ……」
「何その含みを持たせた溜息」
「いやだって最近変な人たちに絡まれまくりで。絶対放課後もあるからなぁ」
でも遼子と一緒に帰れば無いかもしれない、と一瞬思った。
ただそれと同時に、もしかしたら遼子も変なモノに巻き込まれてしまうかもしれないとも思った。
だから
「まあ俺と関わっていると変なことに巻き込まれるかもしれないから、遼子もほどほどにな」
俺のやるせない表情と言葉に対して、遼子は満面の笑みで、
「確かに!」
と言って走り出した。
いや!
「ちょっとは慰めてくれよ!」
俺が大きな声を遼子に飛ばすと、
「何かあったらLIMEでその時の心境聞かせてよ!」
「いや何かあること前提で話を進めるな!」
俺のツッコミには手を振ってバイバイするだけだった。
全く、マジであることを前提にするな。
でも遼子のあの距離感に救われている部分もあって。
明るい日常が俺にはあるということが分かるだけで、少し安心する。
さてと、校門の外に出たら変なヤツらがうじゃうじゃいるだろう。
でもまあなんとか頑張って生きていくことにするかっ!
・
・【高速餅つき】
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……と思ったら、校門の外にすぐ変なヤツらがいた。
校門の前で高速餅つきをしている二人組がいた。
いや正月以外で見なくていいよ、高速餅つきなんて。
でも高速餅つきをしているだけで、俺に絡んでくる様子は無いので、無視して歩き出した。
勿論振り返らない。
振り返ったら、すぐ真後ろで高速餅つきしていたら怖いから。
とにかくいつも通り、ここで角を曲がって、と行ったところで、さっきと同じ高速餅つきの二人組が高速餅つきしていた。
いや! さっき校門にいたのに! 先回りしてる! いやどうやって!
双子? 双子の2セット?
というかどういう絡みっ?
めちゃくちゃ怖い! 今までの変な人と比べて原理が分からないから怖すぎる!
俺は試しに、いつもの帰路じゃないほうへ歩いてみると、曲がった角でまたあの高速餅つきが先回りしていたのだ!
いや! 明らかに即興でホーミングしてる! 事前に調べて双子・三つ子を揃えているわけじゃない!
同じ二人組が俺をずっと先回りしている! 即興で!
いやもう今までの変わっている人たちと人種が違う! モノが違う!
何なんだよ、その「ハッ! ヤッ!」の掛け声。
俺に目視されてから大声を出すようになりやがって。
角で構えている時は声を出さないようにして、バレないようにしてやがる。
明らかに俺をホーミングしているし、何なんだよ、俺に何の恨みがあるんだよ。
あと今は高速餅つきをしているからいいけども、急に俺に杵を振り下ろして来たらヤバイな。
いや今は高速餅つきをしているからいいことも無いわ、高速餅つきは正月以外ダメだろ。
というかそもそも高速餅つき自体危ないわ、高速餅つきに良いことなんて一個も無いわ。
とにかく、俺は無視するしかなかった。
しかし、一つ試したいこともあるわけで。
それは曲がり角を曲がるフリして、すぐさまさっきいたほうを見るフェイントだ。
なんとかこの高速餅つきの呪いを引きはがしたくなってきた。
餅だからって、いつまでもベタベタくっついてこれると思うなよ!
俺は普通に歩き、曲がり角を曲がりそうになったタイミングで、すぐさまさっきいたほうを見ると、ちゃんとそのさっきいた後方で高速餅つきをしていた。
フェイントに引っかからずか……いやでも今走って曲がり角に行ったら、いないんじゃないか、と思い、急いで前を向いて走り出そうとしたその時だった。
「いけませんね」
目の前に俺に対して杵を振りかぶった男が立っていた。
高速餅つきをしていた男だ。
その男が、俺に向かって、杵を振りかぶっていた。
あっ、殺される、と思ったその時、腰が抜けて、その場に座り込みそうになった刹那、
『ペッタン』
……何かに座った……アスファルトに尻もちつくはずなのに……俺はおそるおそる後ろを振り返ると、そこには臼の中の餅を叩いていた、高速餅つきをやっていたもう一人の男がいてニヤリと笑っていた。
あっ、俺、臼の中の餅に座っている。
餅の上にいるということは、結局、そのまま、杵に叩かれる、あっ、マジで終わりだ。
杵を振り下ろしてきた男、頭をかち割られる、そう思っていたら、
「まあこのへんで許してやりましょうか」
杵を俺の頭上で寸止めさせた男はそう言うと、徐々に透明になっていき、そして杵ごと消えていった。
そして
「イテッ」
変なタイミングで急に尻もちをついた俺。
後ろを振り返ると、臼も餅を叩いていた男もいなくなっていた。
俺は何だったんだと思いつつ、お尻に手をやると、ほのかに餅っぽい粘着質な感じが残っていた。
夢ではない。
餅に座った感じが少し残っているから。
いやでも、何だこの現象。
俺は今まで、変な人にただ絡まれやすくなったと、不運くらいに思っていたけども、もしかするともっと巨大な何かに巻き込まれているのかと思えてきた。
こういう人にあったら逃げるべきなのか、と思うと同時に、ホーミングしてきて逃げられないのでは、とも思った。
迷ったら初心に戻ることが一番だ。
それはおばあちゃんの教えに従うこと。
どんな人にも誠実に対応するしかない、と。
というか今回の高速餅つきには誠実に対応していなかったから、こうなってしまったのかもしれない。
フェイントを入れて、出し抜こうとしたから、ダメだったのかもしれない、と。
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