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【手配癖 大戸小百合】
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・【手配癖 大戸小百合】
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次の日、登校していると、校門の前にこちらに手を振る女子がいた。
その女子はマイクの付いたヘッドフォンをしていて、まるでオペレーターみたいな感じだった。
その子の近くにいくと案の定、話し掛けてきた。
「どうも。私は大戸小百合です。気軽にサユちゃんと呼んで下さい」
特に啓太がツッコむポイントも無かったので、僕も自己紹介しないと、と思って、
「僕は啓太の友達で駿と言います。好きに呼んで下さい。サユちゃん」
すると、すぐさまサユちゃんはヘッドフォンのマイクがしっかり口元にくるよう掴みながら、
「私のこと、ちゃんとサユちゃんと呼んでくれました。今日は宴です。オードブルを手配します」
と言ったので、そこに啓太が即ツッコむ。
「いやそれだけのことで手配するなよ、誰がそのオードブル食べるんだよ」
「私の家に住んでいる執事たちがオードブルを喜んで食べます」
「自分が食うんじゃないのかよ、いないところで祝ってもらうだけかよ」
まあヘッドフォンしている時点でおかしいと思ったけども、このサユちゃんという子もなかなか癖が強い子らしい。
サユちゃんはそのまま僕たちについてきて、喋り始めた。
「何か手配してほしいものがありましたら、ジェット機以外なら何でも手配しますから。宇宙船でも何でも」
そこに啓太が冷静にツッコむ。
「そこまでいけるなら逆に何でジェット機はダメなんだよ」
「ジェット機は使用中だから」
「じゃあそうだろうけども」
サユちゃんの表情を見ても、ボケなのかマジなのかイマイチ分からない。
いやまあボケなんだろうけども、こんな表情を崩さず、淡々とボケるなんて、すごいと思う。
何だか本物のオペレーターみたいだ。いや本物のオペレーター見たこと無いけども。
「それにしてもこんな憧れのお方と会話できるなんて嬉しい、親に連絡していいですか?」
「そんな大層な人間じゃないから、そんなことで親に連絡しないでいい」
「いやもう啓太くんはもう、初めて見た大阪人くらいの価値です」
「いや関西人以外の人が大阪人を見たらちょっとテンション上がるけども。関西弁にドキドキするけども」
この会話を聞いた時に、なんとなく、シュカちゃんのことを思い出した。
その流れでシュカちゃんが言っていた”ちゃんと後方のメンバーには連絡したからな! 前倒しになるってな! まあっ! 連絡が得意な小百合ちゃんに任せただけやけどな!”という台詞を思い出した。
そうか、その時に出た小百合ちゃんって、このサユちゃんのことか。
いやそんな合点はどうでもいいんだ、ちゃんと啓太とサユちゃんの会話を聞いていないと。
「啓太くん、記念に私と二人だけの連絡網をやりませんか?」
「交換日記みたいなこと? いやまあ面倒だから別にやる気は無いけども」
「同じ連絡をずっと、永遠にし合う遊びです」
「通信料の無駄だろ、絶対しないわ」
ここで僕は一言言ってみることにした。
「そう言えばサユちゃんは啓太が憧れの人って言っていたけども、それはボケなの? 本当なの?」
すぐさま啓太が、
「そりゃボケに決まっているだろ、だって俺に憧れる要素ゼロじゃん」
と言ったけども、僕には正直ある。
啓太はツッコミが巧い。
それは間が良いという意味でもあるし、ボキャブラリーが豊富という意味でもあるし、物怖じしないという意味でもある。
さて、サユちゃんはどう言うかなと思っていると、
「今までご自宅に連絡したことはありませんでしたが、私は啓太くんに本当に憧れていますよ」
そう言ってニッコリ、優しく微笑んだサユちゃん。
その顔に嘘偽りは感じられなかった。
啓太は面を喰らったみたいに、ちょっとビクンと体を波打たせると、少し頬を赤くしながら、
「いやいや、ご自宅に連絡されていたら困っていたけどなっ」
さすがの啓太も憧れの人と言われると、ドキリとしたみたいだ。
こういうことで啓太の冷静さが少し欠けるとは思わなかったなぁ、とか思っていると啓太が僕のことを見ながら、
「そういう部分を掘り下げなくていいんだよ」
と僕の肩を叩いてきた。
いやでも
「嬉しそうだからいいじゃないか」
と僕が言うと、啓太が、
「別に普通、普通だから」
と言ったところでサユちゃんがカットインしてきて、
「でも感触は悪くないようなので、一応オードブル手配お願いします」
「いや一応でオードブル手配するなよ、オードブルは盆か正月だけにしとけよ」
「オードブルと言ってもエビチリだけのヤツなんで」
「じゃあエビチリだろ、いろんな種類が無いならエビチリだろ」
啓太はすぐさまツッコミのテンションになるなぁ。
その切り替えもすごいと思う。
そんな感じで会話していって、サユちゃんのターンは終わったらしい。
ただサユちゃんはそのまま教室まで入って来て、マイクを手で掴みながら、クラスメイトの菜乃ちゃんに話し掛け、
「菜乃ちゃんが候補の最後なので、もう受け渡します」
と言っていた。
そこに啓太はすかさず、
「いや直接言っているのならマイク関係無いだろ」
とツッコんでいた。
というか最後の候補まできたんだ。
菜乃ちゃんはこちらを見て不敵に笑っていたので、きっと今日の昼休みは激しいボケがやって来るに違いない。
・【手配癖 大戸小百合】
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次の日、登校していると、校門の前にこちらに手を振る女子がいた。
その女子はマイクの付いたヘッドフォンをしていて、まるでオペレーターみたいな感じだった。
その子の近くにいくと案の定、話し掛けてきた。
「どうも。私は大戸小百合です。気軽にサユちゃんと呼んで下さい」
特に啓太がツッコむポイントも無かったので、僕も自己紹介しないと、と思って、
「僕は啓太の友達で駿と言います。好きに呼んで下さい。サユちゃん」
すると、すぐさまサユちゃんはヘッドフォンのマイクがしっかり口元にくるよう掴みながら、
「私のこと、ちゃんとサユちゃんと呼んでくれました。今日は宴です。オードブルを手配します」
と言ったので、そこに啓太が即ツッコむ。
「いやそれだけのことで手配するなよ、誰がそのオードブル食べるんだよ」
「私の家に住んでいる執事たちがオードブルを喜んで食べます」
「自分が食うんじゃないのかよ、いないところで祝ってもらうだけかよ」
まあヘッドフォンしている時点でおかしいと思ったけども、このサユちゃんという子もなかなか癖が強い子らしい。
サユちゃんはそのまま僕たちについてきて、喋り始めた。
「何か手配してほしいものがありましたら、ジェット機以外なら何でも手配しますから。宇宙船でも何でも」
そこに啓太が冷静にツッコむ。
「そこまでいけるなら逆に何でジェット機はダメなんだよ」
「ジェット機は使用中だから」
「じゃあそうだろうけども」
サユちゃんの表情を見ても、ボケなのかマジなのかイマイチ分からない。
いやまあボケなんだろうけども、こんな表情を崩さず、淡々とボケるなんて、すごいと思う。
何だか本物のオペレーターみたいだ。いや本物のオペレーター見たこと無いけども。
「それにしてもこんな憧れのお方と会話できるなんて嬉しい、親に連絡していいですか?」
「そんな大層な人間じゃないから、そんなことで親に連絡しないでいい」
「いやもう啓太くんはもう、初めて見た大阪人くらいの価値です」
「いや関西人以外の人が大阪人を見たらちょっとテンション上がるけども。関西弁にドキドキするけども」
この会話を聞いた時に、なんとなく、シュカちゃんのことを思い出した。
その流れでシュカちゃんが言っていた”ちゃんと後方のメンバーには連絡したからな! 前倒しになるってな! まあっ! 連絡が得意な小百合ちゃんに任せただけやけどな!”という台詞を思い出した。
そうか、その時に出た小百合ちゃんって、このサユちゃんのことか。
いやそんな合点はどうでもいいんだ、ちゃんと啓太とサユちゃんの会話を聞いていないと。
「啓太くん、記念に私と二人だけの連絡網をやりませんか?」
「交換日記みたいなこと? いやまあ面倒だから別にやる気は無いけども」
「同じ連絡をずっと、永遠にし合う遊びです」
「通信料の無駄だろ、絶対しないわ」
ここで僕は一言言ってみることにした。
「そう言えばサユちゃんは啓太が憧れの人って言っていたけども、それはボケなの? 本当なの?」
すぐさま啓太が、
「そりゃボケに決まっているだろ、だって俺に憧れる要素ゼロじゃん」
と言ったけども、僕には正直ある。
啓太はツッコミが巧い。
それは間が良いという意味でもあるし、ボキャブラリーが豊富という意味でもあるし、物怖じしないという意味でもある。
さて、サユちゃんはどう言うかなと思っていると、
「今までご自宅に連絡したことはありませんでしたが、私は啓太くんに本当に憧れていますよ」
そう言ってニッコリ、優しく微笑んだサユちゃん。
その顔に嘘偽りは感じられなかった。
啓太は面を喰らったみたいに、ちょっとビクンと体を波打たせると、少し頬を赤くしながら、
「いやいや、ご自宅に連絡されていたら困っていたけどなっ」
さすがの啓太も憧れの人と言われると、ドキリとしたみたいだ。
こういうことで啓太の冷静さが少し欠けるとは思わなかったなぁ、とか思っていると啓太が僕のことを見ながら、
「そういう部分を掘り下げなくていいんだよ」
と僕の肩を叩いてきた。
いやでも
「嬉しそうだからいいじゃないか」
と僕が言うと、啓太が、
「別に普通、普通だから」
と言ったところでサユちゃんがカットインしてきて、
「でも感触は悪くないようなので、一応オードブル手配お願いします」
「いや一応でオードブル手配するなよ、オードブルは盆か正月だけにしとけよ」
「オードブルと言ってもエビチリだけのヤツなんで」
「じゃあエビチリだろ、いろんな種類が無いならエビチリだろ」
啓太はすぐさまツッコミのテンションになるなぁ。
その切り替えもすごいと思う。
そんな感じで会話していって、サユちゃんのターンは終わったらしい。
ただサユちゃんはそのまま教室まで入って来て、マイクを手で掴みながら、クラスメイトの菜乃ちゃんに話し掛け、
「菜乃ちゃんが候補の最後なので、もう受け渡します」
と言っていた。
そこに啓太はすかさず、
「いや直接言っているのならマイク関係無いだろ」
とツッコんでいた。
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