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【01 泣き声】

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・【01 泣き声】


《うわぁぁああああああああん!》
 この泣き声は間違いない……校長先生だ!
 僕は走って校長室へ駆けつける。
 そんな僕を追いかけてくる一人の生徒。
「生徒会長! 廊下を走っちゃいけませんよっ!」
「いや! 桜さんも走ってる!」
 僕を追いかけてきた生徒、桜さんは僕の横並びになり、さらに完全に追い越した。
「どんなもんですかっ! 私すごいですよねっ!」
 そう言いながら首だけ振り返ってきた桜さん、かなり嬉しそうな表情だ。
 というか!
「桜さん! 前! 前っ!」
「えっ?」
 どっしーん!
 前を歩いていた先生に桜さんはぶつかってしまった!
 ……でも良かった、去年まで相撲取りをしていた木佐先生だったので受け止めてくれた。
「走ることは運動に良いことでごわすが、前を見ないことは良くないことでごわす」
 そう言ってその場を去った木佐先生。
 まあ走ることも廊下の場合はダメなんだけども。
 いやそんなことより、今は校長先生だっ!
《うわぁぁぁああああああああああああん!》
 校長先生の泣き声は、校長室からグワァングワァンと聞こえてくる。
 大人にしては妙に甲高いその声が、耳鳴りのように響いている。
 そしていつも思うが、何で校長先生の声はこうやってエコーが掛かっているのだろうか。ロボットなのかな?
 僕は早く話を聞くために、校長室をノックせずに一気に入っていった。
「失礼します! 生徒会長の妻夫木です! 校長先生がどうしたんですかっ!」
 それに習ってついてきた桜さんも挨拶をする。 
「副会長の桜です! 妻夫木くんについてきました!」
「いや! 僕についてきたことがメインっ? 校長先生が気になったからでしょ!」
「いやもう私は妻夫木くんのことが気になって気になって仕方ありません!」
 そう言って僕の顔に顔を近付けてきた桜さん。
 いやいや、近い近い、いっつも桜さんって近いんだから。
 まあそれより、僕と桜さんの登場に安心したのか、ニッコリして泣き止んだ校長先生はこう言った。
《アオハルかよ》
「泣いている校長先生の元に駆けつけて何がアオハルなんですか!」
《いや妻夫木くんと桜ちゃんは仲が良いなぁと思って》
 そう校長先生が言うと、自信満々に胸を叩きながら桜さんはこう言った。
「そうなんです! 唯一無二! つまりムーニーなんです!」
 いやいや。
「ムーニーってなんなんだっ! 唯一無二のことそんな柔らかい言葉みたいにしないよ!」
「柔らかい関係でありたいと考えています」
 そう朗らかに言い切った桜さん。
 いやいや。
「普通に生徒会長と副会長の関係ね! というか校長先生! 何で泣いていたんですかっ!」
《朝から元気だね》
「いやもう朝からフルスロットルで泣いている校長先生のほうが元気ですよ!」
 そう校長先生と、早く理由を聞きたいのに、いらない会話をしていると、桜さんがその場で大きくピョンピョン飛び跳ね、ツインテールを激しく揺らしながら、
「私のほうが元気です! 私のほうが元気です! 勝者は私ですよね! 妻夫木さん! ねっ! ねっ!」
 と、大きな瞳をランランと輝かせながら、満面の笑みでこっちを見てきたので、
「いや! そんなんはどうでもいい! 校長先生の泣いていた理由からお願いします!」
《今日の新入生の入学式、一丁かましてやりたいのに、教頭先生が止めるんだ》
「それは教頭先生が正しいぃっ!」
 本当に毎度毎度、いつもいつもこんな感じだ。
 この学校は。
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