上 下
14 / 18

【14 体力測定の七不思議】

しおりを挟む

・【14 体力測定の七不思議】


 最初はグラウンドのあたりを歩いたんだけども体力測定の七不思議は出てこない。
 私が壁太郎くんへ、
「もしかするとずっと隠れているとかありえる?」
 と聞くと、壁太郎くんは首を横に振って、
「いいや、力也は好戦的だべ。闘ってくれそうな相手が見つかれば必ず挑んでくるべ」
 するとトースが、
「ただし力也は体力を温存するため、自分が決めた場所から動かず相手をずっと待っている傾向にあります。だから単純にグラウンドにはいないんだと思います」
 ガガくんが腕を後ろ頭に置きながら、
「でもこうやって全部探すのは面倒だぜ、確かに我たちは闇あやかし様の引力のせいでここから出られないから範囲は決まっているけども、さすがに面倒だぜ」
 私はふとトースくんへ、
「そう言えばトースくんは闇に引き込むあやかしの手下みたいな感じで私たちに勝負を挑んだけども、その闇に引き込むあやかしは私たちがこういう行動をとっているということを知ってるの?」
「闇あやかし様は知っていますよ。だからゆっくり経験値を与える前に俺が挑みに来たんです。まあ返り討ちというか俺が緋色さんと壁太郎のほうを見込んだので、こうなっていますけども」
「じゃあガガくんは?」
「我は闇あやかし様とは、つるまないようにしてるぜ。自分磨きというモノはある種孤高なんだぜ。だがついにこうやって仲間を作ってラスボスに挑むというわけだぜ。最高の展開だぜ」
 そう言って前髪をさらりとなびかせてカッコつけたガガくん。
 それはまあいいとして、
「じゃあ体力測定の七不思議の、その力也くんというのは闇に引き込むあやかしの仲間? 関係無い人?」
 すぐさまトースくんが答えた。
「仲間ですよ。闇あやかし様に人間の性格を捻じ曲げてもらって、好戦的にして、自分と体力測定で対決させてもらうとかやっていましたし」
「何その関係性、ちょっと嫌だなぁ。でもうん、分かったよ、その力也くんというあやかしの居場所」
 トースくんは目を丸くしながら、
「どこですか! でもさすが緋色さん! 見込んだ通りの頭の良さです!」
 お褒めサンキュー過ぎ、と思いながら私は喋り出した。
「体力測定の七不思議って疲れるんでしょ? つまり疲れさせたところで闇に引き込むあやかしは私たちを倒したいと思っているはず。だから旧校舎の周りにいるんじゃないかな?」
「それだべ!」
「それです!」
「それだぜ!」
 絶妙にユニゾンしない三人だな、と思いつつ私たちは旧校舎の周りへ行くと、案の定、そこには筋肉隆々の、ゴリマッチョのあやかしがいた。
 トースくんは大きな声で、
「力也! 俺たちは強いから降参したほうがいいですよ!」
 それに対して力也くんは舌打ちをしてから、
「裏切り者め……そういうすぐに寝返る姿勢はダサいからやめたほうがいいぞ。それに」
 そう言うと、力也くんはガガくんのほうを指差しながら、こう言った。
「ガガ、テメェのことは昔から気に食わなかった。自分磨きとか言って全然俺様と勝負をしなかったテメェがな。まあ俺様にビビッていたと思うんだがな」
「いやいや全然、他人に興味無かったから」
 そうあっけらかんと言ったガガくん。
 清々しいと言えば清々しいけども、ちょっと力也くんが気の毒なほどのアウト・オブ・眼中だった。
 力也くんは額のあたりをぴくぴくさせて、完全にキレているといった感じだ。
 力也くんはデカい声で「おぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」と咆哮を上げてから、こう叫んだ。
「俺様は正々堂々と闘う! さぁ! 勝負だ! 体力測定するぞぉぉおおおおお!」
 ガガくんはサムズアップしながら、
「望むところだぜ!」
 と爽やかに言い放った。
 全然怒りの感情とかない、本当に純粋そうにそう言った。
 多分そんな所作も気に食わないのだろう、力也くんはイライラした瞳で向こうのほうへ指差し、
「あそこからここまでがちょうど50メートルだ、まずは体力測定の花形、50メートル走でバトル……だが! トース! 風で追い風にするとか無しだぞ?」
 するとガガくんが、
「いらないぜ、そんなん。我が普通にやれば普通に勝てるぜ。自分磨きの達人を舐めないでほしいぜ」
 そう言って力也くんの隣に立ったガガくん。
 力也くんはクラウチングスタートの姿勢になると、
「よーい、スタート!」
 と言ってなんと急に走り出したのだ。
 えっ? 正々堂々とか言っていたくせに、スタートは自分で言うってちょっと卑怯では? と思ったんだけども、ぐんぐんガガくんが追い抜き、終わってみればガガくんの圧勝だった。
 これ、この時点でもう力也くんに勝ち目はないのでは、と思ってしまった。
 力也くんは一丁前に悔しがっている。
 あんな卑怯な始まりしたくせに、何であんなに悔しがられるんだろうか。
 私、ちょっと心配。
 力也くんはまた「おぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」という咆哮を上げてから、
「次は垂直ジャンプだ!」
 と叫んだ。
 ちょっと古いと思った。
 今の時代は垂直ジャンプは無いから。令和は立ち幅跳びだけになっている。
 でも垂直ジャンプにする理由が分かった。
 何故なら力也くんはあえて地面の、ちょっと盛り上がったところに立ち、ガガくんを、地面が少しへこんだところに誘導したからだ。
 さっきからちょいちょい卑怯だ、こういう卑怯をするために、垂直ジャンプにしているんだ。
 まずは力也くんが垂直ジャンプをした。まあそれなりに高いとは思う。でも筋肉隆々の筋肉が邪魔して、ちょっと重そうだった。
 対するガガくんは軽やかにジャンプして、小学生用のバスケットゴールには余裕でダンクシュート決められるほどに跳んだ。
 つまりは圧勝だった。あんな卑怯をかましているのに、全然普通に負ける。何これ、強くない。いやガガくんが強いのかもしれないけども。
 何番勝負か分からないけども、このまま圧勝だろうなと思っていると、力也くんがどこからともなく砲丸を取り出した。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

鎌倉西小学校ミステリー倶楽部

澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】 https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230 【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】 市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。 学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。 案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。 ……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。 ※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。 ※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。 ※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。 ※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)

オオカミ少女と呼ばないで

柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。 空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように―― 表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。

守護霊のお仕事なんて出来ません!

柚月しずく
児童書・童話
事故に遭ってしまった未蘭が目が覚めると……そこは死後の世界だった。 死後の世界には「死亡予定者リスト」が存在するらしい。未蘭はリストに名前がなく「不法侵入者」と責められてしまう。 そんな未蘭を救ってくれたのは、白いスーツを着た少年。柊だった。 助けてもらいホッとしていた未蘭だったが、ある選択を迫られる。 ・守護霊代行の仕事を手伝うか。 ・死亡手続きを進められるか。 究極の選択を迫られた未蘭。 守護霊代行の仕事を引き受けることに。 人には視えない存在「守護霊代行」の任務を、なんとかこなしていたが……。 「視えないはずなのに、どうして私のことがわかるの?」 話しかけてくる男の子が現れて――⁉︎ ちょっと不思議で、信じられないような。だけど心温まるお話。

夢の中で人狼ゲーム~負けたら存在消滅するし勝ってもなんかヤバそうなんですが~

世津路 章
児童書・童話
《蒲帆フウキ》は通信簿にも“オオカミ少年”と書かれるほどウソつきな小学生男子。 友達の《東間ホマレ》・《印路ミア》と一緒に、時々担任のこわーい本間先生に怒られつつも、おもしろおかしく暮らしていた。 ある日、駅前で配られていた不思議なカードをもらったフウキたち。それは、夢の中で行われる《バグストマック・ゲーム》への招待状だった。ルールは人狼ゲームだが、勝者はなんでも願いが叶うと聞き、フウキ・ホマレ・ミアは他の参加者と対決することに。 だが、彼らはまだ知らなかった。 ゲームの敗者は、現実から存在が跡形もなく消滅すること――そして勝者ですら、ゲームに潜む呪いから逃れられないことを。 敗退し、この世から消滅した友達を取り戻すため、フウキはゲームマスターに立ち向かう。 果たしてウソつきオオカミ少年は、勝っても負けても詰んでいる人狼ゲームに勝利することができるのだろうか? 8月中、ほぼ毎日更新予定です。 (※他小説サイトに別タイトルで投稿してます)

笑いの授業

ひろみ透夏
児童書・童話
大好きだった先先が別人のように変わってしまった。 文化祭前夜に突如始まった『笑いの授業』――。 それは身の毛もよだつほどに怖ろしく凄惨な課外授業だった。 伏線となる【神楽坂の章】から急展開する【高城の章】。 追い詰められた《神楽坂先生》が起こした教師としてありえない行動と、その真意とは……。

笑わない少女

青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
笑わない少女を笑わせたら1億円の報酬。 しかしその少女は感情を無くしたわけではなくて、笑いに厳しいという意味だったのだ! 辛辣な審査コメント系ギャグ児童小説!

銀河ラボのレイ

あまくに みか
児童書・童話
月うさぎがぴょんと跳ねる月面に、銀河ラボはある。 そこに住むレイ博士は、いるはずのない人間の子どもを見つけてしまう。 子どもは、いったい何者なのか? 子どもは、博士になにをもたらす者なのか。 博士が子どもと銀河ラボで過ごした、わずかな時間、「生きること、死ぬこと、生まれること」を二人は知る。 素敵な表紙絵は惑星ハーブティ様です。

もう一つの小学校

ゆきもと けい
児童書・童話
パラレルワールドという世界をご存じだろうか・・・ 異世界や過去や未来とは違う現在のもう一つの世界・・・ これはパラレルワールドで、もう一つの別世界の同じ小学校へ行った先生と生徒たちの物語です。 同じ時間が流れているのに、自分たちが通っている小学校とは全く違う世界・・・ ここの自分たちが全く違うことに戸惑いながらも、現実としてそれを受け入れる生徒たち・・・ そして、元の世界に戻ってきた生徒たちが感じた事とは・・・ 読んで頂けてら幸いです。

処理中です...