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【14 体力測定の七不思議】

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・【14 体力測定の七不思議】


 最初はグラウンドのあたりを歩いたんだけども体力測定の七不思議は出てこない。
 私が壁太郎くんへ、
「もしかするとずっと隠れているとかありえる?」
 と聞くと、壁太郎くんは首を横に振って、
「いいや、力也は好戦的だべ。闘ってくれそうな相手が見つかれば必ず挑んでくるべ」
 するとトースが、
「ただし力也は体力を温存するため、自分が決めた場所から動かず相手をずっと待っている傾向にあります。だから単純にグラウンドにはいないんだと思います」
 ガガくんが腕を後ろ頭に置きながら、
「でもこうやって全部探すのは面倒だぜ、確かに我たちは闇あやかし様の引力のせいでここから出られないから範囲は決まっているけども、さすがに面倒だぜ」
 私はふとトースくんへ、
「そう言えばトースくんは闇に引き込むあやかしの手下みたいな感じで私たちに勝負を挑んだけども、その闇に引き込むあやかしは私たちがこういう行動をとっているということを知ってるの?」
「闇あやかし様は知っていますよ。だからゆっくり経験値を与える前に俺が挑みに来たんです。まあ返り討ちというか俺が緋色さんと壁太郎のほうを見込んだので、こうなっていますけども」
「じゃあガガくんは?」
「我は闇あやかし様とは、つるまないようにしてるぜ。自分磨きというモノはある種孤高なんだぜ。だがついにこうやって仲間を作ってラスボスに挑むというわけだぜ。最高の展開だぜ」
 そう言って前髪をさらりとなびかせてカッコつけたガガくん。
 それはまあいいとして、
「じゃあ体力測定の七不思議の、その力也くんというのは闇に引き込むあやかしの仲間? 関係無い人?」
 すぐさまトースくんが答えた。
「仲間ですよ。闇あやかし様に人間の性格を捻じ曲げてもらって、好戦的にして、自分と体力測定で対決させてもらうとかやっていましたし」
「何その関係性、ちょっと嫌だなぁ。でもうん、分かったよ、その力也くんというあやかしの居場所」
 トースくんは目を丸くしながら、
「どこですか! でもさすが緋色さん! 見込んだ通りの頭の良さです!」
 お褒めサンキュー過ぎ、と思いながら私は喋り出した。
「体力測定の七不思議って疲れるんでしょ? つまり疲れさせたところで闇に引き込むあやかしは私たちを倒したいと思っているはず。だから旧校舎の周りにいるんじゃないかな?」
「それだべ!」
「それです!」
「それだぜ!」
 絶妙にユニゾンしない三人だな、と思いつつ私たちは旧校舎の周りへ行くと、案の定、そこには筋肉隆々の、ゴリマッチョのあやかしがいた。
 トースくんは大きな声で、
「力也! 俺たちは強いから降参したほうがいいですよ!」
 それに対して力也くんは舌打ちをしてから、
「裏切り者め……そういうすぐに寝返る姿勢はダサいからやめたほうがいいぞ。それに」
 そう言うと、力也くんはガガくんのほうを指差しながら、こう言った。
「ガガ、テメェのことは昔から気に食わなかった。自分磨きとか言って全然俺様と勝負をしなかったテメェがな。まあ俺様にビビッていたと思うんだがな」
「いやいや全然、他人に興味無かったから」
 そうあっけらかんと言ったガガくん。
 清々しいと言えば清々しいけども、ちょっと力也くんが気の毒なほどのアウト・オブ・眼中だった。
 力也くんは額のあたりをぴくぴくさせて、完全にキレているといった感じだ。
 力也くんはデカい声で「おぉぉおおおおおおおおおおおおおおおお!」と咆哮を上げてから、こう叫んだ。
「俺様は正々堂々と闘う! さぁ! 勝負だ! 体力測定するぞぉぉおおおおお!」
 ガガくんはサムズアップしながら、
「望むところだぜ!」
 と爽やかに言い放った。
 全然怒りの感情とかない、本当に純粋そうにそう言った。
 多分そんな所作も気に食わないのだろう、力也くんはイライラした瞳で向こうのほうへ指差し、
「あそこからここまでがちょうど50メートルだ、まずは体力測定の花形、50メートル走でバトル……だが! トース! 風で追い風にするとか無しだぞ?」
 するとガガくんが、
「いらないぜ、そんなん。我が普通にやれば普通に勝てるぜ。自分磨きの達人を舐めないでほしいぜ」
 そう言って力也くんの隣に立ったガガくん。
 力也くんはクラウチングスタートの姿勢になると、
「よーい、スタート!」
 と言ってなんと急に走り出したのだ。
 えっ? 正々堂々とか言っていたくせに、スタートは自分で言うってちょっと卑怯では? と思ったんだけども、ぐんぐんガガくんが追い抜き、終わってみればガガくんの圧勝だった。
 これ、この時点でもう力也くんに勝ち目はないのでは、と思ってしまった。
 力也くんは一丁前に悔しがっている。
 あんな卑怯な始まりしたくせに、何であんなに悔しがられるんだろうか。
 私、ちょっと心配。
 力也くんはまた「おぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおお!」という咆哮を上げてから、
「次は垂直ジャンプだ!」
 と叫んだ。
 ちょっと古いと思った。
 今の時代は垂直ジャンプは無いから。令和は立ち幅跳びだけになっている。
 でも垂直ジャンプにする理由が分かった。
 何故なら力也くんはあえて地面の、ちょっと盛り上がったところに立ち、ガガくんを、地面が少しへこんだところに誘導したからだ。
 さっきからちょいちょい卑怯だ、こういう卑怯をするために、垂直ジャンプにしているんだ。
 まずは力也くんが垂直ジャンプをした。まあそれなりに高いとは思う。でも筋肉隆々の筋肉が邪魔して、ちょっと重そうだった。
 対するガガくんは軽やかにジャンプして、小学生用のバスケットゴールには余裕でダンクシュート決められるほどに跳んだ。
 つまりは圧勝だった。あんな卑怯をかましているのに、全然普通に負ける。何これ、強くない。いやガガくんが強いのかもしれないけども。
 何番勝負か分からないけども、このまま圧勝だろうなと思っていると、力也くんがどこからともなく砲丸を取り出した。
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