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【11 飼育室へ】
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・【11 飼育室へ】
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私たちの小学校はもう動物を飼っていない。
理由は昔と比べて小学生の休日が増えて、動物の世話をする時間が減ってしまったかららしい。
昔は土曜日も小学校があったらしくて、その時代はまだまだ飼えていたらしい。
でも飼育室という部屋はまだ残っていて。
まあ網で覆われていて、動物がいた場所だから、普通の教室にリノベーションもできないから当然だけども。
飼育室に行くと、何だか動物の鳴き声が聞こえた。
壁太郎くんが喋り出した。
「僕が時間を止めているから、周りを気にせず出現しているべ」
私は網の中に、薄っすらと、透明なウサギたちがうごめいていることを確認できた。
「壁太郎! 緋色! どうするんですか! 攻撃して消滅させますか!」
そんなことを言ったトースくんに対して私は、
「そんな可哀想なことはしたくないよ」
「でも! 誰もいない飼育室から声がしたらみんな嫌がると思います!」
私はう~んと唸ってから、
「どこかに移動できるといいんだけども」
すると壁太郎くんが、
「僕たちも裏山あたりまでなら動けるべ、そこにこのウサギたちの新しい寝床を作ってあげるべ」
トースくんもうんうん頷いて、
「それならいいですね! 裏山なら邪魔にならないです!」
「じゃあ早速裏山に寝床を先に作りに行くべ」
私と壁太郎くんとトースくんは裏山に行き、私は枝を使って地面に設計図を描き、それに合わせて壁太郎くんが新しい寝床を作った。
トースくんは特にやることもなかったけども、一生懸命私と壁太郎くんの応援してくれて、時折、優しく冷たい風を当ててくれて涼しかった。
飼育室に戻って、飼育室のドアを開けたんだけども、ウサギたちは一切出てくる様子が無い。
掴んで移動させようにも、すぐ私たちの腕から脱出して飼育室に戻ってしまう。
言葉もどうやら通じる様子も無い。
どうしようと硬直状態になるとトースくんが手を挙げてからこう言った。
「俺が風で飛ばします!」
「ダメだよ! 荒っぽいよ!」
と私がツッコむと、
「でもそれしかないですよ!」
「全然ダメだよ! ウサギさんの呼び方が羽だから飛ぶんだねぇ、じゃないんだよ!」
すると壁太郎くんが、
「じゃあまず僕が新しい寝床までの道に壁を作るべ、あとはゆっくり後ろから押し出せば行ってくれると思うべ」
「ゆっくり押し出すところがちょっと相撲取りの案みたいで怪しいけども、確かに道のりに壁があるといいかもしれないね」
というわけで壁太郎くんが裏山の寝床までの道に壁を作ってくれた。
あとは押し出すとは、と思っていると、戻ってきた壁太郎くんが、
「じゃあ壁を出現させて三人で押してくべ」
いや!
「風で飛ばすの亜流! もっとウサギさんに優しくしようよ! 何か行きたくなるようなモノを作るとか!」
するとトースくんが、
「ウサギが好きなモノってなんですか!」
「ウサギさんは前歯をカリカリできる香り高い木とか好きなんだけども、そんなモノは無いもんねぇ」
「それなら俺が作りますよ! 発想を飛ばします! ちょっと疲れるけども使いますよ! 発想の能力!」
それだ! と思った私は近くにあった木の枝をトースくんに渡そうとすると、
「それはダメです! 俺の能力は発想を飛ばさないとダメなんです! 木から木は近いからダメなんです!」
変なとこ厳格だなぁ、と思いつつも、壁太郎くんのほうを見ると、壁太郎くんはすぐさま窓を出現させ、
「これならガラス製だから遠いべ」
「さすが壁太郎です! 発想を飛ばして香り高い木にします!」
そう言って窓に手をかざすと、みるみる良い香りがする木になった。
するとすぐさまウサギさんたちが反応し、その木を持っているトースのほうへ寄ってきたので、
「トースくん! そのまま裏山まで誘導して!」
「分かりました!」
そう言ってトースくんは壁で道筋を立てた中を歩き、私と壁太郎くんはその外から見て、見守っていった。
ウサギさんたちが無事みんな寝床がある裏山に着くと、嬉しそうに寝床の中に入っていった。
これで一安心かなと思っていると、何匹か寝床から出てきて、私や壁太郎くんやトースくんの前でぴょんぴょん跳ね始めた。
私は小首を傾げながら、
「一緒に遊んでほしいのかな?」
トースくんはウサギさんを掴み、高い高いしてあげると、即ウサギさんはトースくんの腕から離れて、今度は壁太郎くんの近くで跳ね始めた。
「遊んでほしいわけじゃないみたいだべ、何かが足りないんだべ?」
ウサギさんが欲しているモノって、全員分のカリカリする木?
でも新しい寝床が見つかったら、もうそれどころじゃないって感じもある。
でも何かを欲している……ということは、
「壁太郎くん、ちょっとやる気が無い感じになってもらうことってできる?」
「どういうことだべ?」
「さっき出したワラの家を出すことってできる?」
「なるほど、ワラが欲しいんだべ」
どうやら壁太郎くんに伝わったらしい。というか最初からそう言えば良かった。
ウサギさんはワラが大好きだ。ウサギさんの寝床にはワラが敷き詰められているモノだ。きっとそれが欲しかったんだ。
壁太郎くんがワラの家を出して、そのワラの家を解体して、そのワラを寝床に敷き詰めると、私たちのそばで跳ねていたウサギさんたちも寝床の中に入っていった。
「何だか上手くいったね! 私も壁太郎くんもトースくんも相性がいいね!」
壁太郎くんは照れ臭そうに笑い、トースくんは笑顔で、
「はいっ! そうですね!」
と答えた。
そうハッキリ返事されると私も恥ずかしくなっちゃうな、と、照れ笑いを浮かべた。
さて、残りの七不思議は三つ、全部解決するぞ!
・【11 飼育室へ】
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私たちの小学校はもう動物を飼っていない。
理由は昔と比べて小学生の休日が増えて、動物の世話をする時間が減ってしまったかららしい。
昔は土曜日も小学校があったらしくて、その時代はまだまだ飼えていたらしい。
でも飼育室という部屋はまだ残っていて。
まあ網で覆われていて、動物がいた場所だから、普通の教室にリノベーションもできないから当然だけども。
飼育室に行くと、何だか動物の鳴き声が聞こえた。
壁太郎くんが喋り出した。
「僕が時間を止めているから、周りを気にせず出現しているべ」
私は網の中に、薄っすらと、透明なウサギたちがうごめいていることを確認できた。
「壁太郎! 緋色! どうするんですか! 攻撃して消滅させますか!」
そんなことを言ったトースくんに対して私は、
「そんな可哀想なことはしたくないよ」
「でも! 誰もいない飼育室から声がしたらみんな嫌がると思います!」
私はう~んと唸ってから、
「どこかに移動できるといいんだけども」
すると壁太郎くんが、
「僕たちも裏山あたりまでなら動けるべ、そこにこのウサギたちの新しい寝床を作ってあげるべ」
トースくんもうんうん頷いて、
「それならいいですね! 裏山なら邪魔にならないです!」
「じゃあ早速裏山に寝床を先に作りに行くべ」
私と壁太郎くんとトースくんは裏山に行き、私は枝を使って地面に設計図を描き、それに合わせて壁太郎くんが新しい寝床を作った。
トースくんは特にやることもなかったけども、一生懸命私と壁太郎くんの応援してくれて、時折、優しく冷たい風を当ててくれて涼しかった。
飼育室に戻って、飼育室のドアを開けたんだけども、ウサギたちは一切出てくる様子が無い。
掴んで移動させようにも、すぐ私たちの腕から脱出して飼育室に戻ってしまう。
言葉もどうやら通じる様子も無い。
どうしようと硬直状態になるとトースくんが手を挙げてからこう言った。
「俺が風で飛ばします!」
「ダメだよ! 荒っぽいよ!」
と私がツッコむと、
「でもそれしかないですよ!」
「全然ダメだよ! ウサギさんの呼び方が羽だから飛ぶんだねぇ、じゃないんだよ!」
すると壁太郎くんが、
「じゃあまず僕が新しい寝床までの道に壁を作るべ、あとはゆっくり後ろから押し出せば行ってくれると思うべ」
「ゆっくり押し出すところがちょっと相撲取りの案みたいで怪しいけども、確かに道のりに壁があるといいかもしれないね」
というわけで壁太郎くんが裏山の寝床までの道に壁を作ってくれた。
あとは押し出すとは、と思っていると、戻ってきた壁太郎くんが、
「じゃあ壁を出現させて三人で押してくべ」
いや!
「風で飛ばすの亜流! もっとウサギさんに優しくしようよ! 何か行きたくなるようなモノを作るとか!」
するとトースくんが、
「ウサギが好きなモノってなんですか!」
「ウサギさんは前歯をカリカリできる香り高い木とか好きなんだけども、そんなモノは無いもんねぇ」
「それなら俺が作りますよ! 発想を飛ばします! ちょっと疲れるけども使いますよ! 発想の能力!」
それだ! と思った私は近くにあった木の枝をトースくんに渡そうとすると、
「それはダメです! 俺の能力は発想を飛ばさないとダメなんです! 木から木は近いからダメなんです!」
変なとこ厳格だなぁ、と思いつつも、壁太郎くんのほうを見ると、壁太郎くんはすぐさま窓を出現させ、
「これならガラス製だから遠いべ」
「さすが壁太郎です! 発想を飛ばして香り高い木にします!」
そう言って窓に手をかざすと、みるみる良い香りがする木になった。
するとすぐさまウサギさんたちが反応し、その木を持っているトースのほうへ寄ってきたので、
「トースくん! そのまま裏山まで誘導して!」
「分かりました!」
そう言ってトースくんは壁で道筋を立てた中を歩き、私と壁太郎くんはその外から見て、見守っていった。
ウサギさんたちが無事みんな寝床がある裏山に着くと、嬉しそうに寝床の中に入っていった。
これで一安心かなと思っていると、何匹か寝床から出てきて、私や壁太郎くんやトースくんの前でぴょんぴょん跳ね始めた。
私は小首を傾げながら、
「一緒に遊んでほしいのかな?」
トースくんはウサギさんを掴み、高い高いしてあげると、即ウサギさんはトースくんの腕から離れて、今度は壁太郎くんの近くで跳ね始めた。
「遊んでほしいわけじゃないみたいだべ、何かが足りないんだべ?」
ウサギさんが欲しているモノって、全員分のカリカリする木?
でも新しい寝床が見つかったら、もうそれどころじゃないって感じもある。
でも何かを欲している……ということは、
「壁太郎くん、ちょっとやる気が無い感じになってもらうことってできる?」
「どういうことだべ?」
「さっき出したワラの家を出すことってできる?」
「なるほど、ワラが欲しいんだべ」
どうやら壁太郎くんに伝わったらしい。というか最初からそう言えば良かった。
ウサギさんはワラが大好きだ。ウサギさんの寝床にはワラが敷き詰められているモノだ。きっとそれが欲しかったんだ。
壁太郎くんがワラの家を出して、そのワラの家を解体して、そのワラを寝床に敷き詰めると、私たちのそばで跳ねていたウサギさんたちも寝床の中に入っていった。
「何だか上手くいったね! 私も壁太郎くんもトースくんも相性がいいね!」
壁太郎くんは照れ臭そうに笑い、トースくんは笑顔で、
「はいっ! そうですね!」
と答えた。
そうハッキリ返事されると私も恥ずかしくなっちゃうな、と、照れ笑いを浮かべた。
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