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【09 発想を飛ばす】
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・【09 発想を飛ばす】
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いや、実際にそうなってきているんだ。
壁も屋根も徐々にチーズというかバターのように溶けだし始めている。
外からはトースくんのこんな声が聞こえる。
「発想を飛ばすです! ぬるぬるの壁にするんです!」
どうやら発想を飛ばすことにより、本来ありえないことが起きているんだ。
壁太郎くんは額から汗を滲ませながら、
「ど、どうするべ……」
「とりあえず一回り小さい家を中に作ってその中に入ろう!」
「そうするべ、きっとトースの体力も少ないはずだべ、根競べだべ」
そう言って壁太郎くんはこの家の中に小さな家を作ってその中に入り込んだ。
でもその家が思ったよりも小さくて、壁太郎くんのほうが疲弊していることは一目瞭然だった。
どうしよう、意味無い逃げる方法でより壁太郎くんのこと消耗させてしまったかもしれない。
考えなきゃ、こんな時こそ考えなきゃ。
体力で上回る相手には何か策を講じないといけない。
相手が思いつかないような、そしてこの逃げたことさえも逆手にとるような、何か新しいアイディアを。
最初に作った頑丈な家は完全にどろどろに溶けだして、地面の上にスライム状の物体がもちゃもちゃ乗っている状態になった。
「まだまだです! そちらの家もぬるぬるの壁にするんです!」
窓の外からトースくんの様子を見ると、トースくんも汗を流しているけども、まだ余裕があるという様子。
このままだと負けてしまう、いいや、負けない!
「壁太郎くん! もう次が無いほど小さい家をまた中に作って! そして窓を作らないで!」
「分かったべ! 僕は緋色さんのことを信用するべ!」
また家の中に小さな家を作り、その中に入った私と壁太郎くん。
音からして、さっきあった家は完全に溶け切ったようだ。
スライム状のモノが今の家の屋根に、もちゃもちゃ落ちてきた音がする。
トースくんが声を荒らげる。
「ついにこれで終わりのようですね! ぬるぬるの壁にするんです!」
またこの家はどろどろと溶けだしてきた。
だからこそチャンスだ。
私は小さな声で壁太郎くんにこう言った。
「このスライム状になりきった時がチャンスだよ、今向こうからもブラインドになってこっちの動きが分からないから、スライム状になったタイミングで壁というか板を出現させて思い切りトースくんの声がする方向へ蹴り飛ばすんだ。その板をトースくんにぶつけて気絶させよう」
「分かったべ、気絶までいかなくてもそれで十分体力が削れそうだべ。トースが能力を使えなくなったらこっちは二人、チャンスはあるべ」
屋根がどんどんぷるぷるになってくる。
壁太郎くんはトースくんに当てる側にトゲのような突起のある板を出現させた。
外からはトースくんの声が聞こえる。
「さぁ! 壁太郎と緋色の顔が見えたところで最後の突風を浴びせて終わりです!」
ぷるぷるになった屋根が落ちてきたその瞬間、私と壁太郎くんはその板をトースくんのほうへ蹴り飛ばした。
「さぁっぁぁぁあっ? わぁぁぁああああああああああああああああ!」
トースくんはどうやらその板に直撃したらしく、その場に尻もちをついた。
私と壁太郎くんは変な感触の、スライム状の何かが当たったけど、すぐに払ってトースくんのところへ駆け寄ると、トースくんは目を回しているようにその場で倒れていた。
壁太郎くんはトースくんの首根っこの服を掴みながら、
「参ったと言えべ! こっちはまだギリギリ動けるべ!」
と言うと、トースくんは目をゆっくり開けたと思ったら、素早く状態を起こして、
「すごい発想です! 俺も味方になります! 今日から俺は壁太郎の手下です!」
「いや手下とかどうでもいいべ、友達として闇に引き込むあやかしを止めて小学校を平和にしたいんだべ」
私もそれに同調しながら、
「これからよろしくね! トースくん!」
と言うと、
「分かりました! よろしくお願いします! 壁太郎! 緋色!」
私たちには新たにトースくんという味方ができた。
というわけで私と壁太郎くんとトースくんは近くのベンチに座ってまず休みだした。
トースくんは最後の力を振り絞って、スライム状の何かをソーダ味のゼリーにした。発想を飛ばしてくれたのだ。
元々家だったスライム状の何かって、と、一瞬躊躇したけども今はどんなモノでも水分が欲しかったので頂くことにした。
甘味が薄味の駄菓子のような感じでそれなりに美味しくて。
・【09 発想を飛ばす】
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いや、実際にそうなってきているんだ。
壁も屋根も徐々にチーズというかバターのように溶けだし始めている。
外からはトースくんのこんな声が聞こえる。
「発想を飛ばすです! ぬるぬるの壁にするんです!」
どうやら発想を飛ばすことにより、本来ありえないことが起きているんだ。
壁太郎くんは額から汗を滲ませながら、
「ど、どうするべ……」
「とりあえず一回り小さい家を中に作ってその中に入ろう!」
「そうするべ、きっとトースの体力も少ないはずだべ、根競べだべ」
そう言って壁太郎くんはこの家の中に小さな家を作ってその中に入り込んだ。
でもその家が思ったよりも小さくて、壁太郎くんのほうが疲弊していることは一目瞭然だった。
どうしよう、意味無い逃げる方法でより壁太郎くんのこと消耗させてしまったかもしれない。
考えなきゃ、こんな時こそ考えなきゃ。
体力で上回る相手には何か策を講じないといけない。
相手が思いつかないような、そしてこの逃げたことさえも逆手にとるような、何か新しいアイディアを。
最初に作った頑丈な家は完全にどろどろに溶けだして、地面の上にスライム状の物体がもちゃもちゃ乗っている状態になった。
「まだまだです! そちらの家もぬるぬるの壁にするんです!」
窓の外からトースくんの様子を見ると、トースくんも汗を流しているけども、まだ余裕があるという様子。
このままだと負けてしまう、いいや、負けない!
「壁太郎くん! もう次が無いほど小さい家をまた中に作って! そして窓を作らないで!」
「分かったべ! 僕は緋色さんのことを信用するべ!」
また家の中に小さな家を作り、その中に入った私と壁太郎くん。
音からして、さっきあった家は完全に溶け切ったようだ。
スライム状のモノが今の家の屋根に、もちゃもちゃ落ちてきた音がする。
トースくんが声を荒らげる。
「ついにこれで終わりのようですね! ぬるぬるの壁にするんです!」
またこの家はどろどろと溶けだしてきた。
だからこそチャンスだ。
私は小さな声で壁太郎くんにこう言った。
「このスライム状になりきった時がチャンスだよ、今向こうからもブラインドになってこっちの動きが分からないから、スライム状になったタイミングで壁というか板を出現させて思い切りトースくんの声がする方向へ蹴り飛ばすんだ。その板をトースくんにぶつけて気絶させよう」
「分かったべ、気絶までいかなくてもそれで十分体力が削れそうだべ。トースが能力を使えなくなったらこっちは二人、チャンスはあるべ」
屋根がどんどんぷるぷるになってくる。
壁太郎くんはトースくんに当てる側にトゲのような突起のある板を出現させた。
外からはトースくんの声が聞こえる。
「さぁ! 壁太郎と緋色の顔が見えたところで最後の突風を浴びせて終わりです!」
ぷるぷるになった屋根が落ちてきたその瞬間、私と壁太郎くんはその板をトースくんのほうへ蹴り飛ばした。
「さぁっぁぁぁあっ? わぁぁぁああああああああああああああああ!」
トースくんはどうやらその板に直撃したらしく、その場に尻もちをついた。
私と壁太郎くんは変な感触の、スライム状の何かが当たったけど、すぐに払ってトースくんのところへ駆け寄ると、トースくんは目を回しているようにその場で倒れていた。
壁太郎くんはトースくんの首根っこの服を掴みながら、
「参ったと言えべ! こっちはまだギリギリ動けるべ!」
と言うと、トースくんは目をゆっくり開けたと思ったら、素早く状態を起こして、
「すごい発想です! 俺も味方になります! 今日から俺は壁太郎の手下です!」
「いや手下とかどうでもいいべ、友達として闇に引き込むあやかしを止めて小学校を平和にしたいんだべ」
私もそれに同調しながら、
「これからよろしくね! トースくん!」
と言うと、
「分かりました! よろしくお願いします! 壁太郎! 緋色!」
私たちには新たにトースくんという味方ができた。
というわけで私と壁太郎くんとトースくんは近くのベンチに座ってまず休みだした。
トースくんは最後の力を振り絞って、スライム状の何かをソーダ味のゼリーにした。発想を飛ばしてくれたのだ。
元々家だったスライム状の何かって、と、一瞬躊躇したけども今はどんなモノでも水分が欲しかったので頂くことにした。
甘味が薄味の駄菓子のような感じでそれなりに美味しくて。
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