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【04 落書きが大好きなアートな魔物】
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・【04 落書きが大好きなアートな魔物】
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旧校舎を出て、落書きをするという七不思議が出る場所へ直行した。
私は廊下を普通に歩いているんだけども、まだ放課後、帰る途中の生徒が廊下で固まっていた。
少し申し訳ない気持ちになって、会釈をしてから通り過ぎていった。
夕暮れの、橙色の光が燦々と光り輝く時間は本来そんなに長くないけども、壁太郎くんがあの魔法を使ってからそれを保っている。
壁太郎くんの能力のことを考えれば、七不思議を解決するなんて楽勝だと思えてきた。
でもそんな壁太郎くんも闇に引き込むあやかしには最初から挑まないほうがいいと言っていた。
一体どんなに強いのだろうか、そんなことを考えながら歩いていると、壁太郎くんの足が中庭で止まった。
「ほら、僕が正のリズムを止める魔法を使ったから出てきたべ」
壁太郎くんが指差すほうを見ると、そこには人型ではない、まるで小さな悪魔みたいな子たちが目の前でぴょんぴょんと跳ねていた。
「「「やいやい! 壁太郎! 時を止めるな! 時を止めたら壁に絵を描けないだろ!」」」
私は頭上に疑問符を浮かべながら、
「時が止まったら壁に絵を描き放題じゃないの?」
と言うと、壁太郎くんは首を横に振ってから、
「干渉を受けないのは無機物も例外じゃないんだべ、だから元々あった壁は絵を描くことは勿論、壊すこともできないんだべ」
「なるほど、全てが全て何かすることができなくなるんだぁ」
「「「やいやい! 壁太郎! 早く戻しやがれ! あとなんだ隣の人間は! その人間に落書きしていいのか!」」」
そう言われた私は目を丸くしてしまった。
だって私は落書きされたくないから。
ボディペイントとか一部の芸術家の特権でしょ、と思った。
壁太郎くんは手を前に出して、制止のポーズをしながら、
「緋色さんに手を出してはいけないべ」
と毅然とした態度でそう言ってくれた。
壁太郎くん的にもこの悪魔みたいな子たちには慣れているのかな、と思っていると、
「「「じゃじゃ! いいやいいや! 早く壁を出せ! 壁太郎! オマエの出した壁には好きなだけ絵を描けるからな!」」」
そっか、つまりは正の、正規の壁じゃないから、壁太郎くんの出した壁には描けるのか。
そんなことを思っていると、壁太郎くんがこう言った。
「今日は勝負に来たべ。前々から君たちは言っていたべ、自分より上手いアートが作れたらいなくなるって。もう迷惑をかけるような行動はしないって」
「「「はははは! 壁太郎はアートのセンスゼロ! ぼくたちに勝てるはずない!」」」
壁太郎くんは私のほうを見て、
「緋色さんは何か、得意なアートはあるべ?」
「絵描けるよ!」
「「「いいねいいね! じゃあ画材はこっちで出すから壁太郎はさっさと壁を出せ! 勝負だ勝負だ!」」」
壁太郎くんが中庭に一枚ずつ大きな壁を出現させると、私側へ一体小さな悪魔がやって来て、画材を出現させて、サッとまた戻っていった。
何か可愛いなと思いつつも、勝負は勝負なので、私は負けられないと思って気合いを入れた。
正直、七不思議を解決するにあたって、全部殴り合いのバトルだと思っていたのに、こういうこともあるんだと思いつつ、私は筆を手に取った。
・【04 落書きが大好きなアートな魔物】
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旧校舎を出て、落書きをするという七不思議が出る場所へ直行した。
私は廊下を普通に歩いているんだけども、まだ放課後、帰る途中の生徒が廊下で固まっていた。
少し申し訳ない気持ちになって、会釈をしてから通り過ぎていった。
夕暮れの、橙色の光が燦々と光り輝く時間は本来そんなに長くないけども、壁太郎くんがあの魔法を使ってからそれを保っている。
壁太郎くんの能力のことを考えれば、七不思議を解決するなんて楽勝だと思えてきた。
でもそんな壁太郎くんも闇に引き込むあやかしには最初から挑まないほうがいいと言っていた。
一体どんなに強いのだろうか、そんなことを考えながら歩いていると、壁太郎くんの足が中庭で止まった。
「ほら、僕が正のリズムを止める魔法を使ったから出てきたべ」
壁太郎くんが指差すほうを見ると、そこには人型ではない、まるで小さな悪魔みたいな子たちが目の前でぴょんぴょんと跳ねていた。
「「「やいやい! 壁太郎! 時を止めるな! 時を止めたら壁に絵を描けないだろ!」」」
私は頭上に疑問符を浮かべながら、
「時が止まったら壁に絵を描き放題じゃないの?」
と言うと、壁太郎くんは首を横に振ってから、
「干渉を受けないのは無機物も例外じゃないんだべ、だから元々あった壁は絵を描くことは勿論、壊すこともできないんだべ」
「なるほど、全てが全て何かすることができなくなるんだぁ」
「「「やいやい! 壁太郎! 早く戻しやがれ! あとなんだ隣の人間は! その人間に落書きしていいのか!」」」
そう言われた私は目を丸くしてしまった。
だって私は落書きされたくないから。
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「緋色さんに手を出してはいけないべ」
と毅然とした態度でそう言ってくれた。
壁太郎くん的にもこの悪魔みたいな子たちには慣れているのかな、と思っていると、
「「「じゃじゃ! いいやいいや! 早く壁を出せ! 壁太郎! オマエの出した壁には好きなだけ絵を描けるからな!」」」
そっか、つまりは正の、正規の壁じゃないから、壁太郎くんの出した壁には描けるのか。
そんなことを思っていると、壁太郎くんがこう言った。
「今日は勝負に来たべ。前々から君たちは言っていたべ、自分より上手いアートが作れたらいなくなるって。もう迷惑をかけるような行動はしないって」
「「「はははは! 壁太郎はアートのセンスゼロ! ぼくたちに勝てるはずない!」」」
壁太郎くんは私のほうを見て、
「緋色さんは何か、得意なアートはあるべ?」
「絵描けるよ!」
「「「いいねいいね! じゃあ画材はこっちで出すから壁太郎はさっさと壁を出せ! 勝負だ勝負だ!」」」
壁太郎くんが中庭に一枚ずつ大きな壁を出現させると、私側へ一体小さな悪魔がやって来て、画材を出現させて、サッとまた戻っていった。
何か可愛いなと思いつつも、勝負は勝負なので、私は負けられないと思って気合いを入れた。
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