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【最後の放課後だ】
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・【最後の放課後だ】
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保健室で5限目を過ごし、帰るために教室に戻った。
ランドセルを持ったら、すぐにアタルと紗栄子に断りを入れて帰ろう。
そう思いながら教室の扉を開けると、そこにはもう既にアタルと紗栄子しかいなかった。
こんなに早く他のクラスメイトたちがいなくなるなんて珍しいな、もっとだらだら教室に残っている人もいるのに、と思いながら、ランドセルに手をとると、急にラップするためのトラックが流れ出した。
一体何なんだと思っていると、アタルがマイクを持ってラップをし始めた。
《アタル》
翔太、どうした、変な調子 今日に限って線が細い
悩み事なら言ってほしい 僕らも頼りになること知ってほしい
星になるんだ、一番星に 今よりももっと、良い案とりに
手で掴む未来、深く試合 その先で開く視界
【どうやら俺の気持ちをラップで聞き出そうとしているらしい】
【ここは無視して帰るという選択肢も浮かんだけども、最後の勝負だと思って乗ってやることにした】
【最後にアタルのラップを聞くことも悪くないだろう】
《翔太》
嫌いだ、早く返してくれ 俺は体調不良、ちゃんと見てくれ
暮れなずむ世界だ、夕日が描いた もう帰る時刻、体は酷く
つらいもんだ、できない投打 勿論無理だな、未開の地を踏破
それが今のこの俺、翔太 気分はずっとずっと降下
【結構韻も踏めたし、これで帰してくれるかなと思ったが、すぐさまアタルのターンがスタートした】
《アタル》
いや僕たちならできる、未開の地、踏破 やる気満々の気合い濃い王だ
オーダーは僕、翔太、紗栄子で十分 野球ならば投打冴え捕れる不屈
行くぜ、僕たちは全国大会 上がっていく頭脳、天井無い無い
相対する相手とも会いたいな 新しい世界を開催だ
【もうそんなオーダーだってすぐに組めなくなるのに】
【全国大会へ行く時間だってもう無いのに】
《翔太》
そんなことはもう無理だ 追加は無い、終わりの棲家
もう家からは出られない 新しい経験は得られない
エラーばかりだ、コールド負け 船ならばオールも裂け
こげない、もうここには来れない トロフィは何も獲れない
【と、自分で思いついた言葉をラップして気付いた】
【体調不良キャラで押し通さないといけないのに、今の自分の素の気持ちを吐露してしまっている、と】
【これはヤバイと思った時にはアタルのラップがスタートしていた】
《アタル》
何で家から出られない話になってる 整合性とれた正しい去ってる
翔太の言っていることは何かおかしい 何だか僕らへの愛が終わり
何か別のことが始まってるの? 別の事柄と交わってるの?
新しい棲家が追加? 家の話? じゃあもう命令だ、言えよ話題!
【ヤバイ、完全にバレてしまっている】
【やっぱりアタルは勘が鋭い、いや、もう誰でも分かるくらいのレベルで言ってしまっていたのか】
【俺はあわあわしてしまい、次の言葉が出ずにいると、今度は紗栄子がラップし始めた】
《紗栄子》
寿司って知ってる? 今日も刺身切ってる! 大将はいつも魂削ってる!
寿司の大切はネタ・シャリ・大将! 私たちもネタ・シャリ・大将の関係!
翔太がメロディでネタ作る アタルが言葉のシャリをまとめていく
最後に私こと大将が整えて そういう関係でやっていたの、ここ越えて!
【全然意味の分からないラップなんだけども、それ以上に紗栄子の表情がつらくて】
【激しくラップしているにも関わらず、顔は今にも泣きだしそうで】
【まさに感情でラップしているというヤツだ、韻が重要じゃなくて心が重要なヤツだ】
【俺はどうすればいいか分からず、その場にしゃがみ込んで俯いた】
《アタル》
これは攻めてるわけじゃない、否、攻めてる! 攻撃キック、僕は言わねぇ蹴る!
僕・紗栄子は翔太にとってそんなモノかな こんな程かな、いやもう届かない?
足伸ばす休憩にはなれないか 腕を伸ばしても僕らの手を握ってくれないか
紅は空だけじゃない、僕らの心も 強く光り、脈打つこの音
【俺はまた立ち上がった】
【意を決した】
【言おう、そう思って】
【でも、もうラップする余裕は無くて】
「ゴメン! 朝から嘘ついてた!」
俺は頭を下げた。
ちょっと経ってから顔を上げると、アタルと紗栄子は優しく微笑んでた。
その時になんてことをしていたんだと思った。
俺はこんな優しい二人のことを欺こうとしていた。
最低だ。
つらくて俯きそうになると、アタルが、
「本当に言いたくないんだったらいいんだけども、できれば言ってくれると嬉しいな」
と言い、紗栄子がすぐさま、
「本当にどうしたの……私、本当に心配なの……」
とさっきまで笑っていたのに、泣きそうな表情になった。
言わなきゃ。
全部正直に言わなきゃ。
「俺、引っ越すことになったんだ」
その言葉にアタルは何か勘付いていたような表情で頷き、紗栄子はビクンと体を波打たせて、俯いた。
俺は続ける。
「親がミュージシャンって知っているよな、親が急に俺に本物を見せるためにニューヨークへ引っ越すと言い出して。いやきっとニューヨークに新しい仕事ができたんだと思う。それで俺もついていかないといけなくなって。二週間後だ。だから、これでお別れだ」
アタルは神妙そうにその場で頷いていたが、紗栄子がカツカツとこっちへ近付いてきて、俺の両肩を掴みながら、こう言った。
「何で! 何でショータが引っ越しちゃうの! これからずっとこの三人でやっていくと思ったのに!」
するとアタルが紗栄子の肩を叩きながら、
「そればっかりはショータを攻めてもしょうがないよ」
と言うと、紗栄子は俺の肩をずるりと離し、そのままその場でしゃがみ込み、泣いてしまった。
「バカ! バカ! ショータのバカ! ずっと一緒だと思ったのに! ずっとずっと一緒にいられると思ったのに!」
俺はすぐさまその場にしゃがんで、紗栄子の頭をポンポンしながら、
「ゴメン、でも俺もずっと一緒にいられると思ったんだ。でも無理だった。ゴメン……」
俺もしんみりしちゃって、もうこのまま泣きそうだと思ったその時、アタルが力強くこう言った。
「翔太は本当はどうしたんだいっ?」
俺はアタルのことを見上げながら、
「そりゃ三人でいたいよ、俺はニューヨークなんて行きたくない。だって俺の本物はここにしかないから」
「じゃあ! 最後まで反抗しようよ! 僕たちでライブやって! 翔太の両親とか呼んで僕たちの意見を聞いてもらおうよ!」
いやでも
「そんなことで揺らぐ両親じゃないよ、それは俺が一番分かっていることだ」
でもアタルは拳を強く握って、
「じゃあ何もやらないで引っ越すのかいっ? ラップとは反抗、いや、ラップとは悪あがきだと思う! 最後まで抵抗しなきゃおかしいじゃないか!」
でも、という言葉がまた浮かぶ。
でも、という言葉がまた浮かぶ、このままもう一度もラップしないまま、引っ越すのか?
そんなことを考えている間に、涙を袖で拭った紗栄子が顔を上げ、
「やろう! 私はラップが悪あがきとは思わないけども、ラップは楽しいからやろう! 楽しいことだからただただやろう!」
それにアタルは同調しながら、
「そう! 理由はなんでもいい! 人によって違う! でもラップをしたいと思えばラップをすればいい! そう思わないかいっ?」
俺は、俺は……!
「この三人でラップしたいんだよ! ずっとこの三人でラップをやりたいんだよ!」
それにアタルが、
「じゃあラップをやろうじゃないか!」
紗栄子も立ち上がって、
「ショータ! 一緒にラップをしよう!」
と言ったので、俺も立ち上がって、
「分かった、俺、両親を呼んでラップするよ。アタルの意見も紗栄子の意見もその通りだ。ラップで悪あがきをするし、ラップは楽しいからやる。それだけだ」
残りの二週間で、俺とアタルと紗栄子は曲作りを必死で開始した。
アタルも昼休みは他の友達と遊ばず、ずっと俺たちと曲作りをしてくれた。
クラスメイトたちにも全部話した。
あの、俺が全てを吐露した日の放課後は、何か俺がおかしいということで、クラスメイトたちも協力して放課後はすぐさま帰ってもらって、アタルと紗栄子だけにしてくれていたらしい。
クラスメイトたちも俺の味方だ。
みんな味方してくれている。
だから俺は頑張れる。
みんなのために頑張れる。
いや結局は引っ越したくないという自分のためなんだけども、協力してくれている仲間たちのために俺は全力を尽くす。
ライブの日が決まってから、俺は両親にその日は開けといてほしいと言っていた。
ちょうど両親も引っ越しの準備で仕事を入れていなかったので、時間的にも大丈夫らしい。
そしてライブの日の前日、俺は改めて両親へ言った。
「明日、俺が組んでいるグループのライブがあるから、見に来てほしい」
それに対して父親はイスに深く座りながら、こう言った。
「あぁ、オマエの遊びのヤツね、まあ最後のおままごとくらい見てやっていいかなぁ」
それに対して母親が手を叩きながら、
「もう! パパぁったらぁ! 翔太がどう成長したか楽しみだったくせにぃ! まあ子供の遊びだとは思うけどもぉ、ママも楽しみにしてるからねぇ!」
「おいおい、ママぁ、言うなってぇ。まあどんな場数でも踏めば踏むほど成長はするからな。遊びは遊びでも集大成はあるから。一応楽しみにしているぞ」
さっきから遊び・遊びってバカにしやがって。
ここで啖呵も切りたかったけども、変に不機嫌にさせてしまうと、ライブに行かないとか言い出す可能性もあるので、ここは黙った。
言いたいことは全部ラップでする。
そう誓って、その場を収めて、俺は自分の部屋へ戻った。
明日、このライブで両親の考えをぶっ壊してやるんだ。
・【最後の放課後だ】
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保健室で5限目を過ごし、帰るために教室に戻った。
ランドセルを持ったら、すぐにアタルと紗栄子に断りを入れて帰ろう。
そう思いながら教室の扉を開けると、そこにはもう既にアタルと紗栄子しかいなかった。
こんなに早く他のクラスメイトたちがいなくなるなんて珍しいな、もっとだらだら教室に残っている人もいるのに、と思いながら、ランドセルに手をとると、急にラップするためのトラックが流れ出した。
一体何なんだと思っていると、アタルがマイクを持ってラップをし始めた。
《アタル》
翔太、どうした、変な調子 今日に限って線が細い
悩み事なら言ってほしい 僕らも頼りになること知ってほしい
星になるんだ、一番星に 今よりももっと、良い案とりに
手で掴む未来、深く試合 その先で開く視界
【どうやら俺の気持ちをラップで聞き出そうとしているらしい】
【ここは無視して帰るという選択肢も浮かんだけども、最後の勝負だと思って乗ってやることにした】
【最後にアタルのラップを聞くことも悪くないだろう】
《翔太》
嫌いだ、早く返してくれ 俺は体調不良、ちゃんと見てくれ
暮れなずむ世界だ、夕日が描いた もう帰る時刻、体は酷く
つらいもんだ、できない投打 勿論無理だな、未開の地を踏破
それが今のこの俺、翔太 気分はずっとずっと降下
【結構韻も踏めたし、これで帰してくれるかなと思ったが、すぐさまアタルのターンがスタートした】
《アタル》
いや僕たちならできる、未開の地、踏破 やる気満々の気合い濃い王だ
オーダーは僕、翔太、紗栄子で十分 野球ならば投打冴え捕れる不屈
行くぜ、僕たちは全国大会 上がっていく頭脳、天井無い無い
相対する相手とも会いたいな 新しい世界を開催だ
【もうそんなオーダーだってすぐに組めなくなるのに】
【全国大会へ行く時間だってもう無いのに】
《翔太》
そんなことはもう無理だ 追加は無い、終わりの棲家
もう家からは出られない 新しい経験は得られない
エラーばかりだ、コールド負け 船ならばオールも裂け
こげない、もうここには来れない トロフィは何も獲れない
【と、自分で思いついた言葉をラップして気付いた】
【体調不良キャラで押し通さないといけないのに、今の自分の素の気持ちを吐露してしまっている、と】
【これはヤバイと思った時にはアタルのラップがスタートしていた】
《アタル》
何で家から出られない話になってる 整合性とれた正しい去ってる
翔太の言っていることは何かおかしい 何だか僕らへの愛が終わり
何か別のことが始まってるの? 別の事柄と交わってるの?
新しい棲家が追加? 家の話? じゃあもう命令だ、言えよ話題!
【ヤバイ、完全にバレてしまっている】
【やっぱりアタルは勘が鋭い、いや、もう誰でも分かるくらいのレベルで言ってしまっていたのか】
【俺はあわあわしてしまい、次の言葉が出ずにいると、今度は紗栄子がラップし始めた】
《紗栄子》
寿司って知ってる? 今日も刺身切ってる! 大将はいつも魂削ってる!
寿司の大切はネタ・シャリ・大将! 私たちもネタ・シャリ・大将の関係!
翔太がメロディでネタ作る アタルが言葉のシャリをまとめていく
最後に私こと大将が整えて そういう関係でやっていたの、ここ越えて!
【全然意味の分からないラップなんだけども、それ以上に紗栄子の表情がつらくて】
【激しくラップしているにも関わらず、顔は今にも泣きだしそうで】
【まさに感情でラップしているというヤツだ、韻が重要じゃなくて心が重要なヤツだ】
【俺はどうすればいいか分からず、その場にしゃがみ込んで俯いた】
《アタル》
これは攻めてるわけじゃない、否、攻めてる! 攻撃キック、僕は言わねぇ蹴る!
僕・紗栄子は翔太にとってそんなモノかな こんな程かな、いやもう届かない?
足伸ばす休憩にはなれないか 腕を伸ばしても僕らの手を握ってくれないか
紅は空だけじゃない、僕らの心も 強く光り、脈打つこの音
【俺はまた立ち上がった】
【意を決した】
【言おう、そう思って】
【でも、もうラップする余裕は無くて】
「ゴメン! 朝から嘘ついてた!」
俺は頭を下げた。
ちょっと経ってから顔を上げると、アタルと紗栄子は優しく微笑んでた。
その時になんてことをしていたんだと思った。
俺はこんな優しい二人のことを欺こうとしていた。
最低だ。
つらくて俯きそうになると、アタルが、
「本当に言いたくないんだったらいいんだけども、できれば言ってくれると嬉しいな」
と言い、紗栄子がすぐさま、
「本当にどうしたの……私、本当に心配なの……」
とさっきまで笑っていたのに、泣きそうな表情になった。
言わなきゃ。
全部正直に言わなきゃ。
「俺、引っ越すことになったんだ」
その言葉にアタルは何か勘付いていたような表情で頷き、紗栄子はビクンと体を波打たせて、俯いた。
俺は続ける。
「親がミュージシャンって知っているよな、親が急に俺に本物を見せるためにニューヨークへ引っ越すと言い出して。いやきっとニューヨークに新しい仕事ができたんだと思う。それで俺もついていかないといけなくなって。二週間後だ。だから、これでお別れだ」
アタルは神妙そうにその場で頷いていたが、紗栄子がカツカツとこっちへ近付いてきて、俺の両肩を掴みながら、こう言った。
「何で! 何でショータが引っ越しちゃうの! これからずっとこの三人でやっていくと思ったのに!」
するとアタルが紗栄子の肩を叩きながら、
「そればっかりはショータを攻めてもしょうがないよ」
と言うと、紗栄子は俺の肩をずるりと離し、そのままその場でしゃがみ込み、泣いてしまった。
「バカ! バカ! ショータのバカ! ずっと一緒だと思ったのに! ずっとずっと一緒にいられると思ったのに!」
俺はすぐさまその場にしゃがんで、紗栄子の頭をポンポンしながら、
「ゴメン、でも俺もずっと一緒にいられると思ったんだ。でも無理だった。ゴメン……」
俺もしんみりしちゃって、もうこのまま泣きそうだと思ったその時、アタルが力強くこう言った。
「翔太は本当はどうしたんだいっ?」
俺はアタルのことを見上げながら、
「そりゃ三人でいたいよ、俺はニューヨークなんて行きたくない。だって俺の本物はここにしかないから」
「じゃあ! 最後まで反抗しようよ! 僕たちでライブやって! 翔太の両親とか呼んで僕たちの意見を聞いてもらおうよ!」
いやでも
「そんなことで揺らぐ両親じゃないよ、それは俺が一番分かっていることだ」
でもアタルは拳を強く握って、
「じゃあ何もやらないで引っ越すのかいっ? ラップとは反抗、いや、ラップとは悪あがきだと思う! 最後まで抵抗しなきゃおかしいじゃないか!」
でも、という言葉がまた浮かぶ。
でも、という言葉がまた浮かぶ、このままもう一度もラップしないまま、引っ越すのか?
そんなことを考えている間に、涙を袖で拭った紗栄子が顔を上げ、
「やろう! 私はラップが悪あがきとは思わないけども、ラップは楽しいからやろう! 楽しいことだからただただやろう!」
それにアタルは同調しながら、
「そう! 理由はなんでもいい! 人によって違う! でもラップをしたいと思えばラップをすればいい! そう思わないかいっ?」
俺は、俺は……!
「この三人でラップしたいんだよ! ずっとこの三人でラップをやりたいんだよ!」
それにアタルが、
「じゃあラップをやろうじゃないか!」
紗栄子も立ち上がって、
「ショータ! 一緒にラップをしよう!」
と言ったので、俺も立ち上がって、
「分かった、俺、両親を呼んでラップするよ。アタルの意見も紗栄子の意見もその通りだ。ラップで悪あがきをするし、ラップは楽しいからやる。それだけだ」
残りの二週間で、俺とアタルと紗栄子は曲作りを必死で開始した。
アタルも昼休みは他の友達と遊ばず、ずっと俺たちと曲作りをしてくれた。
クラスメイトたちにも全部話した。
あの、俺が全てを吐露した日の放課後は、何か俺がおかしいということで、クラスメイトたちも協力して放課後はすぐさま帰ってもらって、アタルと紗栄子だけにしてくれていたらしい。
クラスメイトたちも俺の味方だ。
みんな味方してくれている。
だから俺は頑張れる。
みんなのために頑張れる。
いや結局は引っ越したくないという自分のためなんだけども、協力してくれている仲間たちのために俺は全力を尽くす。
ライブの日が決まってから、俺は両親にその日は開けといてほしいと言っていた。
ちょうど両親も引っ越しの準備で仕事を入れていなかったので、時間的にも大丈夫らしい。
そしてライブの日の前日、俺は改めて両親へ言った。
「明日、俺が組んでいるグループのライブがあるから、見に来てほしい」
それに対して父親はイスに深く座りながら、こう言った。
「あぁ、オマエの遊びのヤツね、まあ最後のおままごとくらい見てやっていいかなぁ」
それに対して母親が手を叩きながら、
「もう! パパぁったらぁ! 翔太がどう成長したか楽しみだったくせにぃ! まあ子供の遊びだとは思うけどもぉ、ママも楽しみにしてるからねぇ!」
「おいおい、ママぁ、言うなってぇ。まあどんな場数でも踏めば踏むほど成長はするからな。遊びは遊びでも集大成はあるから。一応楽しみにしているぞ」
さっきから遊び・遊びってバカにしやがって。
ここで啖呵も切りたかったけども、変に不機嫌にさせてしまうと、ライブに行かないとか言い出す可能性もあるので、ここは黙った。
言いたいことは全部ラップでする。
そう誓って、その場を収めて、俺は自分の部屋へ戻った。
明日、このライブで両親の考えをぶっ壊してやるんだ。
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