16 / 27
【特別感】
しおりを挟む
・
・【特別感】
・
打ち合わせで商店街の人からすぐに言われた。
「何か特別感を出してほしい」
そのザックリとした意見にアタルは小首を傾げながら、
「特別感……何かマジックのパフォーマンスを取り入れたり、とか?」
いや。
「それは俺たちである必然性が無いだろう」
そう俺がツッコむと、そうか、そうかと頷いたアタル。
続いて紗栄子が、
「お菓子配ったりする?」
いやいや。
「それはもうただのハロウィンだから。それかのちにビンゴ大会開けばいい話だから」
それに紗栄子も納得した。
特別感。
急に言われても、と思ったが、俺はすぐさま思い浮かんだ。
「じゃあ商店街のテーマソングを作るなんて、どうですかね」
それにアタルは椅子から立ち上がりながら、
「それだ! それなら特別だし、商店街とも掛かっている!」
紗栄子も嬉しそうに頷きながら、
「それいいね! この商店街ならではの波動をビンビン感じるよ!」
商店街の人もニッコリしながら、
「それをしてくれると本当に助かるよ。君たちとここのコラボレーション感が出ていいなぁ」
というわけで、俺の意見が採用になって、亀本商店街のテーマソングを作ることになった。
でも商店街のテーマソングって、どういうものがいいのだろうか、と、そのことを商店街の人に聞くことにした。
「商店街のテーマソングってどういうものがいいですかね?」
それに対して商店街の人は一息ついて、お茶を飲んでからこう言った。
「そこはもうカラダラッパーである君たちに任そうと思っている」
丸投げだ。
ハッキリ言うと丸投げだ。
いや信用してくれているということか?
まあいいや。
じゃあ何か考えなければ、と思っているとすぐさまアタルが手を挙げてから、こう言った。
「広告のバルーンを飛ばしたい!」
いや。
「そういうことじゃないだろ。それはただただ商店街側がすることだろ」
「そっか! つい何か豪華なこと考えたら、こんな発想に至っちゃった!」
「至るな、至るな、歌詞のテーマの話だから」
と俺がツッコんだところで、紗栄子が、
「じゃあフックでお菓子配るというのは違うか……」
と呟いたので、
「それはもう全然違う。そういう枝葉の仕掛けじゃなくて、テーマの話だよ」
アタルは腕を組んでうんうん唸っている。
紗栄子はお茶菓子に手を伸ばし、モグモグしている。
そしてアタルがまた手を挙げて、
「これぞ商店街って感じの、力強いヤツがいいよね!」
ザックリとしたアイディアだけども、その路線が良いと思った。
近くにショッピングモールもあるけども、でも商店街だ、といった感じの力強い雰囲気の曲。
ここで紗栄子はバックからタッパに入ったガリを取り出し、みんなに振る舞い出した。
商店街の人も紗栄子からガリをもらって、食べ、こう言った。
「ショウガって刺激的で美味しいよね。そんな刺激的な曲を作ってほしいよ」
刺激的、力強い、となると、ちょっと攻撃的な感じかな。
このあたりをちゃんと言葉にして、まとめて……俺はゆっくり喋りだした。
「ショッピングモールには負けない、みたいな、ちょっと刺激的で力強い攻撃的な曲調もいいかもしれませんね。リリックは続くとか不屈とか、そして最後は勝つと宣言するような。商店街の音もサンプリングして、コロッケの揚げる音でアタック感を出したり、威勢の良い声で力が漲る感じを表現したり」
と言ったところで商店街の人が嬉しそうに手を叩き、
「いいね! すごくいい! 正直やってほしいイメージにピッタリだ! やっぱりラップはどこか挑戦的じゃないと、って思っていたんだよ!」
どうやらイメージと合致したみたいで、ホッとしているとアタルが、
「さすが僕たちの頭脳だ! 翔太がいればどんどん高みへ進んでいける!」
紗栄子も腕を動かし、上半身だけで小躍りしながら、
「ショータって本当に考えることが得意だよね! 歌も上手いし、何でもできて最高!」
正直ストレートに褒められすぎて、恥ずかしいが、なんとか方向性も決まったところで商店街の人が、
「じゃあそういった感じでよろしくね!」
と言って打ち合わせは終了した。
そのあとは三人で商店街を歩き回って遊んで、その日は終了した。
そんな時も俺は何をサンプリングしたほうがいいか、と、見定めながら遊んだ。
そうやって集中できている時はいいんだけども、一人になるとまた考えてしまうところもあって。
あんなにアタルや紗栄子から励ましてもらっているのにも関わらず、また暗いことを思いついてしまう。
いや止めよう、今日は頭をからっぽにして眠ろう、とか思っているといつの間にか眠れていた。
次の日、朝起きた時に、きっと遊び疲れたからだ、と思った。
アタル、紗栄子、一緒に遊んでくれてありがとう。
さぁ、日曜日は疲れるまで曲作りに没頭して、また夜すぐ寝れるようにしなくちゃなっ。
・【特別感】
・
打ち合わせで商店街の人からすぐに言われた。
「何か特別感を出してほしい」
そのザックリとした意見にアタルは小首を傾げながら、
「特別感……何かマジックのパフォーマンスを取り入れたり、とか?」
いや。
「それは俺たちである必然性が無いだろう」
そう俺がツッコむと、そうか、そうかと頷いたアタル。
続いて紗栄子が、
「お菓子配ったりする?」
いやいや。
「それはもうただのハロウィンだから。それかのちにビンゴ大会開けばいい話だから」
それに紗栄子も納得した。
特別感。
急に言われても、と思ったが、俺はすぐさま思い浮かんだ。
「じゃあ商店街のテーマソングを作るなんて、どうですかね」
それにアタルは椅子から立ち上がりながら、
「それだ! それなら特別だし、商店街とも掛かっている!」
紗栄子も嬉しそうに頷きながら、
「それいいね! この商店街ならではの波動をビンビン感じるよ!」
商店街の人もニッコリしながら、
「それをしてくれると本当に助かるよ。君たちとここのコラボレーション感が出ていいなぁ」
というわけで、俺の意見が採用になって、亀本商店街のテーマソングを作ることになった。
でも商店街のテーマソングって、どういうものがいいのだろうか、と、そのことを商店街の人に聞くことにした。
「商店街のテーマソングってどういうものがいいですかね?」
それに対して商店街の人は一息ついて、お茶を飲んでからこう言った。
「そこはもうカラダラッパーである君たちに任そうと思っている」
丸投げだ。
ハッキリ言うと丸投げだ。
いや信用してくれているということか?
まあいいや。
じゃあ何か考えなければ、と思っているとすぐさまアタルが手を挙げてから、こう言った。
「広告のバルーンを飛ばしたい!」
いや。
「そういうことじゃないだろ。それはただただ商店街側がすることだろ」
「そっか! つい何か豪華なこと考えたら、こんな発想に至っちゃった!」
「至るな、至るな、歌詞のテーマの話だから」
と俺がツッコんだところで、紗栄子が、
「じゃあフックでお菓子配るというのは違うか……」
と呟いたので、
「それはもう全然違う。そういう枝葉の仕掛けじゃなくて、テーマの話だよ」
アタルは腕を組んでうんうん唸っている。
紗栄子はお茶菓子に手を伸ばし、モグモグしている。
そしてアタルがまた手を挙げて、
「これぞ商店街って感じの、力強いヤツがいいよね!」
ザックリとしたアイディアだけども、その路線が良いと思った。
近くにショッピングモールもあるけども、でも商店街だ、といった感じの力強い雰囲気の曲。
ここで紗栄子はバックからタッパに入ったガリを取り出し、みんなに振る舞い出した。
商店街の人も紗栄子からガリをもらって、食べ、こう言った。
「ショウガって刺激的で美味しいよね。そんな刺激的な曲を作ってほしいよ」
刺激的、力強い、となると、ちょっと攻撃的な感じかな。
このあたりをちゃんと言葉にして、まとめて……俺はゆっくり喋りだした。
「ショッピングモールには負けない、みたいな、ちょっと刺激的で力強い攻撃的な曲調もいいかもしれませんね。リリックは続くとか不屈とか、そして最後は勝つと宣言するような。商店街の音もサンプリングして、コロッケの揚げる音でアタック感を出したり、威勢の良い声で力が漲る感じを表現したり」
と言ったところで商店街の人が嬉しそうに手を叩き、
「いいね! すごくいい! 正直やってほしいイメージにピッタリだ! やっぱりラップはどこか挑戦的じゃないと、って思っていたんだよ!」
どうやらイメージと合致したみたいで、ホッとしているとアタルが、
「さすが僕たちの頭脳だ! 翔太がいればどんどん高みへ進んでいける!」
紗栄子も腕を動かし、上半身だけで小躍りしながら、
「ショータって本当に考えることが得意だよね! 歌も上手いし、何でもできて最高!」
正直ストレートに褒められすぎて、恥ずかしいが、なんとか方向性も決まったところで商店街の人が、
「じゃあそういった感じでよろしくね!」
と言って打ち合わせは終了した。
そのあとは三人で商店街を歩き回って遊んで、その日は終了した。
そんな時も俺は何をサンプリングしたほうがいいか、と、見定めながら遊んだ。
そうやって集中できている時はいいんだけども、一人になるとまた考えてしまうところもあって。
あんなにアタルや紗栄子から励ましてもらっているのにも関わらず、また暗いことを思いついてしまう。
いや止めよう、今日は頭をからっぽにして眠ろう、とか思っているといつの間にか眠れていた。
次の日、朝起きた時に、きっと遊び疲れたからだ、と思った。
アタル、紗栄子、一緒に遊んでくれてありがとう。
さぁ、日曜日は疲れるまで曲作りに没頭して、また夜すぐ寝れるようにしなくちゃなっ。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
すぐケガしちゃう校長先生を止める話
青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
この小学校の生徒会長には大切な仕事があった。
それは校長先生を守ること。
校長先生は少し特殊な個性や能力を持っていて、さらにそれを使ってすぐケガしちゃうし、大声で泣いてしまうのだ。
だから生徒会長は校長先生のお守りをしないといけないのだ。
それを補助してくれるはずの生徒副会長の桜さんも天然ボケがすごい人で、今日も今日とてハチャメチャだ。
これは僕と校長先生と桜さんの話。
異世界ツッコミファンタジー
青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
引っ込み思案な性格ながら、テレビ番組でMCをすることが夢の主人公は寝て覚めると、異世界転移してしまっていた。
モンスターに襲われていたところをヒロインに魔法で助けてもらい、事情を話すと、詳しい人の元へ。
そこで「こうやって異世界へ転移してきた人は他にもいて、その人の場合は自分のやりたいことを行なうと元いた世界に戻る選択肢が生まれた」と。
詳しい人から主人公へ「君は何がしたい?」と聞かれて「司会をしたり、ビシバシとツッコミたい」というように答え、自分の右腕にいつの間にか付いていたカウンターのようなモノから察するに、ツッコミをたくさんすれば戻れそうだ、と。
というわけでヒロインは主人公へいっぱいボケるが、全然カウンターは反応せず。
でも時折増えていることもあって。
とあるキッカケで、その増える条件が『真に迫ったツッコミをする』ということが分かる。
つまりは間違いを訂正することによってカウンターが増えるから世直しをしていこう、と。
湖の民
影燈
児童書・童話
沼無国(ぬまぬこ)の統治下にある、儺楼湖(なろこ)の里。
そこに暮らす令は寺子屋に通う12歳の男の子。
優しい先生や友だちに囲まれ、楽しい日々を送っていた。
だがそんなある日。
里に、伝染病が発生、里は封鎖されてしまい、母も病にかかってしまう。
母を助けるため、幻の薬草を探しにいく令だったが――
ボケまみれ
青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
僕、駿の友達である啓太はツッコミが面白いと言うことで有名。
この学校には漫才大会があるので、相方になってほしい人多数で。
僕の助言もあり、一日一人と一緒に行動することに。
ちなみに僕も一緒。知らない子と二人きりになりたくないから、という啓太の希望で。
その過程で啓太の幼馴染が登校拒否で、漫才大会で優勝したらまた会ってくれるという話を知った。
違うクラスになってから、その幼馴染は登校拒否になり、休日に自分が会うこともできなくなったらしい。
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
おねしょゆうれい
ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。
※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。
泣き虫な君を、主人公に任命します!
成木沢ヨウ
児童書・童話
『演技でピンチを乗り越えろ!!』
小学六年生の川井仁太は、声優になるという夢がある。しかし父からは、父のような優秀な医者になれと言われていて、夢を打ち明けられないでいた。
そんな中いじめっ子の野田が、隣のクラスの須藤をいじめているところを見てしまう。すると謎の男女二人組が現れて、須藤を助けた。その二人組は学内小劇団ボルドの『宮風ソウヤ』『星みこと』と名乗り、同じ学校の同級生だった。
ひょんなことからボルドに誘われる仁太。最初は断った仁太だが、学芸会で声優を目指す役を演じれば、役を通じて父に宣言することができると言われ、夢を宣言する勇気をつけるためにも、ボルドに参加する決意をする。
演技を駆使して、さまざまな困難を乗り越える仁太たち。
葛藤しながらも、懸命に夢を追う少年たちの物語。
平安学園〜春の寮〜 お兄ちゃん奮闘記
葉月百合
児童書・童話
小学上級、中学から。十二歳まで離れて育った双子の兄妹、光(ひかる)と桃代(ももよ)。
舞台は未来の日本。最先端の科学の中で、科学より自然なくらしが身近だった古い時代たちひとつひとつのよいところを大切にしている平安学園。そんな全寮制の寄宿学校へ入学することになった二人。
兄の光が学校になれたころ、妹の桃代がいじめにあって・・・。
相部屋の先輩に振り回されちゃう妹思いのお兄ちゃんが奮闘する、ハートフル×美味しいものが織りなすグルメファンタジー和風学園寮物語。
小学上級、中学から。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる