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【誹謗中傷】
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・【誹謗中傷】
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ある日の朝、学校へ来ると、いつもは中盤くらいで学校にやって来る紗栄子がもういた。
俺は大体最初のほうなので、こんなに早く紗栄子がいることにまずビックリしてしまった。
そして紗栄子は俺を見るなり、近付いてきて、こう言った。
「酷い話があるってもんだ! 土砂降りの遊園地だよ!」
どうやら何か嫌なことがあったらしい。
俺は紗栄子の話を聞くことにした。
イヤホンを外して、紗栄子を隣に座るように誘導した。
そして紗栄子は喋りだした。
「ネット上で私たちのこと悪く言っている人がいたんだ! 化け物のゲップみたいで不快!」
ネット上で悪口か……まあいずれそういう人も現れると思っていたけども、いざ言われていることを知ると正直胸に重く響くもんがあって。
紗栄子が話す通り、スマホで調べてみると、カラダラッパーのことを、俺たちのことを悪く言うSNSのアカウントを発見した。
その悪口も『下手』から始まり、読み進めていくと『不愉快』や『気持ちが悪い』と繋がっていき、最終的には『ブサイク』やら『見た目も悪い』など音楽と関係無いところまでいっている。
さらには『性格が悪い』や『ゴミをポイ捨てする』みたいなデマみたいなものまで。
でも、ここまで書いていると逆にほんの少しだけ平気になった。
何故なら。
「もう音楽と関係無いとこまで言っている悪口は、ただの憂さ晴らしみたいなもんだから気にする必要無い」
と紗栄子に言った俺。
ただそう言いつつも、俺の中では落ち込んでいる俺もいて。
そんな紗栄子は俺と対照的に、
「絶対見つけ出して! ボコボコにディス・ラップしてやるんだから!」
と憤っていた。
どうやら紗栄子は怒るほうらしい。
俺と比べて、逞しくて正直羨ましい。
やっぱり俺はどうしても、悪口で塞ぎ込んでいた時期があるので、気落ちする部分がある。
自分で言ってなんとか冷静になろうとするけども、やっぱりキツイと思ってしまうところが強くて。
そんなこんなで会話していると、アタルも登校してきた。
俺と紗栄子は多分それぞれ通常じゃない顔をしていたのだろう。
自分の席にランドセルを置くとすぐさま近付いてきて、
「どうしたんだい! 翔太! 紗栄子ちゃん! いつもの元気印の花丸がしおしおじゃないか!」
いや。
「俺は別にそんな輝かしく光っているほうじゃないから。でもまあ紗栄子がさ、俺たちの誹謗中傷をネットで見つけちゃって」
と俺が言うと、アタルはすぐさまこう言った。
「そんなの気にしちゃダメだよ! 有名になれば絶対そういうヤツが現れるんだからさ! むしろそれだけ有名になったということを喜ぼうよ!」
「いやめちゃくちゃポジティブじゃん、良いことみたいに言い出したな」
「でも実際そう考えたほうがいいよ! 有名じゃなきゃ叩く人もいないんだからさ!」
そう言ってニカッと快活に笑ったアタル。
いやまあそうかもしれないけども、やっぱり俺はどこか心から俯いてしまって。
紗栄子が言う。
「アタルくん! 私と一緒に犯人捜しして倒さないっ?」
するとアタルは首を横に振って、
「だから相手にしちゃダメなんだって! 相手にしたらもっとつけあがるよ! こういうのは無視が一番良いんだ!」
しかし紗栄子も引かない。
「でも悔しいじゃん! 私はバチバチに闘ってもいいと思う!」
「いやいや紗栄子ちゃん、それなら曲で宣言しよう! 全員に言う感じで!」
まだちょっと納得いっていない顔の紗栄子に、俺がアタルへ助け舟を出す。
「まあ宣言するのはいいことだと思うよ。やっぱり俺たちはアーティストだから、曲で言ってやればいいんじゃないかな」
それに対して紗栄子はう~んと唸りながらも、
「ショータがそう言うなら、じゃあ、分かったよぉ……」
というわけで俺たちは早速、誹謗中傷には負けないというような曲を作り始めた。
サンプリングという遊びは今回入れず、真面目に言うみたいな感じで、トラックもシンプルにして。
こっちの歌力だけで魅せる感じで、そんなコンセプトで。
・【誹謗中傷】
・
ある日の朝、学校へ来ると、いつもは中盤くらいで学校にやって来る紗栄子がもういた。
俺は大体最初のほうなので、こんなに早く紗栄子がいることにまずビックリしてしまった。
そして紗栄子は俺を見るなり、近付いてきて、こう言った。
「酷い話があるってもんだ! 土砂降りの遊園地だよ!」
どうやら何か嫌なことがあったらしい。
俺は紗栄子の話を聞くことにした。
イヤホンを外して、紗栄子を隣に座るように誘導した。
そして紗栄子は喋りだした。
「ネット上で私たちのこと悪く言っている人がいたんだ! 化け物のゲップみたいで不快!」
ネット上で悪口か……まあいずれそういう人も現れると思っていたけども、いざ言われていることを知ると正直胸に重く響くもんがあって。
紗栄子が話す通り、スマホで調べてみると、カラダラッパーのことを、俺たちのことを悪く言うSNSのアカウントを発見した。
その悪口も『下手』から始まり、読み進めていくと『不愉快』や『気持ちが悪い』と繋がっていき、最終的には『ブサイク』やら『見た目も悪い』など音楽と関係無いところまでいっている。
さらには『性格が悪い』や『ゴミをポイ捨てする』みたいなデマみたいなものまで。
でも、ここまで書いていると逆にほんの少しだけ平気になった。
何故なら。
「もう音楽と関係無いとこまで言っている悪口は、ただの憂さ晴らしみたいなもんだから気にする必要無い」
と紗栄子に言った俺。
ただそう言いつつも、俺の中では落ち込んでいる俺もいて。
そんな紗栄子は俺と対照的に、
「絶対見つけ出して! ボコボコにディス・ラップしてやるんだから!」
と憤っていた。
どうやら紗栄子は怒るほうらしい。
俺と比べて、逞しくて正直羨ましい。
やっぱり俺はどうしても、悪口で塞ぎ込んでいた時期があるので、気落ちする部分がある。
自分で言ってなんとか冷静になろうとするけども、やっぱりキツイと思ってしまうところが強くて。
そんなこんなで会話していると、アタルも登校してきた。
俺と紗栄子は多分それぞれ通常じゃない顔をしていたのだろう。
自分の席にランドセルを置くとすぐさま近付いてきて、
「どうしたんだい! 翔太! 紗栄子ちゃん! いつもの元気印の花丸がしおしおじゃないか!」
いや。
「俺は別にそんな輝かしく光っているほうじゃないから。でもまあ紗栄子がさ、俺たちの誹謗中傷をネットで見つけちゃって」
と俺が言うと、アタルはすぐさまこう言った。
「そんなの気にしちゃダメだよ! 有名になれば絶対そういうヤツが現れるんだからさ! むしろそれだけ有名になったということを喜ぼうよ!」
「いやめちゃくちゃポジティブじゃん、良いことみたいに言い出したな」
「でも実際そう考えたほうがいいよ! 有名じゃなきゃ叩く人もいないんだからさ!」
そう言ってニカッと快活に笑ったアタル。
いやまあそうかもしれないけども、やっぱり俺はどこか心から俯いてしまって。
紗栄子が言う。
「アタルくん! 私と一緒に犯人捜しして倒さないっ?」
するとアタルは首を横に振って、
「だから相手にしちゃダメなんだって! 相手にしたらもっとつけあがるよ! こういうのは無視が一番良いんだ!」
しかし紗栄子も引かない。
「でも悔しいじゃん! 私はバチバチに闘ってもいいと思う!」
「いやいや紗栄子ちゃん、それなら曲で宣言しよう! 全員に言う感じで!」
まだちょっと納得いっていない顔の紗栄子に、俺がアタルへ助け舟を出す。
「まあ宣言するのはいいことだと思うよ。やっぱり俺たちはアーティストだから、曲で言ってやればいいんじゃないかな」
それに対して紗栄子はう~んと唸りながらも、
「ショータがそう言うなら、じゃあ、分かったよぉ……」
というわけで俺たちは早速、誹謗中傷には負けないというような曲を作り始めた。
サンプリングという遊びは今回入れず、真面目に言うみたいな感じで、トラックもシンプルにして。
こっちの歌力だけで魅せる感じで、そんなコンセプトで。
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