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【18 松ぼっくりリフティング】
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・【18 松ぼっくりリフティング】
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「さぁ! さぁ! 世にも珍しい2つ目小僧の見世物小屋ですよ!」
輪郭亭秋芳に似た1つ目の店主が大声で客引きを始める。
その声の大きさに比例するかのように満員御礼の客たち。
人が集まったタイミングで俺は松ぼっくりを持つ。
京子には既に作戦を話しているので、しっかり”サクラ”をやってくれるだろう。
松ぼっくりを持った俺に客の1人が、
「へへっ! 2つ目小僧が松ぼっくりなんて持ってよぉ!」
と笑った。
何が可笑しいか分からないが、きっと何をしてもそう言うんだろう、とは思うが、これをした時はそんな馬鹿にしたように笑うなよ、と思いながら俺は松ぼっくりでリフティングをし始めた。
最初は松ぼっくりを頭で打ったり、蹴っているだけだと思って「ギャハハハ」と笑うだけだったが、その松ぼっくりがまだ一度も地面に落ちていないと気付いたあたりから、馬鹿にしたような笑いは消えて、歓声や拍手が巻き起こるようになってきた。
分かりやすく大胆に蹴り上げるパターンから、細かいタッチでの連続リフティングに変えて、さらに熱狂の渦へ。
ちゃんと盛り上がっているということが分かったタイミングで、店に来ていた陽くんが大きな声を上げる。
「そんなのより! 僕のほうが上手いよ!」
陽くんも檻の外で松ぼっくりリフティングを開始。
人の壁を縫って、動きながらダイナミックにリフティングする姿に周りはどんどんそちらに目を奪われていく。
京子も大きな声で、
「向こうのほうがすごい! すごい!」
と盛り立てる。
そして陽くんはリフティングをしながら外に出ると、それに釣られて見世物小屋に来ていた客もぞろぞろと外に出始めた。
焦った店主は叫んだ。
「ダメだ! ダメだ! この見世物はもうダメだ! これからは松ぼっくりの時代だ!」
店主はすぐさま陽くんのほうへ走りながら、こう言った。
「これから君がここの見世物になってくれ! というかショーだ! 新しいショーの開始だ!」
陽くんは俺と京子にも聞こえるような大きな声で、
「いいよ! ただし2つ目人間を解放してくれたらね!」
と言うと、それに呼応するかのように店主が、
「分かった分かった! あの2つ目人間はもういらない! 君がいればそれでいい!」
すると陽くんが嬉しそうに檻の前に戻ってきて、バンザイしてくれたので、檻の中からハイタッチを3人でした。
店主も鍵を開けてくれて、俺と京子は出ることができた。
檻から出て、陽くんと一緒に外へ出ると、陽くんのリフティングを見ていただろう客の1人が、
「松ぼっくりより、これを使えばもっとやりやすいのでは?」
と松ぼっくりのような形のゴム状のオモチャを渡してくれたので、陽くんが、
「これはお兄ちゃんにあげる! というか契約料をもらっていっぱいお兄ちゃんにあげる! 記念に持ってて!」
と言うと、陽くんはすぐさま店主と契約料の話をして、お金を受け取ったところでそのオモチャを10個買って、俺と京子に渡してくれた。
俺と京子は陽くんと、あと用心棒として店主についてきてもらい、あの柳の木の下までやって来た。
陽くんと握手しながら、
「僕! もっと巧くなるのでそうしたらコラボしましょう!」
と言ってくれたので、俺は、
「そうだな、いつかコラボしような」
と言って頭をポンポンした。
店主はただ用心棒として連れて来ただけなので、暇そうにこっちのほうを見ていた。
京子は陽くんへ、
「バイバイ! 陽くん!」
と言うと、陽くんは笑顔で、
「ありがとう! お兄ちゃん! お姉ちゃん!」
と言った。
俺と京子は柳の木の周りを3回転すると、霧が明け、もう陽くんも店主もいなかった。
さて、手に入れたこのゴムのオモチャがきっと次の手掛かりなんだろう。
でも、
「ゴムのオモチャが出てくるような落語ってあるのかな」
と俺が呟くように言うと、京子は首を横に振り、
「そんなのは知らないかなぁ、そもそも江戸時代にゴムとか無いはずだし」
「じゃあここで行き止まりか」
と思ったところで、俺は1つ案が浮かんだ。
だから京子へ言ってみることにした。
「京子、もしかしたら落語を作ればいいんじゃないか?」
「落語を作るって、新作落語ということ?」
「そう、最後は俺と京子で落語を作り出すんだ。そうすれば戻れるんじゃないか?」
「そうかもしれないね、私はどっちでもいいけども由宇が戻りたがっているし、戻ろうかっ」
そう言って優しく笑った京子。
俺のためにそう言ってくれる京子に感謝した。
「案なら俺にある、最初は黙ってついてきてほしいんだ」
「いいよ、私は由宇に全部かけてるから、よろしくね」
「こちらこそ改めてよろしく、よしっ、頑張るぞ!」
・【18 松ぼっくりリフティング】
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「さぁ! さぁ! 世にも珍しい2つ目小僧の見世物小屋ですよ!」
輪郭亭秋芳に似た1つ目の店主が大声で客引きを始める。
その声の大きさに比例するかのように満員御礼の客たち。
人が集まったタイミングで俺は松ぼっくりを持つ。
京子には既に作戦を話しているので、しっかり”サクラ”をやってくれるだろう。
松ぼっくりを持った俺に客の1人が、
「へへっ! 2つ目小僧が松ぼっくりなんて持ってよぉ!」
と笑った。
何が可笑しいか分からないが、きっと何をしてもそう言うんだろう、とは思うが、これをした時はそんな馬鹿にしたように笑うなよ、と思いながら俺は松ぼっくりでリフティングをし始めた。
最初は松ぼっくりを頭で打ったり、蹴っているだけだと思って「ギャハハハ」と笑うだけだったが、その松ぼっくりがまだ一度も地面に落ちていないと気付いたあたりから、馬鹿にしたような笑いは消えて、歓声や拍手が巻き起こるようになってきた。
分かりやすく大胆に蹴り上げるパターンから、細かいタッチでの連続リフティングに変えて、さらに熱狂の渦へ。
ちゃんと盛り上がっているということが分かったタイミングで、店に来ていた陽くんが大きな声を上げる。
「そんなのより! 僕のほうが上手いよ!」
陽くんも檻の外で松ぼっくりリフティングを開始。
人の壁を縫って、動きながらダイナミックにリフティングする姿に周りはどんどんそちらに目を奪われていく。
京子も大きな声で、
「向こうのほうがすごい! すごい!」
と盛り立てる。
そして陽くんはリフティングをしながら外に出ると、それに釣られて見世物小屋に来ていた客もぞろぞろと外に出始めた。
焦った店主は叫んだ。
「ダメだ! ダメだ! この見世物はもうダメだ! これからは松ぼっくりの時代だ!」
店主はすぐさま陽くんのほうへ走りながら、こう言った。
「これから君がここの見世物になってくれ! というかショーだ! 新しいショーの開始だ!」
陽くんは俺と京子にも聞こえるような大きな声で、
「いいよ! ただし2つ目人間を解放してくれたらね!」
と言うと、それに呼応するかのように店主が、
「分かった分かった! あの2つ目人間はもういらない! 君がいればそれでいい!」
すると陽くんが嬉しそうに檻の前に戻ってきて、バンザイしてくれたので、檻の中からハイタッチを3人でした。
店主も鍵を開けてくれて、俺と京子は出ることができた。
檻から出て、陽くんと一緒に外へ出ると、陽くんのリフティングを見ていただろう客の1人が、
「松ぼっくりより、これを使えばもっとやりやすいのでは?」
と松ぼっくりのような形のゴム状のオモチャを渡してくれたので、陽くんが、
「これはお兄ちゃんにあげる! というか契約料をもらっていっぱいお兄ちゃんにあげる! 記念に持ってて!」
と言うと、陽くんはすぐさま店主と契約料の話をして、お金を受け取ったところでそのオモチャを10個買って、俺と京子に渡してくれた。
俺と京子は陽くんと、あと用心棒として店主についてきてもらい、あの柳の木の下までやって来た。
陽くんと握手しながら、
「僕! もっと巧くなるのでそうしたらコラボしましょう!」
と言ってくれたので、俺は、
「そうだな、いつかコラボしような」
と言って頭をポンポンした。
店主はただ用心棒として連れて来ただけなので、暇そうにこっちのほうを見ていた。
京子は陽くんへ、
「バイバイ! 陽くん!」
と言うと、陽くんは笑顔で、
「ありがとう! お兄ちゃん! お姉ちゃん!」
と言った。
俺と京子は柳の木の周りを3回転すると、霧が明け、もう陽くんも店主もいなかった。
さて、手に入れたこのゴムのオモチャがきっと次の手掛かりなんだろう。
でも、
「ゴムのオモチャが出てくるような落語ってあるのかな」
と俺が呟くように言うと、京子は首を横に振り、
「そんなのは知らないかなぁ、そもそも江戸時代にゴムとか無いはずだし」
「じゃあここで行き止まりか」
と思ったところで、俺は1つ案が浮かんだ。
だから京子へ言ってみることにした。
「京子、もしかしたら落語を作ればいいんじゃないか?」
「落語を作るって、新作落語ということ?」
「そう、最後は俺と京子で落語を作り出すんだ。そうすれば戻れるんじゃないか?」
「そうかもしれないね、私はどっちでもいいけども由宇が戻りたがっているし、戻ろうかっ」
そう言って優しく笑った京子。
俺のためにそう言ってくれる京子に感謝した。
「案なら俺にある、最初は黙ってついてきてほしいんだ」
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