18 / 20
【18 松ぼっくりリフティング】
しおりを挟む
・
・【18 松ぼっくりリフティング】
・
「さぁ! さぁ! 世にも珍しい2つ目小僧の見世物小屋ですよ!」
輪郭亭秋芳に似た1つ目の店主が大声で客引きを始める。
その声の大きさに比例するかのように満員御礼の客たち。
人が集まったタイミングで俺は松ぼっくりを持つ。
京子には既に作戦を話しているので、しっかり”サクラ”をやってくれるだろう。
松ぼっくりを持った俺に客の1人が、
「へへっ! 2つ目小僧が松ぼっくりなんて持ってよぉ!」
と笑った。
何が可笑しいか分からないが、きっと何をしてもそう言うんだろう、とは思うが、これをした時はそんな馬鹿にしたように笑うなよ、と思いながら俺は松ぼっくりでリフティングをし始めた。
最初は松ぼっくりを頭で打ったり、蹴っているだけだと思って「ギャハハハ」と笑うだけだったが、その松ぼっくりがまだ一度も地面に落ちていないと気付いたあたりから、馬鹿にしたような笑いは消えて、歓声や拍手が巻き起こるようになってきた。
分かりやすく大胆に蹴り上げるパターンから、細かいタッチでの連続リフティングに変えて、さらに熱狂の渦へ。
ちゃんと盛り上がっているということが分かったタイミングで、店に来ていた陽くんが大きな声を上げる。
「そんなのより! 僕のほうが上手いよ!」
陽くんも檻の外で松ぼっくりリフティングを開始。
人の壁を縫って、動きながらダイナミックにリフティングする姿に周りはどんどんそちらに目を奪われていく。
京子も大きな声で、
「向こうのほうがすごい! すごい!」
と盛り立てる。
そして陽くんはリフティングをしながら外に出ると、それに釣られて見世物小屋に来ていた客もぞろぞろと外に出始めた。
焦った店主は叫んだ。
「ダメだ! ダメだ! この見世物はもうダメだ! これからは松ぼっくりの時代だ!」
店主はすぐさま陽くんのほうへ走りながら、こう言った。
「これから君がここの見世物になってくれ! というかショーだ! 新しいショーの開始だ!」
陽くんは俺と京子にも聞こえるような大きな声で、
「いいよ! ただし2つ目人間を解放してくれたらね!」
と言うと、それに呼応するかのように店主が、
「分かった分かった! あの2つ目人間はもういらない! 君がいればそれでいい!」
すると陽くんが嬉しそうに檻の前に戻ってきて、バンザイしてくれたので、檻の中からハイタッチを3人でした。
店主も鍵を開けてくれて、俺と京子は出ることができた。
檻から出て、陽くんと一緒に外へ出ると、陽くんのリフティングを見ていただろう客の1人が、
「松ぼっくりより、これを使えばもっとやりやすいのでは?」
と松ぼっくりのような形のゴム状のオモチャを渡してくれたので、陽くんが、
「これはお兄ちゃんにあげる! というか契約料をもらっていっぱいお兄ちゃんにあげる! 記念に持ってて!」
と言うと、陽くんはすぐさま店主と契約料の話をして、お金を受け取ったところでそのオモチャを10個買って、俺と京子に渡してくれた。
俺と京子は陽くんと、あと用心棒として店主についてきてもらい、あの柳の木の下までやって来た。
陽くんと握手しながら、
「僕! もっと巧くなるのでそうしたらコラボしましょう!」
と言ってくれたので、俺は、
「そうだな、いつかコラボしような」
と言って頭をポンポンした。
店主はただ用心棒として連れて来ただけなので、暇そうにこっちのほうを見ていた。
京子は陽くんへ、
「バイバイ! 陽くん!」
と言うと、陽くんは笑顔で、
「ありがとう! お兄ちゃん! お姉ちゃん!」
と言った。
俺と京子は柳の木の周りを3回転すると、霧が明け、もう陽くんも店主もいなかった。
さて、手に入れたこのゴムのオモチャがきっと次の手掛かりなんだろう。
でも、
「ゴムのオモチャが出てくるような落語ってあるのかな」
と俺が呟くように言うと、京子は首を横に振り、
「そんなのは知らないかなぁ、そもそも江戸時代にゴムとか無いはずだし」
「じゃあここで行き止まりか」
と思ったところで、俺は1つ案が浮かんだ。
だから京子へ言ってみることにした。
「京子、もしかしたら落語を作ればいいんじゃないか?」
「落語を作るって、新作落語ということ?」
「そう、最後は俺と京子で落語を作り出すんだ。そうすれば戻れるんじゃないか?」
「そうかもしれないね、私はどっちでもいいけども由宇が戻りたがっているし、戻ろうかっ」
そう言って優しく笑った京子。
俺のためにそう言ってくれる京子に感謝した。
「案なら俺にある、最初は黙ってついてきてほしいんだ」
「いいよ、私は由宇に全部かけてるから、よろしくね」
「こちらこそ改めてよろしく、よしっ、頑張るぞ!」
・【18 松ぼっくりリフティング】
・
「さぁ! さぁ! 世にも珍しい2つ目小僧の見世物小屋ですよ!」
輪郭亭秋芳に似た1つ目の店主が大声で客引きを始める。
その声の大きさに比例するかのように満員御礼の客たち。
人が集まったタイミングで俺は松ぼっくりを持つ。
京子には既に作戦を話しているので、しっかり”サクラ”をやってくれるだろう。
松ぼっくりを持った俺に客の1人が、
「へへっ! 2つ目小僧が松ぼっくりなんて持ってよぉ!」
と笑った。
何が可笑しいか分からないが、きっと何をしてもそう言うんだろう、とは思うが、これをした時はそんな馬鹿にしたように笑うなよ、と思いながら俺は松ぼっくりでリフティングをし始めた。
最初は松ぼっくりを頭で打ったり、蹴っているだけだと思って「ギャハハハ」と笑うだけだったが、その松ぼっくりがまだ一度も地面に落ちていないと気付いたあたりから、馬鹿にしたような笑いは消えて、歓声や拍手が巻き起こるようになってきた。
分かりやすく大胆に蹴り上げるパターンから、細かいタッチでの連続リフティングに変えて、さらに熱狂の渦へ。
ちゃんと盛り上がっているということが分かったタイミングで、店に来ていた陽くんが大きな声を上げる。
「そんなのより! 僕のほうが上手いよ!」
陽くんも檻の外で松ぼっくりリフティングを開始。
人の壁を縫って、動きながらダイナミックにリフティングする姿に周りはどんどんそちらに目を奪われていく。
京子も大きな声で、
「向こうのほうがすごい! すごい!」
と盛り立てる。
そして陽くんはリフティングをしながら外に出ると、それに釣られて見世物小屋に来ていた客もぞろぞろと外に出始めた。
焦った店主は叫んだ。
「ダメだ! ダメだ! この見世物はもうダメだ! これからは松ぼっくりの時代だ!」
店主はすぐさま陽くんのほうへ走りながら、こう言った。
「これから君がここの見世物になってくれ! というかショーだ! 新しいショーの開始だ!」
陽くんは俺と京子にも聞こえるような大きな声で、
「いいよ! ただし2つ目人間を解放してくれたらね!」
と言うと、それに呼応するかのように店主が、
「分かった分かった! あの2つ目人間はもういらない! 君がいればそれでいい!」
すると陽くんが嬉しそうに檻の前に戻ってきて、バンザイしてくれたので、檻の中からハイタッチを3人でした。
店主も鍵を開けてくれて、俺と京子は出ることができた。
檻から出て、陽くんと一緒に外へ出ると、陽くんのリフティングを見ていただろう客の1人が、
「松ぼっくりより、これを使えばもっとやりやすいのでは?」
と松ぼっくりのような形のゴム状のオモチャを渡してくれたので、陽くんが、
「これはお兄ちゃんにあげる! というか契約料をもらっていっぱいお兄ちゃんにあげる! 記念に持ってて!」
と言うと、陽くんはすぐさま店主と契約料の話をして、お金を受け取ったところでそのオモチャを10個買って、俺と京子に渡してくれた。
俺と京子は陽くんと、あと用心棒として店主についてきてもらい、あの柳の木の下までやって来た。
陽くんと握手しながら、
「僕! もっと巧くなるのでそうしたらコラボしましょう!」
と言ってくれたので、俺は、
「そうだな、いつかコラボしような」
と言って頭をポンポンした。
店主はただ用心棒として連れて来ただけなので、暇そうにこっちのほうを見ていた。
京子は陽くんへ、
「バイバイ! 陽くん!」
と言うと、陽くんは笑顔で、
「ありがとう! お兄ちゃん! お姉ちゃん!」
と言った。
俺と京子は柳の木の周りを3回転すると、霧が明け、もう陽くんも店主もいなかった。
さて、手に入れたこのゴムのオモチャがきっと次の手掛かりなんだろう。
でも、
「ゴムのオモチャが出てくるような落語ってあるのかな」
と俺が呟くように言うと、京子は首を横に振り、
「そんなのは知らないかなぁ、そもそも江戸時代にゴムとか無いはずだし」
「じゃあここで行き止まりか」
と思ったところで、俺は1つ案が浮かんだ。
だから京子へ言ってみることにした。
「京子、もしかしたら落語を作ればいいんじゃないか?」
「落語を作るって、新作落語ということ?」
「そう、最後は俺と京子で落語を作り出すんだ。そうすれば戻れるんじゃないか?」
「そうかもしれないね、私はどっちでもいいけども由宇が戻りたがっているし、戻ろうかっ」
そう言って優しく笑った京子。
俺のためにそう言ってくれる京子に感謝した。
「案なら俺にある、最初は黙ってついてきてほしいんだ」
「いいよ、私は由宇に全部かけてるから、よろしくね」
「こちらこそ改めてよろしく、よしっ、頑張るぞ!」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

すぐケガしちゃう校長先生を止める話
青西瓜(伊藤テル)
児童書・童話
この小学校の生徒会長には大切な仕事があった。
それは校長先生を守ること。
校長先生は少し特殊な個性や能力を持っていて、さらにそれを使ってすぐケガしちゃうし、大声で泣いてしまうのだ。
だから生徒会長は校長先生のお守りをしないといけないのだ。
それを補助してくれるはずの生徒副会長の桜さんも天然ボケがすごい人で、今日も今日とてハチャメチャだ。
これは僕と校長先生と桜さんの話。
【総集編】日本昔話 パロディ短編集
Grisly
児童書・童話
❤️⭐️お願いします。
今まで発表した
日本昔ばなしの短編集を、再放送致します。
朝ドラの総集編のような物です笑
読みやすくなっているので、
⭐️して、何度もお読み下さい。
読んだ方も、読んでない方も、
新しい発見があるはず!
是非お楽しみ下さい😄
⭐︎登録、コメント待ってます。
オオカミ少女と呼ばないで
柳律斗
児童書・童話
「大神くんの頭、オオカミみたいな耳、生えてる……?」 その一言が、私をオオカミ少女にした。
空気を読むことが少し苦手なさくら。人気者の男子、大神くんと接点を持つようになって以降、クラスの女子に目をつけられてしまう。そんな中、あるできごとをきっかけに「空気の色」が見えるように――
表紙画像はノーコピーライトガール様よりお借りしました。ありがとうございます。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし
ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。
以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。
不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。
鎌倉西小学校ミステリー倶楽部
澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】
https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230
【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】
市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。
学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。
案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。
……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。
※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。
※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる