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【15 あたま山】
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・【15 あたま山】
・
走りながら、あたま山の物語を反芻する。
とんでもなくケチな男がサクランボの種をもったいなくて飲み込んだことが運の尽き。サクランボの種は体の中で成長し、あたまから桜の木が生える。その桜の木は『あたま山』として有名になり、連日花見客がやって来て、毎日騒がしい。男は「こんな木があるからいけないんだ」と思い、引っこ抜くと、穴ができて、そこに水が溜まり、その水は魚がいっぱい棲む池になった。今度はその池に釣り客が集まり、またしても騒がしくなってしまい、気が滅入る。結局どうにもならなくなったその男は自分のあたまの池に身を投げて死んでしまった、という話。
ありえないことの連続な話なのだが、最終的に死んでしまうということがポイントだ。
死んでしまったら物語の数珠繋ぎが途切れてしまうし、そもそも死んでしまったら後味が悪すぎる。
屋敷の近くまで来ると、トボトボと歩く桜の木が頭に刺さった男の後ろ姿を見つけたので、すぐに俺は叫んだ。
「ちょっと待って下さい! 話を聞かせてくれませんか!」
その男が振り返った時、確信に変わった。
何故ならその男はまたしても輪郭亭秋芳に似ていたからだ。
「なんだい、君たちは。見世物小屋じゃないよ」
京子もすぐに声を出した。
「その桜の木を解決しに来ました!」
「この桜の木を解決か……ということは困っているということが分かっているんだね! ありがとう! 少年少女よ!」
そう言って涙を瞳に浮かべ始めた輪郭亭秋芳のような男。
その男は続ける。
「俺様は修功(しゅうこう)と言うのだが、こんなことになってから、やれあたまの中も花畑のバカやら、中途半端な見世物小屋とか言われて困り果てていたんだよ。それ以外にも困ったことがあってなぁ」
京子は相槌を打ちながら、
「分かります、分かります、花見客が来てうるさいんですよねっ」
「その通りだよぉ! 本当に! こうやって桜の木の下を歩いていれば、花見客が移動してくれるかなと思っていたのに、結局移動せずに、なんなら『いろんな桜を見たけども、ここのあたま山が1番だなぁ』とか言いやがってよぉ! 俺様のあたまが確固たるものになっちまったんだぁ! だからよぉ! もうこんな桜の木は抜くしかないんだよぉ!」
と言ったので俺は焦って、
「ダメです! 抜くのは痛いと思います! もっといろんな策を講じましょう!」
「痛いのは嫌だなぁ、病院に行ってお金が掛かることも嫌だし」
とは言え、何か案を早く提示しなければと思っていると、1つ浮かんだので言ってみることにした。
「桜の木に花見禁止の張り紙を張ってみたらどうでしょうか」
「なるほどぉ、花見禁止とは考えたなぁ。よしっ、それを試してみよう、ありがとう」
「あの! それが上手くいかなかったらねずみ旅館に来てくれませんか! また他の案を出しますので! とにかく抜くのは待って下さい!」
「ねずみ旅館って、あの宿泊費の高い旅館かい? 俺様はそんなところは泊まれないぜ?」
「そういうことじゃなくて俺たちが泊っているだけです! 受付の人に言ってくれれば俺たちが行きますので!」
「そういうことか、それなら分かった。ところで君たちの名前はなんだい?」
俺よりも先に京子が、
「私が京子で、こっちが由宇です!」
「分かった、京子さんと由宇さんだな、じゃあどうなったか明日どっちにしろ言いに行くよ」
そう言って手を挙げてバイバイして、あたま山の修功さんはいなくなった。
果たしてこれで巧くいったのか、それともまだダメなのか、そんなこんなで夕暮れになってきたので、俺と京子はねずみ旅館に戻ることにした。
木彫りの犬と木彫りのねずみが楽し気に出迎えてくれた。
受付の人と話をして、また部屋に入ると、ちゃんと綺麗に支度されていて、本当に改めてすごいスイートルームだなと思った。
俺も京子のように今を楽しんでいれば最高の環境だなと思ったけども、やっぱり俺はサッカーが好きだ。
たとえできなかったとしても、観るだけでも十分楽しいんだ。
どうやらこの世界にはサッカーが無いみたいだから、やっぱり戻りたいんだ。
京子は嬉しそうにテレビを観て、ルームサービスのご飯をニコニコ食べて、露天風呂に入る時は俺がまた隠れて。
今日は一応俺も露天風呂に入ることにした。勿論京子には隠れてもらった。
「京子、今日は別々の部屋で寝ような」
「えー、広くて寂しいよー」
「こういうのは分けたほうがいいんだよ」
冷たく言い放ってしまったけども、そっちのほうが絶対にいいもんな、そう思って眠った。
朝起きると、普通に隣に京子が寝ていて、またちょっとだけ大きな「あっ!」が出てしまった。
「いや京子! 何で隣にいるんだよ!」
「途中寂しくて起きちゃって、じゃあついでにベッドを頂こうと思って」
「向こうのベッドを頂けよ」
俺と京子は普通に用意されている現代仕様の歯磨きを使って、歯を磨いたところで、部屋のチャイムが鳴った。
扉を開けるとホテルマンが、
「あたまに桜の木を刺しているお方が」
と言ったところですぐに玄関へ向かった。
玄関に行くと、げっそりとした表情の修功さんが立っていた。
「どうしたんですか?」
と俺が聞くと修功さんが覇気の無い声で、
「いやぁ、大変だったよぉ、いいや由宇さんのせいではない、由宇さんのせいではないんだけどなぁ」
「ダメだったんですか」
「そうなんだよ、花見禁止の張り紙を張ったら普通に花見客は来なくなったんだが、治安の悪い、ルールを守らないヤンチャな人間が集まるようになって、なおさらうるさくて、夜もどんちゃん騒ぎだよ」
「ダメでしたか……」
「やっぱりもう抜こうかなと思っていて」
と言ったところで京子がすぐさま、
「ダメです! クールに行クール!」
「クールに行ったほうがいいって、いっそのこと桜の木を抜いた穴に水でも溜まればあたまを冷やせるかなってね」
と言って自嘲気味に笑った修功さん。いやいや、それは絶対にいけない。
俺は考えていた案を言うことにした。
「修功さんは確かサクランボの種を出すことがもったいなくて、飲み込んだんですよね。桜の木を抜いてしまったらもったいないですよ」
「んっ、そんな話したっけなぁ、でもまあ確かにその通りだ。じゃあどうすればいいんだ」
「だから花見客のご飯を食べてしまえばいいんですよ、そうしたら食事代も浮くし、それを繰り返していれば妖怪が出るという感じになって、人も寄り付かなくなると思います」
「なるほど! それは面白そうだな! というかそうか! 花見客のメシを取り上げれば良かったのか! それなら俺様のお金も浮くなぁ!」
と会話していると、また修功さんのあたま山に人が登ってきて、花見を始めたので、修功さんは早速、
「よしっ、この弁当を盗んでやろう」
と言って手探りで弁当を盗ろうとすると、あたま山の人たちが、
「なんだ、なんだ」
「急に大きな手が出現した」
「妖怪だ、妖怪だ」
と言って逃げ出し、いなくなり、修功さんの手には小さなおにぎりだけが残った。
「おっ、静かになったし、おにぎりも手に入ったし、これはいいな」
と言ってから、おにぎりを口に入れて喜んだ修功さん。
これで解決かなと思っていると、あたま山にまた誰かが”出現”した。
今までは登って来る描写があったのに、急にその場に出現したのだ。
その出現した存在はこんなことを言いだした。
「僕はこのあたま山に棲む妖怪だ。僕に何か食べ物をくれ」
俺も京子も驚いたが、それ以上に驚いたのが修功さんだった。
「嫌だ嫌だ嫌だ! 俺様はケチなんだ! 誰かに食べ物をあげるなんて絶対嫌だ!」
妖怪を名乗る存在は、
「いいや、何か食べさせてくれないと僕はこのあたま山に人をたくさん呼び込むぞ。そうやって呼んできた人の弁当を盗み取って生活するぞ」
「じゃあまたうるさくなるじゃないか! ダメだ! ダメだ! そんなことは!」
さっき俺が口から出した妖怪という言葉に反応して妖怪が出現している。
ということは俺、というか誰かが言ったことが本当になっているのか?
こんなバカバカしい物語で、さらに言うことが本当になるなんて。
いや、そうなるのならば、それを活用してみるのがいいのかもしれない。
俺は思い切って聞いてみることにした。
「妖怪さん、貴方に何か特技はありますか? もしかしたらこの桜の木をずっと綺麗に咲かせていることは貴方の能力なのではないでしょうか?」
「その通りだ、僕がこの桜を綺麗に咲かせているんです」
「じゃあそれとは別に、例えば庭に甘柿を植えたとして、その甘柿の木に一年中甘柿を実らせておくようにすることは可能ですか?」
「あぁ、僕は植物を司る妖怪なので、一年中保つということは可能だ」
「じゃあ甘柿以外にも季節季節の果物を実がみのった状態で保つことは可能ということですね」
「朝飯前だ」
「それならば食べ物だっていくらでも収穫できるじゃないですか、修功さん、この妖怪がいる限り、食べ物に困りませんよ」
修功さんの顔は張り詰めた表情から徐々に柔和になり、最終的ににっこりとした菩薩のような笑顔になり、
「オマエはそんなことができるのか! すごいぞ! 妖怪! じゃあ早速! 俺様の庭には育てている苺があるから、とりあえずそれを一年中保つようにしてくれ!」
「お安い御用です。ではその苺を僕に毎日ください」
「そんなんいくらでもあげるわ!」
いわゆるwin-winの関係になったみたいで良かった。
修功さんはウキウキしながら、
「じゃあこれからいろんな植物を育てて、それを妖怪が一年中保たせれば俺様は億万長者だ! あと花見客! もう呼ぶなよ!」
「分かりました。あたま山に近付いてきたら僕がすぐに追い返しましょう」
「じゃあ早速! 俺様の家へ行って! 苺を収穫し放題だ! 由宇さんも京子さんもやって来な! いくらでも苺をあげるし、いつでも俺様のところへやって来な! タダで何でもあげるから!」
今度は苺が手に入るのか、と思ったのだが、何だかそれ以上に気になることがあったので、解決した今、そのことを聞いてみることにした。
「ところで修功さん、中途半端な見世物小屋みたいなことを言われていたらしいですが、あたまに桜の木が刺さっているなんて珍しいですよね、それよりも珍しい見世物小屋なんてあるんですか?」
すると修功さんはう~んと唸ってから、
「まあ話半分に聞いていたし、見世物小屋なんて意味無くお金を使う場所、興味無いからちゃんとは聞いていなかったけども、どうやら一眼小僧というのがいるらしい。1つ目の小僧らしい。まあどうでもいいけどな」
それを聞いた京子はすぐさま叫んだ。
「一眼国だ!」
一眼国、それは確か、と、脳内で反芻する。
目玉が1つしかない1つ目小僧を捕らえて見世物小屋に入れようと画策する男が1つ目小僧を捕まえに行くと、逆に捕まってしまい、そこで2つ目人間として見世物小屋に入れられるような話。
でも既に見世物小屋に1つ目小僧がいるらしい。既に話がちょっと違うが、1つ目小僧の落語と言えば間違いなく一眼国なので、俺と京子はその見世物小屋へすぐに行くことにした。
修功さんからは「苺を食べてからでも」と言ったが、修功さんの家の場所だけ覚えて、今はそれよりも早くその見世物小屋へ。
修功さんのうろ覚え道案内だったが、ちゃんと見世物小屋へ着くことができた。
見世物小屋の店先で店主と思われる人物が大きな声で声掛けしている。
「さぁ! 見てらっしゃい見てらっしゃい! 世にも珍しい1つ目小僧が見られますよー! たったの千円ポッキリで見ることが可能ですよー!」
俺と京子はねずみ旅館から毎日のお小遣いとして千円×2人分もらっていたので、そのお金でまず見世物小屋の中をチェックすることにした。
本当に1つ目小僧なんているのだろうか、と思って、中に入ると、そこには檻に囲まれた場所で泣いている、大きな目玉が中央に1つある、1つ目小僧がいた。
明らかに怯えて震え、可哀想なんてもんじゃなかった。
早く助け出さなきゃ、俺がそう思ったタイミングで京子が叫んだ。
「1つ目小僧さんは怖がっています! 解放してあげなきゃダメ!」
すると店主がやって来て、
「いやまあ確かにそろそろ弱ってきているから、替え頃だとは思うんだけどなぁ」
「ちょっと! 人間のことなんだと思っているのっ!」
「人間? 1つ目小僧はただの怪物だろ、その証拠に1週間何も与えなくても大丈夫なんだよ」
「1週間何も食べさせていないってことっ? おかしいです!」
でも店主はヘラヘラと笑うだけで、物事を軽く見ているようだった。
そこで俺は京子を一旦制止させて、こう言うことにした。
「逆にどうすればこの1つ目小僧さんのことを解放してくれますか?」
「まあ結構弱ってもきているからなぁ、じゃあ百万円分、用意してもらおうか」
どう考えても法外な値段だ、見世物小屋だってそこまで流行っている感じではない。1人千円の代替が百万円なんで度が過ぎている。
でも俺には算段があった。
「分かりました、全部で百万円分ならいいですよね? 今一気に持ってこなくても」
「一括じゃなくて分割ということか、まあそんなことができるならいいだろう」
俺はまだまだ怒っている京子の手を引っ張って、修功さんの家へ走った。
修功さんの家へ向かって走り出したところで京子も分かったらしく、いつもの笑顔に戻った。
俺と京子を見るなり、修功さんが、
「おっ、苺を食べに来たんだな、というかいっぱい持っていっていいぞ、妖怪のおかげで収穫と同時にまた実がなるんだ」
俺と京子は頭を下げてから、
「すみません! 継続的に、百万円分、苺などの農産物を頂けませんか!」
「百万円分とは大きく出たな、でもまあ由宇さんと京子さんなら大歓迎だ。俺様は君たちにだけはケチじゃないぞ。お金の恩人だからな」
「それはあの、俺たち、に、ではなくて、見世物小屋をやっている店主に、なんです。見世物小屋で捕らえられている1つ目小僧さんを助けたくて」
「おぉ、人助けに、ということなのか! さすが由宇さんに京子さんだ! 人情は江戸の華だ! よしっ、じゃあ俺様もその見世物小屋へ行こう、話をつけてやる、苺をいっぱい持ってな!」
俺と京子と修功さんで、見世物小屋へ行き、店主の前でこう言った。
「これから、この修功さんから農産物を百万円分継続的に受け取るということにしてくれませんか?」
と俺が言うと修功さんが胸を張って、
「これがまあ最初の分の苺だ、これからどんな農産物の実でもオマエに俺様が百万円分までならくれてやる。悪い話じゃないだろ?」
瑞々しく芳醇な香りのする苺に店主はすぐさま虜になり、
「こんなに良い苺がもらえるなら、もうあんな1つ目小僧はいい! よしっ! 解放してやろう!」
店主は檻の中から1つ目小僧を出すと、1つ目小僧さんは俺に抱きついてきた。
俺は優しく1つ目小僧さんの頭を撫でた。
1つ目小僧さんは俺よりも小さく、小学1年生くらいの身長だった。
京子は1つ目小僧さんに視線を合わせるように屈み、こう言った。
「ねぇ、名前はなんて言うの?」
「陽」
と小声でそう言った。
京子は嬉しそうに、
「陽くんだね! じゃあ陽くん! 早速、元にいた国へ戻ろうか!」
と言ったタイミングで、陽くんのお腹が鳴り、修功さんが、
「まずは俺様のところで苺を食べようじゃないか」
と言うと、陽くんは小さく頷いたので、4人で修功さんの家へ行った。
・【15 あたま山】
・
走りながら、あたま山の物語を反芻する。
とんでもなくケチな男がサクランボの種をもったいなくて飲み込んだことが運の尽き。サクランボの種は体の中で成長し、あたまから桜の木が生える。その桜の木は『あたま山』として有名になり、連日花見客がやって来て、毎日騒がしい。男は「こんな木があるからいけないんだ」と思い、引っこ抜くと、穴ができて、そこに水が溜まり、その水は魚がいっぱい棲む池になった。今度はその池に釣り客が集まり、またしても騒がしくなってしまい、気が滅入る。結局どうにもならなくなったその男は自分のあたまの池に身を投げて死んでしまった、という話。
ありえないことの連続な話なのだが、最終的に死んでしまうということがポイントだ。
死んでしまったら物語の数珠繋ぎが途切れてしまうし、そもそも死んでしまったら後味が悪すぎる。
屋敷の近くまで来ると、トボトボと歩く桜の木が頭に刺さった男の後ろ姿を見つけたので、すぐに俺は叫んだ。
「ちょっと待って下さい! 話を聞かせてくれませんか!」
その男が振り返った時、確信に変わった。
何故ならその男はまたしても輪郭亭秋芳に似ていたからだ。
「なんだい、君たちは。見世物小屋じゃないよ」
京子もすぐに声を出した。
「その桜の木を解決しに来ました!」
「この桜の木を解決か……ということは困っているということが分かっているんだね! ありがとう! 少年少女よ!」
そう言って涙を瞳に浮かべ始めた輪郭亭秋芳のような男。
その男は続ける。
「俺様は修功(しゅうこう)と言うのだが、こんなことになってから、やれあたまの中も花畑のバカやら、中途半端な見世物小屋とか言われて困り果てていたんだよ。それ以外にも困ったことがあってなぁ」
京子は相槌を打ちながら、
「分かります、分かります、花見客が来てうるさいんですよねっ」
「その通りだよぉ! 本当に! こうやって桜の木の下を歩いていれば、花見客が移動してくれるかなと思っていたのに、結局移動せずに、なんなら『いろんな桜を見たけども、ここのあたま山が1番だなぁ』とか言いやがってよぉ! 俺様のあたまが確固たるものになっちまったんだぁ! だからよぉ! もうこんな桜の木は抜くしかないんだよぉ!」
と言ったので俺は焦って、
「ダメです! 抜くのは痛いと思います! もっといろんな策を講じましょう!」
「痛いのは嫌だなぁ、病院に行ってお金が掛かることも嫌だし」
とは言え、何か案を早く提示しなければと思っていると、1つ浮かんだので言ってみることにした。
「桜の木に花見禁止の張り紙を張ってみたらどうでしょうか」
「なるほどぉ、花見禁止とは考えたなぁ。よしっ、それを試してみよう、ありがとう」
「あの! それが上手くいかなかったらねずみ旅館に来てくれませんか! また他の案を出しますので! とにかく抜くのは待って下さい!」
「ねずみ旅館って、あの宿泊費の高い旅館かい? 俺様はそんなところは泊まれないぜ?」
「そういうことじゃなくて俺たちが泊っているだけです! 受付の人に言ってくれれば俺たちが行きますので!」
「そういうことか、それなら分かった。ところで君たちの名前はなんだい?」
俺よりも先に京子が、
「私が京子で、こっちが由宇です!」
「分かった、京子さんと由宇さんだな、じゃあどうなったか明日どっちにしろ言いに行くよ」
そう言って手を挙げてバイバイして、あたま山の修功さんはいなくなった。
果たしてこれで巧くいったのか、それともまだダメなのか、そんなこんなで夕暮れになってきたので、俺と京子はねずみ旅館に戻ることにした。
木彫りの犬と木彫りのねずみが楽し気に出迎えてくれた。
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俺も京子のように今を楽しんでいれば最高の環境だなと思ったけども、やっぱり俺はサッカーが好きだ。
たとえできなかったとしても、観るだけでも十分楽しいんだ。
どうやらこの世界にはサッカーが無いみたいだから、やっぱり戻りたいんだ。
京子は嬉しそうにテレビを観て、ルームサービスのご飯をニコニコ食べて、露天風呂に入る時は俺がまた隠れて。
今日は一応俺も露天風呂に入ることにした。勿論京子には隠れてもらった。
「京子、今日は別々の部屋で寝ような」
「えー、広くて寂しいよー」
「こういうのは分けたほうがいいんだよ」
冷たく言い放ってしまったけども、そっちのほうが絶対にいいもんな、そう思って眠った。
朝起きると、普通に隣に京子が寝ていて、またちょっとだけ大きな「あっ!」が出てしまった。
「いや京子! 何で隣にいるんだよ!」
「途中寂しくて起きちゃって、じゃあついでにベッドを頂こうと思って」
「向こうのベッドを頂けよ」
俺と京子は普通に用意されている現代仕様の歯磨きを使って、歯を磨いたところで、部屋のチャイムが鳴った。
扉を開けるとホテルマンが、
「あたまに桜の木を刺しているお方が」
と言ったところですぐに玄関へ向かった。
玄関に行くと、げっそりとした表情の修功さんが立っていた。
「どうしたんですか?」
と俺が聞くと修功さんが覇気の無い声で、
「いやぁ、大変だったよぉ、いいや由宇さんのせいではない、由宇さんのせいではないんだけどなぁ」
「ダメだったんですか」
「そうなんだよ、花見禁止の張り紙を張ったら普通に花見客は来なくなったんだが、治安の悪い、ルールを守らないヤンチャな人間が集まるようになって、なおさらうるさくて、夜もどんちゃん騒ぎだよ」
「ダメでしたか……」
「やっぱりもう抜こうかなと思っていて」
と言ったところで京子がすぐさま、
「ダメです! クールに行クール!」
「クールに行ったほうがいいって、いっそのこと桜の木を抜いた穴に水でも溜まればあたまを冷やせるかなってね」
と言って自嘲気味に笑った修功さん。いやいや、それは絶対にいけない。
俺は考えていた案を言うことにした。
「修功さんは確かサクランボの種を出すことがもったいなくて、飲み込んだんですよね。桜の木を抜いてしまったらもったいないですよ」
「んっ、そんな話したっけなぁ、でもまあ確かにその通りだ。じゃあどうすればいいんだ」
「だから花見客のご飯を食べてしまえばいいんですよ、そうしたら食事代も浮くし、それを繰り返していれば妖怪が出るという感じになって、人も寄り付かなくなると思います」
「なるほど! それは面白そうだな! というかそうか! 花見客のメシを取り上げれば良かったのか! それなら俺様のお金も浮くなぁ!」
と会話していると、また修功さんのあたま山に人が登ってきて、花見を始めたので、修功さんは早速、
「よしっ、この弁当を盗んでやろう」
と言って手探りで弁当を盗ろうとすると、あたま山の人たちが、
「なんだ、なんだ」
「急に大きな手が出現した」
「妖怪だ、妖怪だ」
と言って逃げ出し、いなくなり、修功さんの手には小さなおにぎりだけが残った。
「おっ、静かになったし、おにぎりも手に入ったし、これはいいな」
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「朝飯前だ」
「それならば食べ物だっていくらでも収穫できるじゃないですか、修功さん、この妖怪がいる限り、食べ物に困りませんよ」
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「ところで修功さん、中途半端な見世物小屋みたいなことを言われていたらしいですが、あたまに桜の木が刺さっているなんて珍しいですよね、それよりも珍しい見世物小屋なんてあるんですか?」
すると修功さんはう~んと唸ってから、
「まあ話半分に聞いていたし、見世物小屋なんて意味無くお金を使う場所、興味無いからちゃんとは聞いていなかったけども、どうやら一眼小僧というのがいるらしい。1つ目の小僧らしい。まあどうでもいいけどな」
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「一眼国だ!」
一眼国、それは確か、と、脳内で反芻する。
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「人間? 1つ目小僧はただの怪物だろ、その証拠に1週間何も与えなくても大丈夫なんだよ」
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「まあ結構弱ってもきているからなぁ、じゃあ百万円分、用意してもらおうか」
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でも俺には算段があった。
「分かりました、全部で百万円分ならいいですよね? 今一気に持ってこなくても」
「一括じゃなくて分割ということか、まあそんなことができるならいいだろう」
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「おっ、苺を食べに来たんだな、というかいっぱい持っていっていいぞ、妖怪のおかげで収穫と同時にまた実がなるんだ」
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「すみません! 継続的に、百万円分、苺などの農産物を頂けませんか!」
「百万円分とは大きく出たな、でもまあ由宇さんと京子さんなら大歓迎だ。俺様は君たちにだけはケチじゃないぞ。お金の恩人だからな」
「それはあの、俺たち、に、ではなくて、見世物小屋をやっている店主に、なんです。見世物小屋で捕らえられている1つ目小僧さんを助けたくて」
「おぉ、人助けに、ということなのか! さすが由宇さんに京子さんだ! 人情は江戸の華だ! よしっ、じゃあ俺様もその見世物小屋へ行こう、話をつけてやる、苺をいっぱい持ってな!」
俺と京子と修功さんで、見世物小屋へ行き、店主の前でこう言った。
「これから、この修功さんから農産物を百万円分継続的に受け取るということにしてくれませんか?」
と俺が言うと修功さんが胸を張って、
「これがまあ最初の分の苺だ、これからどんな農産物の実でもオマエに俺様が百万円分までならくれてやる。悪い話じゃないだろ?」
瑞々しく芳醇な香りのする苺に店主はすぐさま虜になり、
「こんなに良い苺がもらえるなら、もうあんな1つ目小僧はいい! よしっ! 解放してやろう!」
店主は檻の中から1つ目小僧を出すと、1つ目小僧さんは俺に抱きついてきた。
俺は優しく1つ目小僧さんの頭を撫でた。
1つ目小僧さんは俺よりも小さく、小学1年生くらいの身長だった。
京子は1つ目小僧さんに視線を合わせるように屈み、こう言った。
「ねぇ、名前はなんて言うの?」
「陽」
と小声でそう言った。
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児童書・童話
閉鎖した児童絵本館に放置されたオオカミの着ぐるみが語る、数々の思い出。ボロボロの着ぐるみの中には、たくさんの人の想いが詰まっています。着ぐるみと人との間に生まれた、切なくも美しい物語です。
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録〜討伐も採集もお任せください!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?〜
うさみち
児童書・童話
【見習い錬金術士とうさぎのぬいぐるみたちが描く、スパイス混じりのゆるふわ冒険!情報収集のために、お仕事のご依頼も承ります!】
「……襲われてる! 助けなきゃ!」
錬成アイテムの採集作業中に訪れた、モンスターに襲われている少年との突然の出会い。
人里離れた山陵の中で、慎ましやかに暮らしていた見習い錬金術士ミミリと彼女の家族、機械人形(オートマタ)とうさぎのぬいぐるみ。彼女たちの運命は、少年との出会いで大きく動き出す。
「俺は、ある人たちから頼まれて預かり物を渡すためにここに来たんだ」
少年から渡された物は、いくつかの錬成アイテムと一枚の手紙。
「……この手紙、私宛てなの?」
少年との出会いをキッカケに、ミミリはある人、あるアイテムを探すために冒険を始めることに。
――冒険の舞台は、まだ見ぬ世界へ。
新たな地で、右も左もわからないミミリたちの人探し。その方法は……。
「討伐、採集何でもします!ご依頼達成の報酬は、情報でお願いできますか?」
見習い錬金術士ミミリの冒険の記録は、今、ここから綴られ始める。
《この小説の見どころ》
①可愛いらしい登場人物
見習い錬金術士のゆるふわ少女×しっかり者だけど寂しがり屋の凄腕美少女剣士の機械人形(オートマタ)×ツンデレ魔法使いのうさぎのぬいぐるみ×コシヌカシの少年⁉︎
②ほのぼのほんわか世界観
可愛いらしいに囲まれ、ゆったり流れる物語。読了後、「ほわっとした気持ち」になってもらいたいをコンセプトに。
③時々スパイスきいてます!
ゆるふわの中に時折現れるスパイシーな展開。そして時々ミステリー。
④魅力ある錬成アイテム
錬金術士の醍醐味!それは錬成アイテムにあり。魅力あるアイテムを活用して冒険していきます。
◾️第3章完結!現在第4章執筆中です。
◾️この小説は小説家になろう、カクヨムでも連載しています。
◾️作者以外による小説の無断転載を禁止しています。
◾️挿絵はなんでも書いちゃうヨギリ酔客様からご寄贈いただいたものです。
シャルル・ド・ラングとピエールのおはなし
ねこうさぎしゃ
児童書・童話
ノルウェジアン・フォレスト・キャットのシャルル・ド・ラングはちょっと変わった猫です。人間のように二本足で歩き、タキシードを着てシルクハットを被り、猫目石のついたステッキまで持っています。
以前シャルル・ド・ラングが住んでいた世界では、動物たちはみな、二本足で立ち歩くのが普通なのでしたが……。
不思議な力で出会った者を助ける謎の猫、シャルル・ド・ラングのお話です。
鎌倉西小学校ミステリー倶楽部
澤田慎梧
児童書・童話
【「鎌倉猫ヶ丘小ミステリー倶楽部」に改題して、アルファポリスきずな文庫より好評発売中!】
https://kizuna.alphapolis.co.jp/book/11230
【「第1回きずな児童書大賞」にて、「謎解きユニーク探偵賞」を受賞】
市立「鎌倉西小学校」には不思議な部活がある。その名も「ミステリー倶楽部」。なんでも、「学校の怪談」の正体を、鮮やかに解明してくれるのだとか……。
学校の中で怪奇現象を目撃したら、ぜひとも「ミステリー倶楽部」に相談することをオススメする。
案外、つまらない勘違いが原因かもしれないから。
……本物の「お化け」や「妖怪」が出てくる前に、相談しに行こう。
※本作品は小学校高学年以上を想定しています。作中の漢字には、ふりがなが多く振ってあります。
※本作品はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。
※本作品は、三人の主人公を描いた連作短編です。誰を主軸にするかで、ジャンルが少し変化します。
※カクヨムさんにも投稿しています(初出:2020年8月1日)
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