落語のような世界

青西瓜(伊藤テル)

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【01 決勝戦】

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・【01 決勝戦】


「サイドバック上がれ!」
 俺が指示を出して、サイドバックは上がってきた。
 サッカーは1チーム11人で行なうスポーツ。
 11人の意志を統一して、勝ちにいかないといけない。
 だから俺もキャプテンとして指示に力が入る。
 俺は中央でボールを受けて、サイドバックにパスを出す。
 サイドバックはサイドをえぐって、クロスを入れたところで、俺はペナルティエリアに侵入して、クロスをダイレクトで蹴ってシュートを放った。
 俺のシュートは見事ゴールに入って、相手との点差を2点差に突き放した。
 喜びはそこそこにまたスタートポジションに戻っていく。
 この決勝戦はいつも以上に負けられない。
 ここで勝てば、全国大会出場だから。
 サッカーは2点差が一番危険なスコアと言うし、しっかり守って、かつ、勝負を決定付ける3点目を入れたいと思っている。
「プレス! プレス!」
 味方に守備の指示をして、危険な芽を摘む。
 味方がパスコースを限定したところで、俺がボールを奪って、一気にカウンターへ、と思ったら、俺はどうやら後ろからスライディングタックルを入れられたようで、その場に倒れ込んだ。
 ただ足に痛みは無い。大丈夫のようだ。
 俺はボールをセットしてFKの準備をすると、味方の矢村も俺の隣に立って、
「今回は僕に蹴らせてほしい」
 と言ってきたので、まだFKを蹴っていない矢村が蹴ることは奇襲になるので、了承し、まるで自分が蹴るようなアクションをしてから、矢村が蹴った。
 矢村のシュートはグングンと伸びていき、枠内、ゴールかと思ったが、キーパーがファインセーブをしてCKになった。
 俺たちはペナルティエリア付近に立ち、矢村が蹴るCKを待っていると、相手選手がグイグイ俺のことを押してくる。
 何なら倒そうとしてくるイメージだ。
 それを見ていた審判が相手選手に注意を入れた。
 どうやら相手は苛立っているようで、さっきからプレーが若干荒くなってきている。
 それだけ焦っているということだが、こういう時は怪我を注意しなければならない。
 いうても勝ってるわけだから、そんな無理をしてはいけない。
 全国大会は決勝戦のすぐ後に開催されるから。
 小学六年生である俺はこのチームでサッカーをするのは、負けたら最後になる。
 でも怪我をしたら、そのまま終わりだ。
 そんなことは悔いが残る。
 だからって攻撃も守備もサボれない、と思ったところで、矢村が手を上げて、CKを蹴り込んだ。
 俺は思い切りジャンプしたその時だった。
 着地するタイミングで誰かに背中を押され、態勢を崩し、倒れるように落ちてしまった。
 地面に叩きつけられた俺は、体をすぐに動かそうにも動かない。
 足を痛めたのか、腕を痛めたのかも分からない。
 ただただ全身が痛くて、動かないんだ。
 心配そうに味方も審判も近付く。
 審判はすぐさま担架を呼んだ。
 あっ、終わった、と思った。
 このチームでサッカーはもうできないんだ、と分かった。
 もう諦めるしかなかった。
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