最強勇者の物語2

しまうま弁当

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第5章 アグトリア動乱

会談

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7月25日の午後4時過ぎである。

カスパーはバルムスに案内されてジフロル団長の陣地へとやってきた。

カスパーが通された所には簡素な机と椅子が用意されていた。

そこにジフロル団長がやって来た。

カスパーがジフロル団長に一礼をした。

そしてジフロル団長に言った。

「突然の来訪申し訳ございません。ドロメ様の使者としてやってきましたカスパー・ブライスと申します。」

ジフロル団長がカスパーに一礼をした。

そしてカスパーに言った。

「ジフロル盗賊団の長を努めております、アリエル・ジフロルです。此度はご足労頂きありがとうございました。さあお座りください。」

カスパーがジフロル団長に言った。

「ありがとうございます。」

カスパーは席についた。

ジフロル団長そしてバルムスも着席した。

するとカスパーがジフロル団長に尋ねた。

「ジフロル様、早速ですが交渉に入らせて頂いても宜しいでしょうか?」

ジフロル団長がカスパーに言った。

「ええ構いません。」

カスパーがジフロル団長に言った。

「ありがとうございます。ドロメ様はジフロル盗賊団との即時停戦及び休戦協定を望んでおります。その証としてガブロの部隊の戦闘を即時中止致しました。」

ジフロル団長がカスパーに言った。

「ブライス殿、停戦であれば我々としては歓迎したい所です。ですが、我々はバトロアから逃げてきた者達の要請に応じてこの戦いを始めました。バトロアの人々を帰還できるようにする事が我々の責務と考えております。よって停戦を望まれるのであるならばこの点において明確な解決策を提示して頂きたい。」

カスパーがジフロル団長に言った。

「ジフロル様、その点は承知しております。バトロアは全てジフロル様にお渡しするつもりでございます。そして当方はバトロアより完全に撤収致します。これならばジフロル様を頼った者達が帰還する事も容易に叶いましょう。」

ジフロル団長がカスパーに言った。

「なるほどそれは有り難いお話ですな。」

するとバルムスがカスパーに言った。

「ブライス殿、私からも一つお尋ねして宜しいですかな?」

カスパーがバルムスに言った。

「ええ、何なりとお尋ねください。」

バルムスがカスパーに尋ねた。

「バトロアを捨てるという決断は我々にとっては有り難いですが、あなた方にとっては損にしかならないはずです。なぜいきなり停戦をしようとされたのです?その理由を教えて頂いても宜しいですかな?」

するとカスパーはバルムスに言った。

「お恥ずかしい話ながら、ドロメ様の側近の一人であるヌエドに裏切られてしまったのです。本拠地であるトリガードを乗っ取られてしまいました。我々は背後に敵を抱えてジフロル様との戦いどころでは無くなってしまったのです。」

バルムスがカスパーに言った。

「なるほど、そういう事でしたか。」

今度はカスパーがジフロル団長に尋ねた。

「ジフロル様、どうでございますか?」

ジフロル団長がカスパーに言った。

「ええ、我々も即時停戦及び休戦協定に賛同致します。」

カスパーがジフロル団長に言った。

「ありがとうございます。」

ジフロル団長がカスパーに言った。

「私の名にかけて停戦は遵守いたします。」

ジフロル団長がバルムスに尋ねた。

「バルムスもそれで良いな?」

バルムスがジフロル団長に言った。

「はい、構いません。」

ジフロル団長とカスパーは握手をした。

そしてすぐに停戦協定についての詳細が詰められていった。

停戦協定の内容は以下の通りになった。

「ジフロル盗賊団とドロメ盗賊団との全ての戦闘行動の即時停止し、停戦状態を無期限で継続する事。」

「ドロメ盗賊団はバトロア教区全てをジフロル盗賊団に引き渡す事。」

「ドロメ盗賊団の団員は可能な限り早くバトロアから撤退する事。」

「負傷者及び捕虜は丁重に扱い所属の盗賊団に可能な限り早く送る事。」

そして詳細を詰めた後で、ジフロル団長とカスパーは停戦協定の書類に署名をして停戦協定が正式に成立した。

すでに午後六時を回っていた。

まわりは夕暮れ時でもうすぐ日が沈もうとしていた。

一方その頃、ロイはミルゲ砦の南方にいた。

ロイの部隊は敗走してレイドスの部隊に激しい追撃を受けて多大な犠牲を出していた。

だが指揮官のロイは何とか逃げ切る事ができたのであった。

ロイは散り散りになった敗残兵を集めてようとしていた。

ロイの元にはすでに五人ほどが合流していた。

ロイの部下がロイに尋ねた。

「偽善者共に敗北してしまった我々はどうなってしまうのでしょうか?」

ロイが部下に言った。

「大敗したお前らが許してもらえると思うか?」

部下がロイに言った。

「いえ、思いません。」

ロイが部下に言った。

「そうだ、俺達は戻れば全員処刑される!ドロメ様が失敗した俺達をお許しになるはずがない。」

部下がロイに尋ねた。

「ではどうなさるおつもりです?」

ロイが部下に言った。

「そんなものは決まってるだろうが?偽善者共の所に向かう!」

部下がロイに尋ねた。

「まさか、もう一度偽善者共と戦うのですか?」

ロイが部下に言った。

「違う!こんな人数じゃ無理に決まってるだろうが!!」

部下がロイに言った。

「まさか偽善者共に降参するという事ですか?」

ロイが部下に言った。

「少し違うな、ジフロル様に仕えるという事だ。」

部下がロイに尋ねた。

「なっ?ドロメ様を裏切るおつもりですか?」

ロイが部下に言った。

「仕方ないだろうが?ヘマをした俺達にはもうドロメ盗賊団には居場所がない。良くて牢屋暮らしだぞ?」

部下がロイに言った。

「ですが、我々はついさっきまで偽善者共と命がけで戦っていたのです!!突然、ジフロルに仕えるなどと言われても、とうてい承服できません!!」

ロイが部下に言った。

「ならドロメ様の所に戻って処刑されたいか?」

部下がロイに言った。

「いえ、それは・・・。そうだ!またカスパー様にとりなしてもらっては如何ですか?そうすればドロメ様がお許しくださるかもしれません。」

ロイが部下に怒鳴った。

「カスパーの野郎にとりなしてもらうだあ?ふざけんな!!あんな口だけの野郎に頼ってたまるか!!」

するとロイ達の背後にある茂みの方からガサゴソと物音がした。

ロイ達は慌てて身構えた。

次の瞬間ロイ達の前に一人の男が現れた。

だがロイ達の目の前に現れたのは、ロイの部下のドルーゴだった。

ロイ達はドルーゴだと分かりひと安心した。

そしてロイがドルーゴに言った。

「なんだ!ドルーゴか!脅かしやがって!!お前今までどこにいた??」

ドルーゴがロイに言った。

「すいません、道に迷ってしまいまして。」

ロイがドルーゴに言った。

「ったく、使えない奴め!まあいい!ドルーゴ、お前も一緒に来い。」

ドルーゴがロイに尋ねた。

「どこに行かれるのです?」

ロイがドルーゴに言った。

「ジフロル様の所だ。」

ドルーゴがロイに聞き返した。

「ジフロル様?」

するとロイの部下がドルーゴに言った。

「ロイ様はジフロル盗賊団に入れてもらおうとしているのです。」

ドルーゴがロイに尋ねた。

「ドロメ様を裏切るおつもりですか?」

ロイがドルーゴに言った。

「仕方ないだろうが?俺達はヘマをした。ドロメ様の所に戻っても処刑されるだけだ!!」

ドルーゴがロイに言った。

「それでドロメ様を裏切ろうとしている訳ですか?」

ロイがドルーゴに言った。

「そういう事だ。それと、今後ドロメに様をつけるな。これからジフロル様に仕えるんだ!だから薄汚いドロメの野郎でいい!分かったか?」

ドルーゴがロイに言った。

「ええ、よく分かりました。」

ロイがドルーゴに言った。

「よしでは俺の後についてこい!これからジフロル様の所に向かう。」

ドルーゴがロイに言った。

「いえ、その必要はありませんよ!」

ロイがドルーゴに聞き返した。

「何だと?」

そしてドルーゴはすっと手を上げた。

すると茂みの中からドルーゴの仲間達が数人現れて、ロイを取り押さえた。

ロイが怒鳴りつけた。

「貴様!!何のつもりだ!!」

だがドルーゴとドルーゴの仲間達はロイには構わずに、すぐに縄でロイをきつく縛りあげた。

するとロイに従っていた部下が大声を上げた。

「おい、ドルーゴ!!どういうつもりだ??」

ドルーゴはロイの部下に言った。

「ここにいる者達が助かるにはこれが最善の方法だ!!」

ロイの部下がドルーゴに言った。

「ちゃんと説明しろ!!」

ドルーゴがロイの部下に言った。

「ロイはな、俺達に嘘の命令をしていたんだ!!」

ロイの部下がドルーゴに聞き返した。

「嘘の命令?」

ドルーゴがロイの部下に言った。

「ああ、ドロメ様は、ミルゲ砦を攻めろなんて命令は出していないんだ。こいつは作戦会議で自分の作戦が採用されなかったのが気に入らなかったらしい。それで勝手にドロメ様の名前を使ってミルゲ砦を攻めろって命令を出したのさ。」

ドルーゴが話を続けた。

「ドロメ様はロイの独断専行に激怒された。このミルゲでの戦いで敗北していたら、ロイの全ての権限を剥奪するとの命令だった。」

ロイの部下が言った。

「権限を剥奪する?」

ドルーゴがロイの部下に言った。

「ああ、だからこいつはもう俺らの指揮官でもないし、ドロメ様の部下でもないのさ。」

するとロイがドルーゴに怒鳴った。

「おい、ドルーゴ!!適当な事言ってんじゃねーぞ!!」

ドルーゴがロイに言った。

「俺は最初からあんたの命令はおかしいと思ってたのさ。一度も伝令をバトロア村に送らなかったからな!だから迷子になったふりをして、バトロア村まで確認しに行こうと思ったのさ。そしたら偶然にも偽善者共とカスパー様がミルゲ砦に向かうのを見かけたんでな。後を追ってミルゲ砦に向かったんだ。そして偽善者共と一緒にいたカスパー様から事情を聞いたのさ。」

ロイの部下がドルーゴに尋ねた。

「だがなぜカスパー様が偽善者共と一緒にいたんだ?」

ドルーゴがロイの部下に言った。

「それがヌエドがトリガードで謀反を起こしたらしい。」

ロイの部下がドルーゴに尋ねた。

「ヌエドが謀反を起こした?」

ドルーゴがロイの部下に言った。

「ああ、だからドロメ様はヌエド討伐のためやむなく偽善者共と停戦したいらしい。カスパー様はその交渉のために偽善者の所に来ていたんだ。」

ロイの部下がドルーゴに言った。

「なるほどな。それじゃあロイを縛る事で、なんでドロメ様が俺達を許してくれるんだ?」

ドルーゴがロイの部下に言った。

「ああ、それはドロメ様がロイを捕まえろと命令を出しているからだ。ロイを自分の手で処断されたいらしい。」

ロイの部下がドルーゴに言った。

「つまりドロメ様にロイを差し出せば手柄になる訳か。その手柄と引き換えに許してもらおうって事だな?」

ドルーゴがロイの部下に言った。

「そういう事だ。」

するとロイが大声をあげた。

「てめえら!!いい加減にしろよ!!バトロアでもミルゲでも負けたのはテメエらが使えないからだろうが!!テメエらがもっとちゃんと戦ってれば、勝てたんだ!!それなのに、すぐに逃げ出しやがって!!この役立たず共が!!」

今まで従っていたロイの部下達もこのロイの言葉を聞いて怒りをあらわにした。

「ふざけんな!!テメエが作戦を立てて指揮したんだろうが!!テメエの指揮で一体何人死んだと思ってるんだ?みんなテメエのせいで死んだんだぞ!!」

別のロイの部下がロイに言った。

「全くだ!!お前が責任者だろうが!!少しは責任を感じないのか?」

ロイがその部下に言った。

「責任??俺様の作戦も指揮も完璧だった。俺様は責務をしっかり果たしたんだ!!お前らこそ自分のふがいなさを恥じたらどうなんだ??負けたのはテメエらが俺様の足を引っ張ったからだろうが?偽善者なんぞに遅れをとりやがって!!この役立たず共が!!無能共が!!」

するとロイの部下の一人がロイの胸ぐらを掴んで顔面を殴り始めた。

「ふざけんな!!俺の弟はお前を信じて戦いそして死んだんだぞ!!それなのに!!それなのに!!貴様は!!」

するとドルーゴがそれを静止した。

「気持ちは分かるが、止めてくれ。こいつを生きて連れてかないと、ドロメ様の命令を守った事にならない。」

するとその盗賊は殴るのを止めてロイから手を離した。

そしてドルーゴに言った。

「ああ、分かった!!すまない!!」

ドルーゴがみんなに言った。

「さあ、こいつをドロメ様の所に連れていこう。」

こうしてロイは部下達に捕まってドロメ団長の所に護送されていった。
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