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第5章 アグトリア動乱
謀反
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時間が少し戻って7月25日の午前11時頃である。
ここはバトロア村の広場である。
ドロメ団長の怒りが溜まりつつあった。
ドロメ団長の大声が村の広場に響いていた。
「まだ黒煙は上がらないのか?!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「黒煙はまだ上がっておりません。」
ドロメ団長がカスパーに言った。
「くそ!!ロイの奴はまだミルゲ砦を落とせんのか!!」
グロッケンがドロメ団長に言った。
「こりゃカスパーの言うとおり偽善者共の邪魔が入ったかもしれませんな。」
ドロメ団長が怒声をあげた。
「全くロイの奴め!!砦の一つや二つさっさと落とさんか!!」
するとドロメ団長のもとに一人の男がやって来た。
その男は息も絶え絶えの様子だった。
その男はドロメ団長の前にやってくるとドロメ団長に言った。
「ド、ドロメ様!!一大事でございます!」
ドロメ団長が不機嫌そうにその男に尋ねた。
「今度はなんだ?」
するとカスパーがその男の顔を見て驚いた様子でその男に尋ねた。
「お前はザングではないか?なぜこんな所にいる?」
ザングと呼ばれた男がカスパーに言った。
「む、謀反です。ヌエドの奴が謀反を起こしました!」
ドロメ団長が驚いた様子でザングに聞き返した。
「何?!!ヌエドが謀反だと!!本当か?!!」
ザングがドロメ団長に言った。
「はい!本当でございます。」
今度はカスパーがザングに尋ねた。
「詳しい状況を教えてくれ?」
ザングは留守居として残っていたヌエドの部下の一人であったが、ヌエドの息はかかっていなかった。そのため脱出してドロメ団長に報告に来たのだった。
ザングがカスパーに言った。
「はっ、昨日の7月24日の昼過ぎの事です。ヌエドがトリガードの中央広場で突如ドロメ様を打倒すると宣言したのです。その後、トリガードの要所は全てヌエドの息のかかった者共によって占拠されてしまいました。私はこの報をドロメ様に知らせようと密かにトリガードを脱出し馬を走らせてまいりました。」
この話を聞いたドロメ団長は激怒しながら怒鳴った。
「おのーれ!!ヌエドの奴め!!裏切りおって!!!絶対に許さんぞー!!!」
ザングの後にもトリガードよりの脱出者が何人かやって来て、ザングと同じようにヌエドの謀反を知らせたのだった。
ヌエドの謀反が確定的となった。
そしてドロメ団長が怒声をあげた。
「おのれー!!裏切り者のヌエドめが!!!」
グロッケンがドロメ団長に言った。
「ドロメ様のお怒りはごもっともです。」
ドロメ団長が大声で怒鳴りつけた。
「このドロメ様が直ちにトリガードに戻りヌエドめを八つ裂きにしてやる!!!グロッケンとカスパーはこの村に残っておれ!良いな?!!」
グロッケンがドロメ団長に言った。
「承知しました。」
するとカスパーがドロメ団長に言った。
「お待ちくださいドロメ様!」
ドロメ団長が不機嫌そうにカスパーに尋ねた。
「何だ?カスパー!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「恐れながら我々の手元には六千足らずの戦力しかございません。この上さらに戦力を分散させるのは危険です。」
グロッケンがカスパーに言った。
「おいおいカスパー!!んな事言ってもヌエドの野郎を放置するなんてできないだろうが?本拠地のトリガードをヌエドの野郎が占拠してるんだぞ!」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「その通りだ!!裏切り者のヌエドを八つ裂きにせねば、このドロメ様の気が収まらんわ!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「私はヌエド討伐を反対している訳ではありません。」
ドロメ団長がカスパーに尋ねた。
「ではどういう事だ?!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「全戦力でトリガードに戻るべきと考えます。」
グロッケンがカスパーに言った。
「おいおいカスパー、俺達は偽善者共と事を構えてるんだぞ?戦力をある程度残していかないとまずいだろうが!」
ドロメ団長が訝しげにカスパーに尋ねた。
「カスパー?何が言いたい??」
カスパーがドロメ団長に言った。
「偽善者達と講和するべきだと考えます。」
ドロメ団長が激怒しながらカスパーに怒鳴った。
「何だと??偽善者共とお手てをつなげだと?!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「はっ、恐れながらもう偽善者達と戦っていられる状況ではなくなりました。であれば講和をした方が良いと考えます。」
グロッケンがカスパーに言った。
「おいおい、偽善者共と講和をするって事はバトロアを諦めろと言っているようなもんだぞ?」
カスパーがグロッケンに言った。
「こうなってしまってはやむを得えない。バトロアは交通の要衝であり鉱山も有しているが、いかんせん小さな教区です。トリガードと比較すれば、重要度はトリガードの方が上だ。ならば今はトリガードの奪還に全力を注ぐべきだ。」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「おいカスパー!!偽善者共とお手てをつなぐ必要はないだろうが!!このドロメ様がヌエドの奴を打倒してその後で偽善者共と雌雄を決すればいいだけだろうが!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「ドロメ様、お気持ちはわかります。ですが最悪、偽善者共がヌエドと手を結んでトリガードまで進攻してくるかもしれません。私が一番恐れているのはまさにそこなのです。」
ドロメ団長がカスパーに聞き返した。
「ヌエドと偽善者共が手を組むだと??」
カスパーがドロメ団長に言った。
「謀反を起こしたばかりのヌエドにはまだ味方する者は多くないでしょう。ドロメ様と戦うためには味方を集める必要があります。そうなればバトロアで対峙している偽善者達と手を組もうとするのは当然の流れかと。」
グロッケンがカスパーに言った。
「確かにそれをやられたらヤバいだろうな。だがカスパー?もうすでにヌエドと偽善者共は手を組んでるんじゃないか?偽善者共の進攻とそれを見計らったようなヌエドの謀反、タイミングが絶妙すぎないか?だが今回の偽善者共のバトロア進攻自体がヌエドと示し合わせたたものだったら、説明がつく。だとすると講和をするのはそもそも無理なんじゃないのか?」
カスパーがグロッケンに言った。
「いや恐らくヌエドと偽善者達はまだ手を組んでいないはずだ。」
グロッケンがカスパーに言った。
「なぜそんな事が分かる?」
カスパーがグロッケンに言った。
「このバトロアに進攻したのがつい二週間前の事だからだ。」
グロッケンがカスパーに言った。
「それがどうした?」
カスパーがグロッケンに言った。
「二週間前までは偽善者達の本拠地ストレアと我々の領域は直接境界を接していなかった。偽善者達がトリガードに部隊を送ろうとしてもこのバトロア教区が邪魔で簡単にはできない状況だった訳だ。共闘ができない相手と共闘しようとは思わないだろう?」
グロッケンがカスパーに言った。
「まあそうかもしれないが今は偽善者共と境界を接しているだろう?」
カスパーがグロッケンに言った。
「バトロア進攻を提案したのも決定したのもドロメ様自身だ。ヌエドはこの決定に関与していなかった。だからヌエドがこの状況が予測できたとはとても思えない。」
グロッケンがカスパーに言った。
「なるほどな。だがロイの奴がまぐれで偽善者共に勝利してたらどうするつもりだ?その場合だと講和の必要は無くなっちまうだろうが?」
カスパーがロイに言った。
「ロイが勝利していた場合でもやはり講和は必要だろう。完勝ならば確かに講和の必要は無くなる。だが偽善者達を相手に寡兵で完勝はまず無理だ。ロイが勝利したからといってそれがヌエドと偽善者達と手を組む事を阻止する事にはならない。それに本拠地を失っている事に変わりはない。根拠地を失った状態でこれだけの部隊を維持していくなど不可能だ。どちらにせよ講和してトリガードを取り戻すしか方法がない。」
ドロメ団長がカスパーに尋ねた。
「カスパー?!!なぜ偽善者共とお手てをつなげというのだ?!それでヌエドと偽善者共が手を組むのを阻止できるのか?」
カスパーがドロメ団長に言った。
「偽善者達は事のほか信義を重んじます。一度した約束事を反故にするような事はまずあり得ません。ですのでヌエドが偽善者達と手を組む前にこちらから停戦協定を結ぶのです。」
グロッケンが納得したようにカスパーに言った。
「なるほどな、いったん偽善者共と停戦協定を結んでしまえば、偽善者共はそれを反故にする事はない。その後でヌエドが何を言おうが無駄という訳か。」
ドロメ団長の怒りは頂点に達していた。
「あーー!!えいーー!!くそー!!偽善者共め!!ヌエドの奴め!!」
しばらくの間ドロメ団長の怒声が響き渡った。
そしてドロメ団長の怒りが少しやわらいだ後で言った。
「まさか偽善者共とお手てをつながなきゃならんとはな!!」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「カスパー!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「はっ!!」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「おててをつなぐ交渉はお前がしてこい!!それとお前に預けている部隊を全て返せ!!いいな!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「はっ!承知しました。」
ドロメ団長がカスパーに言った。
「ガブロには部下を連れてすぐにトリガードに戻るように伝えろ!ロイは偽善者共に勝利してたら許してやる!もし負けたのなら捕まえておけ!ヌエドを始末した後で処刑してやる!!いいな!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「承知しました。」
カスパーはドロメ団長に一礼をすると、広場近くにある村の集会所の中に入っていった。
ドロメ団長は大声でグロッケンに指示を出した。
「グロッケン!!カスパーの部隊はお前が指揮しろ!!すぐに部隊を再編しろ!!再編が終わり次第すぐに出撃するぞ!!」
グロッケンがドロメ団長に言った。
「はっ!!」
グロッケンはすぐに部隊の再編を始めた。
するとカスパーがドロメ団長のもとに戻ってきてドロメ団長に言った。
「ドロメ様、先ほどの命令をしたためました。こちらにドロメ様の印を頂けますか?」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「全くめんどくさい奴だ!!カスパー!!インクをよこせ!!」
カスパーはドロメ団長に持っていたインクを渡した。
するとドロメ団長は自分の右手にインクをふんだんにかけるとカスパーのしたためた書類に手形を押した。
ドロメ団長がカスパーに言った。
「これでいいだろう!!カスパー!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「はっ!ありがとうございます。ドロメ様!!」
そしてグロッケンが部隊の再編を完了させた。
グロッケンがドロメ団長にやってきて報告した。
「ドロメ様、部隊の再編が終わりました。」
ドロメ団長は頷くと部下達を広場に集めた。
そして大声で部下達に怒鳴った。
「野郎共!!出撃だ!!いくぞー!!!」
部下達がドロメ団長に答えた。
「おっー!!」
ドロメ団長率いる部隊とグロッケンが率いる部隊がヌエド討伐の為にバトロア村を出撃し、トリガードへと戻っていった。
ここはバトロア村の広場である。
ドロメ団長の怒りが溜まりつつあった。
ドロメ団長の大声が村の広場に響いていた。
「まだ黒煙は上がらないのか?!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「黒煙はまだ上がっておりません。」
ドロメ団長がカスパーに言った。
「くそ!!ロイの奴はまだミルゲ砦を落とせんのか!!」
グロッケンがドロメ団長に言った。
「こりゃカスパーの言うとおり偽善者共の邪魔が入ったかもしれませんな。」
ドロメ団長が怒声をあげた。
「全くロイの奴め!!砦の一つや二つさっさと落とさんか!!」
するとドロメ団長のもとに一人の男がやって来た。
その男は息も絶え絶えの様子だった。
その男はドロメ団長の前にやってくるとドロメ団長に言った。
「ド、ドロメ様!!一大事でございます!」
ドロメ団長が不機嫌そうにその男に尋ねた。
「今度はなんだ?」
するとカスパーがその男の顔を見て驚いた様子でその男に尋ねた。
「お前はザングではないか?なぜこんな所にいる?」
ザングと呼ばれた男がカスパーに言った。
「む、謀反です。ヌエドの奴が謀反を起こしました!」
ドロメ団長が驚いた様子でザングに聞き返した。
「何?!!ヌエドが謀反だと!!本当か?!!」
ザングがドロメ団長に言った。
「はい!本当でございます。」
今度はカスパーがザングに尋ねた。
「詳しい状況を教えてくれ?」
ザングは留守居として残っていたヌエドの部下の一人であったが、ヌエドの息はかかっていなかった。そのため脱出してドロメ団長に報告に来たのだった。
ザングがカスパーに言った。
「はっ、昨日の7月24日の昼過ぎの事です。ヌエドがトリガードの中央広場で突如ドロメ様を打倒すると宣言したのです。その後、トリガードの要所は全てヌエドの息のかかった者共によって占拠されてしまいました。私はこの報をドロメ様に知らせようと密かにトリガードを脱出し馬を走らせてまいりました。」
この話を聞いたドロメ団長は激怒しながら怒鳴った。
「おのーれ!!ヌエドの奴め!!裏切りおって!!!絶対に許さんぞー!!!」
ザングの後にもトリガードよりの脱出者が何人かやって来て、ザングと同じようにヌエドの謀反を知らせたのだった。
ヌエドの謀反が確定的となった。
そしてドロメ団長が怒声をあげた。
「おのれー!!裏切り者のヌエドめが!!!」
グロッケンがドロメ団長に言った。
「ドロメ様のお怒りはごもっともです。」
ドロメ団長が大声で怒鳴りつけた。
「このドロメ様が直ちにトリガードに戻りヌエドめを八つ裂きにしてやる!!!グロッケンとカスパーはこの村に残っておれ!良いな?!!」
グロッケンがドロメ団長に言った。
「承知しました。」
するとカスパーがドロメ団長に言った。
「お待ちくださいドロメ様!」
ドロメ団長が不機嫌そうにカスパーに尋ねた。
「何だ?カスパー!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「恐れながら我々の手元には六千足らずの戦力しかございません。この上さらに戦力を分散させるのは危険です。」
グロッケンがカスパーに言った。
「おいおいカスパー!!んな事言ってもヌエドの野郎を放置するなんてできないだろうが?本拠地のトリガードをヌエドの野郎が占拠してるんだぞ!」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「その通りだ!!裏切り者のヌエドを八つ裂きにせねば、このドロメ様の気が収まらんわ!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「私はヌエド討伐を反対している訳ではありません。」
ドロメ団長がカスパーに尋ねた。
「ではどういう事だ?!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「全戦力でトリガードに戻るべきと考えます。」
グロッケンがカスパーに言った。
「おいおいカスパー、俺達は偽善者共と事を構えてるんだぞ?戦力をある程度残していかないとまずいだろうが!」
ドロメ団長が訝しげにカスパーに尋ねた。
「カスパー?何が言いたい??」
カスパーがドロメ団長に言った。
「偽善者達と講和するべきだと考えます。」
ドロメ団長が激怒しながらカスパーに怒鳴った。
「何だと??偽善者共とお手てをつなげだと?!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「はっ、恐れながらもう偽善者達と戦っていられる状況ではなくなりました。であれば講和をした方が良いと考えます。」
グロッケンがカスパーに言った。
「おいおい、偽善者共と講和をするって事はバトロアを諦めろと言っているようなもんだぞ?」
カスパーがグロッケンに言った。
「こうなってしまってはやむを得えない。バトロアは交通の要衝であり鉱山も有しているが、いかんせん小さな教区です。トリガードと比較すれば、重要度はトリガードの方が上だ。ならば今はトリガードの奪還に全力を注ぐべきだ。」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「おいカスパー!!偽善者共とお手てをつなぐ必要はないだろうが!!このドロメ様がヌエドの奴を打倒してその後で偽善者共と雌雄を決すればいいだけだろうが!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「ドロメ様、お気持ちはわかります。ですが最悪、偽善者共がヌエドと手を結んでトリガードまで進攻してくるかもしれません。私が一番恐れているのはまさにそこなのです。」
ドロメ団長がカスパーに聞き返した。
「ヌエドと偽善者共が手を組むだと??」
カスパーがドロメ団長に言った。
「謀反を起こしたばかりのヌエドにはまだ味方する者は多くないでしょう。ドロメ様と戦うためには味方を集める必要があります。そうなればバトロアで対峙している偽善者達と手を組もうとするのは当然の流れかと。」
グロッケンがカスパーに言った。
「確かにそれをやられたらヤバいだろうな。だがカスパー?もうすでにヌエドと偽善者共は手を組んでるんじゃないか?偽善者共の進攻とそれを見計らったようなヌエドの謀反、タイミングが絶妙すぎないか?だが今回の偽善者共のバトロア進攻自体がヌエドと示し合わせたたものだったら、説明がつく。だとすると講和をするのはそもそも無理なんじゃないのか?」
カスパーがグロッケンに言った。
「いや恐らくヌエドと偽善者達はまだ手を組んでいないはずだ。」
グロッケンがカスパーに言った。
「なぜそんな事が分かる?」
カスパーがグロッケンに言った。
「このバトロアに進攻したのがつい二週間前の事だからだ。」
グロッケンがカスパーに言った。
「それがどうした?」
カスパーがグロッケンに言った。
「二週間前までは偽善者達の本拠地ストレアと我々の領域は直接境界を接していなかった。偽善者達がトリガードに部隊を送ろうとしてもこのバトロア教区が邪魔で簡単にはできない状況だった訳だ。共闘ができない相手と共闘しようとは思わないだろう?」
グロッケンがカスパーに言った。
「まあそうかもしれないが今は偽善者共と境界を接しているだろう?」
カスパーがグロッケンに言った。
「バトロア進攻を提案したのも決定したのもドロメ様自身だ。ヌエドはこの決定に関与していなかった。だからヌエドがこの状況が予測できたとはとても思えない。」
グロッケンがカスパーに言った。
「なるほどな。だがロイの奴がまぐれで偽善者共に勝利してたらどうするつもりだ?その場合だと講和の必要は無くなっちまうだろうが?」
カスパーがロイに言った。
「ロイが勝利していた場合でもやはり講和は必要だろう。完勝ならば確かに講和の必要は無くなる。だが偽善者達を相手に寡兵で完勝はまず無理だ。ロイが勝利したからといってそれがヌエドと偽善者達と手を組む事を阻止する事にはならない。それに本拠地を失っている事に変わりはない。根拠地を失った状態でこれだけの部隊を維持していくなど不可能だ。どちらにせよ講和してトリガードを取り戻すしか方法がない。」
ドロメ団長がカスパーに尋ねた。
「カスパー?!!なぜ偽善者共とお手てをつなげというのだ?!それでヌエドと偽善者共が手を組むのを阻止できるのか?」
カスパーがドロメ団長に言った。
「偽善者達は事のほか信義を重んじます。一度した約束事を反故にするような事はまずあり得ません。ですのでヌエドが偽善者達と手を組む前にこちらから停戦協定を結ぶのです。」
グロッケンが納得したようにカスパーに言った。
「なるほどな、いったん偽善者共と停戦協定を結んでしまえば、偽善者共はそれを反故にする事はない。その後でヌエドが何を言おうが無駄という訳か。」
ドロメ団長の怒りは頂点に達していた。
「あーー!!えいーー!!くそー!!偽善者共め!!ヌエドの奴め!!」
しばらくの間ドロメ団長の怒声が響き渡った。
そしてドロメ団長の怒りが少しやわらいだ後で言った。
「まさか偽善者共とお手てをつながなきゃならんとはな!!」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「カスパー!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「はっ!!」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「おててをつなぐ交渉はお前がしてこい!!それとお前に預けている部隊を全て返せ!!いいな!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「はっ!承知しました。」
ドロメ団長がカスパーに言った。
「ガブロには部下を連れてすぐにトリガードに戻るように伝えろ!ロイは偽善者共に勝利してたら許してやる!もし負けたのなら捕まえておけ!ヌエドを始末した後で処刑してやる!!いいな!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「承知しました。」
カスパーはドロメ団長に一礼をすると、広場近くにある村の集会所の中に入っていった。
ドロメ団長は大声でグロッケンに指示を出した。
「グロッケン!!カスパーの部隊はお前が指揮しろ!!すぐに部隊を再編しろ!!再編が終わり次第すぐに出撃するぞ!!」
グロッケンがドロメ団長に言った。
「はっ!!」
グロッケンはすぐに部隊の再編を始めた。
するとカスパーがドロメ団長のもとに戻ってきてドロメ団長に言った。
「ドロメ様、先ほどの命令をしたためました。こちらにドロメ様の印を頂けますか?」
ドロメ団長がカスパーに怒鳴った。
「全くめんどくさい奴だ!!カスパー!!インクをよこせ!!」
カスパーはドロメ団長に持っていたインクを渡した。
するとドロメ団長は自分の右手にインクをふんだんにかけるとカスパーのしたためた書類に手形を押した。
ドロメ団長がカスパーに言った。
「これでいいだろう!!カスパー!!」
カスパーがドロメ団長に言った。
「はっ!ありがとうございます。ドロメ様!!」
そしてグロッケンが部隊の再編を完了させた。
グロッケンがドロメ団長にやってきて報告した。
「ドロメ様、部隊の再編が終わりました。」
ドロメ団長は頷くと部下達を広場に集めた。
そして大声で部下達に怒鳴った。
「野郎共!!出撃だ!!いくぞー!!!」
部下達がドロメ団長に答えた。
「おっー!!」
ドロメ団長率いる部隊とグロッケンが率いる部隊がヌエド討伐の為にバトロア村を出撃し、トリガードへと戻っていった。
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