最強勇者の物語2

第5章 アグトリア動乱

退却

ガイコ司教はすぐに撤収準備を始めた。

撤収準備が完了した部隊から順次退却を始める所であった。

そこに偵察に出ていた僧兵がガイコ司教に報告に来た。

「大変です。ドロメ盗賊団がこちらに向けて進軍を始めたようです。」

ガイコ司教が僧兵に尋ねた。

「何？どのくらいの規模か分かるか？」

僧兵がガイコ司教に答えた。

「はい、およそ五千です。」

ガイコ司教が僧兵に答えた。

「それはまずいな。予想よりも早い。ドロメの奴ら今日中にこのバトロワ鉱山を包囲するつもりか。」

この時ドロメ盗賊団は攻勢準備を整て五千人を超える戦力でバトロワ鉱山に向かっていた。

するとガイコ司教はバローネ司祭呼んだ。

そしてバローネ司祭に指示を出した。

「バローネ司祭、君が退却の指揮をとってくれ。」

バローネ司祭がガイコ司教に尋ねた。

「ガイコ司教様、どういう事ですか？」

ガイコ司教がバローネ司祭に答えた。

「ドロメ盗賊団が進撃を始めた。すでにバトロワ鉱山目前まで迫っているようだ。このままではこちらが退却を完了をする前にバトロワ鉱山が包囲されてしまう。そうなれば退却など不可能だ。だから私がここに残り皆が退却する時間を稼ぐ。」

これを聞いたバローネ司祭は大声でガイコ司教に言った。

「ガイコ司教様を置いて逃げろという事ですか？そんな事できません。どうかこのバローネにその役目をやらせてください。」

だがガイコ司教はバローネ司祭に言った。

「バローネ司祭、君は戦闘経験もまだ少ないだろう。私が残るのが適任だ。」

バローネ司祭は涙目でガイコ司教に言った。

「ガイコ司教様。」

ガイコ司教がバローネ司祭に言った。

「さあ早く行け！もう奴らが来ているんだ！皆を頼んだぞ！」

バローネ司祭が涙目でガイコ司教に言った。

「はっ。アグトリム様のご加護があらんことを！」

ガイコ司教がバローネ司祭に言った。

「アグトリム様のご加護があらんことを！」

バローネ司祭は涙を拭うと撤収準備のために戻っていった。

ガイコ司教は坑道の外に出てこっそりと敵の様子を伺いに行った。

ドロメ盗賊団の先発隊がすでに山裾に到着して、後続部隊も続々と到着しつつあった。

ドロメ盗賊団は三本の短刀をモチーフにした黄色の盗賊旗を掲げていた。

いたる所にドロメ盗賊団の盗賊旗がはためいていた。

そして到着した部隊からバトロワ鉱山の包囲を始めていた。

すると身を隠しながら静かに僧兵達が十数人やって来た。

ガイコ司教が振り返り後ろにいる僧兵達に言った。

「お前達は本当にいいのか？今ならばまだバローネ司祭と共に退却する事もできるぞ。」

僧兵達がガイコ司教に言った。

「我々はどこまでも司教様のお供をしたいのです。そうだろうみんな？」

僧兵達が皆首をたてに振った。

僧兵の一人が言った。

「それに時間を稼ぐにしてもある程度の人数は必要でしょう？」

ガイコ司教が僧兵に言った。

「馬鹿者共が。だがすまない、恩にきる。」

するとガイコ司教が他の僧兵達に言った。

「ドロメ盗賊団はこのバトロワ鉱山を完全に包囲しようとしている。包囲が完成する前に我々で奇襲をかけて注意をこちらに引き付ける。」

僧兵の一人が言った。

「なるほど。ではすぐに奇襲をかけましょう。」

ガイコ司教が僧兵達に言った。

「君たちが部下で本当に良かったよ。」

僧兵達がガイコ司教に答えた。

「それは我々の言葉です。」

ガイコ司教が言った。

「アグトリム様のご加護のあらん事を。」

僧兵達が言った。

「アグトリム様のご加護のあらん事を。」

こうしてガイコ司教達はバトロワ鉱山の正面に布陣したドロメ盗賊団の部隊に奇襲攻撃を仕掛けた。

奇襲をかけられたゾロメ盗賊団はすぐにバトロワ鉱山の正面に戦力を集中させた。

こうしてガイコ司教達がドロメ盗賊団の注意を引き付ける事に成功した。

その間にバローネ司祭達退却組は全員が無事に脱出する事ができた。

残ったガイコ司教を含む全員が壮絶な最期を遂げた。