最強勇者の物語2

第４章 ホルムス共和国

潜入

今日はパルゲア歴752年6月29日の午後一時である。

アグトリア大神殿の敷地内はたくさんの人々でごった返していた。

アグトリア大神殿で炊き出しが行われていたからである。

あちこちで炊き出し用の大釜や鉄板が用意されて、振る舞われる料理の準備がされていた。

そして調理が終わった料理から順次来場者に振る舞われていった。

僧兵や司祭達も全員が駆り出されており、忙しそうに走り回っていた。

僧兵は頭に白い布を巻いて顔の所だけ出していた。

そして体には黒い甲冑を着用していた。

司祭は白いローブを着用していた。

そんな中にアグトリア大神殿の中に入っていく一人の僧兵の姿があった。

この僧兵はスリラが化けていたのであった。

そうスリラは、炊き出しが行われる今日ならば人混みに紛れて簡単に侵入できると踏んだのだ。

スリラは難なくアグトリア大神殿に侵入すると、すぐに西礼拝堂へと向かった。

西礼拝堂の横にある大きな扉を開けて、地下牢へと続く階段を降りていった。

ここまではスリラの目論見通りであった。

スリラは階段を降りて地下牢にやってきた。

すると看守の僧兵がスリラに気づいて大声で言った。

「何だお前は？用事も無いのに地下牢に降りてくるな！」

スリラは動じる事無く看守に答えた。

「なあ？しばらくここに避難させてくれよ？上にいたらこき使われるから戻りたくないんだ！頼むよ！」

看守が呆れたようにスリラに言った。

「なんだ、サボりかよ？ちゃんと仕事しろ！早く上に戻れ！」

するとスリラも負けじと看守に答えた。

「こっちは朝からずっと動きぱなしなんだ！少しぐらい休ませてくれたっていいだろう？ちゃんと仕事をしろ？こんな所でずっと座ってるだけでの奴に言われたくないな！」

看守がスリラに言った。

「あのな？俺はここの看守なんだ。離れる訳には行かないんだよ？」

スリラが看守に言った。

「上には行けば、どれだけ大変か分かるぞ？何なら代わってやろうか？」

看守が諦めてスリラに言った。

「もうわかった、少しだけだぞ。休んだらちゃんと戻れよ？」

スリラが看守に言った。

「ああ、もちろんそうするよ。」

スリラは看守の横に座った。

看守がスリラに言った。

「いいか、俺が休ませっていうのは秘密にしとけよ。」

スリラは看守に答えた。

「ああ感謝するよ。そうそうお礼に面白いものを見せてやるよ。」

看守がスリラに言った。

「面白いもの？なんだ？」

スリラが看守に言った。

「これだ。」

スリラはそう言うと鮮やかな紋様が描かれた布を看守に見せた。

看守はスリラから布を受けとると、広げて見てみた。

「ほう、どれどれ。うーん確かに綺麗な紋様だが？言うほど面白いか？」

看守はそう言い終わると突然眠りこけてしまった。

スリラは看守が眠ったのを確認すると、看守の口を塞ぎ、両手と両足を素早く手錠で拘束した。

そして看守から鍵を奪った。