最強勇者の物語2

しまうま弁当

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第4章 ホルムス共和国

支給

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一方こちらはアグトリア大神殿の外である。

アグトリア大神殿の敷地内には通常巡礼者以外は立ち入る事ができなかった。

だが日々不満を募らせていた首都アグトリアの住民達の怒りはすでに頂点に達していて、抗議行動を起こしたのだった。

そしてドレスタル枢機卿と司教達がやって来て、首都アグトリアの住民達をなだめていた。

だが住民達の怒りは凄まじく、容赦ない言葉が続いた。

「俺は一体どうすればいいんだ?もう三日も何も食べてないんだぞ!」

「この国にはもう仕事がないんだよ!仕事無しでどうやって生活していけっていうんだ!」

「お願いよ、少しでいいからお金を恵んで!娘に何か食べさせてあげたいの!」

「家を失くしてからずっと物乞いしてるんだぞ!何とかしろ!」

ドレスタル枢機卿も司教達も頭を抱えていた。

あまりの深刻さに枢機卿達は集まって話し合いを始めた。

ボルギ司教がトロイズ司教に尋ねた。

「どうしたもんですかね?礼拝日以外のアグトリア大神殿敷地内への侵入は違法行為ですが?」

トロイズ司教がボルギ司教に言った。

「確かに違法行為ではあるが、住民達の怒りは最だ。彼らを取り締まるのでは無く、何か対策をするべきだろう。」

ボルギ司教はトロイズ司教に言った。

「とは言え、我が国の財政状況は逼迫しています。大きな対策は難しいかと。」

するとドレスタル枢機卿がトロイズ司教とボルギ司教に指示を出した。

「よし炊き出しを行おう。このまま住民達を飢えさせる訳にはいかない。」

トロイズ司教がドレスタル枢機卿に言った。

「そうですな、では炊き出しは私が担当します。それと一つ提案なのですが金銭も渡してはどうでしょうか?」

するとボルギ司教がトロイズ司教に言った。

「トロイズ司教、さっきの話を聞いていなかったのか?財政状況が逼迫していて大きな対策は無理だと言っただろう?」

すかさずトロイズ司教がボルギ司教に答えた。

「一人につき1万トリム程度の支給あれば、問題無かろう?それともボルギ司教は住民達をこのまま放置しておけと言われるのか?」

アグトリア法国で一人が1日暮らすのにおよそ5千トリムが必要だ。

ボルギ司教がトロイズ司教に答えた。

「もちろん分かっております。ただ財政的にも決して小さくないのです。」

するとボルギ司教がドレスタル枢機卿に尋ねた。

「枢機卿様、どうされますか?」

ドレスタル枢機卿がボルギ司教に言った。

「現金の支給も同時に行おう。それで彼らの怒りも少しはやわらぐはずだ。良いかボルギ司教?」

ボルギ司教がドレスタル枢機卿に答えた。

「分かりました、確かにこの状況では仕方ないです。では早速現金支給の準備に取りかかりたいのですが、宜しいですか?」

ドレスタル枢機卿がボルギ司教に言った。

「ああ、頼む。」

するとドレスタル枢機卿が大神殿の敷地内に乱入してきた人々の前に出て大声で言った。

「首都アグトリアに住む方々、ご心労ばかりで申し訳ありません。明日の朝に炊き出しと現金1万トリムの支給を行います。場所はこのアグトリア大神殿前広場で行います。」

これを聞いた人々は喜びあい嬉しそうに言った。

「やった、明日は飯が食える。」

「いい知らせだわ、みんなにも伝えなきゃ。」

「ありがとうございます、明日が楽しみです。」

そして人々はそれぞれ自分の家に帰っていった。

そして時間が経ってその日の夕暮れ時になった。

アグトリア大神殿の地下にある金庫前でボルギ司教が金庫番をしていた僧兵を問い詰めていた。

地下金庫の中のお金がごっそり消えていたからだ。

「なぜ金庫の中が空っぽなんだ?」

金庫番をしていた僧兵がボルギ司教に答えた。

「巡礼者達がやって来たんで金庫の中のお金を全部渡したんですよ。」

ボルギ司教が僧兵に尋ねた。

「全部渡した?一体どういう事だ?」

僧兵がボルギ司教に答えた。

「ソラド法王様がやって来て、お金を巡礼者達に全部渡すよう指示を出したんです。」
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