最強勇者の物語2

第４章 ホルムス共和国

乱入

パルゲア歴752年6月28日午後1時過ぎ。

ソラド法王の一向は無事にアグトリア大神殿に戻っていた。

ここはアグトリア大神殿の中にある中央礼拝堂である。

この礼拝堂はとても大きく、高い天井で一面大理石でできていた。

だが管理が行き届いておらず、あちこちの壁面が剥がれいた。

照明もついておらず、礼拝堂の中は少し暗かった。

ドレスタル枢機卿と司教達が話をしていた。

司教達は白色と銀色のしま模様のローブを着ていた。

そしてドレスタル枢機卿は銀色の礼服を着ていた。

するとドレスタル枢機卿が皆に言った。

「それじゃあすぐに西礼拝堂に向かおう。これから演説会があるからね。」

すると司教の一人であるトロイズ司教がドレスタル枢機卿に言った。

「また連中が紛れ込んでませんかね？」

するとドレスタル枢機卿がトロイズ司教に答えた。

「ちょうど法王様は寝ていらっしゃいます。おそらく大丈夫です。」

トロイズ司教がドレスタル枢機卿に言った。

「それなら安心です。」

するとアグトリア大神殿を警備している数人の僧兵達が中央礼拝堂に慌てて入ってきた。

するとドレスタル枢機卿が入ってきた僧兵の一人に尋ねた。

「何事だ？」

すると僧兵の一人がドレスタル枢機卿に報告した。

「はい、先ほどこの町の住民達が大挙して大神殿の敷地内に乱入してきました。」

するとドレスタル枢機卿が僧兵に答えた。

「何だって？わかった、すぐに行く！」

するとボルギ司教がドレスタル枢機卿に尋ねた。

「枢機卿様、巡礼者への演説はどうされます？」

ドレスタル枢機卿がボルギ司教に答えた。

「今はそれどころじゃない。巡礼者には待ってもらうしかないだろう。」

そう言うとドレスタル枢機卿と司教達は慌てて建物の外に向かった。

アグトリア大神殿の敷地内には数千の人々が乱入してきていた。

ある者は整然と行進し、ある者は怒り狂って喚き散らしていた。

ある者は神殿の壁や設備を破壊していた。

一方その頃、アグトリア大神殿の中にある西礼拝堂では数百人の巡礼者達が待たされていた。

西礼拝堂は中央礼拝堂よりもかなり小さかった。

ここも壁や天井のあちこちが傷んでおり、照明も切れており薄暗かった。

その西礼拝堂にソラド法王がやって来たのだ。

すると巡礼者から大歓声が上がった。

そしてすぐにソラド法王は巡礼者達に取り囲まれた。

そして巡礼者達がソラド法王に言った。

「法王様！お顔が見れて感激です！」

「法王様！待っておりました！」

「法王様！お顔を良く見せてください！」 

「法王様！どうか握手を！」

ソラド法王は頷きながら巡礼者達に握手をしていった。

そしてソラド法王は巡礼者達と話し始めた。

一人の体格のいい若い男が法王に言った。

「法王様、お会いできて光栄です。俺の母も是非連れてきたかったんですが。」

ソラド法王はその男に尋ねた。

「お母さんがどうかしたのかい？」

するとその男がソラド法王に言った。

「はい、実は今日の朝から母の体調が突然悪くなり、出歩くのもままならなくなりました。途方にくれていたんです。」

ソラド法王がその男に尋ねた。

「ええ？お母さん調子悪いの？大変じゃない？」

その男がソラド法王に言った。

「はい、とても大変なんです。」