最強勇者の物語2

しまうま弁当

文字の大きさ
上 下
205 / 265
第4章 ホルムス共和国

盗賊団

しおりを挟む
今はパルゲア歴752年6月28日午前11時過ぎ。

首都アグトリアにある寂れた民家の中で二人の男が話し合っていた。

体格のいい若い男が隣の男に尋ねた。

「なあスリラ、ここでいいんだよな?」

スリラと呼ばれた細身の若い男が答えた。

「ああ、たぶんここでいいはずだ。」

すると壁から誰とも分からぬ声が聞こえてきた。

「盗人共、早く出ていけ!」

二人はびっくりしてこの部屋の壁を見回した。

すると隣の部屋へ通じる扉の斜め上の壁の所に、大きな穴が空いているのを見つけた。

どうやら隣の部屋から誰かが話しかけたようだった。

すぐに二人は扉を開けようとしたが、鍵がかかっており開けられなかった。

再び隣の部屋から大きな声が響いた。

「おい盗人共!この家にはもう金目の物も食料も無いぞ!」

するとスリラが壁越しに答えた。

「勘違いしないでくれ!俺らは盗人じゃない。」

隣の部屋から誰とも分からぬ声が響いた。

「はあ?なら何だ?私はお前らなんか知らない。言っとくがその扉を開けようとしても無駄だ。何重にも鍵をかけてあるからな!」

壁越しに体格のいい若い男が言った。

「信じてくれ!俺らは盗人じゃない。俺はレイドスっていう。」

すると隣の部屋から大声が響いた。

「それがどうした?名前なんて名乗らなくていいから、はやく外に出てけ!」

だがレイドスは構わずに大声で言った。

「ここに果てなき絶望の関係者がいるって聞いてやってきたんだ!俺は果てなき絶望に入りたいんだ!」

すると壁の向こうの人物は沈黙した。

沈黙の後再び隣の部屋から声が響いた。

「誰から果てなき絶望の事を聞いた?風の噂で聞いたなんて言うなよ!一般人が知ってるような事ではないんだ!」

するとレイドスが大きな声で言った。

「ジフロル盗賊団のボスから聞いたのさ。俺は顔は広いからな!」

隣の部屋から声が響く。

「ほうエアルドから聞いたのか?」

レイドスが自信満々に言った。

「ああそうだ、エアルドから聞いたんだ。犯罪組織果てなき絶望の事をな。」

ジフロル盗賊団はアグトリア法国でも有数の盗賊団で、大勢力を誇っていた。

隣の部屋から声が響いた。

「なるほどな。それでそっちの奴は?レイドスお前の連れか?」

レイドスが大声で言った。

「いや、スリラは連れじゃない。俺が来るより前にここにいたんだ。で話を聞いたらスリラも果てなき絶望に入りたいって言うじゃないか。それで一緒に待ってた訳よ!」

すると今度はスリラが大声で言った。

「俺はスリラという。ニーノ・グリセンから話を聞いた。荒稼ぎをしている犯罪組織があると。」

再び隣の部屋から声が聞こえてきた。

「なるほど、お前はニーノの紹介か。」

ニーノ・グリセンはグリセン盗賊団の首領であった。

そしてグリセン盗賊団もまたアグトリア法国内では有数の盗賊団であった。

少しの沈黙の後で再び隣の部屋から声が響いた。

「いいだろう、じゃあまず今から一つ仕事をしてもらう。」

レイドスが大声で尋ねた。

「どういう事だ?」

隣の部屋から声が響いた。

「仕事を見事に達成できたら、この部屋の中に入れてやろう。そして果てなき絶望にも入れてやる。」

レイドスが大声で言った。

「それ本当だな?」

隣の部屋から声が響いた。

「ああ、本当だ。それで今回の獲物だが、このアグトリア法国で最高位のソラド法王だ。」

するとスリラが大きな声で尋ねた。

「ソラド法王って確か?」

隣の部屋から声が響いた。

「確かにソラド法王なんて言うよりもこう言った方がわかりやすかったか。」

隣の部屋から大声が響いた。

「異世界よりやって来たアホ勇者!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】あなたに知られたくなかった

ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。 5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。 そんなセレナに起きた奇跡とは?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

もしかして寝てる間にざまぁしました?

ぴぴみ
ファンタジー
令嬢アリアは気が弱く、何をされても言い返せない。 内気な性格が邪魔をして本来の能力を活かせていなかった。 しかし、ある時から状況は一変する。彼女を馬鹿にし嘲笑っていた人間が怯えたように見てくるのだ。 私、寝てる間に何かしました?

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

[完結長編連載]蔑ろにされた王妃様〜25歳の王妃は王と決別し、幸せになる〜

コマメコノカ・更新報告はXにて。
恋愛
 王妃として国のトップに君臨している元侯爵令嬢であるユーミア王妃(25)は夫で王であるバルコニー王(25)が、愛人のミセス(21)に入り浸り、王としての仕事を放置し遊んでいることに辟易していた。 そして、ある日ユーミアは、彼と決別することを決意する。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...