最強勇者の物語2

第４章 ホルムス共和国

サランジ社長

パルゲア歴752年6月3日午後4時、多和田由はライツ補佐官と別れてサランジ社長に蒸気自動車でレフティオまで送ってもらっていた。

すると運転席に座っていたサランジ社長が、助手席に座っていた多和田に言った。

「すまんの、こういう扱いしかできんくて。」

多和田がサランジ社長に答えた。

「えっ？」

サランジ社長が多和田に言った。

「勇者が暴れて勇者の評判は地に落ちた。でもそれは君の責任じゃない。君の前に来た勇者達の責任じゃ。だが君達は凄い力を携えてやって来る。ワシらではどうしようもない力をな。でもどうかこの国を、この世界を嫌いにならないで欲しい。」

多和田はサランジ社長の言葉を黙って聞いていた。

サランジ社長が続けて多和田に言った。

「君を犯罪者のようにしか扱う事ができなくて本当にすまん。君の命を助ける事しかできなくて本当にすまん。」

多和田は黙ってサランジ社長の話を聞いていた。

そして色々な事を考えていた。

僕より前にやって来た勇者がバカをやって、勇者が危険視されるようになった。

バカをやった勇者は危険視されて当然だろう。

だけど少なくとも勇者狩りに合った勇者達は何もしていない。

不当に扱われていいはずがない。
 
だけど彼らの言い分も納得はできないけど、理解はできる。

勇者は強大な力を持っていて、この世界の人達が恐がるのは分かる。

もし逆の立場なら僕も勇者を怖がるかもしれない。

勇者が強大な力を持って異世界転移した故の弊害という訳だ。

勇者に苦しめられた人達に勇者を平等に扱ってくれというのは虫がいい話なのかもしれない。

でもこの人達は、少なくとも僕を助けようとしてくれている。

多和田はさらに考え込んだ。

そして一つの結論を出した。

「はい、分かりました。まだ正直モヤモヤする所ばかりです。ですけど少なくともホルムス共和国やこの国の人たちを恨んだりはしません。」

するとサランジ社長が多和田に答えた。

「ああ、ありがとう。ああそうじゃ言い忘れとったが、最終面接の結果じゃ。君がいいなら是非ウチに来てくれ。」

多和田がサランジ社長に尋ねた。

「最終面接は合格って事ですか？」

サランジ社長が多和田に答えた。

「ああ、そういう事じゃ。」

だが多和田は申し訳なさそうにサランジ社長に言った。

「いいんですか？僕は勇者なんですよ？」

するとサランジ社長が笑って答えた。

「勇者が働いてくれるなら凄いじゃろう。」

だが多和田はサランジ社長に言った。

「でも勇者なんていたら、社長やサランジ建設の人たちに迷惑がかかるかもしれません。」

するとサランジ社長がはあーとため息をした後で多和田に言った。

「ワシが偉そうに物を言えた立場でないのは分かっておる。ただこれだけは言わせてくれ。」

続けてサランジ社長が多和田に言った。

「胸を張ってくれ！」

サランジ社長が続けて言った。

「胸を張ってくれ。君は何もやましい事はしてないじゃから。」

すると多和田は目に涙が浮かんできた。

今まで抑えてきた感情がどっと表に出てきたようだった。

多和田はつい泣いてしまった。

涙目でサランジ社長に答えた。

「分かりました、是非御社で働かせて下さい。」

多和田由はようやくこの世界で居場所を見つける事ができた。