最強勇者の物語2

第４章 ホルムス共和国

試練

それからしばらく経ち古森照之(こもりてるゆき)は大学生活を順調に過ごして卒業式が数日後に迫っていた。

だが彼に再び試練がおとずれようとしていた。

照之(てるゆき)は大学卒業後に父の広正(ひろまさ)が経営する古森製菓(こもりせいか)に入社する予定であった。

そして経験を積んだのちに社長として父より古森製菓を引き継ぐ予定だった。

広正が経営する古森製菓は地元の東具卯連(とうぐうれん)では老舗企業であり、小さいながらにして有名な製菓会社だった。

父の広正は人情経営を最優先と考えており、従業員を解雇にした事は一度も無かった。

だが後継者である照之はそれに常々疑問を抱いていた。

照之自身は人情経営というのは合理性から欠け離れた経営手法であると考えていたからだ。

それでどうやって経営成り立たせているのか不思議で仕方なかったのだ。

もしかしたら父広正はとてつもなく優秀な経営者なのではないか？

照之自身そう考えていた時もあった。

その日照之は大学卒業式を間近に控えて、会社見学の為に父広正に内緒で来ていた。

父の経営手腕の自分の目で確かめようと思ったからだ。

照之は社員に広正(ひろまさ)の行動を尋ねた。

この時はちょうど昼時だった。

この時間帯は倉庫にいる事が多いという事を聞いて、倉庫の鍵を借りて照之はその倉庫に向かった。

会社の倉庫は本社工場から離れており、出荷用の製品を保管する倉庫だった。

照之は鍵で倉庫の扉を開けて倉庫の中に入った。

そして倉庫の中を見渡したが人の気配は無かった。

すると倉庫の奥に小さな事務部屋があるのに気がついた。

事務部屋の窓からは明かりが漏れており、誰かがいるのは明らかであった。

照之は事務部屋の扉を開けた。

事務部屋の中に確かに広正はいた。

だが照之は広正と会話を交わす事はできなかった。

なぜなら広正は、天井から吊るしたロープで首を吊るしてすでに死んでいたからであった。

死んでいる広正の顔は怒りに満ちていた。

口からは吐血しておりその目は恨みに満ちており、その顔はまるで鬼のような形相だった。