最強勇者の物語2

しまうま弁当

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第4章 ホルムス共和国

自供

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照之(てるゆき)と土背蔵(どせくら)会長の言い争いは遂に乱闘騒ぎとなってしまい、すぐに警備員や他の学生達が集まってきた。

最も照之は反撃せずに一方的に殴られただけだったが。

警備員に事情を聞かれたが、照之は黙っていた。

すると土背蔵会長がまず警備員に話した。

「実は俺の友人が恐喝されていると相談を受けまして、その恐喝していた相手が古森君だったんです。」

すると今度はラグビー部部長が警備員に言った。

「ええ、土背蔵君から相談を受けまして。古森君と話し合いたいと。ただ一人だと心配だから付き添いで来てくれないかと頼まれました。それで土背蔵君とここに来たんです。」

土背蔵会長が警備員に話した。

「その後と古森君と待ち合わせて事情を尋ねたんです。すると恐喝を認めたんで止めるよう話したんです。ですが話し合いが縺れてしまって、古森君が急に怒り出したんです。そして古森君が急に俺に殴りかかってきたんです。そうしたらラグビー部部長が俺を助けてくれたんです。」

警備員がラグビー部部長に尋ねた。

「なるほど土背蔵君が古森君に恐喝を止めるように注意した。すると古森君が激昂して土背蔵君に殴りかかった。これを止めさせる為にラグビー部部長の君が数発古森君を殴った。そういう事だね?」

ラグビー部部長は警備員に答えた。

「ええ、その通りです。間違いありません。土背蔵君を助ける為とは言え古森君を殴ってしまいました。申し訳ありませんでした。」

照之を取り囲んでいたラグビー部部員も警備員に言った。

「丁度情報棟の近くを歩いていたんです。すると古森が怒鳴り散らす声と土背蔵会長の声が聞こえました。ふと覗いてみると、古森が土背蔵会長に殴りかかっていたので他の部員と一緒に止めに入ったんです。」

照之を取り囲んでいた別のラグビー部部員も同様の話を警備員にした。

照之以外から一通り事情を聞き終えた警備員が土背蔵会長に言った。

「事情は大体分かった。土背蔵君、今日は大変だったね。」

そして警備員が照之に言った。

「古森君(こもりくん)さっきからずっと黙り続けて何なんだ?土背蔵君に謝罪の一言もないのかね?君は恐らく退学処分になるだろう。覚悟しておきたまえ。」

この様子をみていた他の大学生達も警備員と同じ考えだった。

すると学生達が照之に言った。

「古森(こもり)、土背蔵に謝れよ!」

「話し合いにきた土背蔵会長を殴るなんて最低よ!」

するとずっと黙っていた照之が大きな声で言った。

「みんなすまないがちょっと黙ってくれるか!」

照之の声で周りが一気に静まった。

照之はポケットに手を突っ込んで、何かをしているようだった。

数十秒後とある人物の声が聞こえてきた。

「凡人の連中はむしろ参加してくれたほうがいいのさ、俺にとってはな。さてとここからが本題だ。古森(こもり)、ビジネスコンテスト出場を辞退しろ!」

土背蔵会長の声だった。

次に照之の声が聞こえる。

「なるほどな、土背蔵会長を脅かす可能性がある奴には脅迫をして辞退させ、それ以外の奴には参加させて土背蔵会長の引き立て役にする。そういう事か?とするとお前が最優秀学生として表彰されたのも、学生自治会長に選ばれたのもそういうからくりか?しかしそれでも脅迫というのはリスクが高いだろう?公になれば大事だぞ?」

再び土背蔵会長の声が響いた。

「ああそれなら大丈夫だ。俺は皆から信用されているんだ。ボランティア活動には参加するし、後輩達の面倒見もいい。誰が見ても模範的な学生であり、頼れる自治会長なのさ!」

「だがな、世の中というのは綺麗事だけで片付かない事もあるのさ。荒事が必要な時もある。俺はそれをしっかり弁えているそういう事さ。」

照之のポケットにはテープレコーダーが仕込まれていたのだ。

テープレコーダーを止めて照之が大きな声で言った。

「俺は土背蔵会長からビジネスコンテストを辞退するよう恐喝を受けたんだ。逆らえないようラグビー部の人間を使って脅しをかけていたんだ。これはその会話を録音したテープだ。」

警備員は慌てて土背蔵会長に尋ねた。

「土背蔵君どういう事だ?さっきと言っていた事と真逆じゃないか?恐喝をしていたのは君なのか?」

学生達もこれを聞いて驚いた様子で言った。

「えっ、これ土背蔵会長の声だよな。」

「まさか会長が恐喝してたの?」

するとこの様子を見ていた吉沢(よしざわ)という学生が意を決して大きな声で言った。

「僕も土背蔵会長から恐喝をされていました。ビジネスコンテストに参加するなって脅されていたんです!」

土背蔵会長は怒りを抑えられずに大声で言ってしまった。

「うるさい!吉沢(よしざわ)!黙れ!」

土背蔵会長はついに激怒して大声で喚き散らしてしまった。

すると照之が警備員に言った。

「あそこに防犯カメラがある。映像が残ってるんじゃないか?」

警備員が答えた。

「そうだな、あの位置だと映っているかもしれん。」

土背蔵会長はその後ラグビー部の部員達と一緒に警備室へと連れていかれた。

照之も詳しく事情を話すために警備室に向かった。

警備室の防犯カメラの映像が調べられて、土背蔵会長が照之を殴っている映像が残っていた。

この映像と録音したテープが決め手となり、土背蔵会長とラグビー部部長そしてラグビー部部員達は全員退学処分となった。

その後照之は大学の色々な人達から事情を聞かれ、ありのままを説明した。

そして一ヶ月の月日が流れた。

照之は大学の食堂で大学広報を見ていた。

そこには同理志大学キャンバス内での土背蔵会長が暴力事件を引き起こしたと載っていた。

照之はその記事を見ながら隣にいた吉沢(よしざわ)に言った。

「土背蔵会長はとんでもなくアホだったな。録音テープと防犯カメラが回っている所で自分から犯行を自供した。そして自分の発言で自分が嘘つきだと証明した。挙げ句の果てには暴力沙汰に及んだわけだ。メンタルが弱すぎだ。あれでよく今まで自治会長なんぞやってこれたな。」

隣に座っていた吉沢(よしざわ)が照之に言った。

「そう言えば、テープレコーダーで録音しようってよく思いつきましたね?」

すると照之が吉沢に答えた。

「土背蔵は会長だった。大学内に自由に使える部屋を持っていた。にも関わらずわざわざ情報棟裏に呼び出すなんておかしいだろう?だからテープレコーダーを回していたんだ。授業用にいつも持ち歩いていたしな。」

すると吉沢が照之に言った。

「でも出場辞退を断られたからって、殴りかかるなんて土背蔵も大人気ないですよね。」

照之は吉沢に言った。

「全くその通りだ。」

実はテープレコーダーで録音されていたのは、照之が挑発を行う手前までであった。

照之は自分が不利になる所は録音していなかったのだ。

もちろん土背蔵達は照之が煽ってきた事を訴えた。

だがそれを訴えたのが皆が録音を聞き防犯カメラの映像を確認した後だった。

だから誰にも信じてもらえなかったのだ。

すると吉沢が照之に言った。

「古森(こもり)君、今回はありがとう。」

すると照之が吉沢に言った。

「土背蔵達が勝手に自滅しただけだ。俺は何にもしてない。」

照之はそういうと食堂を後にした。
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