最強勇者の物語2

第４章 ホルムス共和国

古森照之

これはジール大公こと、古森照之(こもりてるゆき)の異世界にくる前のお話である。

彼は老舗の製菓企業である古森製菓(こもりせいか)社長、古森広正(こもりひろまさ)の一人息子として生まれてきた。

母は幼い時に病で失くしており、父の広正に育てられた。

父の広正(ひろまさ)は照之(てるゆき)に惜しみなく愛情を注ぎ、自分の会社を継がせるために教育にも力を入れた。

照之(てるゆき)は父の期待に答えて優秀な成績で中学そして高校を卒業し、名門大学であるの同理志大学経営学部へと入学した。

大学に入ってからもサークル活動にも幅広く参加し、成績も優秀であった。

そしてある時、照之は大学の学生自治会長である土背蔵(どせくら)から呼び出しを受けた。

大学の正門近くにある情報棟の建物裏に呼び出しを受けた。

照之は土背蔵(どせくら)会長に尋ねた。

「土背蔵(どせくら)会長何かご用ですか？」

すると土背蔵(どせくら)会長が言った。

「お前どういうつもりだ？」

照之が土背蔵会長に答えた。

「意味がわかりませんが？」

自治会長が大きな声で言った。

「大学主催のビジネスコンテストに決まってるだろう？」

照之が土背蔵会長に言った。

「それが何か？」

土背蔵会長が大きな声で言った。

「どうしてビジネスコンテストに参加しやがった？俺が参加してるんだぞ！参加しないのが礼儀ってもんだろうが？」

照之が土背蔵会長に言った。

「土背蔵会長は何を言ってるんです？参加するしないは学生の自由のはずですが？」

すると情報棟の建物の影から人影が現れた。

そしてその人影が照之に言った。

「いやこの同理志大学に在籍している以上、土背蔵会長に勝ちを譲るのが習わしなのさ！」

がたいのいいラグビー部部長が後ろに立っていた。

ラグビー部部長が照之に言った。

「いいか、土背蔵会長の参加するコンテストには参加しないのが暗黙のルールなのさ。他の奴はちゃんと守ってるぞ！」

すると照之がラグビー部部長に言った。

「おいおいそんな話聞いた事がないぞ？それに他の学生もたくさん参加しているだろ？」

すると土背蔵会長が照之に言った。

「凡人の連中はむしろ参加してくれたほうがいいのさ、俺にとってはな。さてとここからが本題だ。古森(こもり)、ビジネスコンテスト出場を辞退しろ！」

照之は呆れた様子で土背蔵会長に答えた。

「なるほどな、土背蔵会長を脅かす可能性がある奴には脅迫をして辞退させ、それ以外の奴には参加させて土背蔵会長の引き立て役にする。そういう事か？とするとお前が最優秀学生として表彰されたのも、学生自治会長に選ばれたのもそういうからくりか？しかしそれでも脅迫というのはリスクが高いだろう？公になれば大事だぞ？」

土背蔵自治会長が照之に言った。

「ああそれなら大丈夫だ。俺は皆から信用されているんだ。ボランティア活動には参加するし、後輩達の面倒見もいい。誰が見ても模範的な学生であり、頼れる自治会長なのさ！」

土背蔵会長が照之に続けて言った。

「だがな、世の中というのは綺麗事だけで片付かない事もあるのさ。荒事が必要な時もある。俺はそれをしっかり弁えているそういう事さ。」

そして照之の後ろに立っていたラグビー部部長が言った。

「そういうこった。ここは頭のいい良い子ちゃんが多いからな。」

すると照之は納得したように土背蔵会長に言った。

「なるほど、頭のいい奴は揉め事を避けようとする。だからあえて自分の方から妥協して、土背蔵会長に勝ちを譲り波風が立たないようにしてたわけか。」