最強勇者の物語2

第４章 ホルムス共和国

能力差

三人の男性の会話が続いていた。

ルークがトレヴァーに言った。

「親しみが持てるって意味でだ。」

トレヴァーがルークに言った。

「親しみって、あんな奴憎いだけだぞ。」

ルークがトレヴァー言った。

「欠点があるってだけで、安心できるだろう。」

トレヴァーが不満げにルークに言った。

「えらく魔導師を庇うんだな？」

ルークがトレヴァーに言った。

「その魔導師は、まだましだと言いたいだけだ。」

するとジョセフがルークに尋ねた。

「ルークお前素材開発部だろう？あそこに在籍の魔導師っていたか？」

ルークがジョセフに言った。

「いや、うちの部署には魔導師はいないよ。」

トレヴァーがルークに尋ねた。

「それなら魔導師に悩まされてないだろう？」

ルークがトレヴァーに言った。

「ああ確かにその通りだ。悩まされてはいない。うーん少し話しが長くなるがいいか？」

ルークが、トレヴァーとジョセフに尋ねた。

トレヴァーとジョセフが頷いた。

ルークが二人に話し始めた。

「うちの部署ではその名前通りに新素材の研究をしている。研究というと聞こえはいいが、かなり地味な仕事だ。色々な素材を片っぱしから実験する。そして大半の日が何の成果も得られずに終わる。うちの部署はまあそういう所だ。」


ルークが、トレヴァーとジョセフに話しを続けた。


「うちの部署で新素材を研究していたんだ。そしてその新素材の実証実験を始める事になった。他の部署からの参加も含めておよそ五十人が参加していた。ただそれでも全然人数が足りなくて、他の企業と協定を結んで合同で研究をする事になった。そして四年の歳月と千人以上の研究員の努力が実を結び、ようやく実用化の目処がたった。」


ルークが、トレヴァーとジョセフに話しを続けた。

「だが、すんでのところで先を越された。そう魔導師達にだ。まあ競合する分野では、先を越したり越されたりってのはよくある話だ。ただ少し気になった事があった。魔導師達はこの研究のためにどのくらいの労力を費やしたのか？という事だ。だから俺は技術発表会の時に、その魔導師達のリーダーに尋ねたんだ。いつからどのくらいの人数で研究をしていたのか？ってな。そしたら、その魔導師のリーダーはこう答えた。五人です、研究を始めたのは一週間前からです。」


ルークが話しを続けた。


「俺はそれを聞いた時に、体が震えたよ。千人以上の研究者達が四年の歳月を費やした努力の結晶が、たった五人の魔導師の日雇い労働に負けたんだ。そして俺は理解したんだ。こいつらは人間じゃない、とんでもない化物だと。いや理解したという表現は間違いだな。俺は心の底から恐怖したという方が正しいかもしれない。」


トレヴァーとジョセフは黙ってルークの話しを聞いていた。

ルークが話しを続ける。


「それ以来、魔導師を見ると体が震えるんだ！俺はな、魔導師が怖いんだよ。怖くて仕方がない。完璧すぎるあいつらが！大の男が何を言ってるんだと思うかもしれないが、体が震えてしまうんだ！どうしようもないんだ！」


ずっと黙って話しを聞いていたジョセフが、ルークに言った。

「ルークもうこの話しはやめよう。」

トレヴァーもルークに言った。

「すまない、ルークさっきは言い過ぎた。話題を変えよう。」

すると、ルークが二人に言った。

「いやこちらこそすまない。変な話しをしてしまった。もうそろそろ店を出ようか。」

トレヴァーとジョセフは頷くと、三人とも席を立って、会計に向かった。

それと入れ替わるように男性店員が、僕の所に料理を持ってやって来た。

僕が座ったカウンター席のテーブルに料理が置かれた。

「大盛りダーグ一つお待たせ致しました。」

この前注文した時より大きな皿に、ダーグがたくさん盛られていた。

すると男性店員が僕に言った。

「失礼致します。」

男性店員はそう言うと厨房の方へ戻っていった。

僕はさっそく大盛りダーグを食べ始めた。