最強勇者の物語2

第３章 逃亡生活

倉庫内捜索

すると国境警備隊部隊長のモントールがブルーム税務官に言った。

「いいですか、我々が確認しに行きます。皆さんはここから動かないように。」

部隊長モントールが他の隊員に指示を出す。

「よし、すぐに携帯用の魔導灯を点灯させろ。」

隊員達は腕に装着している携帯用魔導灯を点灯させた。

これは腕に装着するタイプの魔導灯で、手を使わずに照らす事ができる優れ物であった。

部隊長モントールが倉庫の鍵を静かに開けて、指示を出した。

「よし一二三で中に入るぞ。イチニノサン！」

掛け声と同時に警備隊員の四人が、扉を開けて倉庫の中に入って行った。

ブルーム税務官とグリスポート社の社員達は外で待機した。

部隊長モントールが、小さな声で次の指示を出した。

「一人は俺について来てくれ、壁づたいに時計回りに移動して倉庫内を確認していく。残りの二人は壁づたいに反時計回りに移動して、倉庫内を確認していってくれ。いいか油断するなよ！」

部隊長モントールともう一人が指示通りに時計周りに、もう二人が反時計回りに倉庫内を確認していった。

警備隊員達が小型の魔導灯で周囲を照らしながら、倉庫の中を探していく。

十分後、警備隊員達は先程の指示通りに動いていた。

一人の警備隊員が、前方に人影を発見した。

そして大声で叫ぶ。

「動くな！誰だお前は！」

すると前方の人影が、呼び掛けに答えた。

「おい、誰だは無いだろ。ちゃんと顔を見ろ！」

部隊長モントールが返事をしたのだった。

叫んだ警備隊員は部隊長モントールに謝罪した。

「部隊長でしたか、すいません。」

警備隊員は二手に分かれて、輸出用倉庫の南側で鉢合わせしたのだった。

警備隊員の一人が他の隊員に言った。

「なんだ結局誰もいなかったな。」

その警備隊員に他の警備隊員が答えた。

「ああ、そうだな。でもそうするとさっきの大きな音は一体？」

すると部隊長モントールが、他の隊員に言った。

「それなら見つけた。ついて来てくれ！一番東側の通路だ！」

他の三人の隊員が、部隊長モントールのあとに続いて東側の通路に向かった。

そこでは荷崩れが起きていて、小麦の麻袋が散乱していた。

一人の隊員が安堵のため息をした後に言った。

「なんだよ、荷崩れしただけか。」

もう一人の隊員が尋ねた。

「でもなんで荷崩れなんかしたんだ？」

部隊長モントールが、魔導灯で周囲を照らしながら言った。

「そりゃ荷崩れもするさ、周りを見てみろ！」

そう言われ隊員達は、周囲を照らして確認した。

「うーわ、こりゃひどい積み方だな、雑すぎるだろ！」

そこには小麦の麻袋が、乱雑に積まれていた。

部隊長モントールが言った。

「何はともあれ倉庫の中は異常無しだ。ブルーム税務官達を呼ばないとな。あと倉庫の照明をつけてくれ。」

隊員の一人が照明のスイッチを入れた。

倉庫内の照明が点灯した。

それからブルーム税務官とグリスポート社の社員が倉庫の中に入ってきた。

すぐにブルーム税務官が崩れた麻袋の確認作業に入った。

少し経ってブルーム税務官が言った。

「ええ、崩落したようですが、麻袋自体は破れていません。中身は大丈夫です。」

崩落した麻袋の確認作業が終了した。

次に無事だった方の麻袋の確認が行れた。

ブルーム税務官が麻袋の一部から中身を取り出して、中身の確認が行われた。

ブルーム税務官が言った。

「ええ、いい小麦です。問題はありません。これで確認作業は完了です。」

ブルーム税務官が続けた。

「とは言えこれでは搬出ができない。麻袋を積み直す必要がある。すぐにパレットに麻袋を積み直しましょう。」

フォークリフトで搬出を行う場合、パレットという下敷きの板にしっかり積まれている必要があった。

本来はグリスポート社の社員の仕事であった。

だが崩落したのがそれなりの数だった為、積み直しに時間がかかるのは明らかであった。

そこでこの場にいる全員で、小麦の入った麻袋を積み直す作業が行われる事になった。

すぐに実行され、しばらくして積み直し作業が完了してた。

そしてようやく搬出作業が始まった。

グリスカート社の社員が蒸気フォークリフトに乗って、一番下に敷かれたパレットごと小麦の麻袋を持ち上げた。

その後も蒸気フォークリフトによって順次外に搬出されていった。

数時間後に搬出は完了した。