最強勇者の物語2

第３章 逃亡生活

国境の町カルヤーン

日時が少し戻って5月18日の午後二時頃、ジール公国の国境の町カルヤーンに向かって北へ向かう一団があった。

小麦の入った麻布を馬車に積んで、運搬している一団である。

その中には勇者狩りを逃れた勇者、多和田由(今は偽名クラーク)がいた。

彼らは水の引いたテレイア城から、5月18日午前5時に出発した。

遅れている分を取り返す為にかなりの強行軍で、カルヤーンに向かって進んでいた。

午後二時頃になり、到着の目処がたち、少し遅い昼休憩となった。

早朝から強行軍で、皆疲労困憊であった。

皆は、地面に腰を下ろした。

オーエンが、僕に話しかけた。

「クラーク、バルガス兄貴から聞いたぜ、色々世話になっちまったな。」

僕は、オーエンに答えた。

「いやほとんどバルガスのおかげだよ、僕はついて行っただけ。」

僕はそう言いながらバルガスを見た。

バルガスは少し離れた所で騎士と会話をしていた。

オーエンが、僕に言った。

「もちろんバルガス兄貴には礼を言ったさ。だからクラークにも礼を言いたいんだ。有り難うな。」

僕は、オーエンに言った。

「ねえ、オーエンからはバルガスってどう見えるの？」

オーエンが僕に言った。

「変な事聞くんだなクラーク？そうだな一言で言えば大きな兄貴だ。体格だけじゃなくて、大きな存在って感じだな。いつもどっしり構えていて、俺のピンチの時はいつも駆けつけてくれた。自慢の兄貴だ。」

オーエンはバルガスを信頼して頼りにしているんだなと感じた。

オーエンの場合は、少し頼りすぎかもしれないが。

「じゃあこれからは、トラブル起こさないでね。」

オーエンが僕に答えた。

「ったくクラークもひでえな、ああ勿論だよ。」

僕はオーエンとの会話が終わると、立ち上がった。

そして近くにいた騎士に、指を指しながら尋ねた。

「カルヤーンはこの丘の上にあるんですか？」

騎士が、僕に答えてくれた。

「ああ、カルヤーンは丘陵地にある国境沿いの町だ。」

僕は教えてくれた騎士に、礼を言った。

僕達が向かう方向を見ると緩やかな坂になっており、水田は無くなり、草が生い茂った草原のようになっていた。

休憩が終わり僕達は再びカルヤーンに向けて進み始めた。

草が生い茂げる草原のような場所を、進んで行った。

なだらかな坂を、僕達は進んでいった。

しばらく進むと、先の方に町が見えてきた。

騎士の一人が、町を指しながら言った。

「あそこが国境の町カルヤーンだ！」

僕は騎士が指指した方を見る。

カルヤーンの街並みが見えた。

カルヤーンには数十の大きな倉庫のような建物が並んでいた。

逆に倉庫以外の建物は、それほど多くなかった。

倉庫を除けばマルディーヤより小さな町だった。

二百ぐらいの建物がある小さな町だった。

更にカルヤーンの後ろには大きな壁があり、その壁がずっと横に続いていた。

恐らくあれが国境の壁なのだろう。

それから僕達は、国境の町カルヤーンに到着した。