最強勇者の物語2

しまうま弁当

文字の大きさ
上 下
59 / 265
第3章 逃亡生活

ダリオ・ドレスタル枢機卿

しおりを挟む
四ヵ国協議の開始時間の午後二時から、およそ三十分が経過した。

しかし依然アグトリア法国の使節団は、会場に姿を現さなかった。

ジール大公が、グラント大統領とクロエに尋ねた。

「どうされる魔女殿?大統領殿?アグトリア法国からの一行が未だに来ない。三国だけで始めてもこちらは構わんが?」

クロエは、ジール大公に答えた。

「いえ、大丈夫です、ジール大公様。もうしばらく待ちましょう。我が国は急ぎません。」

グラント大統領は、ジール大公に答えた。

「お気遣い感謝しますジール大公殿。ですが我が国も、もう少し待とうと思います。」

ジール大公が、パストーレ伯爵に尋ねた。

「アグトリア法国の者達は、なぜ来ぬのだ?」

パストーレ伯爵が、ジール大公に答えた。

「ジール大公様が、あのような当てつけを、なさるからではありませんか?」

するとジール大公がパストーレ伯爵に答えた。

「御披露目上映にしても晩餐会にしても、多忙だから出席できないと断ってきたのはアグトリア法国の側だぞ。だが四ヵ国協議には出席すると伝えてきていた。なのになぜ来んのだ?!パストーレ、すぐに調べろ!」

パストーレ伯爵は、ジール大公に答えた。

「はっ!了解致しました!ジール大公様!」

実はこの前日にアグトリア法国の使節団一行は問題に直面しており、予定通り四ヵ国協議に到着するのは難しくなっていた。

アグトリア法国外交部を通じて、御披露目上映会や晩餐会に出席できない事は、各国に伝えてられていた。だがアグトリア法国の使節団が、四ヵ国協議にも遅刻するという連絡は、ジール大公のもとには入っていなかった。

アグトリア法国外交部が四ヵ国協議にも遅刻する事は、ホルムス共和国にしか通達されなかったのである。

これは深い理由があった訳ではなく、単純なアグトリア法国外交部の初歩的なミスであった。

パストーレ伯爵は、すぐに関係各所に連絡を取った。

「アグトリア方面の国境警備隊に問い合わせた所、今日の正午頃にアグトリア法国からの使節団が、ジール公国に入ったとの事でした。」

ジール大公が、パストーレ伯爵に答えた。

「そうなるとあと数十分ぐらいはかかるな。」

それから更に三十分が経過し、午後三時になった。

ようやくアグトリア法国の使節団が到着した。

そして一人の男性が、開闢の間にやって来た。

彼の名はダリオ・ドレスタル枢機卿(すうききょう)である。

年齢は20代後半で、小柄でスマートな体格だった。

彼はアグトリア法国の、ナンバー2である。

ドレスタル枢機卿が、大きな声で言った。

「この度はお招き頂いたにも関わらず、遅刻してしまい大変申し訳ありませんでした。法皇様に成り代わりお詫び致します。」

だがジール大公が、ドレスタル枢機卿に問い詰めた。

「枢機卿殿!一体どいうおつもりか?遅れるのならば、こちらに連絡があって然るべきであろう。貴殿は余の顔に泥を塗ったのだぞ!」


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

冤罪をかけられた上に婚約破棄されたので、こんな国出て行ってやります

真理亜
恋愛
「そうですか。では出て行きます」 婚約者である王太子のイーサンから謝罪を要求され、従わないなら国外追放だと脅された公爵令嬢のアイリスは、平然とこう言い放った。  そもそもが冤罪を着せられた上、婚約破棄までされた相手に敬意を表す必要など無いし、そんな王太子が治める国に未練などなかったからだ。  脅しが空振りに終わったイーサンは狼狽えるが、最早後の祭りだった。なんと娘可愛さに公爵自身もまた爵位を返上して国を出ると言い出したのだ。  王国のTOPに位置する公爵家が無くなるなどあってはならないことだ。イーサンは慌てて引き止めるがもう遅かった。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

婚約破棄からの断罪カウンター

F.conoe
ファンタジー
冤罪押しつけられたから、それなら、と実現してあげた悪役令嬢。 理論ではなく力押しのカウンター攻撃 効果は抜群か…? (すでに違う婚約破棄ものも投稿していますが、はじめてなんとか書き上げた婚約破棄ものです)

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

冷遇妻に家を売り払われていた男の裁判

七辻ゆゆ
ファンタジー
婚姻後すぐに妻を放置した男が二年ぶりに帰ると、家はなくなっていた。 「では開廷いたします」 家には10億の価値があったと主張し、妻に離縁と損害賠償を求める男。妻の口からは二年の事実が語られていく。

てめぇの所為だよ

章槻雅希
ファンタジー
王太子ウルリコは政略によって結ばれた婚約が気に食わなかった。それを隠そうともせずに臨んだ婚約者エウフェミアとの茶会で彼は自分ばかりが貧乏くじを引いたと彼女を責める。しかし、見事に返り討ちに遭うのだった。 『小説家になろう』様・『アルファポリス』様の重複投稿、自サイトにも掲載。

処理中です...