最強勇者の物語2

第３章 逃亡生活

レセプション

晩餐会が終わった後、来賓達は、二階にある白日(はくじつ)の間に場所を移して、レセプション(公爵家による歓迎会)が行われていた。

この白日の間も天井と壁は、白色で統一されていた。

太陽をあしらった金の装飾が、壁のあちこちに施されていた。

いくつものテーブルが用意されて、その上に豪華な料理とが用意されていた。

晩餐会は儀礼が重視され、気軽に来賓同士が会話できなかった。よって会話もしやすいレセプション(歓迎会)が、晩餐会の後に開かれていた。

また晩餐会は来賓の中でも、限られた人しか参加できなかった。

一方このレセプションは、来賓であれば誰でも参加できた為、晩餐会よりも多くの来賓が参加していた。

ただし椅子は用意されておらず、立食する形式となっていた。

そこには、黒いパーティードレスを着たクロエと、赤いドレスを着たティアいた。

クロエはスカートの裾の両方を手で掴み少し上げて、少し頭を下げて挨拶をしていた。

クロエは黒い礼服を着ている中年の男性に話しかけた。

「この度は、お招き頂きありがとうございます。素敵な晩餐会でした。パストーレ伯爵様。」

パストーレ伯爵と呼ばれた男は、クロエにお辞儀をした後に答えた。

「はっ、ありがとうございます、クロエ様。ジール大公様にもお伝えしておきます。」

彼の名前はラルフ・パストーレである。

ジール公国では伯爵の爵位を持つ。

ジール大公の一番の腹心で、名実共にジール公国のナンバー2であった。

そこへティアがやって来てパストーレ伯爵に挨拶した。

ティアもスカートの裾の両方を手で掴み少し上げて、少し頭を下げた。

「この度はお招き頂きありがとうございます。パストーレ伯爵様。」

パストーレ伯爵は、ティアへお辞儀をするとティアに言った。

「ティア様もありがどうございます。ですがあまり敬語を使われなくても結構ですよ。ティア様には息が詰まるでしょう。」

ティアはパストーレ伯爵に軽く会釈をすると、パストーレ伯爵に答えた。

「そうですか？ありがとうございますパストーレ伯爵様！私こういうの苦手なんですよ！」

クロエは慌ててティアに言った。

「ちょっと！ティア？？」

パストーレ伯爵はクロエに言った。

「はっはっ。クロエ様もあまり気を使わなくても結構ですぞ。」

ティアはクロエには構わず、パストーレ伯爵に言った。

「あっそうそう！映画も面白かったですよ。パストーレ伯爵様も出演されてましたよね？」

パストーレ伯爵が少し困った顔で、ティアに答えた。

「ティア様ありがとうございます。ただ私は映画等の芸術は苦手でして。ジール大公様が、自分もゴルドー役で出演するからお前も出演しろ！と言われましたので出演した次第です。」

パストーレ伯爵はルンパイア役で、アホ勇者の脅威に出演していた。

そしてパストーレ伯爵はクロエとティアに言った。

「申し訳ありません。クロエ様、ティア様。この後の準備がございますので、この辺りで失礼致します。」

そう言うとパストーレ伯爵は、クロエとティアに一礼した後に、白日の間の奥へと向かって行った。

一方こちらはグラント大統領は、レグナス王国国立魔導学院の学長アマンダ・レイビンと話をしていた。

アマンダ・レイビンは年配の女性だった。

「ダニエルに初めて会ってから、もう三十年以上になるだね。時が流れるのは早いもんだね。」

グラント大統領は、レイビンに答えた。

「本当ですな。あの頃はよく魔法や蒸気機関の未来について、語り合いましたな。」

レイビンが、グラント大統領に言った。

「あの頃は、あんたが蒸気機関を普及されるって言ってて、何バカな事を言ってるんだと思てったけど、本当に実現させちゃうんだからね。」

今度はグラント大統領が、レイビンに言った。

「あの頃は無我夢中で、突き進んでいましたからな。」

レイビンは会場の時計を、見ながらグラント大統領に言った。

「少しだけ話をするつもりだったんだけど、もうこんな時間。どうもいけないね。歳をとると話が長くなっちまうのかね？さてとそろそろ退散させてもらうよ。あんたと話したい人もいっぱいいるだろうしね。ケイトにも宜しく言っといて。」

グラント大統領は、レイビンに答えた。

「勿論、家内に伝えておきます。」

それを聞いたレイビンは、他の来賓の所に向かった。

すると他の来賓の所に行っていたライツ補佐官が、人を連れて戻ってきた。

「グラント大統領、是非大統領にご挨拶したいという方がいらっしゃいまして。お連れしました。」

ライツ補佐官が連れて来た人が、グラント大統領に言った。

「お会いできて光栄です、グラント大統領閣下。私はレグナス王国福祉ギルドのトップを務めております、リグ・ファートと申します。」

グラント大統領が答えた。

「こちらこそお会いできて光栄です。リグ・ファート殿。」

この後も、グラント大統領への来客は続いた。