最強勇者の物語2

第３章 逃亡生活

摩擦

喫茶店ミレナルの一階では、男達が言い合いをしている。

若い小柄な男性が怒鳴り声をあげた。

「おい、お前いい加減にしろよ。」

もう一人の若い長身の男性が言い返す。

「本当の事を言っただけだろう！」

若い小柄な男性がまた怒鳴り声をあげた。

「おい、彼女に謝れ！」

この言い合いをしている二人の近くのテーブルに質素な身なりの黒髪の女の子が座っていた。

彼女は目に涙を浮かべながら、謝っていた。

「ご、ごめんなさい。ウウ。」

彼女はそれ以上言葉が出てこないようだった。

そして彼女を怒鳴りつけた長身の男が、はあーとため息をついた後、彼女に話しかけた。

「さっきは怒鳴ったりして悪かったな。」

すると彼女の方も涙をぬぐってから、私の方こそすいませんでしたと言って席を立った。

彼女を庇っていた小柄な男性が彼女に声をかける。

「もう戻った方がいい。」

彼女は、はいと言って店の外に出ていった。

彼女が出ていって少し経ってから、若い小柄な男性も外に出ようとしたが、呼び止められた。

「おい、お前はここにいろ！」

先程言い争いをした長身の男性だった。

若い小柄な男性が答える。

「何だよ、反省したならもう話す事はないぞ。」

長身の男性が答えた。

「は？何言ってんだ！反省なんかする訳無いだろう。」

「だってお前さっき悪かったって。」

「ああ、あれは男が女を泣かすなんてカッコ悪いと思っただけだ。今でも俺が正しかったと思ってるさ。」

「何だと？」

「だから代わりお前に言うのさ！とっとこの国から出て行け！」

「！？？」

「ここはマルディーヤだ！ジール公国だ！お前らアグトリアの連中が我が物顔でのさばっていい場所じゃねえんだよ！」

「し、仕方ないだろう、アグトリアは今大変なんだ！」

「あのな、大変だからこそ残るべきなんだろうが！少し環境が悪くなったからって、簡単に故郷を捨ててこれるなんて俺には理解できないわ。」


「もう黙れ！」

「お前みたいな奴に、ピッタリな言葉ある。恥知らず！この恥知らずが！」

「黙れ！」

二人とも怒りが頂点に達しつつあった。

すると店のマスターが大声を張り上げた。

「お前ら、喧嘩するなら外でやってくれ！」

マスターの大声になぜか二人とも納得したようで、

外で決着をつけようと言って二人とも店の外に出ていった。